カルデロン・アラン・クルズ一家に在留特別許可を!

本ブログは、カルデロン一家の在留特別許可取得に向けての活動を報告するものです。

3月9日の出頭の前に

2009-03-06 09:30:20 | 弁護士から
3月9日の出頭日が迫っています。


前回仮放免の延長が9日まで認められた際に,今回の延長が基本的に最後であると入管で告知されています。次回の出頭の際に帰国日を決めるなり,入管の提示した二つの道のいずれかを選択しなければ収容という事態が現実的なものとなってきています。


この間,家族と話してきました。ノリコちゃんが今後とも日本において教育を受けたいという気持ちは強く,ノリコちゃんが帰国するという選択はありません。では両親は帰国するという選択は?といえば,それも家族において選択するということはできませんでした。両親にとっては,13歳の自分の子どもを自分たちの意思で日本に置いて帰国するという選択はできないのです。

この間,報道でも流れたように,国連の人権理事会の特別報告者が日本政府に対してカルデロン一家の問題について,その処分に関する説明を求めています。2月19日と聞いています。そこから30日以内に日本政府が回答をすることになっています。国際機関が関心を示し,条約の履行として問題があるとした案件について収容や退去を強行する姿勢を入国管理局が示していることに非常に驚きます。

この一週間,この問題に関心をもっていただいた多くの国会議員の方々や,NGOによって法務省・外務省に問題意識が伝えられましたが,3月9日に向けての姿勢は非常に厳しいとみられます。


法務大臣は子どもの在留を認めるとしました。その決断をしながら,なぜ両親を切り離そうとするのか私には理解できません。親子の分離を強制することは家族の保護をうたった自由権規約に反する結果となります。
そして何よりも私は子どもに対してそのような日本の姿勢を示すことが残念です。

ノリコちゃんの所属する音楽クラブでアンジェラアキさんの「手紙〜拝啓 十五の君へ」が歌われています。その中に「今 負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな僕は 誰の言葉を信じて歩けばいいの?」というフレーズがあります。いろいろなことに自ら葛藤し乗り越えていく自然な成長の中でも,このフレーズは多くの中学生・高校生の心を捉えていると思います。しかしノリコちゃんは,国家という力によってこのフレーズの状態に置かれています。なぜ,13歳の彼女に日本という国はその状況を迫るのか。この子の平穏な成長のために,周りの大人たちの言葉を信じて一歩一歩前に進むことができるように受け止めてあげるのが日本という国の度量であってほしいと私は願います。

先日,イスラエルに文学賞受賞のために行った村上春樹氏は,講演の中で「私たちはそれぞれが多かれ少なかれ卵なのです。世界でたった一つしかない、掛け替えのない魂が、壊れやすい殻に入っている--それが私たちなのです。私もそうだし、皆さんも同じでしょう」(毎日新聞社Webサイトからの引用)と語っています。そして、講演の最後に伝えたいのはたった一つであるとして「私たちは皆、国籍や人種や宗教を超えて人間であり、体制という名の頑丈な壁と向き合う壊れやすい卵だということです。どう見ても、私たちに勝ち目はなさそうです。壁はあまりにも高く、強く、冷酷です。もし勝つ希望がわずかでもあるとすれば、私たち自身の魂も他の人の魂も、それぞれに独自性があり、掛け替えのないものなのだと信じること、魂が触れ合うことで得られる温かさを心から信じることから見つけねばなりません」(同)と述べています。

法務省・入管は強い力を持って彼ら家族を引き離そうとしています。村上氏が語っているとおり,その力に抗するには,私たちがこの家族3つの「卵」を掛け替えのない魂を持つものとして尊重し,そして,ことのほか,ノリコちゃんというもっともやわらかく壊れやすい殻をもった子どもの「卵」を守る決断をすることだと私は思います。このやわらかな卵を守るために両親の存在が必要であることははっきりしています。同時に,たとえ彼らが不法入国という形態で入国した人たちであっても,その独自性があることを認めることも必要だと私は思います。
彼らを日本で保護することで,私たちも自分たちの独自性を確認していくことができる,一人ひとりを掛け替えのない個として認め合うことができるのだと思っています。そして,それは,何よりも子どもに優しい社会でもあると信じます。


皆さんの支援を最後まで心からお願いしたいと思います。


以上


弁護士 渡 邉 彰 悟

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