カルデロン・アラン・クルズ一家に在留特別許可を!

本ブログは、カルデロン一家の在留特別許可取得に向けての活動を報告するものです。

法務省へ嘆願書・追加分7,422名分を提出いたしました!

2009-01-09 11:42:42 | 活動
署名のご協力をありがとうございます。

2009年1月7日に、カルデロンさんご一家は、集まった署名を再度法務省へ提出いたしました。
昨年11月27日に提出して以来、皆様のご協力のおかげで、約1ヶ月半の間に7,422名分ものご署名をいただきました。

重ねて御礼申し上げます。

法務省では、入国管理局総務課の方がご対応くださり、皆様の嘆願書を提出いたしました。再びのり子ちゃんとご両親の思い、また、嘆願書の数が衰えることなく伸び続けていること、それだけ多くの方がのり子ちゃん家族を応援してくださっているということをお伝えいたしました。

一家は、来週の14日に東京入国管理局へ仮放免の手続のため、出頭いたします。
今後も、在留特別許可の判断がなされるまで、署名活動を続けてまいりますので、ご協力よろしくお願いいたします。




ノリコちゃんの家族の保護のために

2009-01-06 15:54:53 | 弁護士から
                   2009年1月6日 弁護士 渡辺彰悟
 

1 不法入国の背景
 
この間,この問題を訴える中で,ノリコちゃんは日本で教育を受けてもらいたいけれども,両親は不法入国者であって,これは帰国してもらうしかないという意見も聞きました。
その中で,率直に不法入国をした経緯・背景も問われることがありました。

 私からフィリピンの状況に詳しい人に問い合わせたところ,以下の様な回答を得ました。
 
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 フィリピンは発展途上国といわれるように,貧しい国の一つに位置づけられています。

失業率が約10%と高く,また貧困率(Poverty Incidence)も28.4%(2000年,フィリピン政府発表。

但し,都市部では15%である一方,農村部では41.4%)と高いフィリピンは,マルコス時代からの国策で海外出稼ぎを積極的に奨励してきました。

フィリピン人にとっての出稼ぎはいわゆる日常化しており,出稼ぎ者からの外貨送金で国に残る家族や親戚たちの生活が支えられているのが現状です。

例えば,2003年には海外送金の規模は76億4000万ドルと過去最高になり,この額はGDP(国内総生産)の約1割に相当します。

いわば,フィリピン人にとって貧困から脱却するための方法の一つが海外出稼ぎであるといえます。


出稼ぎ者の中には,
1) 出稼ぎ国で市民権を得て家族などを呼び寄せ,完全に移住しているもの,
2) 雇用契約期間があり,契約期間終了とともに帰国することを繰り返すもの,
3) 正規の手続きを経ず出稼ぎ国に入国するもの,
がいるのだと思われます。


 日本に出稼ぎのために入国するものの多くは,
2)または3)の手続きを経て日本へ入国しています。
2)または3)の手続きを経る者たちは,エイジェンシーやブローカーなどを通じた代理申請によって査証を得て入国するケースが多く,個人での査証申請によって就労可能な査証を得ることはあまりないように思います。


 なぜ,個人での正規の申請を経て入国することができないのか。

 短期滞在(観光や親族訪問)であれば,日本からの身元保証人などがいる場合,個人申請でも入国することは可能です。ただ,個人が就労可能な長期の在留資格を得て入国することは,非常に困難なことです。それは第一に,出稼ぎ国の会社や雇用先からの正規の招聘状などが必要であり,そうしたことが可能なのは,優秀な技能や技術を持つ一部のエリートたちに限られます。

 多くの一般市民は大学を卒業してもコネなどがなければよい仕事をみつけることができません。1980年代から増加してきた日本への興行ビザでのフィリピン人女性の入国は,決して個人申請ではなく,リクルーターやエイジェンシー,ブローカーやプロモータなど,彼女たちの出稼ぎを利用しお金をもうける仲介業者の存在があります。その仲介業者の中には,悪徳業者もあり,やくざなどの暴力団関係の業者も少なくありません。

 他方,海外へ出稼ぎに行く人たちがリクルーターやブローカの悪質性まで判断することは非常に困難です。彼女たちはリクルーター,エイジェンシーまたは,知り合いの親戚や友人などを通じて,日本への出稼ぎを勧められますが,その時点で正規の手続きではないとはまったく知らされません。誘いを受けた多くの女性たちは貧しい家族を支えるため出稼ぎを決心します。リクルーターやエイジェンシーは彼女たちに対して,まとまったお金を払う必要はなく,日本で働いた中からその費用は払えることや,引いたとしても彼女たちのお給料は3ヶ月で500ドルはもらえることなどの話を持ちかけます。

 500ドルという金額が日本で3ヶ月働いていかに低賃金だったとしても,彼女たちがフィリピンでどんなに働いてもこれだけの金額はもらえないので,彼女たちにとってはとてもいい話です。興行ビザでの日本への入国前に彼女たちは一定の期間,歌や踊りのレッスンを行いプロとしての意識を培います。いつ来日するのかは,エイジェンシーやプロモータ任せです。パスポートの申請も査証申請も同じようにエイジェンシーやプロモータに任せます。


次に,彼女たちの違法性に関しての認識について感じたことを述べます。


ほとんどのケースで,フィリピンを経つ日または直前にブローカーなどから本人のパスポートを渡され,その時点で,自分の名前が違うことや生年月日が違うことなどに気づきます。
しかし,たとえその時点で苦情を言っても,同じように名前や生年月日の違う旅券を渡された仲間たちと一緒がいること,ブローカーからは「契約期限内に戻ってくるのだからまったく問題ない」などと説明を受け,また,親戚家族からは日本行きを歓迎され送迎会まで開いて送り出してくれたために今更キャンセルはできないこと,ブローカーにお願いしたことによる借金の返済の困難性,など諸々のことを瞬時にして考え,日本へ行くことを決心します。この瞬時に「偽名での入国が日本の法律を犯すことになる=犯罪」ということについてどれだけの人が深刻なことだと判断できるでしょうか。ほとんどいないと思われます。

 ほとんどのケースで日本へ着くと空港でブローカーなどからパスポートを取り上げられています。基本的にパスポートという自分のIDはその本人が携帯する義務があること,それを取り上げられることが違法なのだと判断できる人,さらに,それに対して抗議できた人もほとんどいないと思われます。なぜなら,本人たちはブローカーなどにその身分も存在も束縛されている状態のために彼らの指示に従わないことは許されないからです。

 また2度3度偽名のパスポートで入国し,日本で働きお金を稼ぎフィリピンへ帰国した経験を持つものは,違法性への認識が薄れ,ブローカーなどに任せておけば,偽名のパスポートを使っても日本で捕まることはないから大丈夫だと安易に考え,不法入国を繰り返すものもいます。

 もちろん,彼女たちの中には日本で束縛されながら働く中で,ブローカーの話が聞かされていた事実とは異なることが徐々に分かってきて,勇気を持って逃げ出すものもいます。
たとえば,
1)仕事の内容が違う(歌や踊りだけでなく買春や裸になることを強要された),
2)給料の未払い,
3)雇用主からの暴力(性的暴力を含む)などが多くの原因です。


 しかしながら,逃げ出した彼女たちはその後,日本にいる友人や親戚,恋人を頼っての暮らしが始まりますが,自分のパスポートを持っておらず,在留期限がいつなのかさえ分からないものもおり,多くのものは在留期限を越えて日本で働き続けることを決心します。送り出してくれた家族や親戚のこと,貧しい家族のこと,帰国しても仕事がないこと,などを考えると,ある程度まとまったお金を稼がずに帰国することはできません。そして,多くのものが,オーバーステイであることや不法入国した事実を認識をしていますが,「捕まるまで働き続けよう」と決心するのです。

 彼女たちの不法入国に至った原因が,不法入国と知りながら来日を決心した彼女たちにまったくないとはいえませんが,その背景には,彼女たち(弱い立場)の無知や貧困を利用した「業者」の存在があり,さらには,日本という先進国が「興行」という査証を利用して彼女たちの労働力を大量に受け入れたという事実があります。ゆえに,その違法性を一人ひとりの個人に押し付ける前に,違法へ至った個人の経緯や背景だけでなく,違法性へのアクセスが非常に容易な社会的要因や背景,さらにはフィリピンという国家の社会・経済的要因,また日本の国の海外出稼ぎ労働力受け入れ事情も十分に考慮に入れる必要があると考えます。

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さらに,父親,つまり男性についていえば,女性との最大な相違は,合法的に入国する手段がほとんどなかった,という点を指摘されました。つまり『日本では単純労働は認められていませんが,そうしたことを知識としてしっかり理解している男性たちはどれほどいたのか。そもそも,ブローカーは貧しくて海外出稼ぎに行きたい彼らの弱みを利用して,「任せておけばいい。心配するな。仕事はたくさんある,問題ない」と言って不法性にはまったく触れずに彼らを誘引し日本に連れてくる』ということです。

適法な手続によらず入国するに至った個人の経緯や背景だけでなく,そうしたことが容易に行われている社会的要因や背景,さらにはフィリピンという国家の社会・経済的要因,また日本の国の海外出稼ぎ労働力受け入れ事情も十分に考慮に入れる必要があるということも,彼らの問題を考察する際に考えるべき事情として入れてよいのではないかということです。
 
 そして,この外国人労働が日本において果たしてきた役割も正確に見る必要があると思います。
 私は,不法入国を問題にする必要がないとは言いません。しかし,本件を処理する際に,過去の個人の力ではどうにもならない事象を,その個人の責任に負わせようとすることによって,その以後のすべての状況を斟酌せず非人道的な結果を導くことはしたくないのです。不法入国をしたことの一事で,日本で生まれ育った中学生にもなるノリコちゃんの最善の利益を脅かし,そして一生懸命日本社会に溶け込んできたこの家族を見捨てる日本社会であってほしくないのです。



2 お願い


 再び,仮放免の出頭日が14日に迫ってきました。

 署名は継続され,前回と同数程度の署名が集まっていますし,現在も署名に関する問い合わせは続いています。


暉峻淑子著書の「豊かさの条件」(岩波新書)には次のような記述があります。
1997年8月6日,福岡県の小学校2年生の女の子が登校途中に行方不明になったときに,夜になっても行方のわからないその子を心配して同じ学校の父母や地域の人たち1000人余りが懐中電灯をもって学校の校庭いっぱいに集まり手分けして夜中遅くまで探したという話です。

「懐中電灯の光がゆらゆらと,まるで海のようにはるか彼方までひろがり,子どもを探してくれたその光景を,両親は,娘が他殺死体で見つかったあとも思い出しては,なぜか心が支えられたという。悲しみのどん底にあるとき,多くの人がその悲しみを共有してくれたことが,その後の人生を支えてくれたと,母親はのちのちまで語っている」(同書125頁)。

私はこの文章を以前キンマウンラ家族の保護を訴えるときに使いました。
今回もまったく同じ感覚を持ちます。
皆さんの署名のひとつひとつが,メッセージのひとつひとつが,ノリコちゃんとこの家族にとって懐中電灯の光なのだと思います。
この光はノリコちゃん家族を支えているし,そしてなによりも一番ノリコちゃんの心の傷を癒していると思います。

もっともっと署名だけではなく支援を広げることでこの懐中電灯の光を増やしたい。懐中電灯の光が増えることによって,法務大臣の心も溶かすことができると思うのです。皆さんの協力が必要です。

よろしくお願いします。

以上