カルデロン・アラン・クルズ一家に在留特別許可を!

本ブログは、カルデロン一家の在留特別許可取得に向けての活動を報告するものです。

報告とお礼

2009-04-28 10:19:42 | 弁護士から
皆様


この間の皆様からのご支援にこころから感謝申し上げます。


 3月13日に両親の帰国が決定し,そして4月13日に至るまでの間,この家族の過ごした時間がどれほど重かったことかと思います。

 2008年9月29日に最高裁での敗訴が決定してから,一家の在留の継続を希望して,法務省入国管理局に退去強制令書発付処分を撤回して彼ら家族3人への在留許可をお願いしてきましたが,長女ノリコだけの在留が認められ,両親は帰国するということになりました。

 この間国内外の多くのメディアがこの事件に着目していただき,国連人権理事会の特別報告者による照会が5項目にわたり日本政府に対してなされました。その4項目目には
「(日本)政府は,子どもの最善の利益という法的原則の実施,ひいては少女カルデロン・ノリコが家族とともに過ごせ,学校に通い続け同世代の子ども達と社会的関係を発展させ,さらに彼女の両親の(入管法上の違法な)状態に基づいた差別から保護されるため,何らかの方策を講じたか。それらの方策の実施につき,詳細及び可能であればその結果を教示されたい。もし何の方策も採られていないなら,その理由を説明されたい。」との質問があります。

 私はこの質問の中に,児童の権利条約や自由権規約の履行がどういうものであるのかということが示されていると思います。ノリコが「家族とともに過ご」すことができること,「学校に通い続け同世代の子ども達と社会的関係を発展させ」ることができること,「両親の(入管法上違法な)状態に基づいた差別から保護される」べきこと,これらの実現がノリコにとっての「最善の利益」であると特別報告者は考えているわけです。


 今回法務大臣は2番目のノリコが学校に通い続けることは認めたわけですが,家族を離別させたことで,最善の利益とはまったく逆行する措置をとったことになります。


 私は,今回の結果について残念な気持ちで一杯です。条約のあるべき履行という観点からも,そして人道的な意味からも,家族は離散されるべきではなかったと思います。


 私たちのお願いに対して,それに反対する根拠として「両親の不法入国」ということが必ず挙げられました。しかし,不法入国・不法残留に関していえば,母親サラは刑事責任を追及され,判決によって執行猶予となっています(但し,不法入国罪については公訴時効なので起訴はされていないと思われます)。父親アランさんについては,ノリコの就学が考慮されて起訴猶予で終了しているはずです。つまり,彼らの入管法上の刑事責任の追及は終了していました。また,現在毎年1万人規模の在留特別許可がなされていますが,実際にはそのうちの4分の1程度は不法入国者です。行政上の処理の段階で不法入国そのものが決定的なマイナス要因になっているとは到底思えません。


最終的には比較考量に基づくバランス判断が求められたのであり,子どもの最善の利益を求める条約上の価値を重んじて考えれば,両親の不法入国に対して退去強制という強硬な措置を迫る必要はなかったと考えるのです。


 空港で両親と別れるノリコの姿をご覧になられた方も多いと思います。報道の方々からも「みていてつらかった」と言われました。あのときのノリコの泣きじゃくる姿をみて,このようなことにはしたくない,と思った方も多かったのではないのでしょうか。そんな思いが積み重なって条約は歴史的に規定されてきたのだと私は信じています。あの状況はノリコにとっての最善の利益から遠く離れています。


 いずれにしても,家族は離散しました。ノリコはこれからも学校に通い,またいつか両親はノリコに会うために,そしていつかノリコと過ごすことを夢みて日本に来ます。私たちは,ノリコがしっかりと学習できる環境をつくってあげたいと思います。そのために「のりこ基金」(詳細は後掲)を立ち上げ,寄付を呼びかけています。現在までに200万円を超える寄付が集まりました。寄付していただいた方々の気持ちに沿ったしっかりとした運用をしていきたいと考えています。本当にありがとうございます。


 今後ともよろしくお願いします。この家族の将来をあたたかく見守っていただきたく存じます。


 ありがとうございました。


以上





のりこ基金概要


1. 目的

カルデロン・ノリコの就学費と生活費の援助を行なう。


2. 運営期間

基金の運営は,カルデロン・ノリコが大学入学すると思われる2014年12月末日までとする。ただし、カルデロン・ノリコの両親が日本に再入国・再定住した時点で寄付を終了し、再定住より一年を経過した時に本基金を終了する。

3. 寄付に関して

(1) 基金は、カルデロン・ノリコの就学費と生活面での緊急費援助の用途に供するものとする。

(2) 基金からの金員の授受は必要に応じてこれを行なう。

(3) 基金全体の上限金額を500万円と設定する。

(4) 基金の使用状況に関する公表は、ブログにて年2回、7月末と1月末に行なう。

(5) ノリコが大学に進学した時、或いは、ノリコの両親が日本に再定住して一年を経過することで基金の運営が終了したときに、基金に余剰金がある場合には、余剰金は、ノリコと同様の境遇にある子ども達の属する団体若しくはサポートする団体に寄付するものとする。