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ある日・・・

2007-02-11 01:05:12 | Weblog
その頃の私は仕事で役職を与えられ、人を使うことの難しさ、そして人間関係における不安などを抱え深く悩み苦しんでいた
それでも仕事を休むことはなかった それは自分や家族の為でもなかった まるで商業用ロボットのように毎日決まった時間から時間まで黙々と働き続けていた
そんなある日の夜、いつもより増して妻が私に話しかけてくる 初めはその度「うん」「そうなんだ」などと言葉を返していたが最後には面倒で「少し黙っていてくれ!」と叫んでしまった
長い沈黙 そしてすすり泣く声が聞こえる 妻が泣いている・・・

もう何もかも嫌になり一刻も早くこの場から逃げ出したい 車のキーを取り家を飛び出す
何処に行くあても無く車のハンドルを握り暗い夜道を走り続ける
何時間走ったのだろう ある川に架かる橋を渡った右手の空き地に車を止める ラジオからは若い頃よく聴いていた安全地帯の「ワインレッドの心」が流れていた
外へ出て空を見上げてみると星が美しく輝いている 時折流れ星が流れそして消える こんな綺麗な星空を見るのは何年ぶりだろうか

ふと空き地の奥を見ると道が続いていることに気づく 多分この川の上流へと続いているのだろう
車に乗り、林道を上流へと走る 10キロ程走った所の車止めで車のエンジンを止め横になる 川の水の流れる音が妙に心地よい

ふと目が覚めるともう夜が明けようとしていた 川辺に降り顔を洗う 水は澄んでいてとても冷たい
この川にはどんな渓魚達が棲んでいるのだろう 
確かめたい・・・タックルは車の中だ・・・車へと戻りウエーダーを履きロッドを繋ぐ
川は玉石が多く多少歩きにくいもののへつりや高巻きも無く遡行は楽だ
何処まで来たのか陽はもう空高く上がっている ここまでまだ一尾の渓魚にも出会っていない この川には渓魚は棲んでいないのであろうか
暑い・・・苦しい・・・吹き出た汗が目に染みる そういえば昨日の夜から何も口にしていない ロッドを置き川の流れに口をつけそのままゴクゴクと飲む
不思議だ いつもは単独釣行時はヒグマの恐怖でこんなに奥まで来れないでいたのに、今日はその恐怖感がまるで感じられない
無断で仕事を休み、泣いていた妻を残し投げやりになった私の心がそう感じさせているのかもしれない

再びロッドを持ち上流へと歩き出す 
せめて一尾でも良いから会いたい もし出会えたら何かが変わるかもしれない・・・そんな想いで・・・


つづく