一会一題

地域経済・地方分権の動向を中心に ── 伊藤敏安

新年度当初予算案

2012-03-01 18:23:33 | トピック

● 都道府県・市町村の2012年度当初予算案が出そろってきました。当初予算案をみるとき、納税者として、特に2つの点に気をつけておく必要があると思います。

 

● 1つは、基礎的財政収支(PB:プライマリーバランス)です。これは「(歳入-地方債)-(歳出-公債費)」のことです。PBがゼロということは、その年度の地方税収入などで政策的経費がまかなえることを意味します。経済成長率に比較して金利が安定している限り、地方債残高は増えません。PBが赤字になれば、新規に地方債を発行して収入を確保しなくてはならないため地方債残高は累増していきます(これはDomarの条件」に対応しています)。

 

● 2000年代以降、都道府県・市町村はPBの黒字を維持してきました。しかし、世界的な景気後退や円高の影響で税収は伸び悩む一方、歳出はそうそう減らすことができません。ここ1~2年は多くの地方自治体でPBの黒字幅が縮小しているか赤字になっているとみられます。PBは、大まかには「公債費-地方債」とみなせます。これでしたら、都道府県・市町村の当初予算案で容易に確認することができると思います。

 

■ もう1つは、抑制すべきところを抑制するという、まあ当然といえば当然のことです。PBを「公債費-地方債」でみるということは「歳入=歳出」とみなしていることにほかなりません。PBが赤字、つまり「公債費<地方債」であっても、「歳入>歳出」であれば、PBの赤字幅は縮小するかゼロに近づけることができます。そもそも「歳入>歳出」であるなら新規に地方債を発行する必要はありません。が、「公債費<地方債」の予算編成をしたときには、PBの改善を意識した財政運営を図っていくことが求められるということです(これはBohnの条件」に対応しています)。

 

● 財政学では、財政需要を見極めたうえで必要な負担を求めるという「量出制入」の考えが重要とされることがあります。けれども、「量入制出」が要請されるのは家計と同様です。都道府県・市町村の当初予算案には主要事業の予算が提示されています。納税者としては、「出」について、「租税や地方債を投入してまで実施する必要があるか」「民間で代替できないか」「緊急性は高いか」「類似の事業が重複していないか」「支出に見合った効果が発揮されるか」といったことを評価・点検し、問題があれば積極的に声を上げていくことが必要と思います。