● 移動中の1冊は、井堀利宏『消費増税は、なぜ経済学的に正しいのか』。財政再建の問題にとどまらず、公的年金制度や医療制度、さらには選挙制度改革の問題にも踏み込んでいます。いずれも正論です。正論であるがゆえに、既得権を持つ人たちや団体にとっては、できれば触れられたくない問題だろうと思われます。
● 政治家もそうです。まだ生まれていない世代は「票」にはなりません。とはいえ、問題をさらけ出し、利害関係者を説得しながら問題解決を図っていくのが政治の本来の仕事のはず。やたら威勢のよい目標を掲げたり、選挙を控えて臨時福祉給付金をばらまいたりしていても、問題解決につながるどころか、ますます拡大させているだけです。
● 著者の主張の根底にあるのは、ひとつには受益と負担が乖離していると、必ず財政肥大化を招くということ。もうひとつは、現在世代にとって厄介な問題は、政治的発言力を持たない将来世代に押しつけてしまいがちだということ。あらためていうまでもなく、だれかがいま負担していなければ、結局は、どこかのだれかがいつかは負担しなくてはならないのです。
● ちょうど「日本経済新聞」の「経済教室」で世代会計に関する特集論文が掲載されたばかり(2016年4月27日、28日)。本書や「経済教室」で提起されたような問題について、高校生から年金受給者に至るまで、幅広い議論に展開していくことが望まれます。