“I'm here." "I'm glad you're there." We are St. GIGA
・・・というフレーズをご存知でしょうか。
今から14年前、WOWOWの音声チャンネルで始まった、世界初の衛星デジタル・ラジオ。
St.GIGA(セント・ギガ)
放送衛星から、地球のタイド・ウェーブに合わせて音楽の潮流を紡ぎ出し、自然音で各作品をつないでゆくというコンセプトで、
一日を「潮の満ち干」による、自然の運行に呼応した“タイド・テーブル”で構成するという、画期的な放送内容でした。
アンビエント(環境音楽)、自然音、クラシック、民族音楽、Jazz・・・。
ジャンルにとらわれることなく、その「時」に最良な音が、ただ、ただ、静かに降ってきていました。
「癒し」とか「アロマ」なんて言葉がはやる、はるか以前のことです。
コンセプトは24時間フォーマットの「音の潮流」。
「音が宇宙(そら)から降ってくる」という概念にすっかり虜になり、夢中になって聴きつづけました。
これは強烈な音楽体験でした。
音楽が降りてくる
空から 星から
・・・
月に導かれて水が満ちてきます
という女性のナレーションのバックには自然の音。そしていつの間にか音楽に切り替わっている絶妙な構成。
放送メディアがArtの領域まで達したかのような瞬間です。
すごい時代になったものだと、当時は思いました。
St.GIGAは至福のときそのもの、だったのです。
ほとんど採算を度外視したかのような放送でしたが、やはり1993年に経営悪化のため「普通の」音楽番組が放送されるようになり、2002年には消滅してしまいました。
後にも先にも、St.GIGA(セント・ギガ)以上の音楽番組はないし、放送局もありません。
バブル期の隙間のような空間に、咲いた奇跡のような放送によるアートの空間。
聴きたい。どうしても聴きたい。
しかたがないので、今は下記のCDで疑似体験しています。
St.GIGA Sound of the Earth / 小笠原諸島 水平線の物語
東芝EMI TOCT-6532
僕の所有するSt.GIGA Sound of the Earthの2枚のうちの1枚。
波の音、珊瑚の音、鳥の声・・・。
KAKAという丸太を即興で叩く演奏がいい。夕暮れ時の浜辺で、遠くの方から聞えてくる。
数年前、沖縄一人旅を決意させた1枚。
St.GIGA Sound of the Earth / ネパール 天に最も近い場所
東芝EMI TOCT-6921
僕の所有するSt.GIGA Sound of the Earthのもう1枚。
川の音、虫の音、ここは「ポカラ」だ。
バンブーフルートとパーカッションが風景の中で鳴っている。
これを聴くと、なんて我々の住む社会は騒々しいことかと、思ってしまう。
静寂の音風景。
FUTURE MUSIC
発売日: 1996/10/25 FRCA-1014 (税込価格3,059)
レーベル: Foa Records
テクノ~アンビエント・アーティスト が集結した究極のコンピレーション。
細野晴臣、ケン・イシイ、越智義朗、WORLD STANDARDなどなど・・・。
St.GIGA(セント・ギガ)とは時期がずれるので、直接は関係がないのだけれど、アンビエントを体験するには最良の一枚です。
Aqua / 越智義朗
発売日:1996/10/02 FRCA1013
レーベル: Foa Records
越智義朗はパーカッショニストでアンビエントの第一人者。
「Aqua」という、水をコンセプトにしたアンビエント・サウンドは、更なる静けさを体験できます。
甲田益也子やDREAM DOLPHINのVoiceが何とも言えない味を醸しだし,夢と現の狭間を浮遊させる。
St.GIGA(セント・ギガ)の復活は多くの方の願望で、インターネットで検索すれば多くの署名運動などが見受けられます。
しかし、その声むなしく、貴重な音源のDATまでも競売にかけられたようで、復活は絶望視されているようです。
だれか、心ある大金持ちの方。その音源のDATを回収してCDシリーズかなにかにして下さい。・・・って、無理な注文だよなぁ。
儚く美しいSt.GIGAは、なんだか「内藤礼」さんのアートみたいに思えてきたので、次回は内藤礼さんの「地上にひとつの場所を」で記事を書きたいなと、思います。