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「法律による社会正義の実現!」

杉並民事家事法律事務所が、タイムリーで身近なニュースに関して、「法律による社会正義の実現」を願ってコメントします。

不利な遺言に斜線を引けば無効にできる?

2015-11-25 14:52:59 | 遺言
赤いボールペンで斜線が引かれた遺言書の効力を巡る裁判で、最高裁は「遺言の効力を失わせる意思の表れ」として遺言を無効と判断し、原告勝訴の逆転判決を言い渡しました。

遺言する人が、全文、日付、氏名を記載して押印さえすれば法律上有効になってしまう「自筆証書遺言」には、これだけではなく法律上の問題点が極めて大きいと考えています。

例えば、子供の一人が、病気で心身ともに弱った遺言者に不当に取り入って全財産を自分に譲るような遺言書を強引に作成させたような場合で、遺言がメモ用紙に書かれた誤字だらけの走り書きのような物でも、裁判所は遺言がある以上有効と判断してしまうのが原則です。

その有効性を覆すためには、遺言当時に遺言者が認知症などで正常な判断能力がなかったことを、カルテなどから明確に立証しなければなりません。

しかし、病気治療の記録に過ぎないカルテ等に、遺言者の判断能力についての記載があることは少ないためその立証は容易ではありません。

ズルをして全財産を独り占めにした悪者を裁判所の力で勝たせてしまうという、社会正義に反する結果も少なからず招いており、私自身もこのような案件で苦労したことが多々あります。

また、本件では斜線を引いたのが遺言者であることが明らかなようなのでまだいいものの、例えば、相続人の一人が自分に不利な遺言に、あたかも遺言者が引いたかのような巧妙な斜線を引いた場合、裁判所はどう判断するのでしょうか?

ますます進行する高齢化社会を控え、自筆証書遺言については特定財産の遺言のみを認め、全財産の遺言には公正証書遺言を必要とするなど、ズルをした者勝ちを認めてしまう現在の不十分な遺言法の、早急な法整備が望まれます。

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