流星パズル

イナズマイレブンの愛を語りまくるブログ。
一部腐向けですので、苦手な方はお引取り下さい。

涙が涸れるまで

2010-02-01 23:52:19 | 小説

※腐向けです。苦手な方はご注意下さい。



――穏やかで平凡な日曜日の朝。
小鳥のさえずりや、ゴミ収集車の音楽が耳に注がれる。
だが一番耳に届く音は、忌々しい程何度も押されるインターホンだった。
「母さ…。あ…今日はいねぇのか…」
俺はベッドから重い身を起こした。
「うー…、誰だよ…」
時計を見るとまだ8時。
今日は目覚ましもセットせずに、久々にゆっくり起きようとしていたのに。
俺はドアを開けた。すると俺の目に映ったのは、まさかのあいつだった。
「い、一之瀬!?お…お前、何で…」
「どーもん!お邪魔しまーす。
会いたかったよ!僕、今日家で一人だから寂しくて来ちゃった!
土門の母さんも今日はいないんでしょ?」
そう言いながら、一之瀬は俺の家に入り込んできた。
「お前なぁ…」
「あれ、土門今起きたの?遅いじゃん。
寝癖ついてるよ。朝ごはん食べようか」
一之瀬は早口に喋っていた。
朝から元気いっぱいだな…。
「お前な、いきなり来るなよ。ちゃんと電話かメールかしろ」
と言いながら、俺は朝食の準備に取り掛かった。
「いいじゃん。そんな固いことしなくたって」
一之瀬は俺の部屋まで行き、ベッドにふわりと座り込んだ。
「お前、朝ごはん食べてきてないのか?」
「うん。土門と一緒に食べたいなー、と思って」
「はいはい。卵焼き?目玉焼き?」
「目玉焼き」
一之瀬はさらりと答えた。きっと、俺がそう聞くということを初めから分かっていたからだろう。
そういえばこの男は、アメリカにいた時からこういう奴だった。
口に出せばすぐに行動に移すし、口に出さずとも一度決めたものはすぐに動き出す。
だから小さい頃も、俺の家に遊びに来ることなんかしょっちゅうで。
だけど気まぐれな性格でもあり、いつ来るか分からない。
そして中学生になってから、一之瀬とすごく久しぶりに対面して、それからというもの一之瀬はよく俺の家に遊びに来る。
まさかこんな日がまた訪れるなんて思ってもいなかった。
一之瀬は交通事故で死んでいたと思い込んでいたから。
だからこうして一之瀬と他愛もない話をしていること、奇跡みたいに思えてしまう。
全然そんなことはないのに。
「ほら、出来たぞ」
「わーいっ!いただきます」
俺が一之瀬を呼ぶと、一之瀬は機嫌のいい犬のようにベッドから走ってきた。
一之瀬は、パンとサラダと目玉焼きを頬張っていく。
「美味しいよ」
「そりゃどうも」
ご飯中も、ほとんどが他愛もない会話ばかりだった。
サッカーのことも色々話したりする。
学校でも部活でも喋るのに、何故か会話は途切れない。
二人ともサッカーの話をするときは、何故だか目が変わる。
 一之瀬は、昔からサッカーの才能があって凄い奴だった。
だけど俺は知ってる。一之瀬がどれだけ努力してきたかを。
一之瀬は生まれつきの天才なんかじゃない。
一之瀬は特別、才能があるわけじゃない。
だけど天才だと呼ばれるのも、才能があると言われるのも、
一之瀬は血が滲むような努力を毎日毎日積み重ねてきたからだった。
一之瀬は、どんどん進化していく。
自分の可能性をどこまでも壊して、自分だけの強さを手に入れる。
そして俺はその一之瀬には追いつけなかった。
いつも一之瀬の隣で走っているつもりだった。
だけど一之瀬は見えないところで一人で練習をしていて、俺はそれに気付けなかった。
いつの間にかどんどん一之瀬は強くなっていき、俺は一之瀬の背中を見るしかなかった。
嬉しかったといえば嬉しかったのかもしれない。友人が強くなっていくことは。
一之瀬が階段をどんどん上がっていけば、俺も負けじと追いつき追い越すことが出来るのだと。
だけど、一番俺の心を支配した感情は、悔しかったことと、寂しかったこと。
一之瀬が一人で練習をしてきた時間に巻き戻り、俺が一緒に練習出来るはずもなく。
それまでに一之瀬が練習してきた時間を今から俺が埋め合わせられるはずもなく。
俺が複雑な気持ちのままサッカーを続けていると、一之瀬はどんどん強くなっていった。
俺はその一之瀬の姿を目で追いかけることしか出来ず、強くなれる訳がなかった。
どんどん心は錆びていった。サッカーに楽しみを感じることも出来なくなっていた。
帝国学園にいた頃も、決して才能がある訳でもなく、雷門のスパイをする程落ちぶれていた。
だから雷門に来た時は正直戸惑った。どう接すればいいのか分からなかった。
雷門は帝国と全く違って、チーム全員がフレンドリーで熱い。
慣れるのに時間はかかったけど、一之瀬と自分を見比べて絶望した時より、
自分は弱者だと決め付けていた帝国より、雷門はすごく心地が良かった。
そして一之瀬が雷門に来た時も、何故か前よりやりやすかった。
一之瀬が変わったのか、それとも俺が変わったのか。それは分からない。
「ああ、今日泊まっていくからね」
一之瀬はとんでもないことをさらりと言ってのけた。
「お、お前何言ってるんだ?無理だろ。今日はもう母さんたち帰ってこないし。
明日は学校だし」
「そう言うだろうなと思って、着替えとか制服とか持ってきたから大丈夫」
一之瀬はにっこりと笑った。
俺は慌てて玄関の傍を見ると、確かに鞄が置いてあった。
「…はぁ…」
俺は溜息をつき、一之瀬をちらりと見た。
「ね、いいでしょ?それとも、俺を追い出すつもり?」
一之瀬は笑顔を崩さないままだ。だけどその笑顔の裏に何が潜んでいるのかを俺は知っている。
「…はぁ…。分かったよ、お前には敵わない」
お手上げだ。こうなった一之瀬を止められる人は誰もいない。

俺達はそれからサッカーをしたり、それぞれお風呂に入ったり、夜ご飯を食べ終わった後だ。
時計の針は、もう12時を示している。
一之瀬は布団でいいよ、と言ったものの、一応客人なのでベッドに寝転ばせ、
俺は床に布団を敷いて寝転んだ。
「…もう寝るか」
「えー、もう寝るの?」
「こら。明日学校だろ。寝るぞ」
そう言うと、さすがの一之瀬も折れ、俺は電気を消した。
しばらくの間、沈黙が続いた。当たり前といえば当たり前だけど。
暗闇に引き込まれるかのように、睡魔が俺を引きずり込もうとする。
いや、したところを、一之瀬の声が止めた。
「…どもん」
この暗闇に溺れてしまいそうな、聞こえるか聞こえないかぐらいの小さくてか細い声。
「どーした」
俺はなるべく軽く返事した。あまり重い雰囲気を醸しだしたくなかった。
「…一緒に寝たい」
その声は本当に小さくて、聞き逃してしまいそうだ。一之瀬にしてはこんなこと珍しい。
「子供かお前は」
俺は別に一緒に寝るのが嫌って訳じゃないけど、OKは出さなかった。
「…子供だよ…、まだ。子供にはね、甘える権利が…あるんだ。
寂しかったら…誰かに縋りつく権利があるんだよ。
大人にはないんだ」
一之瀬の声がだんだんはっきりしていく。だけどか細いのは変わらないままだ。
一之瀬は、きっと寂しいんだ。寂しいからこんなことを言うんだ。
決して短くない付き合いだからよく分かる。
俺は布団から身を起こした。
「…え…?土門…?」
一之瀬は顔を上げて驚いた様子を見せる。
「一緒に寝るよ」
俺はベッドに座り込み、一之瀬が入っている布団に潜り込んだ。
俺の背中の前に、一之瀬の顔があるという体勢だ。
「…ありがと、土門…」
背中越しに一之瀬の吐息と温もりを感じた。
そして、俺は目を閉じてまた睡魔に引きずり込まれるのを待っていると、
背中越しに鼻を啜る音が聞こえた。
さっきの声よりもっともっと小さくて、こんなに静かな空間でも聞き逃す程の微音。
俺は驚いて、慌てて後ろを振り向いた。
一之瀬は顔を埋めて泣いている。俺は一之瀬の泣くところなんて初めて見てしまった。
人前では泣かないような奴だったから、余計に驚いてしまう。
何でも一人で抱え込むような男だ。
何しろ、交通事故で助かったのにも関わらず俺と秋に亡くなったことにしてくれと言ったような男だ。
責任感はあるけれど、たまに一人で重荷を抱え込みすぎているんじゃないかと心配になる。
だから、一之瀬が泣くなんて本当に珍しい。
「おい…一之瀬?どうしたんだよ?」
俺は一之瀬の顔を見た。確かに目から涙が零れ落ちている。
「あっ…土門…。な、何でもないよっ…」
そう言いながら、一之瀬の目からはぽろぽろ雫が零れる。
「どうしたんだよ?」
「…本当に、何でもないよ…」
「何でもないわけねぇだろ!」
「…お願い、土門…。何も言わないで…」
一之瀬は泣きながらそう訴えた。
そんな風に言われてしまっては、何も聞けなくなってしまう。
だけどそれが本当にこの男の望むことだろう。
「…お前…無茶だけはするなよ。俺に何か出来ることあったら言えよ」
俺はそれだけは言った。何も言わないで、と言われても言わなければいけないこともあるんだ。
「…じゃあ…我儘、1つ言っていい?」
「ああ」
「…抱きしめて。人の温もりがないと、何か…怖いんだ」
一之瀬は素直だった。怖い、という感情をこの男が口にするとは思ってもいなかった。
俺は迷わず一之瀬の体をぎゅっと強く抱きしめた。
この男がいつか悲しみの途方に暮れてしまわないように。
一之瀬が望むなら、どんなことだってしてやるから。
一之瀬にとって俺の胸が安心するところなら、いつだって貸してやるから。
いつか、一之瀬が俺以外の人に頼り、俺以外の人の前で涙を流すのだろうか。
それは嫌だけど、それを止める権利が俺にはない。
だから、今だけは。今だけは、このままで。俺が一之瀬を守るから。
一之瀬は、俺が守るような男じゃないけど。
一之瀬が寂しい時は、傍にいる。
今だって一之瀬の震えが止まるまで、ずっと抱きしめてるから。
その涙が涸れるまで。
――――――――――――――――――――――




長っ!!!!!!!!!!!!!
ここまで見て下さった方いるのでしょうか…ビクビク
いたら申し訳ないです。全力で謝りますゴメンナサイスミマセン
一土の小説書きました。どっちが攻めでどっちが受けなんだorz
メチャクチャですね~;;設定が迷子…(´Д`;)
本当は、染吹か円夏を書こうとしてたんですけど、
シチュエーション思い浮かんだだけで、いまいち上手く書けなかったので、
一土のお泊りシチュを…。
初めの設定は、二人がお泊りで、一之瀬が泣いて土門があやす…みたいな感じでした。
それが、どんどんキーボードを打っているうちに、
土門の内面が出てくるようになりました。
まぁ全部妄想ですけど!?何か文句あります!?((殴
土門は一之瀬のこと大好きだけど、コンプレックスってあったんじゃないかな。
劣等感みたいな…。
あと、土門はお母さんという印象が今でも抜けない。
土門・風丸は雷門のお母さんポジション!
でも、一土って思ってたより書きやすかったです。
最初すごい書きにくいだろうなぁ…って思ってたから。
妄想に物言わせりゃ何でも出来ますね(笑)!!
あああ…最初は鬼円とか豪円とか風円とか染吹書こうって決めてたのに!!
どんどんズレてるぞ!!!!!!!!!!!
染吹は早いとこ書きたい…。あと男女カプも書きたい…。
あーとにかく、今回もまた恐ろしく汚く見にくい下手くそな小説でごめんなさいm(._.;)m
温かい目で見てやって下さい(笑)!
では~