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These Foolish Things

何気ない日常の中に見つけたいろんな素敵なものの記録

第二話 「ハトの出る部屋」

2011-04-21 | 怪談噺
ある大学生寮。。。

ここの一番奥の部屋にMくんの先輩が住んでいた

その先輩の部屋にハトが出るらしい・・・

朝になると、寝ている先輩の枕元にどこからともなく一羽の山バトが舞い降りてきて
「ククッ」っと鳴くのだと言う

目覚めの悪い先輩はその鳴き声に起こされても、しばらくは布団にもぐり込んだままで
起き出した時にはハトはどこかへ飛び去っており

そのハトの姿を見た事がないと言うのが先輩の話しだ・・・

先輩が外泊した時、そのハトがMくんの部屋に現れた

朝、枕元でハトの鳴き声がする
「ククッ・・・ククッ・・・ククッ」
(あれ?そうか・・・先輩が留守だから俺のところに来たんだな)

Mくんは目をつむったまま薄ぼんやりとそんな事を考えていた
ククッ・・・ククッ・・・ククッ・・・
ハトはだんだん彼の枕元に近づいてくる

その時だ・・・・・
「うっ」。。。自分の身体が動かなくなった
「あっ!!」
目を開けるが仰向けに寝ている身体がどうしても動かない

ハトがこちらに近づいて来る鳴き声だけが、はっきりと聞こえる
ククッ・・・ククッ・・・ククッ・・・

(いや。。。違う!)
彼は全身が凍りつくような思いをした

今までハトの鳴き声だとばかり思っていたその「声」が・・・・
「人の声」である事に気づいたからだ

「ククッ・・・ククッ・・・」笑いをこらえる時にもれる低い声
いや、苦しさをこらえる時に出る声か?

その「声」が枕元で、しかも畳から十数センチの低い位置から聞こえる
ククッ・・・ククッ・・・ククッ・・・

「声」はだんだんMくんの耳元に近づいてくる

息もかかろうかと言うところまでやってきた
しかし、なおも身体は動かず「声」の主は視界に入ってこない

それが幸いだったかもしれない
生首が畳の上を這って来るような気がするからだ

「うぅ・・・うぅ・・・」それはうめき声を発していた

見ない方がいいっ!!
そう思ってMくんは目を閉じた

しばらくすると身体は軽くなり、「男の声」はふたたび畳からそんなに高くない位置に戻った

うぅ・・・うぅ・・・うぅ・・・
「声」はだんだん隣の部屋の方へ移動して行き

・・・・やがて・・・消えた




実話怪談「新耳袋」より
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