ハニカム薔薇ノ神殿

西南戦争の現地記者の話他、幕末〜明治維新の歴史漫画を描いてます。歴史、美術史、ゲーム、特撮などの話も。

山鹿口の西南戦争錦絵の謎

2024年04月10日 | 文学・歴史・美術および書評
山鹿市立博物館に行ってきまして
ここには山鹿口の戦の錦絵が展示してあります。

なぜかNDLの方でも山鹿口のは全てを公開していないのです。
山鹿で展示されていた分で、NDLから
こちらの画像のみをお借りします


賊兵激戦の図、というこちら
メインで描かれているのは薩摩軍
畳のバリアで官軍を防いでいるようです。

画工は山崎年信。
月岡芳年の弟子です。

しかし、左隅の画工名には「山嵜徳三郎」とありまして。
なぜ年信の名前を使わなかったのか?

山崎年信は後に高知の「土陽新聞」に描いたりしているので
思想としては民権派なのだと思います。
師匠芳年の下をある事件がきっかけになって出奔したようですが
詳細は不明です。


もう1枚の絵はNDLに無いんで…
(これどこに問い合わせたら公開できるのか?なんですが)
安達吟光という画家の絵でした。
吟光は結構有名でして
風刺パロディ漫画も得意。それで逮捕されています。

錦絵絵師の生活は今と変わることなく
とにかく売れ筋は何でも描かないと生活できない。錦絵1枚の値段はかけそば1杯よりは安いのが普通でした。
指定通りで工賃低い(日本の伝統芸だわ)
だからか、サブカル絵師達はいわゆる「画家」と違い割となんでも描いてます。

安達さんの方も、安達平七の名前です。
そして、安達吟光も
宮武外骨と組むくらいですから、民権派です。

漫画(錦絵)と山鹿と明治デモクラシー。
繋がっててちょっと嬉しいかも?


当時、新聞記事は明治政府の検閲で本名で出すこと
とされていたので
錦絵というよりは報道、新聞の扱いだったのでしょう。

ところでその内容はというと
やっぱり報道としてはあまりに「歴史創作」が入っています。
見て描いてないし、フィクションですけど
多くの庶民が信じてしまったらヤバいと思わせるほどのリアリティ
って事ですよね。

こういった錦絵は
鳥獣戯画のように「漫画」のルーツでなくて
「コミック」のルーツと言っていいかも。
大変興味深いです。
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