![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/bf/54021d9a47c4e789d3ef6673fddfd7fa.jpg)
今回の記事は『アラビアのロレンス』(1962年、監督:デヴィッド・リーン)です。
イギリスの名匠デビッド・リーンによる、実在した軍人の伝記をもとにした大長編スペクタクル。
ピーター・オトゥール演じる金髪で青い瞳が美しい主人公のロレンスがとても印象的でした。
葛藤と希望、弱さと強さ、理想と欲望、人間が持つ相反する内面の矛盾点が凝縮された人物像は過去最大級の衝撃を受けます。
午前十時の映画祭上映作品。
■内容紹介 ※午前十時の映画祭ウェブサイトより
イギリスの田舎町で、ある男がバイク事故で亡くなった。
その男の名はロレンス。
生前の栄誉を称えられ、銅像も立てられた人物である。
「彼は銅像を立てられるほどの人物なのか?」
葬儀に取材に来た記者は参列者たちに尋ねていく。
「よくは知らない」
「彼は私の部下だったこともあるようだが…そんな功績などあっただろうか」
その返答はあまりパッとしないものが多い。
しかしとある参列者は
「彼ほどの英雄はいない」
とロレンスのことを諸手を挙げて賞賛した。
ロレンスとはいかなる人物だったのだろうか?
話は19年前に遡る。
イギリス陸軍少尉のロレンス(P.オトゥール)は、オスマントルコへの反乱を企てるアラブの王子と出会い、独立闘争を支援することになった。
ゲリラ戦の指揮をとり、次々と勝利を収めるロレンスだが、やがてアラブ人同士の争いや国同士の思惑に翻弄され、次第に孤立していく……。
灼けつく大砂漠を越えて今ロレンスが進撃する!
![アラビアのロレンス](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/8d/4e264e3a721e0be6cc3779a3a4d1a0dc.jpg)
![アラビアのロレンス](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/90/c0e2456226bfbfa8f0f60a0b713a966b.jpg)
■感想
この映画はすごい。
さすがは午前十時の映画祭。
ただし映画は超長尺でめちゃくちゃシリアスな内容だということは覚悟しておいた方がいい。
復讐と寛容、その心の葛藤を描いたドラマはとにかく深い。
観終わった後に胸を切り刻まれたような痛みを感じました。
戦争、部族間の争い、中東問題など非常に考えさせられる内容だった。
最初はアラブを愛し、アラブにアラブを与えるという信念を抱きつつ慈悲深く行動するロレンスの姿はまさに英雄だった。
しかし英雄視された彼は次第に自分は特別な存在だと自惚れてゆく。
その自惚れは最悪の形で打ち砕かれてしまう。
このシーン以降のロレンスの気落ちした姿は観ていて痛々しいほどだった。
一度は逃げ出そうとしたけれどまわりがそれを許さず彼は再びアラブ軍を指揮することに。
ロレンスの「アラブにアラブを与える」という真摯な思いは変わらず、行動はより過激に。
途中、ロレンス率いるアラブ軍は大量虐殺に加担してしまう。
ロレンス自身も虐殺を楽しみ傷ついたシーンの彼の姿が忘れられない。
彼の目に宿る狂気と血にまみれた姿はひどく危うげで悲しかった。
高い志と理想を持って進撃したはずなのに、憎悪と欲望に流され虐殺を楽しむ自分がいる。
その矛盾した感情に苦悩するロレンスの姿は悲しく目に焼きついた。
アラブ軍はダマスカス解放に成功するが、その後結集した民族議会は部族間のエゴがぶつかりまとまらないままバラバラになってしまう。
「ダマスカスをアラブに与えたかった」
そんなロレンスの思いは崩れ去ってしまった。
これはずきずき痛む鈍痛としていつまでも心に残った。
真摯に望んだことが打ち砕かれた時の悲しみは本当に辛いものなのだ。
ロレンスの傷ついた姿があまりにも痛々しくて悲しかった。
最初と最後の繋ぎ方といい(ロレンスの無謀な運転の謎が最後に解け忘れ難い余韻を残してくれます)、
冒頭の葬儀でロレンスを英雄と讃えた人物が、終盤でロレンスに平手打ちをしアラブの野蛮さと不寛容さを叱責した人物と同じなど、その構成と演出力は神レベルだと思った。
音楽や映像も本当に素晴らしい。
映像面は特に前半の砂漠の描写がとにかく美しい。
これは必見の価値がある。
⇒その一部
⇒2
ロレンスを演じたピーター・オトゥールの青い瞳も印象的で、時に美しく、時に残酷に感じられた。
葛藤と希望、弱さと強さ、理想と欲望、人間が持つ相反する内面の矛盾点を演じきった人物像はとても魅力的でした。
俺たちは傷つき争い合い従わされる運命なのだと悲嘆するアラブの人たちに対し
「運命などない」
と言ったロレンスのセリフは至言だ。
満足のいかない現状や自分の身に起きた悲しい出来事に「これは運命だから…」と言って甘んじるなんて悲しい。
あらかじめ決まった運命なんてない。
「どうか人生なんかを語りはせずに 運命なんかと暮らさぬように」
今も日々を生きる糧にしているTHE BACK HORNの「世界の果てで」の歌詞が胸によぎった。
『アラビアのロレンス』は紛れもない名画でしょう。
その長さは尋常じゃなく、内容もとてつもなく重いので気安く観れる類の映画では決してない。
けれど生涯で一度は観てもらいたいオススメ映画です。
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)
■Link
+⇒公式HP(Japanese)※午前十時の映画祭特設ページです。
+⇒アラビアのロレンス - goo 映画
+⇒午前十時の映画祭レビュー記事一覧
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イギリスの名匠デビッド・リーンによる、実在した軍人の伝記をもとにした大長編スペクタクル。
ピーター・オトゥール演じる金髪で青い瞳が美しい主人公のロレンスがとても印象的でした。
葛藤と希望、弱さと強さ、理想と欲望、人間が持つ相反する内面の矛盾点が凝縮された人物像は過去最大級の衝撃を受けます。
午前十時の映画祭上映作品。
■内容紹介 ※午前十時の映画祭ウェブサイトより
イギリスの田舎町で、ある男がバイク事故で亡くなった。
その男の名はロレンス。
生前の栄誉を称えられ、銅像も立てられた人物である。
「彼は銅像を立てられるほどの人物なのか?」
葬儀に取材に来た記者は参列者たちに尋ねていく。
「よくは知らない」
「彼は私の部下だったこともあるようだが…そんな功績などあっただろうか」
その返答はあまりパッとしないものが多い。
しかしとある参列者は
「彼ほどの英雄はいない」
とロレンスのことを諸手を挙げて賞賛した。
ロレンスとはいかなる人物だったのだろうか?
話は19年前に遡る。
イギリス陸軍少尉のロレンス(P.オトゥール)は、オスマントルコへの反乱を企てるアラブの王子と出会い、独立闘争を支援することになった。
ゲリラ戦の指揮をとり、次々と勝利を収めるロレンスだが、やがてアラブ人同士の争いや国同士の思惑に翻弄され、次第に孤立していく……。
灼けつく大砂漠を越えて今ロレンスが進撃する!
![アラビアのロレンス](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/8d/4e264e3a721e0be6cc3779a3a4d1a0dc.jpg)
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■感想
この映画はすごい。
さすがは午前十時の映画祭。
ただし映画は超長尺でめちゃくちゃシリアスな内容だということは覚悟しておいた方がいい。
復讐と寛容、その心の葛藤を描いたドラマはとにかく深い。
観終わった後に胸を切り刻まれたような痛みを感じました。
戦争、部族間の争い、中東問題など非常に考えさせられる内容だった。
最初はアラブを愛し、アラブにアラブを与えるという信念を抱きつつ慈悲深く行動するロレンスの姿はまさに英雄だった。
しかし英雄視された彼は次第に自分は特別な存在だと自惚れてゆく。
その自惚れは最悪の形で打ち砕かれてしまう。
このシーン以降のロレンスの気落ちした姿は観ていて痛々しいほどだった。
一度は逃げ出そうとしたけれどまわりがそれを許さず彼は再びアラブ軍を指揮することに。
ロレンスの「アラブにアラブを与える」という真摯な思いは変わらず、行動はより過激に。
途中、ロレンス率いるアラブ軍は大量虐殺に加担してしまう。
ロレンス自身も虐殺を楽しみ傷ついたシーンの彼の姿が忘れられない。
彼の目に宿る狂気と血にまみれた姿はひどく危うげで悲しかった。
高い志と理想を持って進撃したはずなのに、憎悪と欲望に流され虐殺を楽しむ自分がいる。
その矛盾した感情に苦悩するロレンスの姿は悲しく目に焼きついた。
アラブ軍はダマスカス解放に成功するが、その後結集した民族議会は部族間のエゴがぶつかりまとまらないままバラバラになってしまう。
「ダマスカスをアラブに与えたかった」
そんなロレンスの思いは崩れ去ってしまった。
これはずきずき痛む鈍痛としていつまでも心に残った。
真摯に望んだことが打ち砕かれた時の悲しみは本当に辛いものなのだ。
ロレンスの傷ついた姿があまりにも痛々しくて悲しかった。
最初と最後の繋ぎ方といい(ロレンスの無謀な運転の謎が最後に解け忘れ難い余韻を残してくれます)、
冒頭の葬儀でロレンスを英雄と讃えた人物が、終盤でロレンスに平手打ちをしアラブの野蛮さと不寛容さを叱責した人物と同じなど、その構成と演出力は神レベルだと思った。
音楽や映像も本当に素晴らしい。
映像面は特に前半の砂漠の描写がとにかく美しい。
これは必見の価値がある。
⇒その一部
⇒2
ロレンスを演じたピーター・オトゥールの青い瞳も印象的で、時に美しく、時に残酷に感じられた。
葛藤と希望、弱さと強さ、理想と欲望、人間が持つ相反する内面の矛盾点を演じきった人物像はとても魅力的でした。
俺たちは傷つき争い合い従わされる運命なのだと悲嘆するアラブの人たちに対し
「運命などない」
と言ったロレンスのセリフは至言だ。
満足のいかない現状や自分の身に起きた悲しい出来事に「これは運命だから…」と言って甘んじるなんて悲しい。
あらかじめ決まった運命なんてない。
「どうか人生なんかを語りはせずに 運命なんかと暮らさぬように」
今も日々を生きる糧にしているTHE BACK HORNの「世界の果てで」の歌詞が胸によぎった。
『アラビアのロレンス』は紛れもない名画でしょう。
その長さは尋常じゃなく、内容もとてつもなく重いので気安く観れる類の映画では決してない。
けれど生涯で一度は観てもらいたいオススメ映画です。
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題名 | アラビアのロレンス |
製作年/製作国 | 1962年/イギリス |
ジャンル | ドラマ/歴史劇 |
監督 | デヴィッド・リーン |
出演者 | ピーター・オトゥール アレック・ギネス オマー・シャリフ アンソニー・クイン ジャック・ホーキンス アーサー・ケネディ クロード・レインズ ホセ・ファーラー アンソニー・クエイル ドナルド・ウォルフィット マイケル・レイ、他 |
メモ・特記 | 午前十時の映画祭上映作品![]() ![]() ![]() ![]() |
おすすめ度 | ★★★★★ |
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