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情婦(映画)

2011-08-07 22:08:00 | 映画
今回の記事は『情婦』(1957年、監督:ビリー・ワイルダー)です。
ミステリー映画史に残る名作として高い評価を得ている法廷ミステリー劇の傑作。
あまりに見事な脚本にはひたすら圧倒されるばかりです。本当に面白かった。
出演はタイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒといったハリウッドの大スターが共演。
チャールズ・ロートン、エルザ・ランチェスターの掛け合いも面白い。
第2回午前十時の映画祭上映作品。

■内容紹介 ※午前十時の映画祭ウェブサイトより
富豪の未亡人を殺害した容疑をかけられたレナード(T・パワー)は、ロンドン一の老弁護士ウィルフリッドに弁護を依頼する。
レナードのアリバイを知る彼の妻クリスティーネ(M・ディートリッヒ)だったが、彼女の証言はあいまいであった。
そうして裁判に挑むウィルフリッドらの前に、検察側の証人として現れたのは、なんとクリスティーネであった。
彼女の証言からレナードの有罪は確定的となるが……。

この映画の結末を未見の人に話さないでください。

情婦

情婦


■感想
この映画は面白かった。
そのあまりに見事な脚本にはとにかく圧倒されてしまう。
完全に計算され尽くし散りばめられた伏線には一切の無駄も無く、すべては最後の衝撃の結末に繋がる。
最後に「結末を言わないでください」とのテロップで注意を喚起されるのも納得の驚きの結末です。
しかもただ単に驚かせるだけではなく、そこに人の持つあまりにも濃い感情を強烈に織り交ぜている所がまた上手い。
これはミステリー映画として間違いなく最高峰に分類される映画に入ると思う。
原作はアガサ・クリスティー。どうりで物語が面白いはずだ。

物語自体も最高に面白いのですが、映画の演出・物語の見せ方もまた凄く上手い。
ビリー・ワイルダー監督の映画作りの上手さを伺えます。

中でも法廷シーンの面白さは特筆だった。
老弁護士ウィルフリッドの巧みな弁論に、裁判は心理戦なのだということを強烈に印象づけられます。
論理的に相手側の主張を崩す。これが正攻法。
しかしその正攻法が通じず徹底的に不利な状況に陥ったときにはどうするのか。
時に感情的に強い口調で訴える手段を取り、攻める時には相手の心理の裏を付く巧妙な罠を張る。
この心理の駆け引きの巧みさには舌を巻いてしまう。
法廷サスペンスとしてまさに極致の面白さを発揮しています。

登場人物もとっても魅力的です。

ウィルフリッド役のチャールズ・ロートン。
どこかユーモラスでお茶目な印象もある人物ですが、法廷シーンでは狡猾とも言える弁論を見せ、その優秀な弁護士ぶりがカッコよかった。
介助用に階段に取り付けられた昇降機の椅子を最初は嫌がりながらも、そのうちに上り下りを楽しむ素振りをみせたり、光を反射する眼鏡でふざけたりするなど、ユーモラスな描写が多分にあるところが可愛かった。
ウィルフリッドと看護士役を演じたエルザ・ランチェスターとのやり取りもとっても面白かった。

クリスチーネ役のマレーネ・ディートリッヒも良かった。
冷酷な女性として強烈な印象を与え、観客に嫌悪的な印象を植え付ける役柄なのですが…。
この人なしであの驚愕の結末には至らなかったでしょう。
彼女の真意を見抜けた人はおそらくいないんじゃないでしょうか。

面白いミステリー映画を観たいという人なら観ておいて絶対に損はありません。むしろ観ないと損するぐらいのレベルです。
この映画を観てすっかりワイルダー監督の映画のファンになってしまいそう。
第2回午前十時の映画祭ではもう1作ワイルダー監督の映画がラインナップされているのですが、そちらも文句なしに面白かったな。

オススメ映画です。興味を持たれた方はぜひご覧になってみて下さい。

↓貼り残し
⇒img1(眼鏡でふざけるウィルフリッド。お茶目で可愛い)
⇒img2(ウィルフリッドとクリスチーネの対決はまさに見事としか言えない)

映画データ 
題名 情婦 
製作年/製作国 1957年/アメリカ 
ジャンル ドラマ/サスペンス/ミステリー 
監督 ビリー・ワイルダー 
出演者 タイロン・パワー
マレーネ・ディートリッヒ
チャールズ・ロートン
エルザ・ランチェスター
トリン・サッチャー
ジョン・ウィリアムズ
ヘンリー・ダニエル
イアン・ウルフ
ノーマ・ヴァーデン
ウナ・オコナー
ルタ・キルモニス、他 
メモ・特記 第2回午前十時の映画祭上映作品
原作:アガサ・クリスティ「検察側の証人」

ゴールデン・グローブ:助演女優賞(E・ランチェスター)受賞 
おすすめ度★★★★☆
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)

■Link
+⇒公式HP(Japanese)※午前十時の映画祭特設ページです。
+⇒情婦 - goo 映画

+⇒第2回午前十時の映画祭レビュー記事一覧

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