今回の記事は『ディア・ハンター』(1978年、監督:マイケル・チミノ)です。
ベトナム戦争に赴き心に傷を負った3人の若者の生と死をえぐるように描いた傑作。
尋常ならざるほどの物語の重さは凄まじく、狂気のロシアン・ルーレットのシーンはPG12どころの話ではないので鑑賞する際は要注意! 名優ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの初共演作としても注目の作品。
第2回午前十時の映画祭上映作品。
■内容紹介 ※午前十時の映画祭ウェブサイトより
ペンシルベニア州の片田舎で育ったマイケル(R・デ・ニーロ)、ニック(C・ウォーケン)、スティーヴン(J・サヴェージ)は、休日に鹿狩りを楽しむ普通の若者たちであった。
3人は戦況が悪化する一方の北ベトナムへと召集され、前線に放り出された。
そこで偶然再会した3人はベトコンの捕虜となり、賭けの対象として実弾入りのロシアン・ルーレットを強制される。
辛くも生き延びた3人だったが、それぞれの行方がわからないまま時は過ぎていった。
その後マイケルは、陸軍病院にいたスティーヴンから、ニックがベトナムで生きている、という情報を得る。
戦争が彼らに残したもの
■感想
はじめに言っておくと、この映画は尋常ならざるほどの“重さ”を誇る映画です。
またレイティングとしてPG12がつけられてますが、それどころではない残虐描写を多く含みます。なので観賞要注意作品です。
これほどまでに観ているのが辛くなった映画は過去にも数えるほどしかない。
ロシアンルーレットシーンのただ事ではないまでの狂気の異常事態は、胸が突き刺されるような痛みと衝撃を刻みこんでくる。
その後のベトナム戦争が残した傷跡の悲惨さはあまりに悲しくて観ているのが辛かった。
この映画は間違いなく名作なのでオススメ度は高くつけていますが、後味はそうとう悪い。いや悪いというか激痛だ。映画中盤以降はエンタメ度は皆無となっていくので、重い映画を観たいという方以外はたぶん観ない方がいい。
前半の描写はやや間延びしていたようにも感じた。
ベトナム戦争へと召集される前の最後の日常を描いたシーンであり、結婚式の陽気なシーンや、それに続く雄大な大自然の中で鹿狩りへと赴く若者たちの日常を、この世代特有の悪ノリを交えて描いている。
脚本上絶対に必要な描写だとは思うけど少々長さを感じた。
しかしベトナム戦争へ彼らが召集されてからは一変して映画の空気がガラリと変わる。
とにかく過酷で残虐で悲惨な異常描写の連続であり、その衝撃度たるやただ事ではない。
戦争の残虐性と人間の狂気というものを、これでもかというほどまでに胸に刻みつけてくる。心臓の弱い方や心優しい方はロシアンルーレットのシーンで死亡しますので注意して下さい。
なおこのロシアンルーレットの描写は、クライマックスにも同様のシーンが別シチュエーションで描かれます。
演出のさせ方は最高に上手い。最初のロシアンルーレットシーンはあまりの異常性・残虐性にただひたすら衝撃を受けるのですが、クライマックスのロシアンルーレットでは全く異なる心情にさせられる。とにかくやるせない無情さで一杯になってしまう。
この映画の批判意見として、一方的な視点でベトナム戦争が描かれた映画だという意見が多くあった。
確かにこの映画は、ベトナム兵側を一方的に残虐に描き、アメリカ兵側は傷を負わされた被害者として描かれている。なので公平性に欠ける点があるのは確かでしょう。
これは映画感想とは全く別の話となりますが、映画やドラマで扱われる問題描写を一方的に信じてはいけない。これは全てのメディアを見る際に心に留めておくべき留意点です。
社会問題を扱った作品に触れ何か憤りを感じることがこの先あるかもしれない。しかしそれは全体の一部分でしかないということを忘れないでいたい。そのドラマは全く別の観点からも描くことが可能なのだ。
第2回午前十時の映画祭は、ロバート・デ・ニーロ祭りと言ってもいいほどデ・ニーロ出演映画が集められていました。
まさに役者魂の塊とも言えるデ・ニーロの徹底した役作りは凄まじく、この映画でも思う存分そんな彼の演技に陶酔させられます。デ・ニーロが相手を見つめながら静かに語りかけるシーンの存在感は凄い。
そしてもうひとつ注目したいのが、この映画ではデ・ニーロとメリル・ストリープが共演しているということ。
二人は徹底した役作りの姿勢が成す特筆した演技力の高さが評価されている役者です。現代を代表する名優でしょう。
本作はその二人の最初の共演作なのです。この当時すでにデ・ニーロは『ゴッドファーザーII』や『タクシードライバー』などの演技でその演技力の高さが絶賛されていました。一方メリル・ストリープはメジャー映画での出演は『ディア・ハンター』でまだ3作目だった。
この辺りの名優たちの軌跡を含め、ぜひ注目して観たい映画です。
最後に念押しをもう1回。この映画、激重です。鑑賞する際は要注意して下さい。
↓予告編・字幕なし
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)
■Link
+⇒公式HP(Japanese)※午前十時の映画祭特設ページです。
+⇒ディア・ハンター - goo 映画
+⇒第2回午前十時の映画祭レビュー記事一覧
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ベトナム戦争に赴き心に傷を負った3人の若者の生と死をえぐるように描いた傑作。
尋常ならざるほどの物語の重さは凄まじく、狂気のロシアン・ルーレットのシーンはPG12どころの話ではないので鑑賞する際は要注意! 名優ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの初共演作としても注目の作品。
第2回午前十時の映画祭上映作品。
■内容紹介 ※午前十時の映画祭ウェブサイトより
ペンシルベニア州の片田舎で育ったマイケル(R・デ・ニーロ)、ニック(C・ウォーケン)、スティーヴン(J・サヴェージ)は、休日に鹿狩りを楽しむ普通の若者たちであった。
3人は戦況が悪化する一方の北ベトナムへと召集され、前線に放り出された。
そこで偶然再会した3人はベトコンの捕虜となり、賭けの対象として実弾入りのロシアン・ルーレットを強制される。
辛くも生き延びた3人だったが、それぞれの行方がわからないまま時は過ぎていった。
その後マイケルは、陸軍病院にいたスティーヴンから、ニックがベトナムで生きている、という情報を得る。
戦争が彼らに残したもの
■感想
はじめに言っておくと、この映画は尋常ならざるほどの“重さ”を誇る映画です。
またレイティングとしてPG12がつけられてますが、それどころではない残虐描写を多く含みます。なので観賞要注意作品です。
これほどまでに観ているのが辛くなった映画は過去にも数えるほどしかない。
ロシアンルーレットシーンのただ事ではないまでの狂気の異常事態は、胸が突き刺されるような痛みと衝撃を刻みこんでくる。
その後のベトナム戦争が残した傷跡の悲惨さはあまりに悲しくて観ているのが辛かった。
この映画は間違いなく名作なのでオススメ度は高くつけていますが、後味はそうとう悪い。いや悪いというか激痛だ。映画中盤以降はエンタメ度は皆無となっていくので、重い映画を観たいという方以外はたぶん観ない方がいい。
前半の描写はやや間延びしていたようにも感じた。
ベトナム戦争へと召集される前の最後の日常を描いたシーンであり、結婚式の陽気なシーンや、それに続く雄大な大自然の中で鹿狩りへと赴く若者たちの日常を、この世代特有の悪ノリを交えて描いている。
脚本上絶対に必要な描写だとは思うけど少々長さを感じた。
しかしベトナム戦争へ彼らが召集されてからは一変して映画の空気がガラリと変わる。
とにかく過酷で残虐で悲惨な異常描写の連続であり、その衝撃度たるやただ事ではない。
戦争の残虐性と人間の狂気というものを、これでもかというほどまでに胸に刻みつけてくる。心臓の弱い方や心優しい方はロシアンルーレットのシーンで死亡しますので注意して下さい。
なおこのロシアンルーレットの描写は、クライマックスにも同様のシーンが別シチュエーションで描かれます。
演出のさせ方は最高に上手い。最初のロシアンルーレットシーンはあまりの異常性・残虐性にただひたすら衝撃を受けるのですが、クライマックスのロシアンルーレットでは全く異なる心情にさせられる。とにかくやるせない無情さで一杯になってしまう。
この映画の批判意見として、一方的な視点でベトナム戦争が描かれた映画だという意見が多くあった。
確かにこの映画は、ベトナム兵側を一方的に残虐に描き、アメリカ兵側は傷を負わされた被害者として描かれている。なので公平性に欠ける点があるのは確かでしょう。
これは映画感想とは全く別の話となりますが、映画やドラマで扱われる問題描写を一方的に信じてはいけない。これは全てのメディアを見る際に心に留めておくべき留意点です。
社会問題を扱った作品に触れ何か憤りを感じることがこの先あるかもしれない。しかしそれは全体の一部分でしかないということを忘れないでいたい。そのドラマは全く別の観点からも描くことが可能なのだ。
第2回午前十時の映画祭は、ロバート・デ・ニーロ祭りと言ってもいいほどデ・ニーロ出演映画が集められていました。
まさに役者魂の塊とも言えるデ・ニーロの徹底した役作りは凄まじく、この映画でも思う存分そんな彼の演技に陶酔させられます。デ・ニーロが相手を見つめながら静かに語りかけるシーンの存在感は凄い。
そしてもうひとつ注目したいのが、この映画ではデ・ニーロとメリル・ストリープが共演しているということ。
二人は徹底した役作りの姿勢が成す特筆した演技力の高さが評価されている役者です。現代を代表する名優でしょう。
本作はその二人の最初の共演作なのです。この当時すでにデ・ニーロは『ゴッドファーザーII』や『タクシードライバー』などの演技でその演技力の高さが絶賛されていました。一方メリル・ストリープはメジャー映画での出演は『ディア・ハンター』でまだ3作目だった。
この辺りの名優たちの軌跡を含め、ぜひ注目して観たい映画です。
最後に念押しをもう1回。この映画、激重です。鑑賞する際は要注意して下さい。
↓予告編・字幕なし
映画データ | |
---|---|
題名 | ディア・ハンター |
製作年/製作国 | 1978年/アメリカ |
ジャンル | ドラマ/戦争 |
監督 | マイケル・チミノ |
出演者 | ロバート・デ・ニーロ クリストファー・ウォーケン ジョン・サヴェージ ジョン・カザール メリル・ストリープ ジョージ・ズンザ チャック・アスペグレン シャーリー・ストーラー ルターニャ・アルダ、他 |
メモ・特記 | 第2回午前十時の映画祭上映作品 PG12指定 アカデミー賞:作品賞・助演男優賞(C・ウォーケン)・監督賞・音響賞、編集賞受賞 ゴールデン・グローブ:監督賞受賞 全米批評家協会賞:助演女優賞(M・ストリープ)受賞 |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
■Link
+⇒公式HP(Japanese)※午前十時の映画祭特設ページです。
+⇒ディア・ハンター - goo 映画
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ichi-kaさんの感想を読んだだけで、観られないこと必至ですね。
確実に、ロシアン・ルーレットのシーンで死亡します。
ロバート・デ・ニーロやメリル・ストリープといった名優たちの演技や名作を、作り物とわかっていながら、残酷・残虐な描写シーンが苦手な私には、観られないのは、本当に残念です。