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鼻/曽根圭介(小説)

2009-12-05 13:06:30 | 読書
今回の記事は『鼻』(曽根圭介、角川ホラー文庫)です。
日本ホラー小説大賞短編賞受賞の「鼻」他2編を収録した短編集。
収録されている3作品はどれも面白かった。
こういう感じのブラックユーモアは好きだな。

■内容紹介
人間たちは、テングとブタに二分されている。
鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。
外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。
一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」は、2人の少女の行方不明事件を捜査している。
そのさなか、因縁の男と再会することになるが……。
日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他二編を収録。
大型新人の才気がほとばしる傑作短編集。

■感想
うちのブログってホラーに特化してるって言えるのかな?
気づいたら映画も読書もホラー作品ばっかり扱っている。
それほど自分じゃホラー好きだとは思ってないんだけど…。
今回の記事の『鼻』もホラー作品だったりします。
(ちなみに次回読書レビュー予定もホラーです)
…やっぱり、うちってホラーだよ。

えー、それでは感想。
この小説を読んだ感想を簡単に述べるとすれば、「怖いというよりは面白い」です。
現実世界と近いけれど少し異なる世界を描いた物語(ファンタジーのように全くの別世界ではなく、常識、習慣などが少しずれた世界)はブラックユーモアが効いていてとても面白く読めます。
全体に「世にも奇妙な物語」や『笑ゥせぇるすまん』、藤子・F・不二雄の異色短編集に近いダークな雰囲気が漂っています。
この手の作品が好きな人は『鼻』も楽しく読めること間違いなしです。

以下、収録3作品の個別感想です。

■暴落
人間に株価がつけられる世界を描いた物語です。
「株が上がる」や「株が下がる」の言葉の通りにその人の行動や実績が個人の株価に反映される世界で、株価は何よりもその人物の社会的立場を表す重要な尺度とされています。
このアイデア自体が面白く、株価暴落後の主人公の体験するあまりにも理不尽な世界にはかなりのブラックユーモアが効いています。
主人公は「イン・タムさん」と呼ばれているのですが、その理由に驚愕してしまう。
ラストはそうとうにブラックな終わり方をします。ひぇー。

■受難
「暴落」の主人公もそうとう理不尽な目に遭うのですが、この作品の主人公もまた理不尽な目に遭っています。
それはタイトルの通りまさしく受難…。
世界観は現実世界に近く、こういう事件が実際にあったとしてもおかしくはないかもしれない。
心に闇を抱えた3人を相手に現状を何とか脱却しようとする「俺」。
描かれる場所も登場人物もかなり限定されているのですが、ここまで面白く物語を進行していけるとは。
終わり方はやっぱりブラックです。

■鼻
日本ホラー小説大賞短編賞受賞も伊達じゃない。
この作品は流石の面白さで、物語の構成がものすごく巧い。
描かれているまったく別物と思われる2つの世界の関連がどういうことかに気づいたとき、戦慄と衝撃が走ります。
(言葉を変えるとテングとブタの関連に気づいた時)
最初は「どういうことだ?」と戸惑いますが、その真相に気づいた時にじわ~っと恐怖に包まれます。
この持っていき方は上手すぎる。
文庫版はあとがきの解説に「鼻」のカラクリの詳細な説明も書かれています。
読み終わった後に「…?」となっても大丈夫な安心設計。

3作品はどれも読みやすく、適度な長さなので読み終わりまでそれほど時間は掛かりません。
中でも「鼻」のじわりとくる戦慄はぜひとも体験してもらいたい面白さです。


書名:鼻
著者曽根圭介
ジャンル:小説(ホラー/ブラックユーモア)
メモ:第14回日本ホラー小説大賞短篇賞受賞作
おすすめ度★★★★


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