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クドリャフカの順番(小説)

2012-06-24 22:45:00 | 読書
今回の記事は『クドリャフカの順番』(米澤穂信、角川文庫)です。
アニメ化もされ人気の古典部シリーズの第三弾!
文化祭の楽しさをそのまま詰め込んだ日常ミステリーの秀作です。
古典部の面々のキャラが前面に押しでて進んでいく物語は、全2作とはまた違った面白さを持った小説でした。

■内容紹介
待望の文化祭が始まった。
だが折木奉太郎《おれき・ほうたろう》が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。
部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。
盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲――。
この事件を解決して古典部の知名度を上げよう! 目指すは文集の完売だ!!
盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに……。
大人気〈古典部〉シリーズ第3弾!

■感想
率直な感想を書くと、まず、面白かった。
つくづく思う。今現在で言うならば、自分の一番好きな作家さんは米澤穂信さんではないかと。

今回の話は古典部の面々全員が語り手となり物語が進んでいく。
各節の最初に付けられたトランプのマーク、最初は気づかなかったけれど、その内にそれぞれのメンバーを表しているということに気がつきます。
」を見たら折木のターンだとテンションが上がったりするわけです。これはなかなか面白い趣向でした。

折木に関してはこの〈古典部〉シリーズの主人公なので、前2作でも多く語られていた、というよりは彼の視点で物語が進んでいたので出番は多かった。なので今作においては折木は出番が減ったという印象を受ける。
そんな折木とは対照的に俄然出番が増えた千反田、里志、伊原の3人については新鮮な発見があって面白かった。

千反田については案外イメージ通りと言った感じ。
けど、里志、伊原については前2作よりもずっと内面に踏み込んで描かれていたのが面白かった。
イメージと全然違うということはなくて、良い意味でそれまで描いていなかった内面へ踏み込んだことでより二人の魅力が増したように思う。
冷静で自他ともに厳しいしっかり者の伊原が漫研の先輩方に利用されていたりと意外な描写がさり気なく入れられているのが可笑しい。

千反田の少々ずれた感覚が可愛すぎる。
前半にブレイクダンスの実況をしているシーンとか、かなりハイテンションになりながらもダンサーの髪の毛の心配をしている辺りどういう視点なんだと可笑しくなってしまう。
お料理バトル・ワイルドファイアのシーンの楽しさも尋常じゃない。メインは古典部の3人の料理バトルを描きつつも、その他参加の面々のぶっ飛び料理っぷりの実況が楽し過ぎます!
小説で笑えるなんてことあるんだなぁとつくづく感心させられる。
前作にも登場した女帝・入須先輩が千反田に教える頼みごとの極意は女子必見のスキルかも。
読みどころは目移りするほどたくさんあってホントに面白かった。

僕はアニメ『氷菓』は見てないですが、この作品がアニメ化されたらかなり楽しい作品になるのではと思います。
第1作『氷菓』はアニメにするにはおそらく地味な作品で、第2作『愚者のエンドロール』はミステリー要素が強く面白いですが、生徒の推理発表がメインの展開というのは、ぶっちゃけアニメとしてはどうなのかという印象が拭えない。
けれどこの『クドリャフカの順番』は完全にアニメ向け作品でしょう。

あとがきで著者米澤穂信さんもずばり内容を言い表していると語っている文庫版副題の「Welcome to KANYA FESTA!」。
文化祭の楽しさがそのまま凝縮された本作、本当に楽しかった。
ワイルドファイアで折木が部室から助け舟を投げるシーンとか(言葉のままの意味)青春してるなーと微笑ましくなる。

ただひとつだけ、今回の『クドリャフカの順番』は、古典部シリーズ3作中で最も折木の推理というか、物語の真相が腑に落ちないという点が少しだけある。
おそらくこれ、読み終わる前に自力で真相を予想できた人っていないですよね。
ミステリーでそれってどうなのという印象もなくはないけど、ま、面白かったので良しだ。


書名:クドリャフカの順番
著者米澤穂信
ジャンル:小説(日常ミステリー/青春)
メモ古典部シリーズ第3弾
おすすめ度★★★★


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