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永遠の王 / T.H.ホワイト

2007-03-07 00:00:06 | 読書

今回の記事は『永遠の王』です。著者はテレンス・ハンブリー・ホワイト。訳者は森下弓子さんです。
この小説で描かれている物語は、伝説のアーサー王の物語。
円卓の騎士や聖杯伝説。これらの言葉を聞いた事がありますか? これらはアーサー王伝説の一端です。
『永遠の王』は、アーサーの送った波乱の人生を、胸躍るファンタジー要素やユーモアを交えつつも、深い人間ドラマとして仕上げられている名作です。


■内容紹介
少年の名はウォート。孤児だったが、フォレスト・サヴェジ城の主、サー・エクターに引き取られ、すくすくと育っていた。
サー・エクターにはケイという跡取り息子がいる。ケイはいずれ騎士となり、ウォートはその従者として一生を過ごす。それが彼の運命のはずだった。
しかし! 森の中で時間を逆に生きる魔法使いマーリンと出会った時、彼の運命は大きく変わっていく。
マーリンは彼が何者なのかを知っていた。
そう、この少年・ウォートこそが、イングランドを統べる伝説の王、キング・アーサーとなるべく宿命を背負っていたのだ!


■感想
アーサー王伝説。これが一体どんな物語なのか知っていますか?
キング・アーサー、マーリン、ランスロット、ガウェイン、アグラヴェイン、ガエリス、ガレス、モードレッドなどの人名や
円卓の騎士、聖杯探求などのキーワードは聞いた事があるんじゃないでしょうか。
僕もこれらのキーワードについては耳にしたことがありました。
(ゲームやマンガ、映画などのいろんな作品でよく使われてますね)
だけど、キーワードを知っているというだけで、物語の内容については知りませんでした。
それで、とても興味が湧いたので、この小説を読むことを決めました。

この『永遠の王』ですが、とても長い小説です。
おそらく僕が今までに読んだ小説の中で一番長かったんじゃないかと思います。
小説本編の総ページ数は1000ページを軽く超えています。すごいボリュームです。
その為、読み終えるのにえらく時間がかかってしまいました。
僕の場合ですと、1ヶ月ほどかかりました。
(とても遅い僕の読書ペースの場合です)
読もうって場合には、けっこう気合が必要かもしれません。
だけれども、この小説の面白さは本物でした。
魅力的に、アーサー王と彼を取り巻く人物が描かれていて、物語にすごく惹き込まれました。
今までは、海外小説って少し敬遠していた感があるんですが、この小説を読んで偏った思いが吹き飛びました。
日本人が読むと、何だか変……、っていう表現は無くはないんですが、そんな事が気にならない位、物語が面白かったです。

『永遠の王』は4部構成(あとがきを読むと実は第5部もあるみたいなんですが)の物語で、上・下巻の2冊に分かれています。
でですが、上巻と下巻で受ける印象がまるで違います。

上巻はウォートと若きアーサー王の物語。
(こんな書き方すると誤解するかもしれませんが、ウォート=アーサー王ですよ。少年時代はウォート、王に即位してからはアーサーと名前が変わります)
少年時代の話は、ファンタジー色が強くて読んでいてワクワクします。
マーリンの魔法によりウォートが様々な動物に姿を変え、動物達の暮らしを体験するというお話が主です。
ここでウォートは実に様々な世界を体験します。

下巻はランスロットとアーサー王、円卓の騎士達の物語。
上巻とは一転し、愛や欲望、理想と現実、そして様々な悲劇が絡んだ深い人間ドラマへと変わっていきます。
悲劇の物語は読んでいて悲しい。だけど、とても惹かれる内容です。
最後まで読み終えた時には、深い感動と満足感が得られます。

物語の面白さだけでなく、登場人物たちの魅力もまた、この小説の大きな魅力のひとつです。
特に好きな登場人物たちについて簡単に書いてみます。

・アーサー(ウォート)
マーリンの教えにより、優しく偉大な王へと成長を遂げます。
慎み深く、全ての騎士を愛し、信じるその姿はとても魅力的でした。

・マーリン
時間を逆に生きるという巧みな設定が効いてます。マーリンにとっての出会いは、実は別れに等しいということで、ウォート(アーサー)との出会いのシーンからして少し切なさ漂う不思議な感じがしました。
人物的にもとても魅力的です。ロード・オブ・ザ・リングの灰色のガンダルフや、ハリー・ポッターの校長先生みたいなイメージです。

・ランスロット
円卓最強の騎士にして、アーサーの最大の友。
そして、アーサーの悲劇の一因を作ってしまった人物。
アーサーに対する尊敬の思いは本物である為、めちゃくちゃ苦悩します。
一番純粋な人物なのかもしれない。
アーサー同様、魅力の高さはものすごいです。

・ガウェイン
アーサーやランスロットと同じくらい、好きになりました。
途中まではそうでもないんだけれども、最後に彼がとった行動が全てを変えた。
ガウェインの性格を知っているだけに、すごく心を打たれました。

他にも魅力的な人物はたくさんいますが、細々してしまうので、ここらで切ります。

現在から過去を振り返るという変わった書き方(○○の時代は××であったのをご存知だろうか? みたいな感じの文章)や、
やたらと長い情景描写があったりと、不満な部分もあるにはありました。また、
「・・・・・・・ ←カギカッコ閉じがなく
「・・・・・・」 ←同じ人物の会話が続く。など、謎の書き方もあり、少し混乱する箇所もありました。

でも、描かれている物語はものすごく面白かったです。
おススメの本です。

(追記:『永遠の王』は残念ながら、現在は絶版してしまったみたいです。その為、bk1では買えません。Amazonのユーズド商品でならまだ買えるようです)



『永遠の王』 / T.H.ホワイト / 創元推理文庫
ジャンル:小説(ドラマ/ファンタジー)
メモ :絶版
おすすめ度★★★★☆

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