今日は前坪の付け方についてご紹介したいと思います。
一般的な坪付けは「かぶせ」と言われています。由来は鼻緒の「矢」に坪をかぶせるように付けるためお店に出回っているほとんどの草履が「かぶせ」で坪付けされています。
次は「通し坪(坪通し)」です。はな壱では「通し坪」と呼んでいるので、以下は「通し坪」とします。
そうなんです前坪が矢を貫通しているが、おわかりいただけると思います
「通し坪」の起源は、おそらく男物鼻緒ではないかと思います。南部畳表に白革鼻緒をすげた雪駄は、正式な場所に履いていく男物礼装履物の定番数十年前、関西地方の老舗メーカーが、その鼻緒を女物に流用し密かな人気となり、今日に至っています。
初めて「通し坪」を見た時、正直ビックリしました
鼻緒に穴を開けて、坪を突き刺して、坪付けしてるの
斬新なのは勿論のこと、それより何より無茶なことするなぁ~と思いました。でも、それが不思議なことに見慣れてくると趣があるというか、落ち着いた感があるというか、格好いいなぁ~と思うようになってきました。見た目のインパクトだけではなく、実は足の甲にフィットするように、ちゃんと計算された形状になっており、履き心地がとっても良いのです
それでそれで・・・ここからが鼻緒職人の本音なのですが
「通し坪」は本当に本当に手間がかかるのです
まずはじめに専用の小刀で穴を開けます。穴を開ける位置を間違えると取り返しがつかないので慎重に穴を開けます開けた穴に坪を通し、坪付けをします。その後に「曲げ」の工程に入るわけですが、この「曲げ」も一筋縄ではいかないのです通常とは違い「爪曲げ」と言われる男物仕様で仕上げるのですが、これが何と言っても一苦労ひとつひとつ指先と爪を使って形を整えていくのですが、通常の「曲げ」の何倍も時間がかかります。本当に職人泣かせの鼻緒なのです
今日現在、関東地方で「通し坪爪曲げ」が出来る職人は私を含め2~3名ではないでしょうか。以前はもっといたと思いますが、皆さん高齢で辞めてしまったり、お亡くなりになったりと・・・。全国的に鼻緒職人の数も右肩下がりですが、今いる職人の中で、さらに「通し坪」が出来る職人の数は、本当に少なくなってきているのが現状です。もし、お店等で「通し坪」をご覧になる機会がありましたら、とても希少価値のある鼻緒であることを思い出していただけましたら幸いに存じます