育児休業 復帰しやすい環境を+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
育休中の社員が、復帰した社員と交流する住友生命のパパママランチ=東京都中央区
育児休業中の社員と会社との接点を作り、復帰しやすい環境を作ろうという取り組みが広がっている。子育て中は会社とのつながりが感じにくくなりがち。育休から復帰した社員との交流の機会を設けたり、育休中にスキルアップの機会を提供したりする企業も増えている。(油原聡子)
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「先輩」と交流
「思っている以上に周りの理解があるから大丈夫」「仕事があることで育児の時間を大事にできるよ」
昨年12月、住友生命(大阪市中央区)の東京本社会議室に子供連れの女性社員ら約30人が集まり、お弁当を食べながら情報交換した。
同社が年3回行っている、育児休業中の社員と育児中の社員が交流する「パパママランチ」だ。話題はもっぱら復帰後の働き方。
4月に復帰予定の大阪本社の宮脇麻里さん(26)は「実際に復帰した人の話を聞けてよかった。自分が思っている以上にがんばれそう」と、ほっとした表情を見せる。
同社人事室の担当者は「育児休業中は会社とのつながりがなくなりがち。社会からの疎外感を感じることもある。復帰した社員と交流することで、復帰後の働き方がイメージでき、不安の解消にもつながる」と説明する。
成長して
住友林業アーキテクノ東海センターの後藤育美さん(33)は平成23年8月、長女の志保ちゃん(1)を出産。今年2月中旬、育休から復帰した。育休中に取り組んだのがオンライン講座だ。志保ちゃんが眠っている時間などを利用し、ビジネスマナーやタイムマネジメントなどを受講。後藤さんは「優先順位の付け方を学べた。期限の決まっている仕事にどう取り組めばいいのか、実際の仕事に役立てると思う」と話す。
住友林業アーキテクノが利用したのが、ウィウィ(東京都新宿区)の育児wiwiwプログラムだ。出産がキャリアのブランクになるのではなく、能力アップの機会としてとらえるのが目的で、導入企業は約540社に上る。
スキルアップのためのオンライン講座のほか、不安解消のための育児や健康相談に応じてくれる24時間電話相談、上司が育休中の部下に送る情報交換メールの支援などが受けられる。
オンライン講座は空いた時間に利用できるように、1つのテーマが約15分で終わるよう設計。ワードやエクセルに加え、語学や資格など常時100以上の講座が用意されている。
ウィウィの山極清子社長は「子供を産むと地域の人などいろいろな人とかかわる機会ができ、さまざまな価値観に触れることで人間としての中身が厚くなる。人間力がアップして育休をチャンスに成長した社員が戻ってくれば、企業にとってもメリットは大きい」。
育児休業者への制度は整ってきたが、企業内での意識改革は遅れている。第1子出産を機に6割の女性が退職するという。山極社長は「仕事と育児の両立への意識づけで不安が解消されれば、復帰後に成長し、戦力化するチャンスにできる」と話している。
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■復帰後も社内SNSで情報交換
育児休業から復帰した社員の孤立化を防ぐ取り組みも行われている。
サッポロビール(東京都渋谷区)は、子育て中の女性社員同士が情報交換できるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイト「HOP POP★トーク」を平成23年10月から開設している。子育て中の女性社員のうち半数超の約40人が参加。時短制度の活用方法など社内での働き方だけでなく、お弁当のレシピや帰宅後の時間の使い方などプライベートな情報交換も行われている。
同社は、社員約2200人のうち女性社員300人弱。地方の事業場では子育て中の女性社員が少なかったり、いなかったりするケースもある。人事総務部の小笠原恭子課長代理(39)は「同じ働くママでも会社が違えば状況も違う。SNSにつながることで悩みを分かち合え、励みにもなる。社内のネットワークも作れる」と話している。