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北朝鮮 挑発は何の利も生まぬ

2006-07-09 13:57:03 | Weblog
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北朝鮮 挑発は何の利も生まぬ

 「最悪の関係を超え、対決局面に入っている」

 日本との交渉責任者である宋日昊(ソンイルホ)大使が訪朝した日本の記者団に対し、そう語気を強めた。もともと悪い米朝関係よりも険悪なのだという。

 北朝鮮メディアが日本を「100年の宿敵」だとか「衝突前夜の危険なところに向かっている」とののしることはままある。だが、外交の当事者が公の場でそう吐き捨てるのは尋常ではない。

 日本が国連安保理で素早く決議取りまとめに動き、包囲網が狭まりつつあることへの焦りと怒りの表現なのだろう。北朝鮮が直接交渉を望んでいる米国はさらにつれない態度だ。激しい言葉の裏にはそんな手詰まり感もありそうだ。

 日本はミサイル発射を受けて、北朝鮮の貨客船、万景峰号の入港禁止など厳しい措置をとった。これに対し、宋大使は「言語道断だ。破局的な結果を招きかねない」と語った。北朝鮮外務省も「より強硬な物理的行動をとらざるをえない」と表明している。

 自ら勝手に危機を高め、責任は他人に転嫁する。いつもながらの恫喝(どうかつ)外交だ。

 たとえ日朝関係が「対決局面」だとしても、そんな状況を招いたのはいったいどちらの責任か。

 横田めぐみさんの夫とされる金英男さんが今回、日本の記者団と会見した。写真を見せながら、めぐみさんとの新婚生活を語った。日本の厳しい視線を意識し、釈明の意味も込めたのだろう。

 ただ、「めぐみさん死亡」の根拠を尋ねる記者団に、英男さんは「夫の私が話しているのに、ほかに何の物的証拠がいるというのですか」と色をなした。

 英男さんの苦境は想像できるにせよ、日本側を納得させうる新たなものは何もなかった。

 日本と北朝鮮とは、もう半世紀以上も敵対し続け、信頼を築けないできた。全く異常な関係である。

 それを普通の関係にもっていくにはどうすればいいのか。その道筋を示したのは4年前の日朝平壌宣言だ。日本が植民地支配を詫(わ)び、国交を正常化することが盛り込まれている。

 われわれも期待をかけてきた。だが、その後の拉致問題の展開、核開発などを目の当たりにすると、とてもこのまま国交を結ぶことなど考えられない。

 そして今回のミサイル発射だ。日米英仏は、国連安保理に北朝鮮への制裁も可能にする決議案を出した。北朝鮮は、中国やロシアの賛成は得られまいと、たかをくくっているかもしれない。

 だが、誤解してはいけない。国際社会は今回の無責任なミサイル発射に怒り、平和への悪影響を懸念している。その点では一致しているのだ。挑発を続ければ続けるほど、北朝鮮の窮状がさらに深まっていくだけである。

 激しい表現や挑発は何の利益にもならない。脅しをやめ、誠実に国際社会と向き合うことだ。