Humoreske(小噺ひとつ)

ここでおひとつ、小噺をひとつ。
フモレスケはユーモアからきたことば。

まなでし

2009-01-12 | 日々の出来事
叔母の門下の発表会を手伝ってきました。

3歳から15歳まで。40人近い
究極に若いアーティストとのおつきあいです。

白いバミリのテープに
スヌーピーの絵を描いて
「このスヌーピーのところまで来たら
 前をみておじぎを「1,2,3」って
 ゆっくりするんだよ。それから楽器をもって
 赤いテープにあんよを乗っけてね。」

と世界一易しい現場説明を行って、
ステージ裏では、
・最初に弾く曲の確認(3歳児は気分で好きな曲から弾いちゃう)
・ズボンからはみでたシャツを入れる
・さがった靴下をあげる。
・立て結びになったドレスのリボンをなおす
・調弦の確認
・鼻水が出た子の鼻をかませる
・よくわからん子どもの薀蓄をよく聞く
などを、繰り返し繰り返し。

しかし
かわいいもんです。

ちびっこアーティストが
親の手を離れて、ステージ上で1曲(ないしは数曲)を
弾いて帰ってくるだけのことですが、
年を重ねて「自意識」が芽生えるにつれて、
ちっちゃい胸をどきどきさせて胸いっぱいに
しているのだと想うと、
「のびのび弾いておいでね」
「たのしんで元気に弾こう!」
「よく弾けたねー!」
などなど、トイトイトイの代わりにかける言葉には
より一層気持ちがこもって、母心(笑)

小学校2,3年の燕尾服やネクタイをしめた
しょうねんたちが
「ぼく、きんちょーしてきたかも」
「ぼくも。」
「てに、あせかくんだ。」
などと会話しているので、
「ハンカチ貸してあげようか?」
というと
「いーの、いーの。ズボンでふくから。
 またひいてるとき、汗かくし」
って、合ってるんだか合ってないんだか
よくわからん理屈をこねます。

「きんちょー」がこどもたちの間で
ちょっとした大人のステイタスみたいに語られてて
おもしろい。

4年生を越えていくと、ほんとに「緊張」してる
んだろうなってことがよくわかってきます。
練習して臨むも練習しないで臨むも、
舞台裏まで来てしまえばもう逃げも隠れもできません。
こどもたちの心の中で、緊張と演奏のよろこびなのか
くるしみなのかわからないけど、「じょうずに弾く事」
「おとうさんや、おかあさんのにこにこ顔を見たい気持ち」
なんだか、そういうものを感じるようになります。

中学生ともなれば、受験を考えてる子や、
とにかく続けることに意義があると部活と両立する子など
スタイルも様々。シリアス度が増します。

泣いて帰ってくる子もいます。
自分も、3歳から高校生まではこうした発表会の舞台に
立っていた事があったわけで、今目の前にいる
子どもたちのようなその年齢年齢の
気持ちを味わってきました。

やめようと想ったけど、いまや、
やめられなくなっちまった私としては、
「やっぱり舞台って楽しいよね。」って
どこかの年齢で、ちびっこの時のようにもう一度
気づける時が来てくれたらなぁと思います。

こどもは本当にいろいろ。
大人顔負けの「音楽性」をにじませる子もいるし、
野球の方が好きとか、でも、ヴァイオリンもやめたくないとか
みーんな、愛らしいです。

こどもにとっては大人はみんな「せんせい」なので
「ねーねー、せんせいもヴァイオリン弾くの~?」
と聞かれて「うん。弾くよ」というと
「ヴァイオリンのせんせい?」と聞かれて
「ちがうよ。」とこたえると「じゃ、なに?ただのおとな?」
と言われて、へぇ、ただのおとな・・・かもなと
笑いました。

でも、じつは、じつはじつは、
私、大学時代に、それこそ叔母の門下の5歳のレオくんという
男の子のヴァイオリンのレッスンをお手伝いしていたことが
あって(家庭教師でヴァイオリンのおけいこも見るみたいな)
レオくんには「はるかせんせい」と呼ばれています。

ええ、あれから10年。
声変わりして大きくなって、
「ふもせんせい、ぼくきょうおたんじょうびで
 ロボコンかってもらって・・・うんぬんかんぬん」と
レッスンを先送りにしようしようとお膝の上に座って
いた少年が・・・15歳ですよ。。。がーん。

今年4月から、カナダのハイスクールに留学
しちゃうレオ君。やめそうになったこと、数回。
だけど、最後の発表会、かなりがんばりまくって、
「フランクのソナタ」を弾きたいと熱望し、
そーんな大人っぽい曲と言われていたのを、
無理と言われても断行!!

気持ちをこめて弾くというのが、てれくさい年頃の
ようでしたが、、、本番は、なんとも、彼なりの
気持ちのこもった熱演で、

5歳当時教本の中の「主人は冷たい土の中に」
「は、たい、の、に」とひらがなだけを読んでた子が・・・
ザイツのコンチェルトで、重音になると、
「弾きたくない。疲れるから」と座り込んでた子が・・・

私の愛して止まないフランクのソナタを弾いております。

うるうる。。。(笑)となったわけでした。

「せんせい、またヴァイオリン、おしえて!」

ってさ。ういやつじゃ。(笑)


「多感」ってコトバが本当に子どもにはぴったりだなぁと
思います。ヴァイオリンのおけいこっていう、ある意味、
最初は親のしいたレールのシステマティックな世界に、
「この曲が好き」とか「発表会楽しかった」とか
「しっぱいしたけど、れんしゅうよりよくできた」とか
そういう、子供の心の中で、いっぱい紡いでできあがってる
理屈の中でのきもちや出来事に触れるとスゴイナぁって
思います。

私も練習はダイッキライで、何度も何度も
やめようと思って、気がつきゃ四半世紀以上、
この楽器と付き合ってるわけです。あいにく、
自由自在に扱えるわけではないけれども、
この楽器にだけ乗せられる気持ちとか、
「奏でる」って営みからつながる人とのかかわりとか、
仕事の合間合間で、相変らず大事です。

ここのところ毎年、手伝わせてもらってますけど
また、来年、こどもたちが「続けて」いて
くれたらなぁと思う次第であります

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