Humoreske(小噺ひとつ)

ここでおひとつ、小噺をひとつ。
フモレスケはユーモアからきたことば。

14歳と64歳の出会い

2008-01-05 | 音楽♪命!
昨夜から何だか不思議な音楽体験をしている気がします。
昨日の場合はテレビでしたが・・・。

の○めを、途中から見て、、、
実はちゃんと見るのは(途中からだけど)初めてでしたが
クラシックの指揮者のコンクールなんて地味でわかりにくいもんを
話題にこんなドラマにしちゃうなんて@_@と、
カルチャーショック。しかも原作は漫画で、それを
クラシックに興味がない人も見てるって・・・


日本のクラシック音楽って、すごく不思議だ。

一方の公共放送においては、、、
Y.Uさんと、T.Tさんと、H.Nさんの
「日本の大御所・・・」トリオの様子をやっていた。。。
なんというか、、、公でコメントするものではないと思うので、
控えるけれど・・・森光子のでんぐり返しを髣髴とさせた。。。

日本のクラシック音楽業界って、すごく不思議だ。

その後には、同じチャンネルで、ベルリンフィルから
ライス○ーがやってきて、日本の奏者とブラームスの
クラリネット五重奏曲を共演。。。
T.KさんにA.Mさん、N.Kさんに、敬愛するチェリストのN.Yさん。
皆室内楽奏者として、本当に力のある人たちで、音楽も面白いし
セカンドヴァイオリンや、ヴィオラの「技」というか、「役割」
的なものは、なんだかとても日本人的な気がした。
ライ○ターをあくまで主役としながら、彼らは彼らの仕事をする・・・。
こういう職人的室内楽奏者は日本ならではじゃないかしら。。。

さて、今日は八王子まで演奏会に出かけてきた。
(遠い・・・笑)。。。

このブログにも何度も登場してますが、ピリスの演奏会に
一緒に出かけたSくんが、正月返上で室内楽初挑戦。
シューベルトの弦楽五重奏曲を演奏するというので
聴きに行ったのです。
チェリストA.ムニエが、チェロのセカンドに入った他は
若手奏者ばかり。Sくんがファースト、Sくんのひとつ上で、
Sくんがコンクール1位の時に、2位だった(しかも
運命的なことにこれが2回も!)Mくん(15才)、芸大生の
ヴィオラの女の子、チェロは、カサドコンクールで最高位だった
外国人の21歳の女の子・・・。

Sくんは14歳。ムニエは、64歳(多分)
年の差50歳。。。
しかも曲は、シューベルトの最晩年の半ば
天国に半分足つっこんだような尊い曲・・・。
その昔、私の関わっていた音楽祭で課題曲に取り上げた時、
とってもよく弾けるヴァイオリンの人が弾いたけど、
結局上手なだけで、やっぱりその精神性とか、天国を仰ぎ見る感じとか、
人生とか、情熱を秘める心とか、そういうものはマッタク
感じられなくて残念な想いをしたこともある曲、、、
一方、精神性だけ、なんとなく分かったつもりでも
技術的にアンサンブルはとーーっても難しい上に、ありえない
フィンガリングやら、音色作りに苦悩する超大作で・・・
私も、一体彼がどうやってこの曲に向かうのか、想像が出来なかった。

11月に会ったときには「長くて、意味がわかんないんです。
一人で弾いてると、シューベルトってどうしてこんなに同じこと
何回もやるんだろうってわからなくて」と抹茶ラテを飲みながら
言っていた彼。。。

うーん。。。私も、ちょっとばかり感じる気持を持ちながらも
説明できるほどの哲学者でも音楽家でもなくて、それって、
年齢のせいなのかなぁなんても思っていた。。。
天窓から一筋の光差し込むような、、、冗長だけれども
決して同じではない世界。誇示ではなくて、優しく深く
死んじゃう前に見る花畑のような世界(見たことないけど)。。。

どうやって言葉にしたらいいのかわからないのと同じで、
どうやったらそれを音楽として表現できるのか、私には
分からないわけで、、、2度もこの曲に立ち向かってるけど、
悉く玉砕しているし、、、スコアの果ての果てまで見切ったと
思っていても聴くたび、読むたびにまだまだ発見のある曲で・・・

なんだけど、今日のSくんの作り上げたシューベルトの世界は
「わかって」いた。「わかんない」と言っていた抹茶ラテを
飲んでいた彼とは50歳くらい一気に大人になってしまったんじゃ
ないかと思うくらい・・・。最初の一音から、和音から、旋律から、
転調から、ムニエが、65年かけて作り上げてきたものを
全身で受信して自分の音楽と融合させて生み出した世界。。。

おじいちゃんの戦争体験を聞いて作文を書く・・・じゃないけれど、
それの究極の芸術状態を彼はやりのけていたのだ。。。

ものすごく集中した繊細であっという間に壊れてしまいそうだけれども
しなやかで強い空気がそこにはあって、巨匠の空気を
若い運動神経を持ったヴァイオリニストが受け取って表現
「しちゃって」いた。。。なんていうか、、、びっくりと
ショックがおりまざった感じ。。。

えっとー、こんなかんじで、いや、ええと、こんな色で、
とかなんとかあれこれ持ち合わせの色鉛筆全部出し尽くしても
表せない空気を彼はちゃんと体現していたのだ。

隣で弾いてたMくんは、Sくんに負けない力を持っていて、
Sくんの音楽に時々対立したり、時々大人に寄り添ったり、
どこまでもユニゾンだったりリーダーシップを発揮したり
私はこういうセカンドヴァイオリン、好きだなと思ったんだけど

なんだろうなぁ。。。

ふたりとも楽器を下ろした途端、普通の仲良し少年で、
セピア色のような、真珠色のような、言葉にしがたい
空気を発していたのに、終わったとたんにすっきり真っ白
ぱりっと洗い立てのワイシャツみたいな顔して無邪気な
話をしていて、おもしろいったら・・・。

一方のムニエ氏は、自分の伝えきった音楽世界を
見事に表した若い才能に触発されたか、途中からどんどん
若々しい音楽というか、しかけをするようになって来て、
オイオイオイオイと、思わず微笑んでしまった。。。

音楽は必ずしも年齢じゃないらしい。。。
しかも、決して能書きでもなくて、、、。。。
そして、それは、ロンドンでもニューヨークでもパリでもなく
八王子で起こったのだ。。。


日本に限らず、音楽って不思議だ。。。


味と音楽は空気。。。
音楽は人?

百の言葉も千の言葉も万の言葉を並べても
表現しきれないものを表しつくす音楽は、、、
2008年になっても、、、終わりがなくて、答えはひとつ。


「モーツァルトがわからないんです」と言っていたSくんは、
シューベルトの得がたい世界観を表現し終えて、メラメラでも
メロメロでも、「私!」でも華美でもない、ノーメイクの
天国の神様の鼻歌をなんだかつかみかけてるんじゃないかと
思った。もちろん、彼は「わかりました」とかは言わないけど。。。


日本の音楽界は不思議だ。。。


こんなことがたった2日の間に起きている日本の音楽界を
知りたいと思う欧米人がどれくらいいるかしら。。。
いや、日本のクラシックファンがどれくらいいるかしら。。。

「流行」のクラシック音楽
「伝統」のクラシック音楽
「文化」そのもののクラシック音楽

自分が求めるものが何か、
何を生み出したいか、何を誰と作り出したいか、

パイオニアと思われる時代の人たちとのコラボレーションは
楽しい。。。その仕事や音楽へ対する魂のようなものを
リレーするのは、最高の喜び。。。

50歳上でも60歳上でも、同い年のトモダチよりも
感じあえる何かを持っていることがあるということ。。。

それってなんだか、あったかくってほほえましくて
シアワセな「時代」というか「歴史」
ってもんだなって感じがした一日だった。。。

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