Humoreske(小噺ひとつ)

ここでおひとつ、小噺をひとつ。
フモレスケはユーモアからきたことば。

シューマンに狂う。

2009-01-14 | 音楽♪命!
シューマン、好きだと言うと、
頭がイカれてるとか言われます。。。

たぶん、そうです(笑)。

一般の基準とか分かりませんけど、

「ふっ」と沸く感情を、自分はどうも知ってしまっています。

心のいちばんかゆい部分に届く和音を、
シューマンやブラームスは持っていると思います。

そしてブラームスのそれは頂点を知ることなく
憧れのうちに終わり、シューマンのそれは、
不規則的に現れては、短編で、さっと違う登場人物が
現れてくるかのように感じます。

来月末の室内楽演奏会に向けて、
[op.44]シューマンのピアノ五重奏に
立ち向かっています。
冒頭がきわめて印象強く、そこをあまりに
勢い良く皆が弾くもんだから、ラジオ体操的に
思われることも・・・

しかし、早々に登場する主題は、
頬を紅潮させるような、
甘美で、とろけるような、
息をするのも忘れてしまうくらいの恋心のようで、

展開部は一転、
逃げ惑う姫(ピアノ)を怪しく襲う魔の手(弦4名)、
音の多さはピアノの1人がちなんですが、
その協奏曲的なところで、効果を表す弦、

しかし、魔の手にひるむことなく勝利する「Power of Love!」で
再現部。

登場する第2主題は、1回目よりもより「パステル調」。
昨日、共演の男性陣に、「そこは、ラデュレのマカロンの
ような色づかい!!!」って言っても誰もわかっちゃ
くれなかったけど、淡いピンクや、やさしいオレンジ、
くるまれるようなクリーム色の世界。香りたつような、
思わず頬ずりしたくなるような質感の音楽・・・

ね!!1楽章だけで、こんなにも絵の具をひっくり返した
かのような色彩感。物語の音楽!!いとおしい。
いとおしくてたまらない。

2楽章は、もっともっと明確で、陰陽、光と翳、
生と死、善悪、狂うほどに遠くかけ離れたものながら
紙一重に存在しうる2つの世界を、、、
弾いているだけで、、、ちょっとトランス状態になって
しまいます。。。

ぼろぼろの服を着込んだ、全てを失った男が、
一筋の光の中で、自分の生きてきた道、冒した罪?に
ついて、たどたどしく語る。。。

そこにエオリアンハープの調べにあわせて、
その罪を聞き入れ、その人生の哀しさや、苦しみを
「我がことのように」聞き入れ、寄り添う何かが
登場する・・・。共に、泣き、共に罪を飲み込もうと
してくれるような何か・・・。

けれど、やはり孤独はより濃く孤独になり、、、
もう声にすることも出来ないのに、ときどき、嗚咽だけが
残された力のように、語調を強める・・・。もう消え入りそうな
心音・・・。。。自分の生きてきたことが何だっかなんて
答えを得ることもできない、哀しさ、憤りが
噴出し始める!なぜ、そこに存在したか、最後の
自分の影をそこに刻み込もうとする、ものすごく「現実」の
部分を、ヴィオラが、モノローグ・・・。疾走する悲しみ・・・。
代えようのない現実を無機質にヴァイオリンとチェロがその上で
かけていく。

再び包み込む明るい光、それはもはや、現実なのか
夢なのか分からない。あちらの世界の光で、全てを
許す音楽なのか、それともすべて終わったことを、
ただひたすらに、光が包み込み、その光の強さで
翳を消してしまっているだけなのか、そこはわかんないのだけど・・・

その光の後には、もはや、亡骸すらも、強い魂すらも
残っていないの。。。その人間が存在した場所を、
北風に舞う枯れ葉だけが、ただ、すっすっと通過するだけ。
だれもが皆忘れてしまうなかで、一瞬だけ金色の
光が差し込んで2楽章が終わり!!

3楽章はねぇ・・・挑戦的!ロケット花火で
こどもたちがオトナを次々と脅かしていくような
祭!その中で、泉湧く庭園で、愛を語らう男女。
そしてまた駆け抜ける場面!ギャロップが走り、
女性たちがコロコロと笑う。広場の真ん中では
踊り自慢たちが輪をなしてダンスを始める。
そこのなかにも、踊りで互いを魅了しあおうとする
男女の駆け引きが、ネコの声のように登場する。
鳴り響くタンバリン。再び、花火!祭りはクライマックスへ!
表情豊かな人間の顔が次々と浮かび上がってきます!
さぁ、4楽章が来るよ来るよと終わり・・・

4楽章はなんだかやたらとミリタリー。(笑)
ホルンのファンファーレに導かれて、
王族か貴族の登場?なんだかやたらと
登場人物のキャラクターがはっきりとしてきます。
フィナーレに導かれるに従って、再び1楽章の
勝利の歌が聞こえ始める!
しかも、フーガで!(夫婦でバッハの対位法勉強してましたから!)
踊り自慢も、王族も貴族も、登場人物が全て
舞台に上がり、勝利を祝う。聴こえてくる
天上のエオリアンハープ、あれは死だったのか、
絶望だったのか、そんなことはどうでもいい、
聴こえるのはミリタリーの太鼓(EsとBの五度の和音が
低音で響く)と鐘の音。。。

結婚して、室内楽の年と言われるほど充実していた
時代のシューマンの勝利の歌。
シューマン自身も一員であった、ダヴィド同盟の勝利か、
それともフロレスタンの勝利かわからないけれど、
高らかに歌われる「愛の勝利」の歌。

結婚裁判に勝ったから?(笑)わからないけど。

ダメなんですよ。。。
シューマンの音楽には、全てに物語が
勝手に「見えて」来てしまうの。別に作ってるわけ
でも、考えているわけでもなく、この人が音にした
物語の登場人物が、形を成してドンドコ
楽譜から出てくる感じ。。。或いは、自分を
役者にさせるような感じがあって。。。



やいやい、といざ、ほんとにほんとの勝利で
愛は勝つに大喜びしきれるかと言うと、どこかで
弾き終えた後に、きつねにでもつままれた感が
漂うのもシューマンの音楽のふしぎなところ。。。

弾けば弾くほどに、物語も変化するし、
楽器の役割も変化する・・・。そういう果てしない
妄想!?の中で、コントロールして演奏する難しさもあります。(笑)

当日は、ブラームスのトリオも弾くんだけど、
同じようでいて、全然違う!
シューマンがファンタジー小説ならば、
ブラームスは人間味のある語り調の小説くらい違う。。。

音符の色も、和音の色彩も、ぜんぜん違うけれど、
ふたりとも「心情」をなぞらえて音楽を作り上げている。

やっぱりこの2人が、最強に魅力的。。。

でも、ブラームスはファンが多いから、任せても大丈夫だけど、
世界中でたったひとりしかシューマン好きがいなくなっても、
最後まで愛しぬいてあげようと思うのでした。

シューマンの音楽を語る私は、すでに相当にイカれてると
思われ・・・


友達がいなくならないか、心配です(笑)。


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