近江商人の「商売の十教訓」 其の四
資金の少なきを憂うるなかれ。信用の足らざるを憂うべし。
信用というのは一朝一夕で培えるものではない。日々の営みを真摯に、
ひたすら真摯に生き続けて、それでもいただくことができるかどうか
もわからない、どんな価値にも換算できない極めて得難いものだ。
偽物はすぐに見破られる。たとえば、事業を起こして汗水たらして、
生きていくためになんとかようよう無理繰り短期の信用を得られた
としても、それが偽物だったらすぐに世間か市場がそれを峻別する。
資金は大切だ。この資本主義社会においては、資金がなければ何をどう
あがいたとしても、できないものはできない。それは自明だ。
しかし、資金を手にして、その資金をてこにして体を大きく大きくし、
たとえ人生を賭した努力をその営みに費やしたとしても、真摯な心を
忘れて偽者の信用しか得られない人生を送ったとしたら、その人は
自分の子孫に対して何一つ残すことはできない。もしもその人の努力
が常軌を逸した激しさを持っていて、その人が子孫に次代への資金を
残すことができたとしても、
人生において真の「信用」を得ることができていなければ、その人は
その「魂」を子孫に残すことはできない。
近江商人 考1 :商売は世の為、人の為
近江商人 考2 :品の如何
近江商人 考3 : 永遠の客