指定席で釣りをする私 向うの空台は親分のもの
ヘラブナ釣りを始めて2年目の秋
私は一人 ホソ 上 に入っていた
そろそろ夕暮れ、ジアイ が来る頃である
10m先・水面スレスレの マチ針の頭程の大きさの ウキの一節を注視している
瞬きもせずに
・
秋の夕暮れ前、のんびり 散歩するには もってこいの季節である
偶々、通りかかった散歩の人、私の後ろで立止り 見ている
「アタッタ!」
反射的に、手がうごく
「ノッタ 」
型の良い 尺上があがった
「今、アタリ 有った?」
「有りましたよ」
「微妙なアタリ なんやなぁ、ここからやと、判らんかったわ」
「ヘラ(のアタリ) は そんなんかいな」
「 ヘェーッ 」
してやったりの私である
冬場 ホソ 下 で フジさん が釣りをしていた
「どない?」
「きびしいですわ」
「今日は竿持って来てないんですか?」
「今日は オフ ですわ」
今日はギャラリーの私
暫らく フジさんの真後ろに立って、彼の釣りを見せて貰う事にしたのである
冬場、喰いは悪い なかなか アタリ が無い
偶に有っても 至極 小さいのである
・・
「!」
フジさん 釣上げる
私は、そのアタリ が 見えなかった
よそ見をしていた訳ではない
同じ様に ウキ を注視していたのである
しかるに ウキ の動きが判らなかった
「今、アタリ 有った?」
「有りましたよ、極々 小さいのがね」
「すごい、名人技やね」
「いえいえ、釣っている者と、後で見ている者との、集中力の違いですわ」
・
このこと、釣り人しか分らない であろう
だからこそ
ヘラブナ釣は おもしろい ので・・ある
「へぇーっ」