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執拗ナ稼動ノ元ニ死ス

2006-02-25 22:32:07 | 




壊れた自動ドアの
絶間無い開閉の向こうで
淫らな髪形をした
お前が笑っていた

可笑しいことなど何も無いのに
嬉しいことなどもっと無いのに
下手な死後硬直の様に
強く釣り上がったお前の口元

ストロボフラッシュの様な
自動ドアのシャッタード
それを前にして
俺は泣いていたんだ
叩き壊そうとして
奇妙な音を立てて割れた人差し指の骨

痛みの為に流れた涙じゃ無かった

俺達はどうすれば
個体を超えられるのだろう
電気系統の異常など
本当は大したことではないんだ

瞳は交錯していたけれど
そこにラブソングは無かった
希望と呼ぶほど楽観的では無く
絶望と呼ぶほど情熱的では無かった
お前の肉体と俺の肉体
違う形をしていることにどんな意味があると言うんだ?

誰もやって来なかった
見事な程に誰も
統率力に欠けたシステムの前で
俺達はヒトラーの様な
閃きを見たんだ

そうさ
銃口を舐めまわしながら逝った
あの
ヒトラーの閃きさ
俺達は決してファシストじゃ無かった

なのに
引鉄は引かれたんだ
銃よりも確実に
弾丸よりも緩慢に

長く
長く
弓を引いては
当ても無く手放す様に
続く自動ドアのシャッタード

ずっと同じ
スチュピッドな雰囲気で
笑ったままフリーズしたお前

ああ
滅茶苦茶に


壊してやりたいよ







甘い珈琲

2006-02-23 19:46:25 | 





生き様は尻すぼみ、どんよりとした夕方の窓の外
古い涙はどうにも始末がつかないものだねぇ
昨日電話がなりましたね、それはそれは懐かしいナンバーから
忌々しいので答えることはありませんでしたが
季節の変わり目の大気は
不安のように不安定
慰めてもらいたくなるほど、人生に希望はございませんでした
そもそも懸命に
消費するものだといった認識でございましたから
昨日は濡れておいででしたね…何せひどい雨だったもの
頬っぺたの濡れようは少し違うようでございましたが
懐かしい音楽でも聴きましょうか?音楽は薬のようなものです
緩和することが目的ならたいていばっちりですよ
手紙が届いていますよ、あなたにも私にも
私は読むかどうかもう少し考えてみないと判らないんですけどね
関わったことのある名前なんて
とても捨てがたいかあるいはそうでないかのどちらかですから
珈琲が落ちたようですね、どうです、飲んでいきますか
そう言うと思って余分に落としておきました
いつもこんな天気だと良いですのにね
当面はダムも心配しなくていいようだし
暑くもなく寒くもなく
ほんのちょっぴり暖かいような肌寒いような
こんな気候の日が一番ですね
どうです、ミルクはは入れますか?
時には、甘い珈琲も捨てたものではないですよ…










時間が過ぎるのを待っている

2006-02-21 21:24:24 | 






時間が過ぎるのを待っている
よどんで、ポカンとして
口を開けて
何かがそこに飛び込んでくるのを待っているみたいに


もちろん魂は常に空腹のままだ

ちょっと過剰かもしれないギター・ソロが、何故かいい感じに脳髄を駆け回る頃、俺は極彩色に輝く絶対的な通行止めを目にする

そういうときに綴られた言葉はその後の心境と上手く噛み合うのさ―我ながら訳が判りゃしないが



つまるところ


どんな世界が覆いかぶさろうと何かほっとさせてくれるような出来事が、近辺にゃ必ず転がっているとしたものだ―それが吊り合おうが吊り合うまいがね

余程の事が無い限りこの世の天秤は
地面と垂直になったりはしないものだ、そもそも
切り出され過ぎた大地はもはや水平という概念を失いかけているし

自分の周辺でやたらと
物事が複雑化したと感じてしまうときには、シンプルになるまで余計な皮を剥ぎ取っていくしかない



呪いだろうが
恨みだろうが

それが真実に見えるのならすがるべきだ…どんな感情にもきっと責任というのは課せられるものだから



あの日夢中になって双眼鏡で覘いたものが
自分の観念となってそこにあった



ありがとう、不確実なパズル
ありがとう、拒否がちな心情


何時でも俺は
きちんと





生き物であったのだ








MAGIC AND LOSS

2006-02-20 23:18:21 | 





36階の閉ざされたテラスに
置き去りにされた詩篇があると聞いたのです
鍵を手に入れる為に
三度身体を汚しました
それは別段悪いこととは思っていません
ヤモリの様な舌の感触が
時折鳥肌を立たせるって位で
だって
エレベーターの扉を開くパスすら
私は
知らなかったのですから

その詩篇について
詳しい事は何も知りません
ただ
閉ざされた場所に読まれない詩篇があると
そう
耳にしただけなのです
それなのに
どうしてでしょう
どうして
それだけのことで
私の胸は決意に震えたのでしょう?
それは運命でしょうか
それとも
度を過ぎた好奇心でしょうか
その詩篇の事を思うだけで
すべてのものが
後ろに追いやられて
背徳的な高揚感すら
私は
覚えてしまうのです
ただ単に
未知だからこその事なのでしょうか?
興味と呼ぶには
すでに背負い過ぎてしまいました
もうすでに
私は
取引を済ませてしまったのですから

エレベーターのボタンはとても柔らかくて
そのせいか
パスワードはとても映えました
モーターのうねりが
下腹部から
私を鈍く突き上げる
ああ
36階の詩篇
閉ざされたテラスの
読まれない詩篇
あなたは
私を待っているに違いない
36階のボタンは
バージンスノーの様でした
愛でる様に押して

私は…


上昇するのです








境界線を

2006-02-17 23:01:25 | 




やわらかに首をかしげた、あのひとは刹那だった

嘘のふりをしながら、本当のことを言って

揺らぎのように笑った、あのひとは本当の刹那だった

ひさかたの呼び出し音に
打ち明け過ぎたあとで
冬の意味に触れたら
指先が軋んだ


『嘘つきばかりの獰猛な道化者、正直さとは厳しさよ』


同じ服ばかり
着るわけにはいかないね、袖口から糸がほどけては円を描く


『厳しさとはナイフの刃では無く、それを握る手の方にあるものよ』


おぉよぅ、女神
もう少し
優しく話しておくれよね
高い跳躍の前には


すべては
深く沈むものだろう


敢えてピントをボカせる写真だってあるものさ

すべてのロックが拳を握る為だけのものではないように


おぅよぅ、女神、あなた
真実とは刹那の域を出ないものさ

狂信者以外に
幸せな者など居やしないのさ
消化しない胃袋のようなそれを
あのひとは満腹と呼ぶのかい
謎かけなんかする気は無いよ
記号みたいにとどめるか、でなきゃ無視してくれりゃあいい


やわらかに首をかしげた、あのひとは刹那だった

そうさ
刹那は
汚ねぇ

もっとも
卑怯な
永遠の手段だ


認める気には
ならないね


ルーレットの文字盤を潰して、玉すら入れずに回す―しいて言うなら



それが
リアルってもんだ