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SS:リレー「ハルヒファクトリー ニュー牧場物語」 第5話

2011年02月20日 18時30分48秒 | ハルヒSS:牧場リレー(担当分)
『こちら』の第5話を書かせて貰いました。 書き手の皆様、その節はお世話になりました



さて、季節は夏真っ盛り。 とは言うものの、この地域の気候は季節毎の変動は少なく、年中温暖なのだが。
イメージ的にはフランスの丘陵地帯と言った感じだろうか。 周囲には俺の牧場の他に、小麦畑やブドウ畑が広がる。
今までならば、爺さん一人で牧場の他に農場の管理・収穫も出来たのだが――

「なあ、ハルヒ」
「何よ、キョン」
「今年の収穫の時期なのだが……ハルヒが農作業頑張ってくれたお陰で収穫が例年の何倍かになりそうなんだ」
ハルヒが気合いを入れて農場の拡張を行ったせいで、農地が従来の5倍以上になっていたからな。
「そこでだ、収穫の時期に俺の家族を呼ぼうと思うが、良いか?」
「ふーん。 所でキョンの家族って何人なの」
「両親と妹と俺の4人だ」
「良いんじゃない。 人手はあった方が良いからね」
それじゃ、手紙を書いて呼ぶとするか。
「所で、ハルヒの家族は?」 聞いた事が無かったからな。
「あたし? 両親とあたしの3人よ」
「連絡は取って無いのか? あ、ハルヒは旅をして回ってるんだから手紙を出しても一方通行だよな」
「そうね。 でも今は此処にお世話になってるんだから、手紙くらい出しても良いかもね」
「……何なら此処に呼んでも良いぞ」
「え?」
「あ、いや。 ハルヒには世話になってるし、ご両親にお礼の一つ位は、と思ったのだがな」
「――考えとくわ」 
今まで元気そうに話してたハルヒが少し俯き加減になった。 この話題はマズかったのか? 話題を変えるか。
ちなみに現在は家畜に餌をやっている所だ。 この作業が終われば夕飯だ。
「あ、ハルヒ、先に帰ってくれ。 夕飯の支度があるだろ」
「う、うん」  俺は引き続き作業を続ける。
 
 
夕飯。 パンとハム、コーンスープとあとは乳製品が並ぶ食卓。
「ねえ、キョン」
「どうしたハルヒ」
「あたしが旅に出てる理由って知ってる?」
「確か、世の中の不思議を求めて~って事だったよな」
「表向きはね。 確かに不思議を探してたんだけど……」
「何か他に理由がありそうだな。 どうした、言いにくかったら構わないが、聞くぞ」
「本当はね、自立したかったの、両親から。 両親の事は好きなんだけど、何か、こう、世話になりっぱなしってのが気に入らなくなったのよね。 そりゃあ子供なんだから親に甘えるのは仕方無いってのは判ってる。 だけど『あたしだって何時までも子供じゃない』って思って。 そして、成長して戻って『あたし、立派になって戻って来た!』って言いたいのよ……只の自己満足なんだけどね」
「そうだったのか。 でも、俺に言わせればハルヒは充分立派だと思うぞ。 正直、羨ましい位だ。 あと、親御さんも心配してるんじゃ無いのか? まあ、何だ、ハルヒが此処に当分住むってなら、手紙出しても返事が来るだろ。 書いてみたらどうだ?」
「そ、そうね。 あんたも書くんでしょ? 食事終わったら早速書くわよ!」
お、心なしか元気になったか。 100ワット……って電気が無いな、ここ。 そう、太陽のような笑顔がハルヒには似合うな、やっぱ。
 
 

一週間後の夕方、農作業を終えた俺は小高い丘から夕日を見つめていた。 此処からの夕日の眺めは最高だ。 俺のお気に入りの景色だ。 そんな時――
「キョン君、手紙よ♪」
「ん? ああ、アサクラか」
「郵便屋さんから預かって来たの。 あれ、スズミヤさんは?」
「先に帰って夕飯の支度だ。 一人の時は夕飯は手抜きだったが、お陰で良い食事にありつけて助かってるよ」
「ふ~ん、幸せそうね」 
夕日を背に笑顔で話しかけて来る。 
「ねえ」
「何だ?」
「スズミヤさんと結婚するの?」  ぶはっ。 
「な、な……何いきなり言ってるんだ!」
「だって、一緒に暮らしてて2人共見てて幸せそうだし。 自然な流れだと思うけどな~」
この会話の流れの方は不自然この上無いけどな。
「結婚、か。 互いに考えてるならしてもおかしくは無いだろうが、まだ判らん!」
「そうなんだ。 あ、神父さんが『結婚式挙げるなら早めに言って下さい』って言ってたわよ♪」
――コイズミの奴か、お節介焼きめ!
 
ウチに戻って手紙を開く。 家族は一週間後に来るらしい。 他の農場は毎年、色々な地方から人手を呼び収穫に対応している。
全国から人が集まって来るのだから、所謂『ゴロツキ』と呼ばれる人間も居そうなのだが、このニシミヤタウンに来る人間は良い人ばかりなのだ。 だから年中平和そのもの。 ろくに事件も発生しない。
よって人手の欲しいこの時期、警察官や神父、病院関係者などは臨時で宿の手伝いや、収穫の手伝いなどをするのが通例らしい。


 
その一週間後、俺の家族がやって来た。
「キョンく~ん! 来たよー!!」 お、久し振りの妹の声だ……だから『キョン君』って呼ぶなよ、マイシスター。
「あ、初めまして。 世話になってますスズミヤハルヒです」
「あら、初めまして。 母です」 
「父です、あなたが息子の同居人ですか。 手紙では男性とも女性とも書いて無かったもので」
――書かなかったんだよ。 って言うか、書けるか! 恥ずかしい。
「ねえ、キョン」
「何だ、ハルヒ」
「あんたって4人家族って言ってたわよね?」
「ああ、間違ってないぞ」
「じゃあ、あれは誰よ」
ハルヒの指さした先に居たのは

 
    「やあ、キョン。 久し振りだね」



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