考える葦のブログ

さわやかに さりげなく

希望退職と整理解雇

2010-11-10 23:14:21 | 人事の仕事

今朝の日経新聞11面に「日航、整理解雇へ最終調整」という記事がありました。

会社更生手続き中の日本航空が9日、整理解雇を実施する方向で最終調整に入った。日航はパイロットと客室乗務員を対象に同日、希望退職の最終募集を締め切ったが、270人の削減目標に対して100人以上が不足していた。これを受けて週内にも正式決定する見通しだが、労組側の反発は必至だ。

非常に厳しい経営状況にあると言われる日本航空・・・
何度か「希望退職」を募った結果にもかかわらず、「整理解雇」に臨まざるを得ない状況のようですね。

「希望退職」と「整理解雇」の違い、分かりますか?

どちらも、将来の会社業績の向上を企図して、経営(収益)計画や人員(要員)計画を見直し、人員(人件費)削減を行うこと。いわゆる“リストラ”の一環だと言えると思います。

「希望退職」は簡単に言うと、まさに希望者を募ること。
もちろん、単に退職しませんか?というだけではなく、通常は退職金の上乗せなどの応募者へのインセンティブを用意するやり方です。
これは相互の合意が前提、つまり会社側が一方的に誰かを辞めさせる(解雇する)ことはできません。

「整理解雇」は、一方的に会社側が一部の特定の社員との雇用契約を解約すること。“肩たたき”と呼ばれるのは、本来はこのことだと思います。
懲戒解雇のように社員側に何か落ち度があることが必ずしも要件とはならず、いわゆる解雇四要件※を満たすことを前提に個人を指定して辞めさせる(解雇する)ことができます。

※解雇の四要件:人員整理の必要性、解雇回避努力義務の履行、被解雇者選定の合理性、手続の妥当性

今回の日本航空の場合はどうなんでしょうか?

以前から取り上げられている報道を見ている限りの個人的な意見ですが、今後「被解雇者選定の合理性」が担保されれば、「整理解雇」はやむを得ないケースではないかと思います。あえてボク自身の主義主張は棚上げしておきますが。

公共交通機関として求められる社会的使命、企業として最大限の社員の雇用を守ることなど、やはり経営を立て直す、安定的な会社基盤を再構築することは必要だと思います。
そんな中で、限られた人件費をどう分配できるのか???
今後の会社の発展を考えれば、一律的に全員で大幅な減給を突きつけるよりは、一定の減給と分かち合う母数(要員)の削減のほうが、必要な人材が残ってもらえるのではないかという整理は合理的だと感じられます。

どうしたいか、どう進めるのか、ここは企業の戦略であり、そういうことも含め、企業の文化であるような気もします。
原則的には、出来るだけこのあたりの判断は、自己責任(会社責任)であって、本来的には法や行政から制約されるものではないと考えています。

一方で、人・ヒトの話ですから、単純に契約云々で自己責任論は冷たすぎるというのも感じます。

そういうときの労働組合(労組)だと思うんですが・・・今日の記事から労組の反応をピックアップすると、

「乗務を外して面談をさせるなどの手法が問題」「全職種合計では目標に達している」

それはそれで、事実かもしれませんが、ここで議論すべきは人員(人件費)計画であって、
人数を守るのか?一人あたりの平均(給与)を守るのか?
あるいは、希望退職のインセンティブの増額でもう一度、自主性を求めるのか?
それとも、全く別で人件費以外のコスト削減提案を行うのか?
本当の意味での議論をしないと、下手したら言葉は悪いですが共倒れのに向けて話を進めるという、何のための労働組合なのか?分からない結果を生み出しそうな気がするんですよね。

そして、新聞辞令の感じの悪さ。
いよいよ整理解雇だという本当か嘘かも分かりにくい新聞発表。
家や電車の中で、冷たい文字と数字で伝えられるという寂しさ。

こういうのは勘弁してほしいな。。。
それと、どうせ報道するなら、自分たちの立ち位置もキチンと説明してほしいと思います。
今朝の日経の場合、基本的には事実だけを淡々と書いたつもりでしょうが、「避けられない見通しだ」とか、現実的には既定路線作りの一役を担ってしまっています。担うつもりなら、ハッキリと「今回の整理解雇は本紙は支持する」などと思い切って書いてほしいんですよ。

すみません。ちょっと長くなりました。

当初は、全日空の元客室乗務員(CA)の方の話についても、書きたかったんですけど・・・

日経ビジネス「JALの“白紙スケジュール”で勢いづく解雇解禁論の不気味」

チャンスがあれば・・・また今度。

解雇は当然のことながらハッピーな話ではないと思うんですよ。
でも、タブーやアンタッチャブルな話でもないと思うんです。

いつまでも国会でビデオの話はどうか(ちょっと酷すぎ)と思うんですが、
現実をしっかりとオープンにして、議論することは大事なことではないでしょうか。

まずは、社内でしっかりがんばってください。
そして、こういう苦労が、会社の新しい文化もつくっていくのでしょう。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« iPhone・iPadの秋 | トップ | 警官の紋章 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

人事の仕事」カテゴリの最新記事