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人の旅を笑うな ~ベトナムの水辺の村へ~

ちょっとだけ垣間見た川と湖のほとりの暮らし

33 早朝、絶品の炭焼きフランスパンサンドと薄黄色い飲み物

2017-03-06 07:10:00 | フォンディエンの町と村 お話
ベトナム南部、フォンディエン。旅5日目の朝。

5時起床。身支度をして荷物をまとめる。6時発。
入り口のレセプションに行くと、早朝勤務の女の人がぶらぶらしている。男の人も数人。
しかしまだ薄暗いのだ。誰も英語もできない。とにかく身振り手振りで荷物をレセプションに置かせてもらうように頼み、鍵を返して外に出る。

まだ薄暗い通りを歩いて行く。バイクがそろそろ流れ始めている。

川岸を見た。ボートの客引きなんて全くいない。茶店の横などをのぞいてみたけれど、そんな気配は全くない。何しろまだ暗いのだし、ここはカイランからは遠い。カイランのような観光客の多いところならともかく、こんなところを歩いている観光客なんて稀だ。てか、私だけだ。考えてみればそんなところで未明から流しで客をつかまえようとするなどという非効率な人がいるはずがない。

まだ薄暗いのに屋台でフランスパンサンドを作り始めている女の人がいた。比較的若い人だ。試しに買ってみる。30000ドン(156円)ぐらい。べらぼうにおいしい。小さな七輪に網を載せてフランスパンをあぶっているのだ。そのため、皮がカリっとしているしほんのりあったかい。カリっとした皮と中に挟んだ具のしっとり加減が絶妙にマッチしている。同じものを売っていても、いや、同じものだからこそ、こんなに違うのだ。感動的だ。


歩いている通りの左側にはとうとうと流れる大きな川がある。ガソリンスタンドがあり、川からもそのスタンドで給油できるようになっている。

何カ所もで、はしけのような船が向こう岸からぎっしりとバイクと人を積んでくるのを見た。やはり誰もチケットなど持ってはいない。はしけ船は道路と同じなのだ。いつでも乗れるのだ。

しばらく歩くと、今度は路上のテーブル・椅子でお茶を飲みながらぼんやりしている人たちがいた。薄黄色い温かそうな飲み物がガラスのコップに入っている。コーヒーなのか? お湯なのか? 私も同じのが飲みたい。注文の仕方がよく分からないけど椅子に座り、何となくその飲み物を指さすと、お店の女の人も迷いながらグラスの飲み物を持ってきた。温かいジャスミンティーだった。コーヒーでないことに落胆したが、ジャスミンティーもおいしい。

ここではなんだかみんなゆったりしている。ついでに言えば、客たちはみんな私を見るともなく見ている。

いけない。こんなことばかりしていては水上マーケットにたどりつけない。

32  夕暮れの通りで伸びたひやむぎを食べ、明日の心配をする

2017-03-05 07:10:00 | フォンディエンの町と村 お話
ベトナム南部、フォンディエン。旅4日目の夜。

少し休んでから通りを歩きに出かける。夕食が必要だった。
ふと思い直し、もしかしてもしかするとこのホテルのレストランも意外といいかもと思い、レストランに寄ってメニューを見せてもらう。そしてそのばかばかしい高さにあきれる。さっさと外に出た。

広いけれどそれほど車も通らない通りを物色して歩く。屋根もない路上の店でとりあえず汁ものを頼む。毒消しにライムをいっぱい絞る。15000ドン(78円)。まずくはないが特に好きではない。肉が入っているせいだ。白いひやむぎみたいなものも伸びきっている。
それだけでは夜おなかがすくかもしれないと思い、お菓子を買う。丸いビスケット2枚の間に黒いクリームがサンドしてある絵が描いてある。10枚ぐらい入っていそうだ。これも15000ドンぐらい。

宿に帰ってシャワーを浴び、部屋にいろいろな食べ物が備え付けてあるのを発見。カップラーメンを食べ、さっき買ったビスケットまで開封。黒いクリームはチョコレートではなく黒ごまで、さくさくしておいしいので結局全部食べてしまう。明らかに食べ過ぎだ。なんだかやけっぱちな気分だ。

明日は自力で川沿いを歩きボートを探すことにしたが、荷物をどうするのだろう。こんなホテルに2泊もしたくはない。明日の宿は決まっていない。ボートに乗ればそのままカイランかカントーまで行ってしまう方が便利ということもある。では、荷物を持って歩くのか? 荷物を持ってボートに乗るのか? 
しばし考え込む。

けれど荷物を持って行ってどうなるだろう。非現実的ではないか。
何時に帰ってくるのか分からない。連泊するのかも分からない。どうなるか分からないから、とりあえず荷物はまとめて部屋の外に出しチェックアウトした状態にしておこう。
明日は真剣に早く起きなければならない。
とにかく、寝る。

31 水上マーケットに行く方法はあるのか

2017-03-04 07:10:00 | フォンディエンの町と村 お話
ベトナム南部、フォンディエン。旅4日目の午後。

部屋に入ってスマホを取り出した。簡単につながった。ベトナムはどこでも恐ろしく通信環境がいい。日本からのメールも絶え間なく入ってきて、日本から離れた感じがしないので困る。

フォンディエンの水上マーケットの記事はいくらでも出てきた。2013年、2014年と記事はあった。それが急になくなっているわけはない。ないと言い切るテルちゃんのホテルスタッフとしての能力には困ったものだ。しかし文句を言っても始まらない。重要なのはこのホテルからフォンディエンの水上マーケットに行く術がないということだ。そのためにここまで来たのに。

再び途方に暮れる。そして落ち込む。このきれいなホテル。庶民の暮らしから隔絶されたリゾート施設。全く面白くない、生活感のない場所。私はそんなものを見るために旅行に来たわけではない。

どうしたらいいだろう。
ここまで来て、こんなホテルにしぶしぶ泊まることまでして、水上マーケットを見ないで帰るのもばかばかしいではないか。

ガイドブックには、カイランを歩いていると観光のボートが客引きに来ると書いてある。フォンディエンだってきっと同じだろう。それなら多少怪しくてもそういうボートをつかまえるという方法が残されている。というか、それしか残されていない。
あるいは頑張って川岸を歩いて水上マーケットを探し、地上から見物しよう。それしかリベンジのしようがないと思う。

とにかく明日、自力でやれるだけのことをやるしかない。そう結論を出して、少し緊張が解けた。今こうしてリゾート施設の中にいる自分がとてつもなくバカみたい。昨日までの上機嫌が180度転回だ。

30 フォンディエンの水上マーケットは消滅?

2017-03-03 12:10:00 | フォンディエンの町と村 お話
ベトナム南部、フォンディエン。旅4日目の午後。

部屋の使用方法についての一応の説明を終えてからテルちゃんは切り出した。

「明日カイランの水上マーケットに行きますか。1人1ボートで300ドルです」。私は、カイランではなくフォンディエンの水上マーケットに行きたいのだと言った。すると、なんと、「フォンディエンの水上マーケットはありません。そこにはボートはありません」と言う。え?

何ということだ! だって、ネットでフォンディエンに行った話をいくつも見たもの。あるいは、すでになくなってしまったの? いやいや、あれはつい最近の記事だったはず。そう一気に消滅するわけがない。多少衰退するということはあるにしても。

きっとテルちゃんが言っているのは、観光のボートがないという意味だろう。私は今度は質問を変えて再度聞いた。「地元の人のボートは今は何そうぐらい来るの?」「ボートはありません。1つか2つです。それで、カイランの水上マーケットのツアーは300ドルです」私が聞きたいのはそんなことじゃない、フォンディエンのローカルの人が野菜を売買するボートのことだ。しかしテルちゃんはひたすら「カイラン300ドル」を繰り返した。

話すのをやめた。テルちゃんの話を百パーセント疑うわけでもないが、信じることもできない。彼女はツアーを売ることにしか頭がいっていない。

「あなたはどうしてフォンディエンに行きたいのですか」とテルちゃんはまるで気の毒な人を見るような目をして聞いてきた。「カイランはにぎやかすぎるし有名すぎるから」私は言ったけどその意味は通じてないだろう。
ツアーの話はもうこれで終わりにしよう。

その後、レストランでウェルカムパーティーがあるとか、おそらく一通り決められている営業トークをテルちゃんはしていた。こんないかにも観光地のレストランで観光客向けウエルカムパーティーなんて私は絶対要らない。それに料理も、大したことないのに高いに決まっている。おいしいものはアンビンで十分食べてきた。
テルちゃんは自分にとっても楽しくないトークを終えて鍵を残して帰って行った。

29  緑庭ホームステイはどこに?

2017-03-02 07:05:00 | フォンディエンの町と村 お話
ベトナム南部、フォンディエン。旅4日目の午後。

オレンジ色の大きな門は、瓦屋根のいかにも中華風な派手なデザイン。その奥にやはりオレンジ色のいくつかの建物。寺院のある観光地のようだ。バイクのおじさんはその前で停まった。

さっき20000ドンもチップをあげたので、サービスで観光地に連れてきてくれたのだろうか? でもこのようなところには全く興味がない。私は首を振った。
私が目指しているのはフォンディエンという町のミーカンという住所にある緑庭ホームステイという宿。緑に囲まれ落ち着いた色合いのコテージが並ぶ、日本のキャンプ場みたいな雰囲気の静かそうなところのはず。
おじさんは私のメモ帳を見た。そして首をひねりながらゆっくりとバイクを発進させた。

行きつ戻りつして、結局また中華風の観光地に来た。バイクのおじさんがその受付の人に私のメモ帳を見せると、そこがその住所の場所なのだった。
けど。ここ、緑庭ホームステイではなく、ひょっとして、いや確かに、その上に載っていたミーカンビレッジじゃない? いかにも観光っぽくて派手でにぎやかそうで好みじゃないから絶対やだ、それに高いし、と避けたところ。一体どうなっているの?

門の横の受付棟に入ると、フロントの女の子がやや当惑しながら、ソファーでふんぞり返っている男に私のことを尋ねているようだった。「まあ……、いいわ」とそのデブっとした中年男は言っているみたいで、私は受付に通された。

女の子は目が細くて森田テルちゃんに似ていた。私が小学校のとき仲よくしていた子だ。白魚のようにほっそりしているところはテルちゃんには似ていない。一応少し英語が話せるがあまりうまくなく、会話してもほとんど聞き取れなかったり通じ合わなかったりする。テルちゃんは私をコテージに案内する。

ミーカンビレッジは広大なリゾート施設らしく、全体が樹林に包まれ、園内に大きな池があったりそのほとりにレストランがあったり、アウトドアの遊具、ベンチ、東屋などがあちこちに散りばめられていた。園路を少し奥まで歩いていくと、小じんまりしたコテージが並んでいる。

ドアを開けるととてもきれいで気持ちのいい部屋だということが分かった。約2500円ならコスパはいい。テルちゃんは黒いゴム草履のままぴかぴかに清掃された部屋に入っていく。やめてほしい。アジアの宿で私が常に一番やってほしくないことだ。まるで洗い立てのタオルを先に使われてしまったような気がする。私は入口で靴を脱ぎながら、「ちょっとちょっと」とテルちゃんの足元を指差して注意した。テルちゃんは「靴のまま上がっていいんですよ。どうぞ」と(多分)言って、ずかずか部屋に入っていった。なんて気の利かない子なの。そして、インドネシアでもここでも、どうして彼らは自分たちがきれいに磨き上げた床を自分たちで汚してしまうのだろう。