Webサイトやアプリをはじめ、ユーザにとって有益なサービスや商品を開発するにはUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)の考えが欠かせません。しかし、UIとUXというワード自体は見聞きしたことがあっても、その内容についてしっかりと理解している方は少ないのではないでしょうか。ここでは、UIとUXの意味や注目される背景などについて解説していきます。
UIとは、User Interfaceの略語で、ユーザーとソフトウェア・ハードウェア・サービス・製品などとの接点のことです。日本語では顧客接点と訳されますが、Webサイトであれば表示されるデザイン・レイアウト・フォントなど、商品であれば外観などが該当します。一般的に良いUIとは、ユーザーがWebサイトやサービスをスムースに使用できる状態で、ユーザーの目的を達成しやすい事が求められます。例えば、テキスト・レイアウト・装飾・ボタンなどが視覚的に分かりやすい、テキストに使われている文字や言い回しが理解しやすい、何処に何の情報が記載されているのかが明確、目的としているページやコンテンツへの動線が分かりやすい、操作時の挙動がイメージ通りといった状態が良いUIです。つまり、UI設計ではユーザーが直感的に内容や使い方を理解できるように配慮することが重要ということになります。良いUIを作り上げることができなかった場合、ユーザーの満足度は低下してしまい、利用頻度・利用期間・定着率などが悪化する可能性があります。収益を大きく左右することもあるので、Webサイトやアプリなどあらゆるサービス・製品の開発ではUIを重視することが重要です。
UXとは、User Experienceの略語で、サービスや製品を通してユーザーが味わう体験を指します。日本語では顧客体験と訳されますが、例えばECサイトで買い物をするケースにおいては、ECサイトにアクセスして商品を探し、目的の商品をカートに入れて決済を済ませ、実際に商品を受け取るという一連の体験がUXです。また、購入した商品を実際に使った際の体験、ECサイトからのキャンペーン案内、購入後のフォローなどもUXに含まれるという考えもあります。さらに、近年はARやVRなどの新たなテクノロジーにより、これまでには無かった新しいユーザー体験が創出され始めています。テクノロジーの進歩によりユーザが体験する内容に多様性が生まれるのは、今後のUXを考えていく上でしっかりと押さえておくことが大切です。
以上がUIとUXの概要となりますが、これらが注目される背景には市場の成熟と競争の激化があります。あらゆる製品やサービスが日々生み出されている現代社会において、競争優位性の必要性が増しており、いかに競合他社との差別化を図るのかが大きな課題となっています。この課題を解決するために、主にソフトウェア開発の現場で近年取り組まれているのが、UIやUXを重視した開発を進めることです。東京理科大学名誉教授の狩野紀昭氏が1980年代に提唱した「狩野モデル」によると、製品やサービスの品質は大きく、あって当たり前で無いと不満に感じる「当たり前品質」、あると嬉しく無いと不満につながる「一元的品質」、本来は無くても構わないがあると嬉しい「魅力的品質」、あっても無くても顧客の満足度に影響を与えない「無関心品質」、あると顧客の満足度低下を招く「逆品質」の5つに分類されます。UIやUXを追及することは、狩野モデルにおける一元的品質と魅力的品質の向上につながります。一元的品質と魅力的品質は、競合他社との差別化や更なる付加価値につながる要素なので、市場の成熟と競争の激化が加速する現代社会の開発現場ではUIとUXの重要性が高まっているのです。
以上がUIとUXの二つが注目される訳となりますが、UIとUXは異なる概念なので注意が必要です。UIはサービスや製品のデザインやレイアウトなどの客観的な対象を意味していますが、UIはサービスや製品を通してユーザーが味わう体験なので主観的な対象と言えます。また、UIはUXを改善する要素のひとつではありますが、優れたUIが優れたUXにつながるとは限りません。そのため、サービスや製品の開発ではUIとUXの両方を考慮することが重要となりますが、これらの設計に求められるスキルは異なります。UI設計では、グラフィックデザインやビジュアルデザインをはじめとした情報を視覚的に表現するスキルが求められます。一方で、UX設計では市場調査や分析、ワイヤーフレームの作成、デザイン、ユーザーテストなど様々な工程に関わるので、設計者に求められるスキルもマーケティング力や想像力・共感力、コミュニケーション能力など多岐にわたります。サービスや製品の開発現場では、1人の担当者がUIとUXの両方の設計を担うケースも多いので、両方の設計に精通していることが重要です。