「いや、ケチったわけではないんだが」
目の前の席で目を丸くしている哲子に向かって
説明というか言い訳をした
机の上のトレーの上には
ハンバーガーが二つと水が二つ乗っている
水というのは、紙コップに入っているといえば解って貰えるだろうか
メニューにないが、お水は頼めば貰えるのだよ
成田空港他ペットボトルのミネラルウォーターを売っているマクドナルドが日本にも存在するが
水を下さいといわれてそれを売ってクレームになったこともあるらしい
私もコンビニでバイトしている時
おじさんにペンを(貸してくれ)言われて
そこにありますと陳列棚を指さしたら
!?と驚かれた記憶があったりするのだが
「えっと、先輩その…」
「うん、君の言いたいことは解るゾ
確かに、もうハンバーガーは半額じゃない」
「…」
大体、こいつは最初っから自分で払う気もないくせに
ハンバーガーと水で何が不満なのだろう
「これはね、象徴的メニュー
ある意味”禊ぎ”なのよ
そして、適当なことを言わせて貰うと
藤田田(デンと発音して下さい)追悼メニューね」
「そうなんですか、でも良くこんな恥ずかしい注文出来ましたね」
失礼なことを口走りながら
ハンバーガーにパク付く哲子
「あぁ、ここはね特別で
知り合いがね、居たもんだから」
私も水を一口
…
哲子に400円渡して
ホットコーヒーを二つ買ってきて貰うことにする
ニコニコして何も言わずにお金を受け取って
カウンターにかけていく哲子
見送りながら、お金の力を実感する私
「魔力だなぁ」
お金は量じゃない
時と場合と使いようによっては
100円でも豪勢ぶる事が出来るのだ
「ハサミと一緒だ」
「ハサミですか?」
丁度帰ってきた哲子が言った
「ハサミなら私、ほら」
カバンからハサミを差し出す
「あんた、いつもそんな物騒なもの持ち歩いてるの?」
??
いや、哲子がさしだしてきたハサミが
布キリばさみのような大型のハサミだったからだ
「ありがとう」
取り敢えずお礼を言い
トレーマットを意味もなく切り出す私
(続く)