伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

核禁止条約批准50カ国で条約発効へ。さて日本の対応は。

2020年10月27日 | 平和・戦争
 核兵器禁止条約は、2011年10月の国連総会で軍縮・国際安全保障問題を扱う第一委員会が核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議の採択、2016年10月の国連総会第一委員会での多国間の核武装撤廃交渉開始の決議採択等を受けながら、2017年7月07日の国連本部の核兵器禁止条約交渉会議で賛成122票、反対1票(オランダ)、棄権1票(シンガポール)の賛成多数で採択をされた。採択には、米国、ロシア、中国、インドなど核兵器保有国8カ国は参加しなかったという制約はあるものの、圧倒的多数の国の支持のもとで、核兵器を非人道的兵器として、開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用及び威嚇としての使用の禁止を明示し、核兵器廃絶をめざすものとして画期的な意義を持っている。



 この条約の批准作業は2017年9月にはじまり、同月のガイアナ、タイ王国、バチカン市国の3カ国の批准を皮切りに本年10月24日のホンジュラスの批准で発効に必要な50カ国に達し、来年1月に発効することが決まったという。

 この条約に核保有国が背を向けている現実があり、また、条約に強制力はないため、核兵器廃絶に向けてはさらに紆余曲折はあるだろうが、被爆者をはじめ世界の核兵器廃絶を願う人々の国際的世論が法的根拠を持って核兵器廃絶を迫ると考えると、非常に大きな意味を持つものとなると思う。

 この時に、唯一の被爆国の日本の政府が、核兵器禁止条約にどのような態度をとるのかが問題になる。この条約の国連での議論を通じて、日本政府は、条約には否定的な姿勢をとってきた。条約の批准作業がすすむ現在も「日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要」との観点から次のように否定的見解を示している。

外務省HPの外交青書・白書

3 日本政府の考え
 日本は唯一の戦争被爆国であり、政府は、核兵器禁止条約が目指す核兵器廃絶という目標を共有しています。一方、北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本及び国際社会の平和と安定に対するこれまでにない、重大かつ差し迫った脅威です。北朝鮮のように核兵器の使用をほのめかす相手に対しては通常兵器だけでは抑止を効かせることは困難であるため、日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要です。

 核軍縮に取り組む上では、この人道と安全保障の二つの観点を考慮することが重要ですが、核兵器禁止条約では、安全保障の観点が踏まえられていません。核兵器を直ちに違法化する条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損ない、国民の生命・財産を危険に晒(さら)すことを容認することになりかねず、日本の安全保障にとっての問題を惹起(じゃっき)します。また、核兵器禁止条約は、現実に核兵器を保有する核兵器国のみならず、日本と同様に核の脅威に晒(さら)されている非核兵器国からも支持を得られておらず、核軍縮に取り組む国際社会に分断をもたらしている点も懸念されます。

 日本政府としては、国民の生命と財産を守る責任を有する立場から、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、地道に、現実的な核軍縮を前進させる道筋を追求することが必要であり、核兵器保有国や核兵器禁止条約支持国を含む国際社会における橋渡し役を果たし、現実的かつ実践的な取組を粘り強く進めていく考えです。

以上、引用。



 「地道に、現実的な核軍縮を前進させる道筋を追求」するとしているが、この道筋は核兵器を所有する核保有国の手のひらの上で、核兵器の禁止を実現しようとするものにしかならないだろう。では、核保有国が核兵器を手放そうとするかというと、決してそういう動きはない。かつて、米国のオバマ大統領が核兵器の廃絶を訴えたことはあるが、現実に米国等では使用しやすい小型の核兵器の開発・配備をめざすなど、核兵器所有という軍事的優位性を保とうと躍起になっているように見える。「核抑止」という考え方に立つ限り、今後もこの戦略は変わらないと思う。

 こうしたもとで、核兵器をなくすためには、その違法性を確認し、違法状態を解消するために国際的に力を尽くすことが必要となるだろう。すなわち、核兵器禁止条約を批准する国を増やし、この国際的世論で核保有国を包囲することによって、各国が核兵器を手放さざるをえない国際環境を構築していくことにあると思う。そこで大切な役割を果たすことができるのが、被爆の体験を持つ、我が国・日本だ。

 日本が、被爆の体験とその体験に基づく核兵器の非人道性・不法性を各国に伝えることは、条約批准を世界各国に促す大きな力になる。安保法制というとげを憲法に突き刺してしまった日本ではあるが、不戦の誓いをした日本国憲法は、世界の人々から注目もされているだろう。こうした日本の立ち位置も、条約批准を促す大きな力になる。そして、そのことは被爆者や戦争体験者をはじめ、多くの国民の願いとも合致する。日本は、核兵器禁止条約を批准し、世界に広げる先頭に立つべきなのだ。

 核抑止力を信奉するその背景には、日米安保条約があるだろう。こうした第二次世界大戦後の枠組み、戦後75年たっても変わらない米国中心の外交政策の枠組みを変えるために、日本の政府は努力すべきなのではないか。そうも思う。核抑止力の名の下に、使いやすい核兵器の開発・配備をめざす軍事戦略を容認することがあってはならないとも思う。

 国内では、非核平和都市宣言を都道府県や市町村など1,653自治体が採択している。都道府県を含む日本の自治体数1,788(2,019年12月31日現在)の92%もしめる自治体だ。本市も「核兵器はつまらないからよせ」と核兵器廃絶を訴え、恒久平和の願いを込めた「いわき市非核平和都市宣言」を採択している。こうした圧倒的な声に政府が応えることが必要だろう。

 核兵器廃絶を願い、核兵器禁止条約の批准を各国に求める「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」が2016年から継続的に進められている。草の根では、こうした取り組みを進めて、日本政府も、世界各国の政府も包囲していくことが必要だろうな。

ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名


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