8月3日に保育団体連絡協議会の議員セミナーに参加し、勉強してきました。
そのまとめです。
1 調査等事項
地方議員セミナー「保育の充実と地方行政」について
2 調査等先での説明者等
保育研究所常務理事 逆井直紀氏
保育研究所 勝連千賀子氏
同 若林敏郎氏
元帝京大学教授 村山祐一氏
元佛教大学教授 杉山隆一氏
全国学童保育連絡協議会会長 木田保男氏
3 説明等内容及び本市に対する考察等
講義のテーマは以下の通り。
講義1「保育にかかわる国・自治体行政の動向」
講義2「自治体保育行政にかかわる状況調査について」
「待機児童解消と保育士の処遇改善問題」
講義3「事業計画見直しの課題」
「待機児童解消に向けた施設の増設、公共施設の再編、事業計画見直しへの対応」
講義4「学童保育(放課後児童クラブ)の状況と課題」
(1)講義1「保育にかかわる国・自治体行政の動向」
講義1は逆井氏が担当し、子ども子育て支援新制度への移行の経緯と保育をめぐる状況の変化で保育需要が高まっていることを説明しながら、新制度にもとづく施設の設置及び利用状況を示し、解決すべき課題が、おおむね次のように提起された。
移行の経緯では、新しい保育制度として、当初国がめざしたものは、市区町村の保育の実施責任をなくし、介護保険制度のように、保育施設と利用者が契約を直接結んで保育の供給を受けるようにし、保育所すべてを「総合こども園」に移行するというものだった。しかし、国における関連法の議論の中で、市区町村の保育実施責任が維持され、現在の保育所を維持しながら、新たに「認定こども園」という施設を導入する内容に変更をされた。
この新制度が導入されたことによって、保育所あるいは幼稚園による従来通りの保育の供給に加え、認定こども園や小規模保育等直接契約による保育の供給がされるようになり、一方で、利用者には教育・保育の必要性の認定を受ける認定制度が導入された。
認定制度は、3歳以上で幼稚園等での教育を希望する1号認定、3歳未満児で保育を希望する2号認定、3歳以上児で保育を希望する3号認定に区分され、2号及び3号認定には、最大11時間の保育を保障する保育標準時間認定と最大8時間の保育を保障する保育短時間認定の区分が新たに導入されることになった。
このほか、2016年度からは、新たに市町村が関与しない企業主導型保育も導入された。
保育は共働き世帯の増加と、1~2歳児の保育利用率の急増によって保育の需要が増大しており、この結果、待機児童がいっこうに減らない状況がある。
問題を解決するためには、保育の供給量を拡大することが必要だが、政府の新しい「子育て安心プラン」は、待機児童ゼロを2020年度末までに先送りした。また、盛り込まれたメニューには新しい提起が乏しく、従来の施策の延長線上にとどまっている。この中では幼稚園で低年齢児を受け入れることを奨励しているが、この施策によって保育所不足を解消することは難しい。
このプランには、自治体が事業計画の見直しなどで対応していくことになるが、東京都北区では待機児童が増加したことにともない、公立保育所を今年4月から増設しているように公立保育所の活用も視野に入れた対応が求められる。
保育の規制緩和と保育量の拡大により、保育事故が起きており、政府はこれに対応するためにウエブサイト上に事故情報データベースを構築するとともに、事故対応等に対するガイドラインや重大事故の検証委員会等の設置を通知した。
また、災害共済給付制度に小規模保育事業も対象化し、今年4月からは企業主導型保育や条件を満たす認可外保育施設も加入できるようなった。加入の状況を点検していく必要がある。
保育には知識や技能、そして倫理観を伴う高度な専門性が必要だが、保育する側のレベルの多様さや多様な子どもに向き合う難しさがある。その中で、栃木県宇都宮市の認可外保育施設で、子どもを毛布でくるんで縛り上げた保育をし、園児を死亡させる事件が起きている。それだけに行政が指導監督をはじめ、責任をもって対応していくことが求められる。
全国の公立施設の認定こども園化は、兵庫県姫路市の地方裁量型認定こども園「わんずまざー」で、子どもに十分な食事を提供していなかったことが発覚したことに見られるように、認定こども園にすれば自動的に保育が良くなるわけではない。
地方の財政的な問題や公共施設等総合管理計画の観点から、保育所が削減の対象になり、民営化、統廃合などがすすむことが懸念されるため、十分注意を払う必要がある。
保育士不足は、変わらず大きな問題となっており、その原因に低賃金であるにもかかわらず、保育時間の長時間化や保育業務の高度化などの問題に加え、非正規職員増加によって正規職員の業務負担が増えているという問題がある。
保育士の低賃金は、2000年を前後して以降、悪化しており、その原因には国の賃金基準額の設定に問題がある。また、職員配置基準が低く、実際に保育している職員数と乖離している状況となっているため、もともと少ない賃金を多くの人員で分け合っている状況もある。
こうした一方で、女性労働者全体で見ると、その労働条件等にわずかながらも改善がすすみ、女性の活躍する場が増えたため、相対的に保育労働が魅力あるものではなくなってきている。
国は処遇改善を政治課題として、若干の賃金水準の引き上げを行ってきたが、現状ではやっと2010(平成22)年の水準に戻ったにすぎず、規制緩和で保育資格者以外の者の活用を図ってきているように人員増につながる配置基準の改善の意思もない。
保育研修を受けたら5000円から4万円の加算をするという制度も、その狙いが保育資格を持つ専門的な職員を管理者として重点的に配置することにある。
国の不十分な対応の中で、自治体には東京都など単独で処遇改善支援を始める自治体が生まれており、千葉県では市町村が行う保育士1名につき月額2万円(基準額)の処遇改善事業に対し、2分の1の補助を行う事業を新設した。
保育料は、国が定めた保育料額を上限にそれぞれの自治体が設定するが、自治体によって軽減の状況は異なり、695件の有効回答があった調査では、6割台としているのが197自治体、7割台が154自治体、5割台が148自治体となっており、最も軽減率の高かった県が群馬県で47.9%、最も低かったのが福岡県で75.4%となっていた。
また保育料とは別に、保育料に上乗せしたり、保育料とは別に実費徴収したりする場合もあって、これも軽視できない。少なくとも市町村で把握し、大分市のように情報提供をする必要があるのではないか。
日本のGDPに占める公財政教育支出はわずかに0.1%にすぎず、OECD平均の0.6%よりはるかに低い現状があり、また公私の負担割合の公財政による負担もOECD各国平均81.6%に対して日本は45.4%にすぎない。
従って、一層の保護者の負担軽減のためには、国レベルの公費投入を拡大していくことが不可欠になっている。
2018年度からは保育所保育指針と幼稚園教育要領等が改正される。保育所保育指針は、当初は参考にする指針であったが、2008年度改定からは法的な拘束力を持つようになっている。
今回の改定では、「就学前の終わりまでに育ってほしい姿」を到達目標として明示したことで、この目標をもとに子どもや保育を評価し、小学校は目標まで育っていることを前提として教育することになる。
その特徴は、学力の育成と道徳の教科化などを図った小中学校の学習指導要領の改訂と同じ軌道にあるもので、幼児教育の役割の明確化が図られるなどの評価する声の一方、乳幼児期の固有性を軽視し就学準備に傾斜したものであるとか、育ってほしい姿は自己抑制的なものになり子どもの主体性が失われるなど危惧する声がある。保育現場における論議や実践の尊重が求められている。
(2)講義2「自治体保育行政にかかわる状況調査について」
講義2は、まず講義2-1として勝連氏が担当し、政令市がある都道府県と東京都の全市町村810市町村を対象にした自治体保育行政に関する状況調査の中間集計状況が、おおむね次のように報告がされた。回収率54.4%の段階の中間報告である。
公立の保育所、幼稚園、認定こども園等の常勤の臨時保育士の平均時給の平成28年度と29年度の比較では、回答の半数を超える自治体が引き上げをしたと答えており、賞与があるのは全体の25.6%、無いのは74.4%となっている。
短時間勤務の臨時保育士で有資格者及び無資格者の場合も同様の傾向であり、また両者の時給の格差は平成28年度と29年度は拡大している。一方、差が全くない自治体もある。
常勤臨時保育士の平成28年度の平均時給と最低賃金を比較すると、都道府県別で、最低で146円、最高で290円、平均時給が上回っている。
保育士の処遇改善策についてみると、保育士や調理員等職員の加配補助を実施している市区町村は最高の東京都で93.5%、最低の岡山県で6.3%が実施している。賃金の上乗せ補助をしている市区町村の割合は埼玉県、東京都、兵庫県、広島県、福岡県が21.7%から38.7%の間で補助を実施しているが、宮城県や熊本県では実施している市町村はない。
子ども・子育て支援新制度における事業計画の中間年における見直し予定があるとしたのは全体の43.6%で、そのうち量の見込みを上方修正する可能性がある市町村は71.6%となっている。
講義2-2は村山氏が担当し、「待機児童解消と保育士の処遇改善問題」について、おおむね次のように説明した。
待機児童問題は、ある意味大変深刻になっている。
安倍内閣は子育てプランの達成を先送りして、新プランを作ったが、これに新聞各紙がそろって論評をするなど、これまでにない状況となっている。
一つには、「日本死ね」というブログがあったが、これに共感するという声は7割に達している。
また各紙の論評では、毎日新聞は「全力で待機児童対策に取り組まないとまた先送りになる」と書き、読売新聞も「先送りの繰り返しは許されない」と書いた。朝日新聞は「政府の見通しが甘かった」として、新プランを「具体的に何をどう増やすかが明らかにされていない」と批判した。待機ゼロという言葉だけが飛び交い、これまでと変わらない状況があるし、保育士の賃金の6000円の改善も不十分ということが、各紙に共通している。
こうした中で、国の新プランには財源が示されずに、個々の細かい取り組みに入っていこうとする傾向がある。これで待機児童が解消されるかというと、なるはずがない。なぜなら、1歳児、2歳児から入所して、その保育園で学校にいくまで安定した保育を保障することを圧倒的多数の親は求めている。1歳児、2歳児で預けて、3歳児になったらまた新しいところを見つけるということを親は望んでいない。1歳児、2歳児の定員をどうするのかという意見が新聞にでるようになったのは重要な変化だ。ここを押さえておくことが大切だ。
待機児童の定義は、1998年に児童福祉法が改定されたことを受け、例えば認可外保育所入所は、かつては待機児童とされたが、現在は待機児童とカウントしなくなったなど待機児童の概念が縮小されている。定義のつけ方でこの問題に対応しようとするのではなく、すべての子どもが入所できるようにしていくことが大切だ。
子どもが親の問題で深刻な問題を抱えていると、保育所に入ったことで見えてくることがある。親はきちんと食事をさせていると言っていたのに、ミルクしか飲ませていないという問題が把握されたことがあった。
今後、該当年齢の5割から6割が保育所に入るようになってくる。親の希望にそって入れるようにしていくことが必要だ。児童福祉法の理念はそこにあり、その理念を踏まえていくことが必要だ。
人口が減るから待機児童問題は解消するという議論もあるが、そうではない。働く親が増えているため保育需要は伸びる傾向にあり、人口減少がすすむからと待機児童対策から手を抜くことはできない。これは保育所の利用率を見ても分かる。1歳児、2歳児でも3歳児以上と同様に利用したと考えている傾向がうかがえ、1歳児、2歳児でも50%程度の利用希望があるとみていくことが必要だ。
入所を寄贈する児童は、全国平均では96%が入所しており、入れないのは4%であり、東京都では10%程度が入ることができないでいる。この現実は、対策をしっかりとれば、入所希望者が入ることができる状況があることを示している。1歳児、2歳児はどこかに預ければよいということではなく、学校に入るまで質を確保して保育できることを前提に対策をとっていくことが待機児童対策の大前提だ。
保育士の処遇は大変深刻だ。
奈良県の調査では7割が給与が安いと答えている。
また、勤務実態を見ると、東京都の場合、正規保育士は収6日以上働くのが3割、1日当たり9時間以上働くのが約5割となっている。奈良県の場合、週に40時間から50時間働くのは公立53%、社会福祉法人40%となっており、社会福祉法人では50時間から60時間働くのは20%となっている。長く働き給与が安いという実態となっており、給与改善を求める声は正規保育士と有期契約保育士とも多く、一方、事務等の軽減を求める声は、正規が57%に対し有期契約が26%(北海道の場合)となっており、正規保育士の負担が大きくなっている現状が見られる。
こうした状況の中で、正規職員でも、非正規職員を増やす場合でも、処遇改善を図っていくことが求められている。そのためには保育にかかわる公定価格の単価額を改善することが必要だが、保育単価の加重平均額は2000年度を100として、その後下がり、2016年度にやっと戻ったという水準にある。管理費等その他の公定価格も変わっていない現状がある。このため給与をあげることができない状況にある。処遇改善がすすまないのは、国の政策と深く結びついている。
千葉県が市町村が処遇改善で補助する場合、県が2万円助成する制度を作った。東京が補助を決めたから、保育士確保のために作った。保育士の争奪戦のようなことが起きている。これは本来おかしい。国が6,000円、7年以上で研修を受ければ4万円出すというが、あまり給与があがる状況にない。きちんと出す方向を示さないから、保育士の有資格者が敬遠している。国全体として処遇改善策をとるべきだ。
保育士の配置は国基準の1.8倍から2倍になっている。国の基準では保育所の運営はできない。国基準は幼稚園と同じ4時間保育の基準で考えられている。経費も幼稚園と同じ考え。大幅に変える必要がある。保育士の増員を行うことは大事だ。
正規保育士に就業する際の希望条件を東京都で調べた。
経験者で、勤務日数は週5日、勤務時間は7.8時間、通勤時間は40分以内、年収は307万円となっている。べらぼうに高い水準を要求しているわけではない。保育所で一番達成できないていないのは週5日と8時間以内。正規保育士は少なくなり、非正規が増えれば増えるほど正規の負担は増える。保護者の相談等の時間は保障されていない。
8時間以内の勤務時間などが達成されるようになれば、保育士の希望者も増えてくると考えられる。全国で保育士の有資格者は80万人で、勤務している者は40万人とされる。残りの40万人が処遇が悪いので保育所をボイコットしている。その視点をもって処遇改善を図っていくことが大切だ。
東京都の調査では保育士の勤務年数は5年以下が77%、10年以上は1割程度だ。保育は経験の短い若い人に担われている。質の確保が難しい問題があり、一定程度の経験を持つ者の配置ができるようにしていくことが必要だ。質の確保をするために足りな保育所を増やしていくことが大切だ。
若い人だけになると、子どもの変化に応じた細かな対応ができにくくなる。預かるだけになりかねない。一定の経験年数を有する者の配置も必要だ。それだけに保育士の働く環境をどう作るかは、待機児童問題につながるし、地域の子どもたちの育ちを保障することにもつながっていく。今後、6割、7割の子どもたちが保育園に入ってくると考えられ、地域の育ちの場所は家庭と保育園であり、保育園の質が低ければ地域の子どもたちの育ちに影響が出るととらえていくことが大切だ。
保育士の処遇改善は、保育士個人の問題ではなく、子どもの保育をきちんとできる問題、地域の子どもの問題だ。幼稚園の先生は専門職として保証されているが、保育士は専門職として保証されていない。子どもの育ちのために、専門職の保証することが必要だ。
これを前提に、処遇改善として、
第1に、幼稚園と同様に、1日の仕事の中に、保育の計画、準備、まとめ、会議、研修等の時間を制度的・財政的に保障する、
第2に、安定した園研修や自己研修時間の確保と、保育士にワークライフバランスの保証をする、
第3に、保育所が閉所する場合、他園に一時入所できるシェア制度の導入で、土曜保育と夏休み休暇、研修休暇で閉所中の保育の実施をする、
第4に、新制度と保育士のキャリアパスの構築をはかる、
ことなどを、みんなで考えながら改善をすすめていくことが大切だ。
(3)講義3
講義3では、まず3-1として「事業計画見直しの課題」が若林氏からおおむね次の説明がされた。
子ども子育て支援法は、事業計画期間5年を1期として、子ども・子育て支援事業計画を定めることを各自治体に義務付け、中間年を目安に計画の見直しを図ることを基本指針に定めている。本年度が中間年に当たり、自治体のほとんどが見直しに着手、あるいは見直し作業に入ろうとしている。
問題は、量の見込み量と実態はこの2年間でどのようになったかにある。
保育研究所が政令市、中核市、県庁所在市を対象に行った調査では、2号認定(満3歳以上の小学校就学前の子どもであって、保育を必要とする子ども)では61.6%の自治体で実際の認定者数が見込み量を上回っており、3号認定(満3歳未満の保育を必要とする子ども)では16.4%で認定者数が見込み量を上回る結果になっている。
201年に総務省が19都道府県、60市町村の調査をもとに行政評価を行って勧告を行っており、ここでは、見込み違い等で適切な施設等の整備が進まない恐れや小規模保育施設等を卒園した後の受け皿となる連携施設確保への市町村の支援が不十分などとして、内閣府には、潜在的な需要を含めた見込み量の算出や実態に即した確保方策などを市町村に要請することなど、また、厚生労働省には、待機児童範囲の明確や、実効性のある連携施設の確保に向けた市町村の支援を要請することなどを勧告している。
見込み量の違いは、ニーズ調査が1人親やフルタイムとパートなどの家庭歴をもとに計算されたことや、3歳以上で1号認定(満3歳以上の小学校就学前子どもであって、学校教育のみを受ける子ども)の希望を多く予測したこと、また、計画策定時の需要予測と実際の認定時のタイムラグなどに原因があると考えられる。
このことから内閣府は、今年1月に、市町村に「見直しのための考え方」を通知しており、見直しにあたって新たに示された算出方法を用い、見込み量と実際の認定区分の人数にププラス・マイナス10%の乖離があったり、今年度以降も待機児童の発生が見込まれる場合に見直しを行うことを求めている。また、今回利用定員総数の新た確保策として、企業主導型保育施設の地域枠と幼稚園の預かり保育を、2号認定の受け皿にすることを例示している。
見直しの実例に、岡山市があり、同市では国の量の見込み量の算出法等に従って量の見込みを算出し、既存の許育・保育施設の活用を基本としつつ、新設も含めて定員を設定し、既存施設の活用で確保しきれない場合には、地域型保育事業を、需要の多い教育・保育提供区域から優先して導入することを基本として確保することにしている。
札幌市は、ニーズの再調査の結果、3号認定で約3,200人の供給不足となっていることが分かり、国の示す既存施設の活用を前提としながら、既存幼稚園から認定保育園への移行をはじめ企業主導型保育事業を含んだ供給確保策を示し、小規模保育事業については従事者に保育士資格を有する者を必要とするA型を原則として確保することをなどを内容とする見直し案を示している。
今後、事業計画を見直すにあたっては、保育所整備計画を立て計画的に保育所の充実を図ることや、小規模保育事業のB型、C型はA型に移行させること、マンション建設や母親の就業率上昇など潜在的な保育需要等の今後の需要予測を踏まえて行うことなどが、視点として大切で、直接の当事者樽保護者、保育士などを含めた関係者で構成される評価・検討委員会等を設けて行い、その結果は広く市民の意見を聞くことが大切だ。
講義3-2は、「待機児童解消に向けた施設の増設。公共施設の再編、事業計画見直しへの対応」と題して、杉山氏からおおむね次の説明がありました。
若林氏に補足するが、保育の見込み量を見直す上で補正をかける際の参考として、一つは大規模開発特にマンション建設での需要増を、過去の事例を参照しながら見込むこと、もう一つは、国民生活基礎調査や国勢調査、就業行動基本調査等で、特に女性の就業率の変化をとらえること。加えて保育ニーズへの対応は認可保育所の整備で図り、そのために保育所整備計画を行政に持たせることが大切だ。
公立就学前保育施設の廃止・統合と認定こども園化による再配置の状況と、対応については、まち・ひと・しごと総合戦略による人口ビジョンの策定によって、保育施設の廃止・統合、縮小が課題になったことと、保育所や幼稚園の施設の老朽化という課題解決策が、施設の統廃合という方向に向いていること、また、保育所と幼稚園を統合し、認定こども園化することにより、公共施設の集約化、複合化や転用をすすめる財政優遇措置が設けられたために、公立保育所の認定こども園化がすすんでいる。
また、人口の減少にともない存立が厳しくなった保育所や幼稚園を集約してこども園化する動きもあるが、この動きは、周辺部の人口減少を加速させ、高齢化を促進することにつながるという問題を含んでいる。
これらの問題を考える際に、次の視点で考えることが必要だ。
一つは、保育所や幼稚園などが地域からなくなることで、地域の子育て環境はどのようになっていくのか。
二つは、施設が子どもから遠距離になることは、子どもの最善の利益という観点からみてどうなのか。
三つに、施設の集約・統合は規模のメリットをめざすものだが、これが子どもにとって最善の利益となるのか。
四つに、一局に集中することによって、子育て施設が地域から切り離されてしまうのではないか。
五つに、認定こども園化がトップダウンによって決まり、市民の疑問に答えないですすむ事例があり、ボトムアップで住民合意をはかる必要があるのではないか。
特に五点目では、騒音問題などで保育所の建設に住民が反対する事例がある中で、住民の納得を得ながら建設をすすめる上で大切だ。
認定こども園化は、待機児童解消策の一つとして進められているが、受け入れ児童数の枠の問題などがあり、現実には待機児童解消につながっていない。
こうしたことから、認定こども園とするのか、保育所や幼稚園とするのかは、実際の利用者である保護者と子ども、そして保育者によって決めていくことが必要なのではないか。
その際、公立の保育施設は施設整備が自主財源で行わなければならないと一般的には言われている。
しかし、平成27年3月24日の参議院総務委員会で高市早苗総務大臣は、「公立保育所の施設整備つきましては、この一般財源化に係る地方債や社会福祉施設整備事業債の対象」としており、具体的には従来の国庫補助金の補助率が2分の1であったことを踏まえ、「事業費のうち50%を一般財源化に係る地方債の対象」とし、「その元利償還金について、事業費補正により70%、単位費用により30%、合わせて100%を地方交付税で措置する」と、事業費の2分の1を国が地方交付税で措置すること、加えて「残りの50%のうち80%を社会福祉施設整備事業債の対象としている」とし、「公立保育所の施設整備費及び運営につきましては、国庫補助金の一般財源化による影響が生じないように適切な地方財政措置を講じている」と答弁している。
その他、地域活性化事業債や防災対策事業債など、保育所や幼稚園等に限定された地方債等以外の措置もあり、これらも活用しながら、公立の保育所等を整備していくことが大切だ。
また、整備に資する財源を議員も職員といっしょに見出していく努力が必要だ。
(4)講義4「学童保育(放課後児童クラブ)の状況と課題」
講義4では、保護者と指導員で組織する全国学童保育連絡協議会の木田氏から、おおむね次の説明がされた。
学童保育は、公的な基準がない中、それぞれの地域の事情に応じてやってよいと言っていたが、連絡会は最低の基準がなければ全国各地の格差が広がると指摘して、国に基準作りを求めてきた。2012年に決めた新しい制度に基準が初めて入り、法的根拠をもって学童保育が進められることになった。これを足掛かりにさらに改善を図りたいと考えている。
2016年の学童保育の数は、2万7,638ヵ所で入所児童数は107万6,571人となっている。1997年に放課後児童健全育成事業として初めて法的に位置付けられ、4月1日に施行した1998年は9,627ヵ所、33万3,100人となっていた。その時から18年の経過の中で3倍以上の子どもが学童保育を利用するようになってきたことが分かる。
1年生の利用率は約33%、低学年で見ると約28%の子どもが利用している。特徴は2014年度までは3年生までという仕切りがあったが、その後なくなり、高学年の利用も増えてきている。
集団の規模は、会としては30名程度が良いと考えているが、国はおおむね40名としている。ところが2016年は71名以上という施設が1300ヵ所以上あった。この規模で放置されていることを大きな問題点の1つと考えている。
国のレベルでは36人から45人までの規模が、補助金などが一番多く出されるように制度が組み立てられている。
大規模な施設では、子どもたちが落ち着けない、些細なことで喧嘩になる、遊びや活動を制限せざるを得なくなる、また事故やケガが多くなるなどの問題が指摘されている。
待機児童が問題になるが、把握した中では2016年で1万5,839人発生しており、227自治体は把握していない。利用者は施設に直接申し込むため、自治体で把握できず、実体が把握しきれいない状況にある。
大規模で放置されている問題と待機児童が増えている現状から、学童保育数を増やす必要がある。
学童保育は公立公営で35.8%、保護者会運営が5.6%で、ここはだいぶ減少したという印象がある。その他、民間企業が4.4%あるが、これが増加する傾向がみられる。
学童保育の実施場所は、学校施設内が54%、児童館や専用施設・公的施設をまとめると8割程度になる。
以上から、入所児童数は今後も増加すること、施設数が増えていることから、施設の分割に取り組む市町村と取り組まない市町村の両極化がすすんでいること、また、待機児童の増加、民間企業の参入が見て取れる。
問題点としては、大規模施設の放置がいつまで続くのかにあり、市区町村で定められた基準が生かされるよう、改善の取り組みが必要と考えている。
学童保育の制度は、1997年に法制化されたが、公的責任が不十分、国の段階で最低基準がない、財政保証も不十分などの問題点がある。
2012年に子ども子育て関連3法が決まり、以降、設備や運営に関する基準、放課後児童クラブ運営指針などが示されてきた。
新制度の中では、対象児童を3年生から6年生まで拡大し、子ども子育て支援事業計画の策定を自治体に義務付けた。子ども子育て会議が開かれることになったが、ここでは学童保育が話題になることはないと聞いているので、ここでの話し合いのテーマに乗せていくことが必要だと考えている。
例えば、放課後児童健全育成事業の最低基準は、自治体が決めるが、それぞれの自治体で格差があり、一人一人の子どもが学童保育の主人公として活動できる内容になっているのか、その点を検証しながら、最低基準を上回る学童が進められるようにする必要がある。
単に居場所としての位置づけではなく、会として求めていた生活を保障する場所としての学童保育が、放課後児童健全育成事業設備及び運営に関する基準の第5条に明示をされた。
放課後子ども総合クラブについて、会は学童保育と放課後子ども教室について、連携は必要だが、一体的に行うことには反対をしてきた。全児童対策事業のように、学童といわゆる教室授業をいっしょにして子どもたちを見守る場所にするという事業がいくつかの自治体で行われている。そこで子どもたちの生活が保障されているのか懸念を持っている。ここでは、指導員は子どもに直接かかわるなと指導され、問題行動があった時だけ注意するなどの対応をするように運営されている。学童保育を生活の場とするためにも、それぞれを分けて実施することが必要だと考えている。
昨年、ニッポン一億総活躍プランで2019年度までに達成する計画が1年前倒しで実施されることになった。国は、施設整備の嵩上げをはかるため、補助率を3分の1から3分の2に拡大する。基本的に来年度で終了するので、活用の検討が必要だ。
また、運営費も指導員の年収を180万円から300万円まで拡大する考えから、補助額が増額された。指導員の処遇改善も図られ、資格や経験による手当が入るようになった。一方、指導員の成り手を確保できないために、自治体によっては基準の引き下げを求める声があり、基準を「従うべき基準」から「参酌すべき基準」に引き下げようという動きもある。
指導員から処遇で相談されることがあるが、これまでの運動の中で少しずつ改善されてきている。それでも指導員は4年、5年で半数が変わる。やりがいのある仕事だが、この給与で、家庭を持つことは大変だという理由でやめていく。どんな状況に置かれているか、ぜひ見ていただきたい。
学童保育は発展途上にあり、学び、新しい状況に合わせて改善していくことが必要だと考えている。その際に、改善の中心に座るのは、学童保育を利用する子どもたちだ。学童保育に行けない子どももいる。保育料の減免制度を持っている自治体もあるが、国の段階ではない。家計の状況で学童保育に通えない子どもたちもいる。所得が少なくても利用できる仕組みづくりを、国に求めていきたい。
質の向上のためには指導員が安心して勤めることが必要で、そのために新しい基準で資格を設けたことは良いことだが、それに伴う処遇の改善がすすまない一面もある。国はメニューを用意したが、自治体がそれについていけていないという側面もある。6時半を越えて預けることができるというメニューを、取り入れた自治体は全体の2割に過ぎなかった。
学童保育にも財政支援ができるようにして、子どもたちが安心して学童保育に通えるようにしてほしい。
(5)考察
本市が2015年3月に策定した「いわき市子ども・子育て支援事業計画(いわき市こどもみらいプラン)」については、国の通達を受けて、計画の見直しを判断したところ、事業量が国の指定するプラス・マイナス10%の増減がなかったために、全体としては見直しを行わず、7つの地区に分けた保育量の見込みで、若干の数字の異動があったため、7月に開かれた子ども・子育て支援会議において、その点についてのみ見直しを図った。
今後、計画期間である2019(平成31)年度に向けて、計画の見直しを図ることになるが、この見直しを図る際に、議会としてどのような指針をもって行政に働きかけていくのか――具体的には、計画の中心に子どもの育ちをおくことや親の働くニーズの高まりにともなう保育量の増加など、をセミナーで把握することができた。
市の本格的な見直し作業開始に向けて、どのような方向性をもって見直しを図るのかなど、定例会の一般質問をはじめ、議会の様々な場面で取り上げていきたい。
そのまとめです。
1 調査等事項
地方議員セミナー「保育の充実と地方行政」について
2 調査等先での説明者等
保育研究所常務理事 逆井直紀氏
保育研究所 勝連千賀子氏
同 若林敏郎氏
元帝京大学教授 村山祐一氏
元佛教大学教授 杉山隆一氏
全国学童保育連絡協議会会長 木田保男氏
3 説明等内容及び本市に対する考察等
講義のテーマは以下の通り。
講義1「保育にかかわる国・自治体行政の動向」
講義2「自治体保育行政にかかわる状況調査について」
「待機児童解消と保育士の処遇改善問題」
講義3「事業計画見直しの課題」
「待機児童解消に向けた施設の増設、公共施設の再編、事業計画見直しへの対応」
講義4「学童保育(放課後児童クラブ)の状況と課題」
(1)講義1「保育にかかわる国・自治体行政の動向」
講義1は逆井氏が担当し、子ども子育て支援新制度への移行の経緯と保育をめぐる状況の変化で保育需要が高まっていることを説明しながら、新制度にもとづく施設の設置及び利用状況を示し、解決すべき課題が、おおむね次のように提起された。
移行の経緯では、新しい保育制度として、当初国がめざしたものは、市区町村の保育の実施責任をなくし、介護保険制度のように、保育施設と利用者が契約を直接結んで保育の供給を受けるようにし、保育所すべてを「総合こども園」に移行するというものだった。しかし、国における関連法の議論の中で、市区町村の保育実施責任が維持され、現在の保育所を維持しながら、新たに「認定こども園」という施設を導入する内容に変更をされた。
この新制度が導入されたことによって、保育所あるいは幼稚園による従来通りの保育の供給に加え、認定こども園や小規模保育等直接契約による保育の供給がされるようになり、一方で、利用者には教育・保育の必要性の認定を受ける認定制度が導入された。
認定制度は、3歳以上で幼稚園等での教育を希望する1号認定、3歳未満児で保育を希望する2号認定、3歳以上児で保育を希望する3号認定に区分され、2号及び3号認定には、最大11時間の保育を保障する保育標準時間認定と最大8時間の保育を保障する保育短時間認定の区分が新たに導入されることになった。
このほか、2016年度からは、新たに市町村が関与しない企業主導型保育も導入された。
保育は共働き世帯の増加と、1~2歳児の保育利用率の急増によって保育の需要が増大しており、この結果、待機児童がいっこうに減らない状況がある。
問題を解決するためには、保育の供給量を拡大することが必要だが、政府の新しい「子育て安心プラン」は、待機児童ゼロを2020年度末までに先送りした。また、盛り込まれたメニューには新しい提起が乏しく、従来の施策の延長線上にとどまっている。この中では幼稚園で低年齢児を受け入れることを奨励しているが、この施策によって保育所不足を解消することは難しい。
このプランには、自治体が事業計画の見直しなどで対応していくことになるが、東京都北区では待機児童が増加したことにともない、公立保育所を今年4月から増設しているように公立保育所の活用も視野に入れた対応が求められる。
保育の規制緩和と保育量の拡大により、保育事故が起きており、政府はこれに対応するためにウエブサイト上に事故情報データベースを構築するとともに、事故対応等に対するガイドラインや重大事故の検証委員会等の設置を通知した。
また、災害共済給付制度に小規模保育事業も対象化し、今年4月からは企業主導型保育や条件を満たす認可外保育施設も加入できるようなった。加入の状況を点検していく必要がある。
保育には知識や技能、そして倫理観を伴う高度な専門性が必要だが、保育する側のレベルの多様さや多様な子どもに向き合う難しさがある。その中で、栃木県宇都宮市の認可外保育施設で、子どもを毛布でくるんで縛り上げた保育をし、園児を死亡させる事件が起きている。それだけに行政が指導監督をはじめ、責任をもって対応していくことが求められる。
全国の公立施設の認定こども園化は、兵庫県姫路市の地方裁量型認定こども園「わんずまざー」で、子どもに十分な食事を提供していなかったことが発覚したことに見られるように、認定こども園にすれば自動的に保育が良くなるわけではない。
地方の財政的な問題や公共施設等総合管理計画の観点から、保育所が削減の対象になり、民営化、統廃合などがすすむことが懸念されるため、十分注意を払う必要がある。
保育士不足は、変わらず大きな問題となっており、その原因に低賃金であるにもかかわらず、保育時間の長時間化や保育業務の高度化などの問題に加え、非正規職員増加によって正規職員の業務負担が増えているという問題がある。
保育士の低賃金は、2000年を前後して以降、悪化しており、その原因には国の賃金基準額の設定に問題がある。また、職員配置基準が低く、実際に保育している職員数と乖離している状況となっているため、もともと少ない賃金を多くの人員で分け合っている状況もある。
こうした一方で、女性労働者全体で見ると、その労働条件等にわずかながらも改善がすすみ、女性の活躍する場が増えたため、相対的に保育労働が魅力あるものではなくなってきている。
国は処遇改善を政治課題として、若干の賃金水準の引き上げを行ってきたが、現状ではやっと2010(平成22)年の水準に戻ったにすぎず、規制緩和で保育資格者以外の者の活用を図ってきているように人員増につながる配置基準の改善の意思もない。
保育研修を受けたら5000円から4万円の加算をするという制度も、その狙いが保育資格を持つ専門的な職員を管理者として重点的に配置することにある。
国の不十分な対応の中で、自治体には東京都など単独で処遇改善支援を始める自治体が生まれており、千葉県では市町村が行う保育士1名につき月額2万円(基準額)の処遇改善事業に対し、2分の1の補助を行う事業を新設した。
保育料は、国が定めた保育料額を上限にそれぞれの自治体が設定するが、自治体によって軽減の状況は異なり、695件の有効回答があった調査では、6割台としているのが197自治体、7割台が154自治体、5割台が148自治体となっており、最も軽減率の高かった県が群馬県で47.9%、最も低かったのが福岡県で75.4%となっていた。
また保育料とは別に、保育料に上乗せしたり、保育料とは別に実費徴収したりする場合もあって、これも軽視できない。少なくとも市町村で把握し、大分市のように情報提供をする必要があるのではないか。
日本のGDPに占める公財政教育支出はわずかに0.1%にすぎず、OECD平均の0.6%よりはるかに低い現状があり、また公私の負担割合の公財政による負担もOECD各国平均81.6%に対して日本は45.4%にすぎない。
従って、一層の保護者の負担軽減のためには、国レベルの公費投入を拡大していくことが不可欠になっている。
2018年度からは保育所保育指針と幼稚園教育要領等が改正される。保育所保育指針は、当初は参考にする指針であったが、2008年度改定からは法的な拘束力を持つようになっている。
今回の改定では、「就学前の終わりまでに育ってほしい姿」を到達目標として明示したことで、この目標をもとに子どもや保育を評価し、小学校は目標まで育っていることを前提として教育することになる。
その特徴は、学力の育成と道徳の教科化などを図った小中学校の学習指導要領の改訂と同じ軌道にあるもので、幼児教育の役割の明確化が図られるなどの評価する声の一方、乳幼児期の固有性を軽視し就学準備に傾斜したものであるとか、育ってほしい姿は自己抑制的なものになり子どもの主体性が失われるなど危惧する声がある。保育現場における論議や実践の尊重が求められている。
(2)講義2「自治体保育行政にかかわる状況調査について」
講義2は、まず講義2-1として勝連氏が担当し、政令市がある都道府県と東京都の全市町村810市町村を対象にした自治体保育行政に関する状況調査の中間集計状況が、おおむね次のように報告がされた。回収率54.4%の段階の中間報告である。
公立の保育所、幼稚園、認定こども園等の常勤の臨時保育士の平均時給の平成28年度と29年度の比較では、回答の半数を超える自治体が引き上げをしたと答えており、賞与があるのは全体の25.6%、無いのは74.4%となっている。
短時間勤務の臨時保育士で有資格者及び無資格者の場合も同様の傾向であり、また両者の時給の格差は平成28年度と29年度は拡大している。一方、差が全くない自治体もある。
常勤臨時保育士の平成28年度の平均時給と最低賃金を比較すると、都道府県別で、最低で146円、最高で290円、平均時給が上回っている。
保育士の処遇改善策についてみると、保育士や調理員等職員の加配補助を実施している市区町村は最高の東京都で93.5%、最低の岡山県で6.3%が実施している。賃金の上乗せ補助をしている市区町村の割合は埼玉県、東京都、兵庫県、広島県、福岡県が21.7%から38.7%の間で補助を実施しているが、宮城県や熊本県では実施している市町村はない。
子ども・子育て支援新制度における事業計画の中間年における見直し予定があるとしたのは全体の43.6%で、そのうち量の見込みを上方修正する可能性がある市町村は71.6%となっている。
講義2-2は村山氏が担当し、「待機児童解消と保育士の処遇改善問題」について、おおむね次のように説明した。
待機児童問題は、ある意味大変深刻になっている。
安倍内閣は子育てプランの達成を先送りして、新プランを作ったが、これに新聞各紙がそろって論評をするなど、これまでにない状況となっている。
一つには、「日本死ね」というブログがあったが、これに共感するという声は7割に達している。
また各紙の論評では、毎日新聞は「全力で待機児童対策に取り組まないとまた先送りになる」と書き、読売新聞も「先送りの繰り返しは許されない」と書いた。朝日新聞は「政府の見通しが甘かった」として、新プランを「具体的に何をどう増やすかが明らかにされていない」と批判した。待機ゼロという言葉だけが飛び交い、これまでと変わらない状況があるし、保育士の賃金の6000円の改善も不十分ということが、各紙に共通している。
こうした中で、国の新プランには財源が示されずに、個々の細かい取り組みに入っていこうとする傾向がある。これで待機児童が解消されるかというと、なるはずがない。なぜなら、1歳児、2歳児から入所して、その保育園で学校にいくまで安定した保育を保障することを圧倒的多数の親は求めている。1歳児、2歳児で預けて、3歳児になったらまた新しいところを見つけるということを親は望んでいない。1歳児、2歳児の定員をどうするのかという意見が新聞にでるようになったのは重要な変化だ。ここを押さえておくことが大切だ。
待機児童の定義は、1998年に児童福祉法が改定されたことを受け、例えば認可外保育所入所は、かつては待機児童とされたが、現在は待機児童とカウントしなくなったなど待機児童の概念が縮小されている。定義のつけ方でこの問題に対応しようとするのではなく、すべての子どもが入所できるようにしていくことが大切だ。
子どもが親の問題で深刻な問題を抱えていると、保育所に入ったことで見えてくることがある。親はきちんと食事をさせていると言っていたのに、ミルクしか飲ませていないという問題が把握されたことがあった。
今後、該当年齢の5割から6割が保育所に入るようになってくる。親の希望にそって入れるようにしていくことが必要だ。児童福祉法の理念はそこにあり、その理念を踏まえていくことが必要だ。
人口が減るから待機児童問題は解消するという議論もあるが、そうではない。働く親が増えているため保育需要は伸びる傾向にあり、人口減少がすすむからと待機児童対策から手を抜くことはできない。これは保育所の利用率を見ても分かる。1歳児、2歳児でも3歳児以上と同様に利用したと考えている傾向がうかがえ、1歳児、2歳児でも50%程度の利用希望があるとみていくことが必要だ。
入所を寄贈する児童は、全国平均では96%が入所しており、入れないのは4%であり、東京都では10%程度が入ることができないでいる。この現実は、対策をしっかりとれば、入所希望者が入ることができる状況があることを示している。1歳児、2歳児はどこかに預ければよいということではなく、学校に入るまで質を確保して保育できることを前提に対策をとっていくことが待機児童対策の大前提だ。
保育士の処遇は大変深刻だ。
奈良県の調査では7割が給与が安いと答えている。
また、勤務実態を見ると、東京都の場合、正規保育士は収6日以上働くのが3割、1日当たり9時間以上働くのが約5割となっている。奈良県の場合、週に40時間から50時間働くのは公立53%、社会福祉法人40%となっており、社会福祉法人では50時間から60時間働くのは20%となっている。長く働き給与が安いという実態となっており、給与改善を求める声は正規保育士と有期契約保育士とも多く、一方、事務等の軽減を求める声は、正規が57%に対し有期契約が26%(北海道の場合)となっており、正規保育士の負担が大きくなっている現状が見られる。
こうした状況の中で、正規職員でも、非正規職員を増やす場合でも、処遇改善を図っていくことが求められている。そのためには保育にかかわる公定価格の単価額を改善することが必要だが、保育単価の加重平均額は2000年度を100として、その後下がり、2016年度にやっと戻ったという水準にある。管理費等その他の公定価格も変わっていない現状がある。このため給与をあげることができない状況にある。処遇改善がすすまないのは、国の政策と深く結びついている。
千葉県が市町村が処遇改善で補助する場合、県が2万円助成する制度を作った。東京が補助を決めたから、保育士確保のために作った。保育士の争奪戦のようなことが起きている。これは本来おかしい。国が6,000円、7年以上で研修を受ければ4万円出すというが、あまり給与があがる状況にない。きちんと出す方向を示さないから、保育士の有資格者が敬遠している。国全体として処遇改善策をとるべきだ。
保育士の配置は国基準の1.8倍から2倍になっている。国の基準では保育所の運営はできない。国基準は幼稚園と同じ4時間保育の基準で考えられている。経費も幼稚園と同じ考え。大幅に変える必要がある。保育士の増員を行うことは大事だ。
正規保育士に就業する際の希望条件を東京都で調べた。
経験者で、勤務日数は週5日、勤務時間は7.8時間、通勤時間は40分以内、年収は307万円となっている。べらぼうに高い水準を要求しているわけではない。保育所で一番達成できないていないのは週5日と8時間以内。正規保育士は少なくなり、非正規が増えれば増えるほど正規の負担は増える。保護者の相談等の時間は保障されていない。
8時間以内の勤務時間などが達成されるようになれば、保育士の希望者も増えてくると考えられる。全国で保育士の有資格者は80万人で、勤務している者は40万人とされる。残りの40万人が処遇が悪いので保育所をボイコットしている。その視点をもって処遇改善を図っていくことが大切だ。
東京都の調査では保育士の勤務年数は5年以下が77%、10年以上は1割程度だ。保育は経験の短い若い人に担われている。質の確保が難しい問題があり、一定程度の経験を持つ者の配置ができるようにしていくことが必要だ。質の確保をするために足りな保育所を増やしていくことが大切だ。
若い人だけになると、子どもの変化に応じた細かな対応ができにくくなる。預かるだけになりかねない。一定の経験年数を有する者の配置も必要だ。それだけに保育士の働く環境をどう作るかは、待機児童問題につながるし、地域の子どもたちの育ちを保障することにもつながっていく。今後、6割、7割の子どもたちが保育園に入ってくると考えられ、地域の育ちの場所は家庭と保育園であり、保育園の質が低ければ地域の子どもたちの育ちに影響が出るととらえていくことが大切だ。
保育士の処遇改善は、保育士個人の問題ではなく、子どもの保育をきちんとできる問題、地域の子どもの問題だ。幼稚園の先生は専門職として保証されているが、保育士は専門職として保証されていない。子どもの育ちのために、専門職の保証することが必要だ。
これを前提に、処遇改善として、
第1に、幼稚園と同様に、1日の仕事の中に、保育の計画、準備、まとめ、会議、研修等の時間を制度的・財政的に保障する、
第2に、安定した園研修や自己研修時間の確保と、保育士にワークライフバランスの保証をする、
第3に、保育所が閉所する場合、他園に一時入所できるシェア制度の導入で、土曜保育と夏休み休暇、研修休暇で閉所中の保育の実施をする、
第4に、新制度と保育士のキャリアパスの構築をはかる、
ことなどを、みんなで考えながら改善をすすめていくことが大切だ。
(3)講義3
講義3では、まず3-1として「事業計画見直しの課題」が若林氏からおおむね次の説明がされた。
子ども子育て支援法は、事業計画期間5年を1期として、子ども・子育て支援事業計画を定めることを各自治体に義務付け、中間年を目安に計画の見直しを図ることを基本指針に定めている。本年度が中間年に当たり、自治体のほとんどが見直しに着手、あるいは見直し作業に入ろうとしている。
問題は、量の見込み量と実態はこの2年間でどのようになったかにある。
保育研究所が政令市、中核市、県庁所在市を対象に行った調査では、2号認定(満3歳以上の小学校就学前の子どもであって、保育を必要とする子ども)では61.6%の自治体で実際の認定者数が見込み量を上回っており、3号認定(満3歳未満の保育を必要とする子ども)では16.4%で認定者数が見込み量を上回る結果になっている。
201年に総務省が19都道府県、60市町村の調査をもとに行政評価を行って勧告を行っており、ここでは、見込み違い等で適切な施設等の整備が進まない恐れや小規模保育施設等を卒園した後の受け皿となる連携施設確保への市町村の支援が不十分などとして、内閣府には、潜在的な需要を含めた見込み量の算出や実態に即した確保方策などを市町村に要請することなど、また、厚生労働省には、待機児童範囲の明確や、実効性のある連携施設の確保に向けた市町村の支援を要請することなどを勧告している。
見込み量の違いは、ニーズ調査が1人親やフルタイムとパートなどの家庭歴をもとに計算されたことや、3歳以上で1号認定(満3歳以上の小学校就学前子どもであって、学校教育のみを受ける子ども)の希望を多く予測したこと、また、計画策定時の需要予測と実際の認定時のタイムラグなどに原因があると考えられる。
このことから内閣府は、今年1月に、市町村に「見直しのための考え方」を通知しており、見直しにあたって新たに示された算出方法を用い、見込み量と実際の認定区分の人数にププラス・マイナス10%の乖離があったり、今年度以降も待機児童の発生が見込まれる場合に見直しを行うことを求めている。また、今回利用定員総数の新た確保策として、企業主導型保育施設の地域枠と幼稚園の預かり保育を、2号認定の受け皿にすることを例示している。
見直しの実例に、岡山市があり、同市では国の量の見込み量の算出法等に従って量の見込みを算出し、既存の許育・保育施設の活用を基本としつつ、新設も含めて定員を設定し、既存施設の活用で確保しきれない場合には、地域型保育事業を、需要の多い教育・保育提供区域から優先して導入することを基本として確保することにしている。
札幌市は、ニーズの再調査の結果、3号認定で約3,200人の供給不足となっていることが分かり、国の示す既存施設の活用を前提としながら、既存幼稚園から認定保育園への移行をはじめ企業主導型保育事業を含んだ供給確保策を示し、小規模保育事業については従事者に保育士資格を有する者を必要とするA型を原則として確保することをなどを内容とする見直し案を示している。
今後、事業計画を見直すにあたっては、保育所整備計画を立て計画的に保育所の充実を図ることや、小規模保育事業のB型、C型はA型に移行させること、マンション建設や母親の就業率上昇など潜在的な保育需要等の今後の需要予測を踏まえて行うことなどが、視点として大切で、直接の当事者樽保護者、保育士などを含めた関係者で構成される評価・検討委員会等を設けて行い、その結果は広く市民の意見を聞くことが大切だ。
講義3-2は、「待機児童解消に向けた施設の増設。公共施設の再編、事業計画見直しへの対応」と題して、杉山氏からおおむね次の説明がありました。
若林氏に補足するが、保育の見込み量を見直す上で補正をかける際の参考として、一つは大規模開発特にマンション建設での需要増を、過去の事例を参照しながら見込むこと、もう一つは、国民生活基礎調査や国勢調査、就業行動基本調査等で、特に女性の就業率の変化をとらえること。加えて保育ニーズへの対応は認可保育所の整備で図り、そのために保育所整備計画を行政に持たせることが大切だ。
公立就学前保育施設の廃止・統合と認定こども園化による再配置の状況と、対応については、まち・ひと・しごと総合戦略による人口ビジョンの策定によって、保育施設の廃止・統合、縮小が課題になったことと、保育所や幼稚園の施設の老朽化という課題解決策が、施設の統廃合という方向に向いていること、また、保育所と幼稚園を統合し、認定こども園化することにより、公共施設の集約化、複合化や転用をすすめる財政優遇措置が設けられたために、公立保育所の認定こども園化がすすんでいる。
また、人口の減少にともない存立が厳しくなった保育所や幼稚園を集約してこども園化する動きもあるが、この動きは、周辺部の人口減少を加速させ、高齢化を促進することにつながるという問題を含んでいる。
これらの問題を考える際に、次の視点で考えることが必要だ。
一つは、保育所や幼稚園などが地域からなくなることで、地域の子育て環境はどのようになっていくのか。
二つは、施設が子どもから遠距離になることは、子どもの最善の利益という観点からみてどうなのか。
三つに、施設の集約・統合は規模のメリットをめざすものだが、これが子どもにとって最善の利益となるのか。
四つに、一局に集中することによって、子育て施設が地域から切り離されてしまうのではないか。
五つに、認定こども園化がトップダウンによって決まり、市民の疑問に答えないですすむ事例があり、ボトムアップで住民合意をはかる必要があるのではないか。
特に五点目では、騒音問題などで保育所の建設に住民が反対する事例がある中で、住民の納得を得ながら建設をすすめる上で大切だ。
認定こども園化は、待機児童解消策の一つとして進められているが、受け入れ児童数の枠の問題などがあり、現実には待機児童解消につながっていない。
こうしたことから、認定こども園とするのか、保育所や幼稚園とするのかは、実際の利用者である保護者と子ども、そして保育者によって決めていくことが必要なのではないか。
その際、公立の保育施設は施設整備が自主財源で行わなければならないと一般的には言われている。
しかし、平成27年3月24日の参議院総務委員会で高市早苗総務大臣は、「公立保育所の施設整備つきましては、この一般財源化に係る地方債や社会福祉施設整備事業債の対象」としており、具体的には従来の国庫補助金の補助率が2分の1であったことを踏まえ、「事業費のうち50%を一般財源化に係る地方債の対象」とし、「その元利償還金について、事業費補正により70%、単位費用により30%、合わせて100%を地方交付税で措置する」と、事業費の2分の1を国が地方交付税で措置すること、加えて「残りの50%のうち80%を社会福祉施設整備事業債の対象としている」とし、「公立保育所の施設整備費及び運営につきましては、国庫補助金の一般財源化による影響が生じないように適切な地方財政措置を講じている」と答弁している。
その他、地域活性化事業債や防災対策事業債など、保育所や幼稚園等に限定された地方債等以外の措置もあり、これらも活用しながら、公立の保育所等を整備していくことが大切だ。
また、整備に資する財源を議員も職員といっしょに見出していく努力が必要だ。
(4)講義4「学童保育(放課後児童クラブ)の状況と課題」
講義4では、保護者と指導員で組織する全国学童保育連絡協議会の木田氏から、おおむね次の説明がされた。
学童保育は、公的な基準がない中、それぞれの地域の事情に応じてやってよいと言っていたが、連絡会は最低の基準がなければ全国各地の格差が広がると指摘して、国に基準作りを求めてきた。2012年に決めた新しい制度に基準が初めて入り、法的根拠をもって学童保育が進められることになった。これを足掛かりにさらに改善を図りたいと考えている。
2016年の学童保育の数は、2万7,638ヵ所で入所児童数は107万6,571人となっている。1997年に放課後児童健全育成事業として初めて法的に位置付けられ、4月1日に施行した1998年は9,627ヵ所、33万3,100人となっていた。その時から18年の経過の中で3倍以上の子どもが学童保育を利用するようになってきたことが分かる。
1年生の利用率は約33%、低学年で見ると約28%の子どもが利用している。特徴は2014年度までは3年生までという仕切りがあったが、その後なくなり、高学年の利用も増えてきている。
集団の規模は、会としては30名程度が良いと考えているが、国はおおむね40名としている。ところが2016年は71名以上という施設が1300ヵ所以上あった。この規模で放置されていることを大きな問題点の1つと考えている。
国のレベルでは36人から45人までの規模が、補助金などが一番多く出されるように制度が組み立てられている。
大規模な施設では、子どもたちが落ち着けない、些細なことで喧嘩になる、遊びや活動を制限せざるを得なくなる、また事故やケガが多くなるなどの問題が指摘されている。
待機児童が問題になるが、把握した中では2016年で1万5,839人発生しており、227自治体は把握していない。利用者は施設に直接申し込むため、自治体で把握できず、実体が把握しきれいない状況にある。
大規模で放置されている問題と待機児童が増えている現状から、学童保育数を増やす必要がある。
学童保育は公立公営で35.8%、保護者会運営が5.6%で、ここはだいぶ減少したという印象がある。その他、民間企業が4.4%あるが、これが増加する傾向がみられる。
学童保育の実施場所は、学校施設内が54%、児童館や専用施設・公的施設をまとめると8割程度になる。
以上から、入所児童数は今後も増加すること、施設数が増えていることから、施設の分割に取り組む市町村と取り組まない市町村の両極化がすすんでいること、また、待機児童の増加、民間企業の参入が見て取れる。
問題点としては、大規模施設の放置がいつまで続くのかにあり、市区町村で定められた基準が生かされるよう、改善の取り組みが必要と考えている。
学童保育の制度は、1997年に法制化されたが、公的責任が不十分、国の段階で最低基準がない、財政保証も不十分などの問題点がある。
2012年に子ども子育て関連3法が決まり、以降、設備や運営に関する基準、放課後児童クラブ運営指針などが示されてきた。
新制度の中では、対象児童を3年生から6年生まで拡大し、子ども子育て支援事業計画の策定を自治体に義務付けた。子ども子育て会議が開かれることになったが、ここでは学童保育が話題になることはないと聞いているので、ここでの話し合いのテーマに乗せていくことが必要だと考えている。
例えば、放課後児童健全育成事業の最低基準は、自治体が決めるが、それぞれの自治体で格差があり、一人一人の子どもが学童保育の主人公として活動できる内容になっているのか、その点を検証しながら、最低基準を上回る学童が進められるようにする必要がある。
単に居場所としての位置づけではなく、会として求めていた生活を保障する場所としての学童保育が、放課後児童健全育成事業設備及び運営に関する基準の第5条に明示をされた。
放課後子ども総合クラブについて、会は学童保育と放課後子ども教室について、連携は必要だが、一体的に行うことには反対をしてきた。全児童対策事業のように、学童といわゆる教室授業をいっしょにして子どもたちを見守る場所にするという事業がいくつかの自治体で行われている。そこで子どもたちの生活が保障されているのか懸念を持っている。ここでは、指導員は子どもに直接かかわるなと指導され、問題行動があった時だけ注意するなどの対応をするように運営されている。学童保育を生活の場とするためにも、それぞれを分けて実施することが必要だと考えている。
昨年、ニッポン一億総活躍プランで2019年度までに達成する計画が1年前倒しで実施されることになった。国は、施設整備の嵩上げをはかるため、補助率を3分の1から3分の2に拡大する。基本的に来年度で終了するので、活用の検討が必要だ。
また、運営費も指導員の年収を180万円から300万円まで拡大する考えから、補助額が増額された。指導員の処遇改善も図られ、資格や経験による手当が入るようになった。一方、指導員の成り手を確保できないために、自治体によっては基準の引き下げを求める声があり、基準を「従うべき基準」から「参酌すべき基準」に引き下げようという動きもある。
指導員から処遇で相談されることがあるが、これまでの運動の中で少しずつ改善されてきている。それでも指導員は4年、5年で半数が変わる。やりがいのある仕事だが、この給与で、家庭を持つことは大変だという理由でやめていく。どんな状況に置かれているか、ぜひ見ていただきたい。
学童保育は発展途上にあり、学び、新しい状況に合わせて改善していくことが必要だと考えている。その際に、改善の中心に座るのは、学童保育を利用する子どもたちだ。学童保育に行けない子どももいる。保育料の減免制度を持っている自治体もあるが、国の段階ではない。家計の状況で学童保育に通えない子どもたちもいる。所得が少なくても利用できる仕組みづくりを、国に求めていきたい。
質の向上のためには指導員が安心して勤めることが必要で、そのために新しい基準で資格を設けたことは良いことだが、それに伴う処遇の改善がすすまない一面もある。国はメニューを用意したが、自治体がそれについていけていないという側面もある。6時半を越えて預けることができるというメニューを、取り入れた自治体は全体の2割に過ぎなかった。
学童保育にも財政支援ができるようにして、子どもたちが安心して学童保育に通えるようにしてほしい。
(5)考察
本市が2015年3月に策定した「いわき市子ども・子育て支援事業計画(いわき市こどもみらいプラン)」については、国の通達を受けて、計画の見直しを判断したところ、事業量が国の指定するプラス・マイナス10%の増減がなかったために、全体としては見直しを行わず、7つの地区に分けた保育量の見込みで、若干の数字の異動があったため、7月に開かれた子ども・子育て支援会議において、その点についてのみ見直しを図った。
今後、計画期間である2019(平成31)年度に向けて、計画の見直しを図ることになるが、この見直しを図る際に、議会としてどのような指針をもって行政に働きかけていくのか――具体的には、計画の中心に子どもの育ちをおくことや親の働くニーズの高まりにともなう保育量の増加など、をセミナーで把握することができた。
市の本格的な見直し作業開始に向けて、どのような方向性をもって見直しを図るのかなど、定例会の一般質問をはじめ、議会の様々な場面で取り上げていきたい。
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