福島県市議会議員研修会が郡山市の迎賓館グランパレスで開かれ、出席してきました。
講師は政策研究大学院大学名誉教授・国際都市政策研究学院理事長の松谷明彦氏で、「人口減少社会における地方議会のあり方」がテーマでした。
このお話がなかなかのもの。
何でも、人口が減少しているのは先進国の中でも日本、ドイツ、イタリアの三国で、かつて第二次世界大戦の枢軸条約を結んで連合国と戦争し敗れた三国だけだということ。この中でも日本の人口減少は急激だというのです。
こうなっているのは、日本の高齢化率が急速に高まっているためで、日本の人口減少が急激なのはお亡くなりになる方が多いところに主要な原因があるのだといいます。実際、日本の人口構成を先進諸国と比較すると、60歳から65歳にピークがある特異な形になっており、うなずける話です。
この人口構成は政策的にもたらされたもので、戦前、侵略戦争をすすめる中でとられた“産めよ、増やせよ”の政策の時代に生まれた方が高齢化率を押し上げ、その後は戦後のベビーブームの時代に生まれた層が高齢化率を押し上げていくというのです。
一方、少子化は止められるかというと、「止められない」というのです。
人口推計では、2010年から2060年の間に未成年の子どもたちは53%減少するという。原因は25歳から39歳の女性が減少するためで、同じく55%減少する予測になっているというのです。ヨーロッパでは未成年者の数は15%程度増えると推計されるのとは対照的です。
しかも政府が合計特殊出生率を2に上げると言っているものも、現実に少子化を止めることはできないという。
未婚率が急増しており、49歳を越えて未婚の方を生涯未婚というそうですが、前回国勢調査で10.6%だったものが、30年後には27%程度まで上がると予測される。そして、人口の減と同じく25歳から39歳の女性の数も2000年には1300万人だったものが、2030年には800万人に減っていく。この女性のうち70%の方が子どもを持つとして、少子化から増に転じるために必要な2.07人を達成するためには、1人の女性に3人の子どもをもってもらわないと達成できないのだとか。
女性の数が減っていく原因となったのは1956年の優生保護法改定によって産児制限が取られたことにある。この人口減少の状態は動かすことができないので、「人口が減っても豊かに暮らせる社会を形成する」ことに力を尽くすべきという。松谷氏は、「出産をするかどうかは個人が決めることなので、増やすという政策をとるのではなく、出産をするかどうかは個人の選択に任せて、産んだ人を支える施策をすすめる方が良い」という趣旨で話していましたが、少子化対策・・これは本当に困難なことだということが分かります。
そして人口減少の問題でやってはいけないことを3つ上げました。
一つは少子化対策、ニつは企業誘致、三つは市町村合併・・これまでやってきた施策は全部ダメという。なんでか?
少子化対策で若者を地元に引きとめようとしても、より広い世界を求める若者を止めることができない。なぜならそれが若者の特性だから、という。
ヨーロッパでは出て行った若者が、全部でないにしろ10年なり、15年なり一定期間都会で過ごすと地元に戻ってくる現象がおきている。それは、若者が都会で磨き上げた仕事のスキルを活かすことができる企業が地元に存在するからだ、というのです。
では誘致企業で、若者のスキル活かすことができるのか。答えはノーで、誘致企業の場合、大企業の下請けとなる部品などのもっとも利益幅が薄い企業が入ってくるので、所得が低い上、スキルも活かせない。おまけに地方が大企業の下請けになってしまう。大企業の企画・開発部門や、消費地の近くに作られる組み立て・製造部門(職人としての腕が生きる分野)のようなものが地方に必要で、このようなものを備えた地場産業おこしにこそ地方は挑戦すべきだ、という。
一つの例としては越前の万能工作機械があるという。越前刃物の職人の伝統が機械に活かされ、世界的にも成功している事例だとか。
そして合併。これがもたらすものは中心となったところは栄えるものの、支所や出張所となったところは過疎化がすすんでしまう。過疎化がすすむからコンパクトシティーだというものの、これも無駄。第一にインフラ整備に金がかかるし、さらに人口減がすすむことを考えるとコンパクトシティーはできた時から過大な町になる宿命を持つ。したがって無理にそんなことをせず、過疎化がすすんだ地域に公的なバスを運行するなどで利便性を確保することが大切だという。
ここらもなるほど、なるほどの部分です。
そして農業も、野菜や果物、ブランド産品づくりを推奨すると、消費地までの輸送コストで農家の利益につながらないことから、コメ余りの状況を考えれば他の穀物類、特に小麦と大豆に転換することを推奨することが良いという。現在10%程度の自給になっているものを30%程度にするだけでも、農家の所得は上がるはずと主張します。
そして過疎の問題も対応が可能で、例えばシカゴは、町に住んでいるのはお年寄りと若者で、子育て世代は周辺の農村部に住み、町に通勤してくることが普通だという。子育ては農村部が条件が良いと考えているからで、介護が必要な状況になると施設が整備されている町に戻ってくるのだとか。そのような条件を創りだしていくためには町と農村部をつなぐ交通網の整備が必要だと説明します。
今後の社会保障にも話が及び、現在の社会保障水準を維持して2060年度を推計すると、国が借金をせず単年度で収支の均衡を図る状態を前提にすると、租税と社会保障の負担率は91.5%に及ぶとして、これに備えた対応が必要だと説明しました。
一つは住の確保。
公営の賃貸住宅を作ることだという。民間の賃貸住宅は作る際の借り入れの返済などを考慮するとどうしても高い家賃設定になるものの、公営の場合、減価償却を長くとることによって安い料金設定が可能となることが理由。もう一つは相互扶助の活用。施設型の介護ではなく隣人が高齢者の世話をすることによって在宅介護を可能にする。そのためには世話をする人にきちんとした補償をすることが必要で、世話をする時間帯は公務員と同等の扱いをすることも必要で、水準を落とさずコストを落とす方策を考える必要があると強調しました。
で、議員の役割は何なのか。直接は言わなかったような。そういえば「甘いことを言わない」と言っていたことがそうだったのかも。甘いことを言ってもその先は非常に困難な状況しか見えていないことが理由なのだろう。
さて11月15日に向けて県議選があり、日本共産党は、いま、必要な政策として国保税の引き下げや介護保険の負担の軽減、さらに介護労働者の労働条件を向上させて特別養護老人ホームの待機者ゼロなどをあげています。どうもこの政策は「甘いこと」の中に入りそうです。
でも住民の暮らしを考えた時に、現在の困難に手を差し伸べて、命と暮らしを支えなければならない現実に立ち向かっていくことも必要で、決して「甘いこと」ということでもないでしょう。
松谷氏のお話は興味深いものでした。様々な角度からこうした問題を考えていけるよう、さらに学習と研鑽が必要だと思います。
勉強しなくちゃ。
講師は政策研究大学院大学名誉教授・国際都市政策研究学院理事長の松谷明彦氏で、「人口減少社会における地方議会のあり方」がテーマでした。
このお話がなかなかのもの。
何でも、人口が減少しているのは先進国の中でも日本、ドイツ、イタリアの三国で、かつて第二次世界大戦の枢軸条約を結んで連合国と戦争し敗れた三国だけだということ。この中でも日本の人口減少は急激だというのです。
こうなっているのは、日本の高齢化率が急速に高まっているためで、日本の人口減少が急激なのはお亡くなりになる方が多いところに主要な原因があるのだといいます。実際、日本の人口構成を先進諸国と比較すると、60歳から65歳にピークがある特異な形になっており、うなずける話です。
この人口構成は政策的にもたらされたもので、戦前、侵略戦争をすすめる中でとられた“産めよ、増やせよ”の政策の時代に生まれた方が高齢化率を押し上げ、その後は戦後のベビーブームの時代に生まれた層が高齢化率を押し上げていくというのです。
一方、少子化は止められるかというと、「止められない」というのです。
人口推計では、2010年から2060年の間に未成年の子どもたちは53%減少するという。原因は25歳から39歳の女性が減少するためで、同じく55%減少する予測になっているというのです。ヨーロッパでは未成年者の数は15%程度増えると推計されるのとは対照的です。
しかも政府が合計特殊出生率を2に上げると言っているものも、現実に少子化を止めることはできないという。
未婚率が急増しており、49歳を越えて未婚の方を生涯未婚というそうですが、前回国勢調査で10.6%だったものが、30年後には27%程度まで上がると予測される。そして、人口の減と同じく25歳から39歳の女性の数も2000年には1300万人だったものが、2030年には800万人に減っていく。この女性のうち70%の方が子どもを持つとして、少子化から増に転じるために必要な2.07人を達成するためには、1人の女性に3人の子どもをもってもらわないと達成できないのだとか。
女性の数が減っていく原因となったのは1956年の優生保護法改定によって産児制限が取られたことにある。この人口減少の状態は動かすことができないので、「人口が減っても豊かに暮らせる社会を形成する」ことに力を尽くすべきという。松谷氏は、「出産をするかどうかは個人が決めることなので、増やすという政策をとるのではなく、出産をするかどうかは個人の選択に任せて、産んだ人を支える施策をすすめる方が良い」という趣旨で話していましたが、少子化対策・・これは本当に困難なことだということが分かります。
そして人口減少の問題でやってはいけないことを3つ上げました。
一つは少子化対策、ニつは企業誘致、三つは市町村合併・・これまでやってきた施策は全部ダメという。なんでか?
少子化対策で若者を地元に引きとめようとしても、より広い世界を求める若者を止めることができない。なぜならそれが若者の特性だから、という。
ヨーロッパでは出て行った若者が、全部でないにしろ10年なり、15年なり一定期間都会で過ごすと地元に戻ってくる現象がおきている。それは、若者が都会で磨き上げた仕事のスキルを活かすことができる企業が地元に存在するからだ、というのです。
では誘致企業で、若者のスキル活かすことができるのか。答えはノーで、誘致企業の場合、大企業の下請けとなる部品などのもっとも利益幅が薄い企業が入ってくるので、所得が低い上、スキルも活かせない。おまけに地方が大企業の下請けになってしまう。大企業の企画・開発部門や、消費地の近くに作られる組み立て・製造部門(職人としての腕が生きる分野)のようなものが地方に必要で、このようなものを備えた地場産業おこしにこそ地方は挑戦すべきだ、という。
一つの例としては越前の万能工作機械があるという。越前刃物の職人の伝統が機械に活かされ、世界的にも成功している事例だとか。
そして合併。これがもたらすものは中心となったところは栄えるものの、支所や出張所となったところは過疎化がすすんでしまう。過疎化がすすむからコンパクトシティーだというものの、これも無駄。第一にインフラ整備に金がかかるし、さらに人口減がすすむことを考えるとコンパクトシティーはできた時から過大な町になる宿命を持つ。したがって無理にそんなことをせず、過疎化がすすんだ地域に公的なバスを運行するなどで利便性を確保することが大切だという。
ここらもなるほど、なるほどの部分です。
そして農業も、野菜や果物、ブランド産品づくりを推奨すると、消費地までの輸送コストで農家の利益につながらないことから、コメ余りの状況を考えれば他の穀物類、特に小麦と大豆に転換することを推奨することが良いという。現在10%程度の自給になっているものを30%程度にするだけでも、農家の所得は上がるはずと主張します。
そして過疎の問題も対応が可能で、例えばシカゴは、町に住んでいるのはお年寄りと若者で、子育て世代は周辺の農村部に住み、町に通勤してくることが普通だという。子育ては農村部が条件が良いと考えているからで、介護が必要な状況になると施設が整備されている町に戻ってくるのだとか。そのような条件を創りだしていくためには町と農村部をつなぐ交通網の整備が必要だと説明します。
今後の社会保障にも話が及び、現在の社会保障水準を維持して2060年度を推計すると、国が借金をせず単年度で収支の均衡を図る状態を前提にすると、租税と社会保障の負担率は91.5%に及ぶとして、これに備えた対応が必要だと説明しました。
一つは住の確保。
公営の賃貸住宅を作ることだという。民間の賃貸住宅は作る際の借り入れの返済などを考慮するとどうしても高い家賃設定になるものの、公営の場合、減価償却を長くとることによって安い料金設定が可能となることが理由。もう一つは相互扶助の活用。施設型の介護ではなく隣人が高齢者の世話をすることによって在宅介護を可能にする。そのためには世話をする人にきちんとした補償をすることが必要で、世話をする時間帯は公務員と同等の扱いをすることも必要で、水準を落とさずコストを落とす方策を考える必要があると強調しました。
で、議員の役割は何なのか。直接は言わなかったような。そういえば「甘いことを言わない」と言っていたことがそうだったのかも。甘いことを言ってもその先は非常に困難な状況しか見えていないことが理由なのだろう。
さて11月15日に向けて県議選があり、日本共産党は、いま、必要な政策として国保税の引き下げや介護保険の負担の軽減、さらに介護労働者の労働条件を向上させて特別養護老人ホームの待機者ゼロなどをあげています。どうもこの政策は「甘いこと」の中に入りそうです。
でも住民の暮らしを考えた時に、現在の困難に手を差し伸べて、命と暮らしを支えなければならない現実に立ち向かっていくことも必要で、決して「甘いこと」ということでもないでしょう。
松谷氏のお話は興味深いものでした。様々な角度からこうした問題を考えていけるよう、さらに学習と研鑽が必要だと思います。
勉強しなくちゃ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます