伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

立場は違えど特定秘密法は問題・革新懇で元官房副長官補講演

2013年11月27日 | 平和・戦争
 昨日、衆議院では特定秘密法案の採決が、自民、公明、民主によって強行採決され、論戦の舞台は参議院に移りました。

 自民党と公明党、みんなの党、そして維新の会が修正協議をしましたが、それによっても国民の「知る権利」を侵害する法案の骨格部分、特定秘密の範囲、また罰則対象の範囲などあいまいな部分はそのまま。審議がすすめばすすむほど、その悪法ぶりが浮き彫りになる中での採決強行でした。「採決強行」「『数は力』安倍流発揮」「世論の反発押し切る」などとする新聞の見出しに、その不当性が浮き彫りになっています。

 良識の府と呼ばれる参議院。ここでも自民党をはじめ秘密法に賛成した党に所属する議員が多数という困難な状況がありますが、国民の声と国会内のたたかいで徹底審議・廃案の道が開かれることを期待したいと思います。



 
 さて先週の土曜日、11月23日のことですが、いわき市文化センターで、防衛庁の元幹部職員だった方が、この特定秘密保護法案とこれにかかわる国家安全保障会議(日本版NSC設置法案にふれた講演を行ったので、この問題を考える上で大いに学んでいきたいと思います。

 講師は元内閣官房副長官補の柳澤協二さん。防衛庁運用局長、長官官房長などを務め、1997年の日米防衛協力のための指針策定や自衛隊のイラク派遣などを統括した防衛庁の元官僚の方ですので、当然ながら私とは立ち位置が違います。講演後の質問タイムで、最初どなたも手を挙げる方がいなかったものですから、こういう質問をしました。

 「先だって、海賊対策でソマリア沖に派遣される自衛艦2隻のうち1隻は、海賊の出没が減少したので多国籍軍に初めて参加するということが報道されました。また昨日、今日の報道では、自衛隊が海外に派兵される際の携行武器の制限を解除する閣議決定をする方針が明らかになったと報道されています(今朝の報道では閣議決定がされたようです)。こうした動きに、集団的自衛権に向けた準備が着々と進められるという危惧を感じているのですが、お考えを聞かせてください」

 柳澤さんは、これらの自衛隊の活動は警察権の範囲で行われているもので、武器などの問題はその問題として議論されるべきだし、集団的自衛権とはまた別の概念・・こういった趣旨の答えをくださいました。自衛隊の活動の幅が少しずつ広げられることは、どの法律の範囲での行動であっても、自民党自身が作り上げてきた自衛隊の役割の変質に向けた準備行為に見えるのですが、そこは自衛隊の行動に緻密に法律を適用することを考え、実行してきた立場の方ですから、見方も違ってくる。答えを聞きながら、こうした立場を異にする方でも、安倍政権に対する批判的な見解を持たざるを得ない。それだけ安倍政権の異常さが際立ちますし、小選挙区制度で確保した偽りの多数のもとで横暴をつくす安倍政権とたたかう展望も、そこに広がっていることに確信を持てます。

 柳澤さんは、防衛庁時代にかかわった自衛隊のイラク派遣の時に一番気がかりだったのは命をどう守るかで、「ここに目をつぶったら正しい政策にならない」としながら、日本の防衛・外交政策は「日米同盟で思考が止まっていることに限界を感じている」として、普天間基地の移設問題を例にあげました。

 「私は日米同盟の維持派だ」と断りながら普天間基地の移転問題を話した柳澤さんは、「海兵隊の基地の移転先を辺野古と決めた上で、普天間から移すか、そのままか、という議論をしているが、本来、普天間から移さなければならないからどこに移転するのかと議論されるべきだ。市街地の中にある普天間はふさわしくなく、人間の命を差さしおいた議論には疑問を感じる。ここにも日米同盟で思考停止になっていることが表れている」と持論を展開しました。

 また柳澤さんは、現在国会で問題になっている国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案と特定秘密保護法案についても「安倍政権が何をしたいのか分からない」と批判的見解を示していました。

 まず日本版NSCについては、日本の外交・安全保障がかつてないほど厳しい状況だから必要というものの、これまでも北朝鮮のミサイル発射など危機的な状況に対処できてきおり、「なぜ必要か」の本当の議論ができていないというのです。

 特定秘密法案では「『法がなければ(アメリカなどから)情報が取れない』という説明をしているが、これまでも様々な情報をとってきた」と法制定の根拠の薄弱さを指摘。さらに自らも防衛庁内でおこった秘密漏えい事件に巻き込まれて減給の処分を受けたことを説明しながら、新たな法律の必要がないことを強調しました。また、NSCで首相はじめ4人の閣僚に権限を集中するのなら、NSCが間違った判断をした時に検証する手段として情報公開が必用であり、知る権利を国民に保障することは「国民の主権者としての権利であり、賢い政権を選ぶ権利を保障することだ」と強調していました。

 安倍首相がこれらをさしたる理由もないのにすすめることに固執しているのはなぜか。柳澤さんは「子どもがおねだりをするのと同じで、『それが欲しいから』としか言えない」と説明がつかないことを強調します。しかも遮二無二に成立させようとしているのは、「来年にTPPで国会が騒然となるので、大きな懸案のない今のタイミングしかないと前のめりにすすめている」との考えを示していました。

 集団的自衛権では、柳澤さんは「私は賛成ではない」と断りながら「集団的自衛権に踏み込むなら憲法をかえるべき」と憲法解釈で集団的自衛権に道を開こうとする安倍政権を批判しました。

 なぜ安倍政権が改憲に踏み込めないのか。柳澤さんは①連立与党の枠組みに縛られていること、②政権の巨大な与党ともいえるアメリカが債務問題を抱え、経済立て直しのために対中関係を重視し、中国を敵視できない関係にある―ことが背景にあるとの考えを示しました。

 これとの関係で興味深かったのが、10月の2プラス2(日米安全保障協議委員会)の会合で来日したアメリカのケリー国務長官とヘーゲル国防長官がそろって千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ献花したことを紹介したことです。日本の首相や防衛相がアメリカを訪ねた際にはワシントン近郊のアーリントン国立墓地で献花することが通例になっているのだそうですが、ここには無名戦士の墓という戦没者の慰霊施設があるのだそうす。米高官の千鳥ヶ淵での献花は、アメリカのアーリントン国立墓地と同等の施設は靖国神社ではなく千鳥ヶ淵であると米側が考えていることの表れだというのです。

 さらに日米軍事同盟の関係では、例えばオスプレイの航続距離が普天間にもともと配備されていた軍用ヘリCH-46の4倍だということなら、4倍離れたところに基地があってもいいということにになるとか、沖縄の海兵隊は日本の防衛のためではないのに配備の必要性の説明はない現状を考えれば、オスプレイだけでなく海兵隊もろとも追い出されかねない状況でないか、などの考えが語られました。

 立場は違えど、達成をめざすべき方向は一致している。講演を聴きながらつくづく考えましたし、違った立場からみる安倍政権のありようや日米軍事同盟や日米関係の視点は興味深く聞かせていただきました。

 それにしても日米軍事同盟を支持する立場から見ても必要ないという日本版NSCと特定秘密法案。世論の力で廃案に追い込まなければならないとつくづく思います。

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