Cuisine WDYTO30

セックスと美味しいご飯。音楽と美味しいお酒。30過ぎてはや半年以上、食べずらい盛り付けと味付けでアナタにお届け。

目黒 「とんかつ とんき」

2005-02-07 23:46:18 | 食べる男
小生、とんかつ好き。

とんかつといえば、

戦前戦後の歴史の中で
まい泉、和幸、さぼてん、すずやと有名店から、
町々に点在する場末の揚げ物屋まで
さっくりかりかりふわふわしっとりから、
べたべたやわやわかたくてのっぺりまで

何時の世も食欲旺盛な男子を魅了する
魅惑のソウルフードであります。

かの池波正太郎をして、

「皿の上でタップ・ダンスでも踊りだしそうな、いきのいいカツレツ」

そんなとんかつがあるのならば食べてみたくなりませんか。

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目黒の駅前から権之助坂をくだり、
ド派手なパチンコ屋のとなりに
清潔な白地に黒字のおおきな明朝体、

lと l ん l きl

大きな暖簾が真冬の風に手招きみたいに靡いてる。

のれんをくぐると巨大なカウンター席(たいてい満席)
その背後に空席を待つ人、人、人のいつもの風景。

そういえば、
ここ1年くらい、とんかつシンドロームに陥ったときは
必ず立ち寄るようになったけど、カウンターに座ったことがない。

座るなり、「へい、今日はなんにしましょう」と聞かれるらしい。
(ヒレとロース、串かつしかない。)

この日もいつものように、懐かしい学食のような2階のテーブル席へ。

清潔な店内、このご時世めずらしいくらいピシッとした
「サーヴィスの乙女たち」がテキパキと動き回ってる。

瓶ビールをお願いすると、小さな小皿にピーナッツが運ばれてくる。

まあ、得てしてとんかつが食いたいなあというときは
明らかに、空腹の絶頂、揚げ物を渇望、しばらくの辛抱。

ピーナッツをかじりながら、コップ(グラスじゃなくて)にビールを注いで、
もう注文したのに、壁にかかったとんかつとご飯しかないメニュー表を見たり、
キャベツのボウルをもって客の食いっぷりを注視する三角頭巾の店員さんを見たり。

この時間、かなり幸せ。

程なくして、業務用エレベーターで1階から揚がって上がってくる気配がする。

周りを見回し、次はココだな、などと勝手に期待感を高め
すきっ腹に流したビールも消化するくらい胃液がでてきちゃう。

タテに盛られた色の濃いキャベツとトマト。
鼻孔を刺激する豚汁の香りと、
鮮やかな塩のお漬物に醤油が数滴。

小さなお皿の上に、整然と並んだロースとんかつ。

普通の切り方に加えて横一文字に包丁がいれてあって
一口大の大きさとなり、

しかも衣が肉にくっついてない。

ココで好みが分かれるそうだけど、
この細かく細かく砕いたパン粉の、
この「とんきの、とんかつ」

普通のとんかつじゃないのです。

まさに、「とんきの、とんかつ」


ソースを適度にまぶして、

ほんの一寸だけマスタードをつけて

上手に衣と肉をセットで箸で持ち上げる。

左手にご飯を持って、

なぜか一旦ご飯にのせるふりをして

ほうばる。

・・・・。

染み入る旨さに手が止まらない。
無言で食べ続ける。衣と肉を上手に持ち上げ続ける。

時折、豚汁を啜りながら漬物に手を伸ばす。

キャベツと肉を一緒に味わう。

間髪いれずにつやつやした白米をかっ込む。

・・・・。

今日がこの世の終わりでも、
昨日よりちょっと後悔がすくない、貴重な瞬間。


前出の偉大なる文豪曰く、

【ま、人それぞれの好みはあるにしても】

【ともかくも[とんき]のとんかつをたべて】

【「まずい」という人はいないだろう】


ちなみに御大は、

「ロースカツレツでビールか酒をのみ、ついで串カツレツでご飯を頂く」

ことにしていたソウナ。

いつの世も誰に対しても不公平なく満腹という幸せを提供する。

いつまでもそのままで、そのお味で、
小生のちっぽけな胃袋に
幸せを提供しつづけて欲しいと思う、

今日この頃。


Waiting/Green day