Cuisine WDYTO30

セックスと美味しいご飯。音楽と美味しいお酒。30過ぎてはや半年以上、食べずらい盛り付けと味付けでアナタにお届け。

銀座 「ざくろ」

2005-10-22 02:20:51 | 食べる男
そういえば、もう29歳を超えているじゃないか。

生まれた処を離れて、10年経ったという事は。
なかなか前に進まないのを、なにかと理由をつけて
先伸ばしにしてるワケにも行かなくなってきた。
もう渋滞を満喫してる訳には行かないのだろう。

信じられる、信じてもらえる30になれるのだろうか。

はたまた。

シャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブ

いつのまにか真っ白に生まれ変わった銀座マツヤのお隣、
昭和通り沿いにちいさな地下街へ誘う、とても短いエスカレーターがある。

郷土料理屋を思わせるノスタルジックなフォント、
これこそがザ割烹着、という装いの仲居さんと
妙なスーツの奇妙なフロントが出迎えてくれる軒先。

日本料理としゃぶしゃぶの店、銀座「ざくろ」。

4年の会社勤めで一度だけ、
担当していた代理店さんがとても儲かったので
チームで「スーパースター」賞をもらったことがある。
歴代の受賞者の名札がついたヘンテコな星のトロフィーと
現金で3万円。3万円。。。。3万円て。

たまの贅沢、と机の中でご祝儀を眠らせたあと、
諸先輩の指示に従い、いつか行ってみたい店、を基準に
選んだのがココだった。もう2年近く前の事だ。

そして今週、最終出社日までのこり数日、の日。

云うところの タモリ、たけし、さんま のビック3のような
超大御所メンバーに連れられ、2度目のお「しゃぶ」りを堪能した。

飲み口が薄いグラスでキリと冷えたビール。

まったくもって店内に年下がいない。気がする。多分。
仲居さんも他の客層も、とにかく一世代上のカタマリ魂だ。

豆腐の下にはやわらかく煮たアスパラが仕込まれてる。
口の中でとろける大豆とアスパラの甘味。
ああ、いいぞ日本人。和食最高。

冷やしトマトだって、ただのトマトの角切りだって、
氷を敷き詰めたボウルに器をのせちゃう日本人。

程なくして運ばれてくるバームクーヘンの型のような湯鍋。
鍋の中央にはスナフキンの帽子のような銅製の筒が設置されていた。

それぞれ、「定食」と呼ぶにはあまりにお高いしゃぶしゃぶ定食。
うすうくスライスされた肉の朱色に霜の白濁点が踊る。

泡ぶく立った出汁湯にしゃぶしゃぶとくぐらせ
ニンニクを利かせた秘伝のゴマダレをちょいちょいとつける。
日本に生まれてホントに良かった。やっと分かったよ。ラモス。

さらに粋すぎるビック3の計らいで、さらに追加で1皿を注文。
しかも独り占めの指令が発令されてしまった。

ああもう興奮のあまり、アタマの中はフルタチ氏の如く、

もはや胃袋は怒号と共に喉仏までせり上がりくる勢いであります。
まるで白地に牛の字が染め抜かれた旗を掲げて、荒れ果てた荒野で
革命を謳う地鳴りの様なすさまじい雄叫びをあげている様相。
生粋の職人よって丁寧に研磨され、丁度指の当たる部分に
見事な節がついた竹の長箸をめいいっぱい広げて一切れ、
たった一切れで2000円はくだらない最高級の熊本産牛は
赤い煉瓦に降りた初雪の様な真っ白い霜を携え
プレイガールカレンダーとも見える風光優雅な曲線を描いて
一皿に五切れという精鋭部隊は華麗な円形隊列をたもったまま
とうに沸点を超え、真白い煙をはいてぶくぶくとゆれる
ババロア形の戦場へと、テーブルの上を舞う最後のその瞬間を
待っているのであります。

みたいなことに、なってしまう。

そんなこんなで、
もう止められない大御所の意向にまたしても沿う格好で、
古舘氏もびっくりの2枚まとめて湯をくぐらせ、
口にほうばってしまった。

ああもったいない。と思いきや。否。

どんなにいっぺんに口の中にいれても、舌と上あごに触れた瞬間、

はらり、はらり。

お肉はなくなっていくのでした。消えた。溶けた。風と共に去り牛。

もうどうにでもして顔になっていると
食後のお口直しがやってくる。
いいの。今日はもう口は直したくありません。と
うっかり断ろうとしたところ、丸い重箱のような大きな筒。

くずきり、っておいしいのねえ。
近所のオバちゃんのような感想しか出てこない。もう。

深い器に沈んだ葛餅を箸で器用に拾い上げ
上品なコクと甘さを孕んだ黒蜜につけると、
人種差別を承知で、もし来世がブラジル人だったら
なにがなんでも帰化してやろうとココロに誓います。

ほんとうに、ごちそうさまでした。

シャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブシャブ


この10年、たくさんの人に出会って、たくさんの人を好きになった。
たくさんご飯を食べたし、たくさん射精した。と思う。

この4年、たくさん働いた。

この2年、たくさんイライラした。

この半年、たくさんの本を読んだ。

この2週間、たくさんお酒をのみ、たくさんの人に遊んでもらった。

昨日、仕事を辞めた。

この10日間は、なにをしよう。

これからの1年は、色々と決めることが必要な気がしている。

次の3年は、もっとマジメに働きます。もっと。


あとブログはもっと短くしていこう。読みにくいし。


Sweetest Goodbye/Maroon 5

代々木八幡 「LIFE(ライフ)」

2005-07-10 21:05:28 | 食べる男
暑いですね。猛烈に。

長く重苦しい梅雨明けが待ち遠しい。
湿気にまみれた草いきれを吸い込むと
久しぶりに全身が汗が噴出す感覚を、
軽くヤバイわき腹のカラダが思い出すこの季節。

かならずまだハナタレ小僧だったあの頃の、
「あの遠足」を思い出す。のです。

制限時間は24時間。

移動距離は103キロ。

自分の足以外、絶対に使ってはいけない。

中継地点(検印所)は10数箇所。

陽が頂点を過ぎる正午過ぎに母校をスタートして、
翌日の同時刻までの間、あるのは呼吸と休憩、
そしてココロの友、だけ。

小学生の頃、押してもらうのが楽しみだった夏休みのラジオ体操のように
首から下げたスタンプカードが、唯一の証明と誇りと思い出になる。

母校のある甲府市から、中田英寿韮崎市を抜けて清泉寮清里を登り、
しじみ汁で温まる野辺山を這うようにして登りきり、ようやく小海へおりて
臼田でおばあちゃんに林檎をもらう。(美談あり)割愛。

http://www.first.kai.ed.jp/ensoku/ensoku_rekisi.html

「敢えて強行遠足と名づけたのは、自分の体力に応じて
歩けるだけ歩くことに事を強調せんがためであった」

そんなことを毎年、しかも100年近くやってる高校だった。


テクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテテクテクテクテクテクテク

カラダは疲れると炭水化物を欲します。

例えばプールで泳いだ(ような激しい反復運動)後は、
うどんとかパスタが食いたくなります。

そんな訳で、セックスもオザナリにパスタを食いに行くワケです。

富ヶ谷の商店街にはこざっぱりした店が建ち並んでいる。

路駐できない区画にはめったに立ち寄らないのだけど、
Tarlumの裏にクルマを停めて、時間を気にすることなく
味わいたいイタリア晩御飯をだすカフェを発見探検僕の街―。

疲れた体に元気な野菜と炭水化物。

モッツァレラと生ハムのサラダ。
自家製のスパイスもっさりのソーセージ。
海老を丸ごと揚げてアボガドのソースで食す。

勢いあまって週に2回行ったりして、
格別に旨いとおもったのは

白金豚(プラチナポーク)のグリル、

それにトマトソースのフィットチーネ。

特に豚のグリルとか焼き物に添えられてる野菜。
真っ白のお皿に山盛りの焼き野菜達、を
ころあいの良い大きさにナイフで刻んで
うまいことフォークに、肉と一緒にブ刺して
人目もはばからずバカでかい口を開けて、
舌のうえしたで十二分に味わって咀嚼しながら
間髪いれずにモレッティをガーと流し込む。

これはもうね、なんつうの。

うまいよねえ、イタリアンな人々は。飯を食うのが。

あと数量が限定されてる「田舎ピザ」は
サイズもグも生地のモチモチも味付けもサムズアップです。

そんなスロウな心意気を
ファーイースト島国の、しかも富ヶ谷で
ナポリの趣きそのままにゆったりのんびりグダーっと
心地よさ、栄養素、ゆっくり流れる時間を全部味わえる。

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そういえば村上春樹の本にはものすごくよくパスタが出てくる。

「ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」

アフターダーク、イマイチだったなあ。。
文庫になるまで待てばよかった。ああ、よかった。

旨いものをくって、栄養を汗だくのカラダにメイ一杯蓄えて
でもわき腹に付く浮き輪みたいなヤロウには気をつけて。

思い出して、思い直して、思い切って
この夏を乗り切ろうと思う、今日この頃。



「今、ここにあるのは呪いのような意志だけだ。
長い長い列を、その脅迫観念だけが支えている。
とにかく歩け。何も考えるな。ただ足を前に出せ。
なぜこんなことをしているのか、
いまどこにいるのかを考える余裕もない。
ただただ、目的地目指して彼らは進む。」

「夜のピクニック」恩田 陸


Walking After You / Foo Finghters

南青山 「al solito posto (アルソリト・ポスト)」

2005-03-10 23:28:21 | 食べる男
ハタと気が付けば3月も半ばに差し掛かる弥生の季節です。

雪が降ったり、急に気温が上がって汗ばんだりする今日この頃、
身の回りの事モノ全部が「波」に見える。

毎日安定しない体調、浮き沈みの極端なテンション。
何の前触れも無く突然やってくる家族の危機と安堵。
日々移り変わる興味と感心と、寄せては返す労働意欲。

時々津波のように迫る性欲。

穏やかに佇みたい道徳と倫理のモラルココロ。

会いたくなって、ヒトリになりたくなって、
電話して、電話でる気なくなって。

貯金目指してコンビニ飯して、ゴチソウして散財する。


ボナセーラボナセラーラボナセーラボナセラーラボナセーラボナセラーラボナセーラボナセラーラボナセー

外苑前から某レコード会社の黒いビルの路地と、
南青山のヘンテコなプラダからくる細い道路が
ちょうど交差する辺りに、全体が細長く白い一軒家がある。

一階は絶品で有名なケーキのショーケースとキッチン。

ガラスのドアを引くと、ボナセーラアと声をかけてくれる。

表参道が仕事先だった頃から、
ちょっと贅沢なイタリアンといえばココだった。

ちょっとした「波」に誘われて、過去の女史と
久しぶりに劇ウマリゾットを賞味に来てみた。

「いつものところ("al solito posto")」の
ここの名物は「ブイヤベース」。

モレッティを呑みながら、季節のイタリア野菜を
ピーナッツソースのようなモノであえたサラダで
やってくる魚のごった煮、に想いを馳せる。

毎週木曜日は「ニョッキの日」だそうで、あのプリとした食感と
ソースが絡まる舌触りに目の無い二人は迷わず
ジャガイモのニョッキ ソレント風 トマトバジル モッツァレラチーズソース
をお願いする。

ソレント風、とはナポリの南、イタリアを足の形に例えると
足首から指4本分くらい上のスネに位置する港町で、
トマト、モッツァレラチーズ、バジルが入るとそれだけで
ソレント風、なのだと。

バジルを練りこんだニョッキを、
おおぶりのモッツァレラと一緒に突き刺し
トマトソースをたっぷりつけて口へかっ込む。
丁度いい塩加減とソースの酸味がああ至福の極み。

自家製のゴマパンできれいにトマトソースまで満喫して一段落していると、
すっかりイメチェンの完了した恰幅のいい女性スタッフが

断末魔の口をあけた今日の主役「めばち」を
氷を敷き詰めた大きな皿の上に乗せて見せに来る。

「こちらがこれからブイヤベースになりますから。」

嫌が負うにもテンションがあがってくる。

真っ赤な鍋の中には、主役のほかに
手長エビをはじめとした魚介(ムール貝とかあさりとか)、
それにオリーブやら原型をとどめない玉ねぎのような野菜が
まさしくごった煮になっている。

貝と海老を避けながらスープですくって一口、
どんなに盛り上がらないデートでも、自然と笑みがこぼれる。

キレイに取り分けてもらって、残った出汁で
いよいよリゾットを作ってもらうのだが、この間がタマラナイ。

小さく一人前に持ったピンクがかったリゾット。
ほのかに芯の残った米の固まりを
上手にスプーンですくって口に運ぶ。

美味い。美味いよ。ジジさん。

ちなみにジジさんは、毎週木曜に狭い店の中を
ギターを抱えて徘徊するなぞのおじさん。たぶん歌手。

まったくもって大満足してるそのタイミングで、
「デザートはどうしましょう」と声を掛けられる。頂きますとも。


数種類あるケーキのフルラインナップから、
1カットをさらに半分にしてくれるので、
もうマンプクでなんにも食えない二人でもたいてい2種類は味わえる。

といっても必ずお願いするのは、マスカルポーネムースとイチゴと、
(伝説の)「マチェドニア」フルーツタルト。

もう説明するのも面倒なくらいな絶品。

濃厚なマルカルポネ→フルーツ酸っぱい
を交互に堪能しながらダージリンで一息。

久しぶりに靴の中で足の指が動く動く動く動く。

舌と胃袋的には、大満足の久しぶりの贅。

一方の連れと言えば、、
ひとしきりお金の愚痴と眠たさを全面に出したまま、
たいした感動も無さげに店を出るなり、

「ゴチソウサマー」

いやそのつもりだけどさ。
なんつうの。この溝が過去のヒトになった訳で。

なるほど。波に乗ればいいってもんじゃ無いわけだ。


ボナセーラボナセラーラボナセーラボナセラーラボナセーラボナセラーラボナセーラボナセラーラボナセー


時期柄、次々と同僚が去っていく。
信頼のおける人が身近でなくなっていく感覚は
なんだかデカイ波がやってくる予感を連想させる。

ココにも大きな大きな波が迫る。

君塚良一がR25誌のインタビューで云っていた。

「本当にいい波が来ているのに砂場で膝抱えてるサーファーはいないでしょ。だから、来た波にはウワーッって乗る」

でも「MAKOTO」はちょっと、見る気しないよ。君塚さん。


ひーとりで渚に立ってー。
寄せる波にただ吐息だけー。





Ride The Wave/Motor Ace

富ヶ谷 「アクアブラッセリー TARLUM(タールム)」

2005-02-26 23:52:36 | 食べる男
本当に御気に入りの店は、人に教えたくない。

環八沿いに、同じくらい素敵なカフェを見つけるまで、
この、代々木公園の裏手にあるheads(ヘッズ)仕様のカフェレストランは
数年前から都内一等のお気に入りで、
いろんな人とのいろんな思い出がギッシリズッシリ詰まっている。


ダーン。ダダダダーン。ダダダダダーン。ダダダダダーン。ヒャララララ。


土曜なのに、ヒルズで「オペラ座の怪人」を見た。

ベイシクリー、ミュージカルとは縁が無い。

四季は一度しか見たこと無いし、映画「シカゴ」も見てない。
まして本場のブロードウェイに行きたいなあ、なんて思ったことも無い。

有名な脚本だそうで、怪人であるところのファントムの
切なく悲しい不遇の恋物語は世界中が涙した、そうですか。
常軌の狭間で生きる怪人への感情移入は容易じゃないと思うけど。

それでも、見所がある映画だなあと思った。
特に「マスカレード(仮面舞踏会)」劇中劇のシーンには大満足。

歌、というか歌詞で
物語のストーリーを追うのが
こんなに疲れるとは。

満足と同時に、完全に血糖値が下がってしまい、
久しぶりに富ヶ谷のタールムを訪れることに。


ダーン。ダダダダーン。ダダダダダーン。ダダダダダーン。ヒャララララ。


初めて訪れたのはもう2年ほど前。
まだオープンしたばかりだったと思う。

友人のお陰で優雅に品プリオチャラケおテニスを満喫した帰り、
スノッブな外観に惹かれてみんなでフラリと入ってみた。

地上2階に地下1階、それぞれダイナー、ラウンジ、ブラッセリーと
雰囲気も違ってメニューもそれぞれちょっと違う。
その上はアパレルブランド「AsKnowAs」が手がけたアパートメントになっていて

アクアブラッセリー、なので、シーフード。

メニューの一番目立つところには国産の牡蠣が
「さあ食べてごらん」といわんばかりに踊ってる。

正直、生牡蠣はもう長いことリハビリ中で。

魚介をフンダンに使った、フレンチ系のメイン皿は
どれもカフェ、ではとても括れない絶品しきり。

特にオススメはウニとアスパラガスのリゾット。
悶絶します。この味付けに惚れ込んで、良く通った。

その昔、駒沢のバワリーで初めて
鶏肉のゴルゴンゾラソースを食べたときと同じ感動。
ああ、カフェでこんなにウマイものが食えるなんて、と思った。
(久しぶりにこないだ行ったけど、最近はそうでもないねえ。)

と、思ったら同じが作った店、だった。

そんなこと知らずに初めてここでリゾットを食べて、
「バワリーと同じ味がする」て気が付いたときは、
後で凄く嬉しかったなあ。

噂で、当時バワリーにいたシェフが
開店直後のこのタールムに移ってたらしい。
ホントだったら併せて嬉しい舌自慢。

これからもウマイ店をお願いします。山本さん。

あ、表参道のモントークはイマイチです。個人的に。

というわけで、
数年を経て、お気に入り二等二番になってしまったこのアクアブラッセリ、
この日食べたマロンタルトの激ウマ舌触りのお陰で、
またしても1.5番まで返り咲きました。

365日朝の8時から翌4時まで開けっ放しの便利さは、
込み合ってきた環八の某カフェをおさえて、また
一番のお気に入りになるやもしれないね。

と云っても、

メシは何処で食うか、

よりも

誰と何を食うか、

で決まるって話だ。うん。


Sea Of Sorrow/Alice In Chains

川崎市 高津 「とん黒」

2005-02-18 00:18:28 | 食べる男
熱だ。熱が出た。

なんでか自宅にあるハローキティの体温計、
平熱以上を測ったことが無かったキティちゃん。

ここ数年、久方ぶりの38度5分越え。天城越え。

世の中にチョコレートが飛び交う2月の連休明けの1週間、
ほとんど残ってない有給をフルに丸2日使って、自宅で眩暈と倦怠とタイマン。

さすがに2日も休んだらヤバイと思って夕方から一瞬出社してみるも、
やっぱダメダつんで2時間で意識混沌顔面蒼白になって戦線離脱。

ここ2日、ヨーグルトとよく煮込んだポトフしか食ってない。
栄養をつけないと。ブタミンパワー。


そんな衰弱しきった1週間に、
思わず2回も通ってしまうとんかつ屋が
川崎市は高津区にあるのです。

どこぞの文豪がお薦めしてるわけでもなく、
界隈にすむ住人の胃袋をひっそりと満たしてるタイプ。
ご近所コムニケーションに有るところの、
「ああー、あそこねえ。おいしいよねえ。」的幸福論。

と、侮ったそこのアナタ。

わざわざ周辺に駅も無い川崎のデッドスポットに出向く価値、
あるんです。宅からは3分だけど。

ブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒ

川崎駅から溝の口まで縦に繋がる、南部沿線道路。
その脇道に佇むシックすぎる薄暗い軒先。

とんかつ屋にあるべく、白い蛍光灯にボリュームのある黒字の明朝体。
でも「とんかつ」がフォント45ptに対して、
肝心の店名「とん黒」は10ptくらいになぜか控えめです。

店内に入ると、清潔感のある大き目のカウンターに
大きなテーブルが2つ。奥にはその昔は小上がりだった
と思われる、3畳程度の中途半端なテーブル席がある。

カウンタ越しのキッチンから、よくみえる壁の高いところに
今じゃリサイクルショップでも見かけない古めかしいテレビ。

その調理場には、
30cmはあると思われるコック帽を
目深にかぶったおじさんが揺れている。

メニューをみても、一通り「串、ヒレ、ロース」それぞれの上、
あとはコロッケ、海老フライなどの揚げ物を混ぜた定食のみ、で。

人もまばらなカウンターに座り、コキタナイ朝日芸能なんか読みながら
お茶を啜ってしばし調理場の目深コック帽に見とれる。

何年も何年も繰り返してるであろう、マシーンのような手さばき。
匠の技とスポーツ紙交互に見とれながら待つことしばし。

初めて、「上ヒレ定食」が
目の前に運ばれてきたときの衝撃を、今でも覚えている。

「おおお」

思わず唸る、その質量。

山盛りのキャベツ(明らかに日常より多い)に寄りかかる、
濃い目の色味がついたそのとんかつ(かなり大きめだけど、まあ常識の範囲内)
その隣に御椀に盛られた白米、
まるで「がんばれタブチくん」にでてきた山盛りご飯、
なんなら一角を箸で掘ってお茶いれちゃうくらい。

圧巻なのは、お漬物の量。

完全に常軌を逸したサイズと雰囲気。

厚さがゆうに3~4センチはある。
お新香一切れの実寸大↓

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まるでなにかに復讐するよーうにー。

動揺して思わず浜省を口ずさむくらい、デカイ御新香。

メロンの角切りみたいな、同サイズのキュウリと大根、しっとりと美味しいナス。

もちろん、これだけでご飯がお代わりできる、くらい美味しい。

肝心のとんかつ本体は、
上質な肉質とカラット衣タイプで、
あの、無言で貪りつくときに脳みそに大量に分泌される、
ガツガツとんかつアドレナリンは、
しっとり衣の名店中目黒の「とんかつ とんき」を彷彿とさせる。


近所にこんなに美味しいとんかつを出す店があったなんて。

4年も住んでるのに気が付かなかった。
というか気付いてたけど、すんなり入れる店構えじゃない、んだね。

今週も、ニガテなヒトリ飯を
ここなら満喫できるに違いない。


Here We Go Again/Everclear