JEWEL BOX KDC!!

軽井沢学園を応援する会 会報 ストリートパズル12号より


あいかわらずここのスタッフさんには頭がさがります!

‐園の庭をはきながら‐
断ち切れ!!黒い鎖
たかねっち☆

 「虐待の世代間連鎖」皆さんはこの言葉を聞いたことがありますか?ストリートパズル第2号で掲載した“キミは悪くない”というお話しの中でも取り上げましたが、虐待を受けたこどもを放っておけば、その子が親となってから再びわが子へ、更にはそれが孫の代へと受け継がれます。そんな悲しい連鎖のことを虐待の世代間連鎖と呼びます。実際、虐待により施設入所したこどもの親も実は昔、親から虐待を受けていた。などという記述を家族調書からも目にします。

連鎖の原因は諸説ありますが一般的に言われていることは、幼い頃から虐待的な人間関係の中で育ってきたこどもにとって暴力は日常的な動作であり、力によって支配し支配されることが当然と思いながら成長した結果、わが子に対しても虐待を再現してしまうということです。また、わが子を傷つけてはダメなんてことは百も承知で、気付いたらやっていた。繰り返す自分、エスカレートする自分を止めることができずに苦しんでいる方も多いそうです。

施設は、虐待を受けてしまったこどもの傷を癒すことはもとより、この子たちを繰り返さない人へと育てることも大切な使命なのですが、受けた心の傷は想像以上に根深く、そう簡単に修復できるものではありません。それを象徴する出来事が今、全国の児童養護施設の中で起こっています。それは「施設内暴力(虐待)」の問題です。

児童虐待防止法施行や社会の関心の高まりによって、虐待発見→通告→調査→保護までの過程がスムーズにいくようになった昨今「やれやれ、親子分離(児相が職権により虐待した親からこどもを引き離すこと)できたからこれでひと安心」と、虐待の問題が万事解決したと思われる方もいますが、施設入所してからもなお問題は続いているのです。
施設内暴力とは、その名のとおり施設内で起こる暴力です。弱い者を支配するために一番効果的な方法が暴力であると学習してきた彼らは、幼い頃は暴力の被害者でしたが、年齢が上がるにつれ加害者へと転身していきます。被害者が加害者となって、さらなる被害者を生む。まさに、虐待の世代間連鎖ならぬ「施設内連鎖」が起こっているのです。
これは、昔からあった問題だと言われていますが、学校内でのいじめや体罰問題、全国各地で起こった施設内虐待事件などによって数年前から私たちも危機感を持つようになりました。

傷つき辿り着いたこの場所で、追い打ちをかけられるように暴力にさらされる・・・

決してあってはならない事ですが、この軽井沢学園においても暴力の問題は他人事でありません。私が事務室で仕事をしていると、突然こどもの叫び声が!何事かと駆けつけると小6の男児が小2の男児を蹴飛ばして泣かせていた。また、別の日にその小2の男児が今度は3歳の幼児を突き飛ばして泣かせた...なんてことは日常的にあります。兄弟喧嘩の延長とも取れるこの行為ですが、ここで暮らすこどもたちの背景を考えたら、単なるケンカで済ましていけない根深い問題がそこにあります。

このように繰り返される負の連鎖をどうやって断ち切り、こども達に本当の安心安全を保証していくか。私たちは4年前から「安全委員会」という委員会を立ち上げました。その会ではまず手始めに暴力の発生要因や、起こりやすい曜日や時間帯、職員配置などを分析し、暴力や危険な状況に対し職員がすぐに介入できるような体制を作りました。
それと同時に、こどもたちへの権利に対する教育も始めました。「全てのこどもは人として尊ばれる」ということや「自分の権利が守られているのだから他人の権利も当然侵してはならない」ことを様々な場面でこどもたちに伝えます。ここでいう権利とは、暴力を受けない権利のほか、大切なものを奪われない権利、言葉によって傷付けられない権利等を指しますが、理解に乏しい幼いこどもには“マモルンジャー”というヒーローの登場する紙芝居を作り、視覚に訴えたりもしました。また、10か条から成る我が家の独自ルールを作り、いかなる理由があっても暴力は絶対にダメだということや、被害に遭ったらすぐに近くの大人に相談することを周知徹底しました。

そんな中、権利意識の高まりなのか、あるキーワードが軽井沢学園の中に浸透します。それは『ケンリシンガイ』という言葉です。権利侵害。大人でも普段使うことの少ない難しい言葉。この言葉をこども達が日常的に使うようになったのです。
例えば「たかねっち~、タロウくんがボクに権利侵害してくる!」と訴えてきたかと思えば「そっちが先に権利侵害してきたんだろ!!」とこんな感じです。先日も小1男児が「ジロウくんに権利侵害された~」と泣きながら訴えて来ました。使い方は少々間違ってはいますが...
このような訴えをこどもたちは「言いつける」とか「チクる」などと言いますが、ここでは、“相談”という言葉で統一し、これを大いに推奨しています。“相談”を受けた大人は仕事の手を止めて、すぐにその対応にあたります。両者の言い分を聞き、お互いに謝るべきところは素直に謝り、暴力に訴えずに別の方法はなかったかを一緒に考えます。

そんな取り組みを始めて数年が経ち、暴力が完全に無くなったとは決して言い難いのですが「困ったり、嫌なことがあったら我慢しないで大人に話してもいいんだ」という雰囲気は定着してきたように思います。そのため毎日こどもからの相談が絶えません。でも、それが嬉しいのです。だから私は毎回こどもに「相談に来てくれてありがとう」と言います。

連鎖を断ち切るために必要だと言われていることは他にもあります。過去の虐待経験によって多くのこども達が抱える消えることのない痛みや悲しみ怒りなどの複雑な感情を受け止めながら、少しずつ頭の中を整理していくことです。また「ボクが悪い子だからママに叩かれたんだ」という誤った認識も訂正しなければなりません。更には、大切に扱われた経験に乏しく、自己肯定感(自尊心)の極めて低いこども達に対し、少しでも大切にされていると実感できるように意識して関わることも必要などなど・・・・・・・挙げればきりがありません。課題は山積みです。

しかし、これらを全てクリアとしても連鎖が止まるという保証はどこにもありませんし、誰にもわかりません。私たちは何の確信も無い中で、それが必要だと信じてやるしかないのです。何故ならば、ここはこどもたちにとっての最後の砦なのだから・・・             
おわり











【たかねっちからのお知らせ】
暴力行為を日常的に繰り返すこどもであったとしても生まれながらの加害者はいません。むしろ被害者であったに違いありません。そんな視点に立ち、こども達を被害者にも加害者にもしないためにはいったい何が必要なのか。そして、私たち大人がすべきことは何なのか。そんなことを、ストリートパズルを購読して下さる皆さんと一緒に考えてみたいと思い、軽井沢学園を応援する会では来年3月1日(土)(時間未定)に佐久市勤労者福祉センターに於いて、こどもの人権や暴力防止についてのセミナーを開催致します。講師には、こどもへの暴力防止プログラム普及のために全国的な活動をされている先生をお招きする予定です。詳細はこのストリートパズルにて随時お伝えしていきたいと思いますが、皆さん今からスケジュールを開けておいてくださいね!
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