旧 日々道草

2004.11~2014.9 ブログ  大野博美

神保町の三省堂で

2007-10-29 22:22:28 | 本と雑誌
行ってきました。
春日武彦『「治らない」時代の医療者心得帳』大好評記念トークショー
春日武彦(著者)×吉野朔実(イラスト)+穂村弘 (読者)という豪華顔合わせ。
あの、吉野朔実さんのエッセイ漫画にたまに登場する3人組が生で見られる!
というミーハーな気持ちで参加しました。
私はそもそも「本の雑誌」の吉野さんの漫画が、穂村さん春日さんを知ったきっかけでしたから。

受付が医学本カウンターだったし、もともと臨床現場の医者の悩み相談コーナーとして医学新聞に連載していたものの単行本化だったので、お医者さん向けの話かしらと思ったら、読者としての穂村さんの質問を中心にしたお喋りという感じでした。 面白かった。

この本の前書きの中に「何故人を殺してはいけないのでしょうか?」という質問に対する春日先生の答えがあって、それに続いて「実際に殺人に手を染めたことのある人物には過去に何度も会ってきたが、やはり彼らは微妙に雑駁な存在に堕している。人生において、まるでデジタル画像の画素数が減ってしまったかのように繊細さを失っている。」
という一説が出てくるのですが、そこからトークは人としての画素数(繊細さとか品格とかそういうニュアンス)についてに終始した印象。 画素数が減るとか増やしたいとか、多い人少ない人とか。
三人三様の語り口が面白かったです。

吉野さんはとても論理的でクールな口調のスレンダーな美人でした。
すごい妄想まじりのロマンチスト穂村さんとは思考が違うようだけど、それがお互いとても面白いんだろうなあ。と思わせるやりとりでした。

春日さんは、声が高くて、ざっくりした口調で、一人称はオレで、明るくて力強い説得力があるような方でした。 さすが百戦錬磨の精神科臨床医だ。と納得。
何冊か読んだ本の印象だと、文学的だったりロック好きだったり、ご自身の屈折した妄想を語ったり、なんかもうちょっと暗いイメージだったので、意外な感じでした。
本にサインをいただいている時に、つい「思ってたよりも明るい方なんですね」と、失礼なことを言ってしまったら、「ええ、けっこういいやつなんですよー」と笑ってらっしゃいました。

余談。
穂村さんは中学生の頃、鞄に「バナナブレッドのプディング」を入れて持ち歩いて心の支えにしていたそうです。救われたそうです。( 高校生の頃ノートに吉野朔実漫画のセリフを抜き書きして拠り所にしたという話もあった。)
トーク中、本を読んで勝手に著者に思い込みを膨らませておいて裏切られたとか言われても困るよねー、みたいな話の時「でも、大島弓子には神を求めるよ!」と断言してました。すごい。大島弓子愛だなあ。
いい話、だと思います。


川瀬巴水展

2007-10-22 22:05:09 | アート・文化
この人の作品、たまにサントリー美術館や近代美術館でみかけて、いいなと思ってました。
「川瀬巴水(かわせはすい)
旅情詩人と呼ばれた版画絵師 没後50年」
西馬込の大田区郷土資料館へ行ってきました。
http://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/manabu/hakubutsukan/tokubetsu/kyoudohakubutsukan_tokubetuten/index.html
川瀬巴水は大正から昭和にかけて活躍した版画家。
江戸時代以来の伝統的木版画制作(版元と絵師・彫師・摺師の協同制作)を復興し、創作的で芸術を本位とする新しい時代の版画「新版画」を提唱し、普及に努めた渡邊庄三郎(版元)と共に、新版画制作の旗手として活躍し、大正から昭和にかけての新版画興隆をもたらしたそうです。
まあ、見た感じほぼ浮世絵です。
実は私はもっと昔の、明治あたりの「浮世絵師」かと思ってました。
昭和32年に亡くなったそうで、海外向けのカレンダーやカードも制作していたらしい。
サンタクロースもいる(笑)。
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まとめて見ると、きれいすぎるっていうか、ちょっと通俗的かなと感じる所もあります。

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でも、こんな月の光とか、他にも降りしきる雨とか雪、木立の向こうの夕焼け雲などの作品は、その美しさに、なんつうかおセンチのツボをぐりぐり押されます。 いいんだよねー。

展示作品には、版の順を追って出来上がるまでを並べたものや、版木もあって、木版画の講座でちょっと聞き齧った技法や複雑な版分けが実際見られたのも興味深かったです。

大田区郷土資料館はちょっと遠かったけど、無料でたいへん充実した展示が見られて、行って良かった。
オールカラーの図録も千円!
ついでにちょっと興味があって「馬込文士村ガイドブック」(写真豊富な百ページ位の小冊子。これが二百円!大田区ありがとう。)も購入。

資料館を出たら、ちょうど夕陽が神社の木立の向こうに沈みかけていて、川瀬巴水の作品の続きみたいな空の色でした。


木版画、面白いです

2007-10-10 23:08:30 | アート・文化
今日も町田へ行ってきました。
いつもより一時間早く集合して、始まったばかりの版画美術館の展示「木版画東西対決展」の鑑賞。先生の解説付き。
日本と西洋の木版画の昔から現代までの代表的な作家の作品をずらりと並べた展示。
木版画と言っても表現方法もテクニックも様々で、極端に言えば、木を彫らなくてもラッカー塗ったり傷を付けたりで版が作れるんです。
解説を聞いているとあれもこれもやってみたくなる。

この展示は、あとで もう一度見に行き直そうと思ってます。
今度は単眼鏡持って。小口木版の細かいのも、ちゃんと見たいし。


で、それから講座へ。
今は、課題制作(先生の考えた構図を皆同じに彫って摺る)の摺の段階。
先生がまず見本に、同じ版木を様々なやりかたで摺って見せる。
色の出方とか、すごく面白い。
(もうこのあたりで、今日覚えた事で頭がいっぱい。こぼれそう。いや、こぼれてる。)
そのあとそれぞれに摺ってみる。

自分でやってみると全然思い通りになんかならなくて、それもまた面白い。
やっぱり今まで勉強したちゃんとしたやり方は、すぐにはできないです。
しかしそれ以前の試行錯誤でも、絵は作れる。
思いがけない要素が加わって、何ができるかがすごく楽しみです。

で、講座が終わってからも自分で木版画続けるとすると、あと版画用の刷毛とバレンが必要なんですね。
バレンって意外と高いもんなんですよねー。欲しいな。どうしようかなー。
いやあ、まさかバレンが欲しくて迷うようになるとは思わなかったなあ。

その前に、自由制作の下絵をそろそろ考えなきゃ。何にしようかなあ。


そんな季節

2007-10-08 13:34:52 | 手芸
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また、編み上げてしまいました…。
連休前日から、タモリ倶楽部見ながら、24見ながら、フラガール見ながら、日曜美術館見ながら、止まらずにひたすら編んでた。
昨年の展覧会の時に編んだ黒い帽子が編み上がったときから小さかったのだけど、何度か洗ったらますます縮んで、かぶってるとどんどんずり上がって烏帽子のようになってしまうのでした。 だめだこりゃ。
で、今年も同じ模様(ハニーカム)で再挑戦。深緑の毛糸は昨年バザーで買ったもの。
今度は多分大丈夫。

一緒に写したのは、買ったばかりの来年の手帳。
中身よりも、カバーにハガキとかチケットとかいろいろ挟んでおけるのが使いやすくて、ここ3年程これ使ってます。

先日CDをいろいろ買った上に、また図書館でトム・ウェイツ「オーファンズ」と「三橋美智也全曲集」を借りて来たもんで、iTuneでシャッフルするとかなり混沌としてます(笑)。
しかし意外と三橋美智也、浮かない。あがた森魚やEttなんかと馴染む。
空が高くて、空気がひんやりした今の季節に「星屑の町」とか、いいもんです。


金曜日あたりから、うちの周辺はいきなりキンモクセイが匂い始めました。
まだ花はほとんどつぼみだけど。
そんな季節か。


編み上げたばかりの

2007-10-04 21:11:30 | 手芸
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早々と毛糸の帽子、編んじゃった。
「アラン模様の小もの」という本の表紙のキャスケット。
極太の糸がないので、手持ちの並太糸二本取りで。
針も太いのでザクザク進み、久しぶりの縄編みの面白さでやめられなくなって、おとといから暇さえあれば編んでて、できちゃいました。

私は昔の人なんで、キャスケットって昔の亜土ちゃんとか桜田淳子とかのイメージだったので、最近流行ってても敬遠してました。
昔流行して、いったんダサイものになった頃を知ってると、それが復活しても 再びカッコ良く思えるのは難しい。
(逆にいったんダサイものになってても、ひっそりと好きで復活を待ってるっていう流行りものもありますが。)

でもこれは表紙のモデルに騙されて「いいかも」と思っちゃいました(笑)。
絶対こんな風にかぶれないけどさ。白人の美少女じゃないからさ。でもいいの。
編むの楽しかったし。
もっと寒くなってからかぶろうと思います。

一週間前の約束通り  カレンダーには赤い丸  
編み上げたばかりの帽子をのせて  街へ出かけてゆくはず
(大貫妙子/約束)
っていう歌がありました。いつも帽子編んでると思い出す。
頭の中でこのフレーズだけ歌ってる。
約束の期待と、編み上げたばかりの帽子の誇らしさと似合ってるかなという不安とが混じってどきどきしているようなかわいい歌で、好きです。