チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ

人生の半分を過去に生きることがクラシック音楽好きのサダメなんでしょうか?

シェーンベルク グレの歌

2013-12-27 23:42:55 | 何様クラシック

クラシック好きな人が、一番好きな曲って何?って聞かれたら十数秒考えた挙句、『グレの歌』って答える人は案外多いのでは?ボクもIMSLPに総譜が公開されてるにも拘わらずスコアを5,500円も出して買ってしまいました。全然理解できないけどオーケストラが巨大でオトクっぽいし、何よりあまりにも音楽が魅力的すぎるんで。



グレの歌は、王様が怖い奥さんに不倫がバレて相手が殺されたんで神様を呪ったらバチが当たって幽霊になってさまようんだけど最後は救済されるって話なんですが、マーラーの復活もグレに比べたらハイドンの交響曲のようですね。

後期ロマン派を軽く飛び越えてるっていうか、まだ植物しか存在しない原始地球の新鮮な空気を吸ってるような気分になります。

一度だけ実演に接したときは開演前オーケストラ・合唱側の席の多さにこれからどんな音が鳴るんだろ?ってドキドキしました。最初から最後まで泣かされたり笑わされたり感情を揺さぶられるって意味で一番好きな音楽なのですが、他方、作曲者の、無調とか12音とかヘンになる前の口当たりのいい音楽を悲しいかな恥ずかしくて「好き」って正直に言えない部分がありますね~。

でも、グレ好きをカミングアウトして万が一バカにされた場合にはシェーンベルクに個人的に対位法を学んだエゴン・ヴェレス(Egon Wellesz, 1885-1974)が「グレの歌を理解することはシェーンベルクの後期の全作品を理解する鍵だ」と言っていたことをネタに反撃すればいいだけのことです!

CD解説書でのラトルの言いぐさは
・「世界で最も大きい弦楽四重奏曲」
・「速いテンポの音楽の多くが、まるでアニメ音楽に聴こえる」...トムとジェリーの音楽担当のスコット・ブラッドリー(Scott Bradley, 1891-1977)はシェーンベルクの生徒
・「ダフニスのように演奏すれば良い線いくよ」。。。さすが。


それと若い作曲者に総譜を見せられたR.シュトラウスが「これ本当に君が書いたのか!?」って驚いたエピソードもいいですなあ。


弦だけでスコア18段になったり、グレってでっかいけどめっちゃ繊細なんですね。そうかと思えば最後のさいごに待ってましたとばかりのマザコン癒しの女声合唱の登場、そして恥ずかし気もなく眩しすぎる真っ白なハ長調のトニックでフィニッシュさせちゃうこの素晴らしき中二病な世界観につくづく惚れてまう。。シェーンベルクってきっと明るくて大らかでやさしいひとだったんだろうな。


このままグレずにグレ路線守っていたら、シェーンベルクの亡くなるときの言葉が「私は不幸だった」(ヘア・スタイルつながりの親友であるパブロ・カザルスの証言による)っていう可哀想なものにならないで済んだかも。

おとぎ話の王国への拉致度が高いケーゲルのCDが好きだけどライブ動画ではヤンソンスとバイエルン放送響のが気に入ってます。山鳩の藤村実穂子さんも自分のお母さんだったらいいのになー的に頼ってしまいたい名唱!

怖いのは、作曲者がこの音楽が聴衆にウケるのはわかっていたと発言(1913年2月23日、日曜日のフランツ・シュレーカー指揮によるウィーンでの初演は大成功)、つまりモーツァルトのパリ交響曲みたいにこれを聴く大衆の感情をいかにコントロールするかを計算しつつ作曲していたってことですね。

↑ 初演プログラムの表紙

 

↑ 「グレの歌」を演奏するウィーン・フィル(ブルーノ・ワルター指揮)。1935年1月29日ウィーン・コンツェルトハウス(『レコード音楽』昭和13年1月号)

(追記 2019年)念願かなって本番唄ってきました。若干アマチュア合唱団にも気を使って書いてくれている気配はあるものの、自分にはグレが嫌いになりそうなくらいむずかしかった。第九余裕超えのドS合唱パート。