60歳からの眼差し(2)

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

ヤマダ電機

2010年04月23日 | 日記
人に会う約束で新宿に行く。その日はたまたまヤマダ電気新宿東口店のオープン日でもあった。
約束の時間にはまだ早かったので店を覗いて見ることにした。さすがに新宿の駅そばの大型店、
雨にもかかわらず店内は大勢のお客さんでごった返し落ち着いて買物ができる雰囲気ではない。
お客さんは目玉商品が目当てなのだろう、店員を捕まえて商品の有る無しで殺気だっている。
こんな光景を見ると、もう40年も前のスーパーの開店日を思いだす。当時はスーパーの隆盛期、
各地に次々にスーパーが開店していき、そのオープン日には目玉商品満載のチラシが投入され、
開店時間前には特売目当てのお客さんの行列ができ、時に何百メートルにも及ぶこともあった。

私の子供時代の小売り業は個人商店が中心であった。どこの街にも市場があったり商店街は
八百屋・肉屋・魚屋・雑貨店・電器店・時計店・文房具屋等が軒を連ねて商売をしていた。
そんな「三丁目の夕日」的な小売りのスタイルを、新興のスーパーが席巻して行くことになる。
ダイエーを筆頭に、西友やヨーカ堂、ジャスコなど覇権争いが激しく、全国に出店を重ねていた。
それに連れて個人商店は成り立たなくなり、今はどこもがシャッター通りなってしまったのである。
それを「小売りの近代化」「流通革命」と呼びスーパーが時代の寵児となっていった時代であった。
しかし栄枯盛衰の常で、スーパーも飽和状態になり淘汰が進み今は昔の勢いはなくなっている。
ダイエーは国の産業再生機構の支援を経て丸紅イオンの資本参加で今はイオンの傘下に入り、
西友はアメリカのウォルマートの子会社に、ヨーカ堂もイオングループも広げすぎた戦線の縮小や
不採算店の閉鎖と立て直しに躍起になっているところである。

時代は変わり、スーパーマーケットにとって変わろうとしているのが、専門量販店と呼ばれる業態、
ドラッグストアや家電量販店、ユニクロなどのカジュアル衣料品等の専門のテェーン店である。
その家電量販店の中でダントツがヤマダ電気である。昨年池袋三越の後に大型店を開店した。
池袋はビックカメラの本拠地、そこに戦いを挑んでいったことになる。そして今回は新宿にオープン、
新宿はヨドバシカメラの本拠地、家電業界も激烈な競争の時期に入ってきているようである。

オープンしたヤマダ電機の店内をザーッと一周してみた。F1が液晶テレビ専門、B1がオーディオ、
2Fが携帯とデジカメ、3Fがパソコン、4Fがパソコン周辺機器、5Fがエアコン、調理家電、6Fが
冷蔵庫洗濯機、7Fがゲームとなっている。多分オープン日だから商品はどれも安いのであろう。
しかし売り場を見て回っても自分が欲しいものがないのである。携帯電話は2年縛りで買ったので
まだ買い換えられない。オーディオは携帯に付属しているプレーヤーで満足している。デジカメラも
今持っているコンパクトなデジカメで充分である。パソコンもまだまだ使えるし、ゲーム類はこの年に
なれば、わざわざ買ってまでやりたいとは思わない。唯一買わなければいけないのはアナログ放送
打ち切りのための地デジ対応のテレビぐらいであろうか。

今まで家電業界がここまで伸びて来たのは「情報技術の革新」とか「IT革命」と言われるものの
おかげではないだろうかと思う。郵便や新聞などはインターネットに、アナログ電話は携帯電話に
替わろうとしている。、ワープロはパソコンに、カメラはデジカメに、ビデオはCDやブルーレイに、
カセットテープやCDラジカセはデジタルオーディオに変わっていった。そして最後にアナログ放送の
テレビが来年7月で打ち切られ地上デジタルに変わる。
アナログからデジタルへの変革は1980年代のCDディスクが出始めたころからだろうか。それから
30年、我々の生活にかかわる機器がだいたい切り替わって、これで一段落するのであろう。
スーパーマーケットが個人の商店にとって変わって、一段落したところで衰退期を迎えたように、
家電量販店もアナログからデジタルへという変化に便乗してきただけで、それが一巡した時点で
消費者の消費活動は大幅に落ちて行くのではないだろうかと思う。

「今、特に買いたいものが無い」、これは私が歳をとってきて不活性になってきたことばかりではない
ような気がするのである。世の中全体が「物」と言うものに対して執着心が薄くなってきたからなの
ではないだろうかと思うのである。一昨年のリーマンショックからの消費の急激な落ち込み、それを
国はエコカーの減税とかエコポイントとか、高速道路料金の割引など、必死になって消費の喚起を
図って何とかもち直そうとしている。しかしいくら国が金をつぎ込んでも今まで通りの「物」に対しての
消費は活発にならないのではないか。それは消費そのものの「質」が変わったてきたからだと思う。

もう「物」は充分に満たされている。今からは精神的な「事」への消費に切り替わって行くのだろう。
例えば習い事、例えば気ままな旅行、例えば美術観賞、例えば家庭菜園、例えばサークル活動、
自分自身が好きで能動的に関わっていけるもの、そんな事に対しての消費活動に変わるのだろう。
「物」から「事」へ消費の質が変わろうとしている時、「物販」のために莫大な投資をして店舗網を
広げて行くヤマダ電機、「早晩、その拡大戦略に破たんをきたすのだろう」と思わずにはいられない。
どちらかと言えば斜に構えた見方をする私、冷やかな目でオープンの売り場を見てしまうのである。

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