60歳からの眼差し(2)

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

続続・パスタの店

2010年11月19日 | 日記
一昨日、9月17日のブログで書いた友人のパスタ店に行ってみた。オープン後は2度目である。
店が空くだろう2時に店に入る。狙い通りお客さんはいなく店内は彼と奥さんの2人だけであった。
本日の来店者は私で7人目だそうである。早速メニューの中から「ベーコンと季節の野菜(和風味)」
を選んで注文する。待つこと5分程度で、奥さんがカップに入ったコンソメスープを出してくれる。
それからさらに10分で、注文のパスタが出てきた。(上の写真)

麺は太めで生パスタの特徴であるモチモチ感がある。ダシはトマトベースの和風味、彼のこだわりは
化学調味料は一切使わないことだそうだ。食べ終わってみると皿にたっぷりスープが残っている。
残すのはもったいないくらいの味なので、スープーンでスクって飲み干してしまった。
食べ終わってから、彼が「どう思う?」と感想を求めてくる。私は料理の味を振り返って考えてみた。
彼が求めているのは、「美味しかった!」という賛辞ではないはずである。あくまでも客観的な評価
であろう。他にお客さんがいないから、彼と客席で話し始める。

10月の客数は(AM11:00~PM3:00の4時間営業、23日間稼働で)350人だそうである。
「お昼に1日10人のお客さんが来てくれれば持ち出しにはならない。それ以上が自分達の手取り」、
と言うのが、当初彼が描いたアバウトな計算である。11月からは夜の営業(予約のみ)を始めた。
近くの団地にチラシを投入して歩き、そろそろ本格稼働の体制を取るのだということである。

しかし11月になってから、開店当初の初見のお客さん、知人友人でお祝いで来てくれたお客さんも
一段落したのか客数が落ちて来たそうである。そうなると、彼の「心配の種」が芽を吹き出してしまう。
「席が少なく(6席)、今まで来たお客さんで待ってもらった人に、敬遠されたのではないだろうか?」
「席が少ないからゆっくり出来ず、食べたらすぐ出なければと思われて、落ち着かないのだろうか?」
「珈琲が欲しいというお客さんもいる。長居になるからと置いていないが、さてどうしよう?」
「メニューの幅はこれでいいのか?」 「日替わりなどでメニューを変化させた方が良いのだろうか?」
「メニューを増やせば増やすほど食材のロスが多くなるが、どのあたりで折り合いをつけるべきか?」

そんな不安を持ちながら日々営業している時、「美味しいかった。又来るよ」と言ってくれるお客さんが
いると大きな励みになるという。そして開店から毎週のように通ってくれるお客さんも何人かいる。
そんなお客さんを見ると「自分の味が評価されたんだ」という気持ちにもなり、自信にも繋がるという。
一喜一憂してはいけないと自分を戒めてはいるが、やはり不安は付きまとう。今は当初考えたことを
着実にこなし、何とか来年1月までに営業を続けられる目途を付けたい。そんな風に話してくれた。
(11月から座敷にテーブルを置き、4席増やして計10席にしたそうである) 

これからは私の感想と意見である。
彼が始める前に言っていた「丁寧に美味しく作れば、いずれお客さんに認められる」という言葉通り、
料理は美味しく仕上がっていると思う。化学調味料を使っていないから、味は少し薄いが、まろやかで
万人向きである。反面、なんとなくインパクトが足らないように思ってしまう。手を抜かず丁寧に作った
「家庭の味」、そんな表現が一番似合うのではないだろうか。
このパスタ、スープ付きで1000円である。要は「何人の人が、この内容を1000円で認めるか?」
であろう。これを1000円で評価してくれる人もいれば、これでは高いと評価しない人もいるだろう。
評価してくれる人が多ければリピーターが増えて、口コミで広がって行く。評価しない人が多ければ
営業が成り立たたない。お客さんは自分のお金で自分が食べるのだから、その嗜好に妥協はない。
考えてみれば飲食業とは厳しいものである。

私が思うのは、都心でこの味であれば、チェーン店に不満を持つ若い人達には評価されると思う。
しかしこの地は郊外も郊外で、駅から歩いて10分のところにあり、フリーの客は望めない所である。
客は中高年が中心、顧客の広がりもほとんどが口コミが頼りで、常連客中心のお店になると思う。
店内装飾は彼自身が飾り付けをし、家庭的な雰囲気を醸し出している。家庭的な味で家庭的な
雰囲気では、この地においてあまりインパクトを持たないのではないか?と思ってしまうのである。

今の味付けは彼の職人としての味覚だから、これを変えればおかしくなる。だから私は視覚的な
インパクトを作り上げればどうだろうかと思う。例えば、私が今日食べた写真のパスタであれば、
野菜を今の倍ほど使って特徴を出すとか、例えばスープは今の小さめなカップから大きなカップに
変えて、たっぷり飲んでもらうとか、ボリュームのあるサラダを付けるとか、等々。味だけに頼らずに、
店の「売り」をビジアルに表現出来れば、他店との差別化になり固定客が着くように思うのである。
(私はどちらかと言えば味覚音痴の方で、味の評価に自信がないから視覚を重視するのだろう)

中高年が多いマーケットだから、価格を落とすより、麺の量を増やすより、野菜の量を増やした方が
インパクトが強いように思う。原価が50~100円アップするかもしれないけれど、お客さんが来て
くれなければ話にならない。来てくれれば充分採算が取れるように思うのである。チェーン店のように
あまり細かな原価計算にとらわれず、お客さんの満足度を上げていくことを優先させたほうが良いと
思うのである。人は満足すれば、人に話し人を連れて来る。「あの店のパスタは○○が良いんだ」と
人が語ってくれるような「何か」が欲しいように思うのである。

こんな事を言いながら私はあくまでも無責任な評論家の立場である。しかし彼は私の大切な友人、
ぜひ成功してもらいたいと願いながら、これからも毎月1度は食べに行ってみようと思っている。


            
                       カウンター6人席

            
                      増設した座敷の4人席

            


    ホームページURLアドレス  http://www.nama-spaghetti.com/menu1.html

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