米国オバマ大統領とギラード首相の軍事共同活動拡大の具体的同合意については本ブログを含め、政府による公式発表情報を含め各方面で取上げられている。
一方、一般メディアでは一部でしか報じていない豪州の司法トップや駐豪米国大使間の米国による犯罪容疑者情報の開示にかかる「了解覚書(MOU)」について、筆者はオーストラリアのサイバー法の専門家でかつ大学の客員教授も任じており、多くの観点から積極的な言論活動を行っているロジャー・クラーク(Roger Clarke) 氏から届いたウェブ・ニュースで知った。
その”MOU”の内容は一部メディアは極秘情報のように扱っているものもあるが、事実はそうではない。(note1) しかし、人権擁護から見た問題はそう簡単ではない。
今回のブログは、(1)米国とオーストラリア間の“MOU”の具体的内容と人権擁護面から見た問題点、(2)国家間における“MOU”の法的効果、(3)条約(treaty)や合意(agreement)等との相違や使分けについて米国国務省や国連の担当部の見解等、(4) 民間企業や団体間における“MOU”の法的問題と実務面の課題等も踏まえながら問題を整理する。
特に、(2)および(3)については国際社会での交渉に長けていないわが国の政治家には多少でも役に立つのではないか。
1.米国とオーストラリア政府間の“MOU”の内容、位置付けと人権擁護面から見た問題点
(1)オーストラリア政府の11月16日付け公表内容
オーストラリア連邦政府内務大臣サイトの「Statement on Memorandum of Understanding on Combating Crime」に“MOU”締結のリリース文および“MOU”の本文を一部仮訳する。なお、同サイトではどういうわけか小項目のたてかたがばらばらである。原本では小項目は(a)、(b)であり、リリース文本文で15(3)(b)というように引用しているにも関わらず、小項目立ては1、2という記載になっている。筆者は、この不整合さについては改めて内務省に照会メールを送付する予定である。
①リリース文
本日、ブレダン・オコナー内務・法務大臣は駐豪米国大使ジェフリー・L・ブライヒ(合衆国国土安全保障省の代理)は越境犯罪に関する了解覚書(MOU)に署名した。
本MOUの下で、両国は1年以上の拘禁刑の対象となる犯罪の阻止、検知および捜査に関する指紋等バイオメトリック・データの照合が可能となる。また、照合結果が得られたときは、関係する個人の情報につき相手国に対し更なる詳細情報の提出を要求しうる。
これらの照合は個々の事件に関する場合のみ行い、両国の国内法に準拠する。従って、当該情報はオーストラリアまたは合衆国が現時点で法的に許容されないときは共有できない。
また、両国は個々の事件につき相互にDNAプロファイル(DNA個人識別特性の組み合わせ(a set of DNA identification))(note2)の検索につき合意した。
なお、筆者はフォレンジックスの専門家ではないので誤訳などがあれば、具体的に指摘いただきたい。(note3)
②今回の“MOU”本文の概要と構成
時間の関係で全文の仮訳は略し、主要個所の仮訳と項目訳のみ挙げる。“MOU”のポイントとなる部分についてはメディア“ZDnet.com.au”の記事を参照して仮訳した。
1.定義
本覚書の目的:(1)「DNAプロファイル(DNA識別パターン)」とは、解析対象の人間の非コード化されたいくつかの識別特性すなわち各種DNA遺伝子の化学的特性を表す文字または数字を意味する。
(2)「個人データ」とは、特定されたまた特定可能な自然人(データ主体)に関する情報を意味する。
(3)「個人データの処理」とは、自動的な手段化否かに関わらず、個人データの収集、記録、組織化、保存、適合または変更、ソーテング検索、協議、使用、需要に基づく開示、流布または可能な方法、結合または整合性、阻止、破棄による削除を言う。
(4)「参照データ」は、DNAプロファイルおよび関連する参照DNA(参照データ)または指紋データおよび関連する参照データ(指紋参照データ)を意味する。参照データは、直接データ主体を特定するいかなるデータも含むべきでない。参照データは個人を追跡できないものはそのように理解すべきでない。
2.本MOUの目的と適用範囲
(1)本MOUの目的は、犯罪の阻止と犯罪と戦うため合衆国とオーストラリア間の協力の強化である。
(2)本MOUの適用範囲は、1年以上またはさらに重大な自由剥奪の刑罰を科すべき両国( both Participants)の法の下で処罰すべき犯罪を構成するものを含む。
(3)本MOUは、供給する署名両国の要求に基づき法的な支援チャンネルの使用につき代替や使用制限は行わない。
3.指紋データ
4.指紋データについての自動化された問い合わせ
5.個人特定データに使用する問い合わせの代替手段
6.更なる個人データおよびその他データの提供
7.2国家間の接点部門と協定内容の実行
8.DNAプロフィルの自動的な問い合わせ
9.DNAデータベースへの問い合わせの代替手段
10.さらなる個人データやその他データの提供
11.2国家間の接点部門と協定内容の実行
12.重大な犯罪やテロ犯罪阻止のための個人情報その他情報の提供
12(1)重大な犯罪およびテロ犯罪を阻止するため両国はそれぞれが持つ法に準拠し個々の事件において要求の有無にかかわらず、相手国の接点部門と第7項を参照の上、データ主体につき、以下の(a)から(c)いずれかの状況が明らかでありその必要性がある限りにおいて第12(2)項に定めるデータを提供しうる。
(a)両国の国内法において定義されるテロに関する犯罪またはテログループやテロ組織にかかる犯罪を犯すであろうまたは犯したとき
(b)第12(1)(a)項に記載した犯罪の訓練を受けているかまたは過去に受けてきたとき
(c)重大な刑事犯罪をまたは犯した、または組織化された犯罪グループまたは犯罪組織に参加していること
12(2)可能な場合、追加的に提供する個人情報は、姓名、旧名、別名、仮名(aliases)、別表記名(alternative spelling of names)、性、生誕地、現在及び過去の国籍、パスポート番号、その他本人識別書面、指紋データおよび第12(1)項に関係する確信または信じうる具体的記述を含む。
13.プライバシーと個人データ保護
14.個人データの特別な移送に関する追加的保護
15.個人情報やその他情報の保護のための制限(両国は2.3で定める権限を侵すことなく、また2.2に従い、本MOUの下で得たデータにつき次の目的に沿い処理を行いうる)
15.(1)(a)犯罪捜査目的
15.(1)(b)治安への重大な脅威を回避する目的
15.(1)(c)パラグラフ(15.(1)(b))で定める捜査に直接に関連する非刑事手続きまたは行政手続きにおいて
15.(1)(d)データの移送に関し両国間で事前の同意がある場合のみその他目的
16.データの修正、阻止および削除
17.文書化と記録保存
両国は、相手国に移送または受領した授受年月日やデータ記録の保存義務を負う。
この保存期間は2年間とし、データ提供国は当該情報がどのように利用されているかにつき質問することが出来る。
18.1データ・セキュリティ
両国は、必要な技術的手段および組織化した準備が事故または違法な破棄、事故による損失または無権限の開示、変更、アクセスおよび無権の処理形式に対する情報保護策を活用することを保証する。
19.透明性―データ主体に対する情報提供
20.相互の利用情報
21.他の両国間の協定との関係
22.両国間の本MOUに関する定期的協議
23.費用負担
24.本MOUの停止
25.改正
26.本覚書の効力開始時期
(2) 今回の“MOU”に関する米国政府の公表
2011年11月16日、 ホワイトハウス報道官室発表の「White House on U.S.-Australia Cooperation to Combat Crime」で今回の“MOU”を発表している。ただし MOU本文はリンクしていないため詳細の確認はできない。
国務省の「MOU検索」でも本文自体はリンク出来ない。(note4)
(3)プライバシー保護や人権擁護面から見た今回の“MOU”の問題点
後述するとおり、“MOU”自体が極めて高度な政治的性格を持つことはいうまでもない。しかし、その反面、人権侵害やプライバシー等への極めて重大な侵害も引き起こす可能性が高い問題でもある。
この問題に関し、今回は時間の関係で海外の人権擁護団体等の具体的指摘や解析については情報が十分に入っていない。機会を改めて取上げたい。
2.国家間・国際法上における“MOU”の法的効果に関する論点整理
(1)“MOU”の法的意義・効果
改めて調査してみたが、わが国も含めこの問題につき正確に論じているものがない。ここでは、ごく一般論でしかないが、概略の説明を行う。(note5)
まず、“MOU”についての“Wikipedia”の説明は次のとおりである。
「了解覚書(Memorandum of Understanding、略称:MOU、MoU)は、行政機関等の組織間の合意事項を記した文書であり、通常、法的拘束力を有さない。了解覚書が用いられる最も代表的なケースは、複数の国家の行政機関の間で取り決めを結ぶ場合である。このような、国際公法上の了解覚書は条約の一種に分類されるが、締結の手続やその法的拘束力において実際上は大きな相違がある。
まず、了解覚書の締結には、通常の条約の締結において必要とされる国会での承認手続のような複雑な手続が必須でない。このため、複数の国家の行政機関間での制度の運用などに関する取り決めは了解覚書の形式を取ることが多い。
また、了解覚書は、通常、取り決めを破った場合の罰則などを規定しない。日本においては、立法機関である国会の承認を経ない了解覚書は直接的-には法令としての地位を有さない。ただし、了解覚書で取り決められた事項を実施する手段として、法律や政省令が改正される場合には、間接的に法的規範として機能することになる。」
一読して理解できる内容ではない。具体例で説明しよう。
2009年7月外務省のリリース「国際宇宙基地協力計画(ISS計画)について」において“MOU”につき次のとおり説明している。
「2.国際宇宙基地協力協定・了解覚書の枠組み
(2)国際宇宙基地協力協定の実施のため、アメリカ合衆国以外の4極の協力機関(日本については日本国政府)は、アメリカ合衆国の協力機関であるNASAとの間で宇宙基地協力活動の詳細を定める了解覚書を締結しています(日米間の了解覚書は2001年6月に発効)。
(3)国際宇宙基地協力の活動は、国際宇宙基地協力協定及び了解覚書を法的な基盤として実施されています。」
以上見たとおり、その法的意味合いはかなり微妙な内容を持つのであるが、そもそも“MOU”とは何かについてわが国の外務省サイトでは説明はない。
国際法等研究者の論文を調べてみた。例えば、亜細亜大学 秋月弘子「国連法の概念―総会の補助機関が締結する協定を題材として―」、三重大学 洪恵子「国際協力における双方可罰性の現代的意義について(二)・完(Double Criminality in International Law (2))」三重大学法経論叢(2001, 18(2), p. 43-65)」等である。いずれも、“MOU”の法的側面につき専門的に解説したものではないが、その法的性格付けの微妙さについては参考となろう。
また、米国等における“MOU”の法的解説も調べてみた。この点も、わが国に劣らず明確かつ専門的な解説はない。“Online Law Dictionary”も役に立たない。
あえて紹介するとすれば、「了解覚書:その法的性格と起草(Memorandum of Understanding:Legal Nature and Drafting)」が12頁の短いものであるが、要点は良く纏まっている。
(2) オーストラリア法改革委員会(ALRC)報告書「オーストラリアの国家機密に関する法等と開かれた政府(Secrecy Laws and Open Government in Australia )第14章「有効な機密情報取り扱いのための枠組み:了解覚書」に見る問題点
2010年3月11日公表したオーストラリア法改革委員会(ALRC) (note6)報告書「オーストラリアの国家機密に関する法等と開かれた政府(Secrecy Laws and Open Government in Australia )(ALRC Report 112)」第14章「有効な機密情報取り扱いのための枠組み:了解覚書 (Frameworks for Effective Information Handling : Memorandums of understanding)から、関係する部分を抜粋する。
なお、この報告書はあくまでオーストリアにおける政府機関間における公開性、透明性の問題を論じており、ここでは今回の米国とオーストラリア間の犯罪者情報に関する“MOU”の問題にかかる指摘個所のみ抜粋した。“MOU”の問題を正面からとりあげている優れたレポートであると思う(特に“ALRC’s view”の部分)。
14.69:オーストラリア政府は情報の交換につき外国政府機関と“MOU”を締結しうる。例えば、証券投資委員会(ASIC)は証券取引法の法執行に関し、米国証券取引委員会(SEC)と“MOU”を締結した。この“MOU”は両国の証券取引法の法執行および法遵守の保証を目的として支援と情報の効果にかかる重要性と煩雑さを認識させる。しかしながら、例えば機関に国内法に違反する方法で行動することを要求する場合を含むある特定の状況下で要求に対し拒否することを認める。また、当該“MOU”は要求してきた相手国に対し情報の提供につき条件を科すことができるのである。
3.条約(treaty)や協定(agreement)等との相違や使い分け等に関する米国国務省や国連の担当部の見解
(1)国家間の“MOU”の法的効果と外交政策的に見た留意点
これに関し、国際法関係に詳しい米国国務省法律顧問室(Office of the Legal Adviser)は明確な見解「国際法上、法的に非拘束となる公文書策定ガイダンス(Guidance on Non-Binding Documents)」をまとめている。わが国も政府間の“MOU”締結例は多くあるものの、どの程度これらの具体的配慮にもとづき作成されているのか疑問に思う。ここでは重要な意義を持つ問題なのであえて全文を仮訳しておく。なお、法律顧問室の以下の解説を今回の“MOU”の文言と照合すると、その的確性が確認できよう。
「各国政府はそうすることにより国際法に基づく義務を作り出すことなしに、国際関係上しばしば覚書や協定内容につき書面による記録を欲する。使用言語、標題や表現技術面でこの目標に沿うことはかなりの困難さを伴う。国際法上、法的な拘束性を持たない一方で、非拘束的な政治手段(non-binding instrument)は重大なモラルや政治的な重みを持ちうる。
このような手段は、米国の国際関係において政治的な取組みを達成するうえでしばしば用いられる。
当該文書が法的に拘束力を持ちうるか否かにつき「曖昧さ(ambiguity)」は避けねばならない。非拘束的な手段を用いた外交交渉時に両国または関係国全部は国際法上法的な拘束力を生じるという相互の了解を確認すべきである。
文書における特定の形式、スタイルおよび言語上の特徴は、国際法のもとでの拘束力のある協定とともにあるべきであるが、一方で純粋に政治的な性格を持つ合意を作り出すという参加国の意図は反映されるべきである。曖昧さを回避するため我々は以下のような一般的なガイダンスを提供する。
①非拘束的な書面の標題に関し、その交渉時において「条約(treaty)」、「協定(agreement)」という用語の使用は避けねばならない。“Memorandum of Understanding”というような標題は非拘束性の外交文書において一般的である一方で、 我々は、あえて当該文書を“Memorandum of Understanding”と呼ぶだけで自動的に合衆国が国際法上当該文書を非拘束性の文書とするということについては警告をならす。合衆国は、我々が国際的に法的に拘束力があると考える“MOU”をこれまで締結しているからである。
②外交交渉時に非拘束性の文書策定において「当事者(Parties)」の用語の使用は避けねばならない。さらに、「参加者(Participants)」というような他の用語の使用を勧奨する。
③策定にあたりとるべき行動に関し、“shall”、“agree”または“undertake”という用語の使用を避けることを勧奨する。多くのケースにおいて、法的に非拘束の文書を作成する際には“should”、“expect”等の用語の使用を強く促してきた。
④さらに交渉時「効力発生(entry in force)」の用語使用は避け、「運用開始(is to come into operation)」や「行動開始(activities are to commence)」という表現の使用を検討する。
⑤交渉時に、「完了した(Done at)」や「結論付けた(Concluded at)」という法律専門用語は避ける。
⑥法的に非拘束的な文書を自国外の異なる言語に翻訳しうるが、非拘束力の文書において異なる言語の文書を同等の信頼性を持つ(equal authenticity)旨の表現や引用はしないよう助言する。
⑦具体的状況にもよるが、国際法上法的な拘束力を持たないという文言を書面上明記した免責条項を挿入することも有益である。
(2)多国間の国際規制強化に関する“MOU”の事例
2011年5月9日、経済産業省および農林水産省は、証券監督者国際機構(International Organization of Securities Commissions:IOSCO)が策定した枠組みである各国証券監督当局間の協議・協力及び情報交換に関する多国間覚書(Multilateral Memorandum of Understanding concerning Consultation and Cooperation and the Exchange of Information)への署名を行った。マルチMOUへは、現在、アジアや欧米の国・地域から80の市場監督当局が、IOSCOから署名当局となることの承認を受けている。
4.民間企業や団体間における“MOU”の法的問題と実務面の課題
ここでは逐一解説は加えないが、次のような解説があるので必要に応じ参照されたい。
①ブラジルの民間ビジネスに有用な”MOU”の内容解説「What is a Memorandum of Understanding – MOU」
②オーストラリアのクイーンズランド工科大学が作成した企業間の“MOU”の解説「Guidelines for signing contractual documents and memoranda of understanding」
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(note1)本文で述べたとおり、今回の”MOU”につきオーストラリアの政府内務省サイトは
広く内外に担当大臣名で公表した。この“MOU”の署名者はオーストリアはブレダン・オコナーナ(Brendan O'Connor)内務大臣・法務大臣兼プライバシーおよび情報自由化大臣である。
一方、米国側の署名者は駐豪大使のジェフリー・L・ブライヒ(Jeffrey L. Bleich)である。
このメデイア記事(cnet.com. au)にリンクしているのは、実際のMOU原本をコピーしたものであろう(最後に両人の署名がなされている)。とすると、このような高度に国家機密に属するもののコピーそのものが出回ること自体、問題になろう。
(note2) 詳しくは、 わが国法務省解説資料「アメリカにおけるDNA型情報により被告人を特定して起訴する取扱いについて」を参照されたい。
(note3)11月23日の深夜(日本時間)に筆者の手元にFBIからDNAプロファイル等に関する解説情報「FBIとDNA:パートⅠ:犯罪解決を支援する全米DNAデータベース・システムのメンテナンス(The FBI and DNA Part 1: Maintaining the Nationwide System that Helps Solve Crimes)」が入った。Q&A形式で分かりやすい内容なので併せて参照されたい。
(note4) 参考までに言うと、 国務省のMOU検索では古いものはピックアップできない。例えば、2008年5月16日にサウジアラビアとの間で署名した「米-サウジアラビアの原子力協定(U.S.-Saudi Arabia Memorandum of Understanding on Nuclear Energy Cooperation)」のリリースは同省の“Archive”でないと見れない。すなわち、2001年1月20日~2009年1月20日の間のリリース・オンライン・データの検索は“Archive”でしか閲覧できないのである。この点は、わが国(例えば、独立行政法人 日本原子力研究開発機構 のMOU記事「核不拡散ニュース No.0090 2008-05/23:2008年5月16日、米国とサウジアラビアは原子力協力に関するMOU(了解覚書)に署名した」でリンクされている国務省サイトをクリックしてみて欲しい)だけでなく米国の関係機関でも徹底されていないためか、リンクできないことが多い。機会があれば国務省の担当官にコメントしたいと考える。
(note5) ここでは詳しく論じないが、国連条約部のMOUの解説は参考になる。
(note6) 法改革委員会(ALRC)の任務の概要をウェブサイトの説明に基づき説明しておく。
1975年に設立され、「1996年法改革委員会法(Australian Law Reform Commission Act 1996)」に基づき運用する連邦機関である。連邦議会に対し責任を負い、司法長官職の一部をなす。司法長官からの各種法分野に関する具申や諮問を受けて広く国民に意見を求め(inquiries)また独自に意見をまとめる。ALRCは自身がみずから“inquiries”を行うことはできないが、政府から独立した機関として調査、協議や法政策文書の作成が可能である。
“inquiries”の目的は、①時代遅れまたは不用な法律の廃止や法の不備を排除する、②法執行や司法施行のための新たなもしくはより効率的な手段を助言する、③可能な限り、連邦、州、各地域等の法の調和を保証する、④オーストラリアが国際的に見て最善の法実践を行なうことを保証すべく海外の法システムをモニタリングする、という内容である。
現在、法改革委員会が取上げている国民への調査質問事項(Inquiries)は「連邦における法体系(National Classification Scheme Review)」と「家族内暴力とオーストリア連邦法(Family violence and Commonwealth laws)」である。
なお、過去に取上げてきた“inquiries”のテーマは多様なものがあり、わが国で紹介されているものでも次のようなものがある。
例えば、(1)「人組織法(Human Tissue Act)」に関し、1977年、オーストラリア法改革委員会(the Australian Law Reform Commission-ALRC)は、人体や採取したものの保存や使用、また手術や治療、移植、教育や研究を目的とした臓器や組織の保存や使用について取り組みはじめたのです。ALRCが法案をつくり、これが1983年のヒト組織法(Human Tissue Act)の基本となりました。この法の中では、(1)生きている成人および子どもから提供された組織、(2)献血、(3)死後に採取した組織、(4)検死、(5)組織の売買の禁止などが扱われました。」(「オーストラリアにおけるAID(非配偶者間人工授精)をめぐる法と制度」報告から一部抜粋)。
(2)オーストラリア法改革委員会(Australlian Law Reform Commission: ALRC)は、現行法によるプライバシー保護の有効性について調査を行い、2008 年8 月11 日に報告書を公表している(内閣府 消費者委員会 第3回個人情報保護専門調査会 「個人情報保護の状況に関するヒアリング~諸外国における個人情報保護制度の概要から」から一部抜粋)
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