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米国国防総省が北朝鮮の軍事力、安全保障および核開発動向につき2012年次議会報告

2013-05-08 18:51:44 | 信頼性の高い情報とは


"(執筆途上)本報告書については5月8日付け米国大使館レファレンス資料室からの情報(報告書本文、DODのプレスリリース、DODのニュース記事が添付)が手元に届いた。

 米国国防総省(DOD)は現地時間5月2日、「2012年国防授権法(National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2012)」1236条にもとづき「北朝鮮の軍事力、安全保障および核開発動向(Military and Security Developments Involving the Democratic People’s Republic of Korea:A Report to Congress Pursuant to the National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2012)」を連邦議会に報告した。
 今回のブログは、その要旨部分を仮訳する。

 また、ジョン・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)の“US-Korea Institute”の北朝鮮問題の解析ウェブサイト“38 NORTH”は、 5月1日付けで北朝鮮の軽水炉(note1)の開発の最新動向につき「北朝鮮は核燃料が確保可能であれば2013年半ばには軽水炉実験を開始するであろう(Start-up of North Korean Experimental Light Water Reactor Could Begin by Mid-2013 if Fuel is Available)」と報じている。その内容要旨も併せて要旨部分と北朝鮮の具体的な軍事力解析部分を仮訳する。


1.「北朝鮮の軍事力、安全保障および核開発動向(Military and Security Developments Involving the Democratic People’s Republic of Korea)」

(1)前書き
 米国国防授権法(National Defense Authorization Act)1236条に基づく「2012年次報告書(National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2012:Public Law112-81)は、国防長官が承認した機密分類(classified)および非機密分類(unclassified)の形式で朝鮮民主主義人民共和国(Democratic People’s Republic of Korea :DPRK)の現在および将来の軍事力に関する報告書を提出した。
 同報告書は、(1)朝鮮半島における安全保障状況、北朝鮮が変貌・形成しつつある国家安全保障戦略や軍事戦略の目標およびその要素、(2)北朝鮮の最近時の安全保障の傾向、(3)北朝鮮の軍事開発能力の調査を含む朝鮮半島等における安全保障目標、(4)軍事教義(military doctrine)(note2)や軍事訓練、北朝鮮の増殖活性(proliferation activities,)、および(5)その他の軍事面の安全保障開発の取りまとめを意図したものである。

(2)要旨
 仮訳する。なお、項目整理の意味で筆者の責任で項番したり、正確な日付を付すとともに関係サイトにリンクをはった。)

・朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)(北朝鮮)は、合衆国にとって北東アジアで最も重大な安全保障に対する挑戦的国家の1つとしてとどまっている。 北朝鮮は、(1)大韓民国(ROK)に対する攻撃、(2)核兵器と長距離弾道弾の開発の追求および(3)国際協定および国連安全保障理事会決議に違反して兵器を増殖させるという挑発的で動揺させる振舞いを引き受ける意欲をもって軍事的脅威国のままでとどまっている。
 1948年の同国の建国以来、朝鮮半島からの米国の軍隊を追放することによって心の一部では朝鮮の再統一達成への北朝鮮の切望とそのキム家族の政権を永続をさせる取組み主たる点において変わりがないが、これらの目標を達成するための戦略はかなり発展した。 キム・ジョンイル(Kim Jong Il:金 正日)政権の下では、北朝鮮の戦略は国内の安全保障上の利益すなわち、(1)同国の外交、経済および安全保障の利益を強制的に受け入れさせる高圧的外交、(2)外部からの攻撃を阻止するため戦略的軍事力の開発、ならびに(3)韓国や米韓の同盟関係に対する挑戦に焦点を合わせていた。我々は、これらの戦略的な目標が北朝鮮の新しいリーダーである金正雲(Kim Jong Un)の下でも一貫すると予想する。

・北朝鮮は、かなりの軍備の資源不足分と老朽化しているハードウェアにもかかわらず、韓国に重大な被害を押しつける能力を保有するだけの大きくて先取りした配備を擁立する。北朝鮮は、主に米韓同盟の強さのため韓国に対する攻撃を行うことを思いとどまらせられ続けている。しかしながら、よりわずかなスケールではあるが、北朝鮮は国家目標を達成するのに2010年3月26日に韓国の海軍艦艇チョナンを沈め、46人の韓国海軍の海軍兵士を死なせたり、同年11月23日、延坪(Yeonpyeong)島で海軍兵士2名や2人の民間人に砲弾を浴びせ殺害したなどのように軍事的挑発の使用に意欲を示している。

・北朝鮮は、核技術と能力強化の継続的な追求と長距離弾道ミサイル計画の開発は、2012年12月の「テポドン2ミサイル」発射や2012年4月の新しい道路移送型大陸間弾道ミサイル(new road-mobile intercontinental ballistic missile)の誇示に反映されるように、北朝鮮によって引き起こされた朝鮮地域の安定と米国の国家安全保障への脅威を強調される。これらのプログラム、および北朝鮮は国連安全保障理事会決議1718(2006年)1874(2009年)および2087(2013年)(note3)の下で禁止された項目に対する敵意を持ったこれら増殖活動と同様に北朝鮮はアメリカ合衆国や同盟国およびパートナー国のためにとっての継続的な安全保障に挑戦し続けている。

・2013年2月の北朝鮮の3回目(note4)(note5)の核実験と2010年のそのウラン濃縮施設の露見は、北朝鮮の核開発計画によって引き起こされた継続的な挑戦を強調する。2005年9月19日の中国北京での6カ国共同声明(Joint Statement of the Fourth Round of the Six-Party Talks Beijing 19 September 2005)および国連安全保障理事会決議(Resolutions)1718、1874および2078の両者は北朝鮮の完全かつ証明可能な非核化を求める。これらの取組みを守るために北朝鮮の気のりしないで躊躇している点を考慮すると、国防総省は特に韓国や日本同盟国とともに国際社会との綿密な調整と協議でもって北朝鮮の安全保障に対する挑戦を管理し続けるであろう。
 合衆国は、核の傘と通常戦力の両方を通した取組みで提供された安全保障を含むその地域での北朝鮮の継続的な挑発に直面しつつ、その拡張抑止に緊張感も持って引き続き対処する。

(3)報告書の目次
1)要旨

2)第1章 安全保障の状況調査
A)北朝鮮および朝鮮半島の安全保障の主な進展
B)北朝鮮の安全保障に関する知見

3)第2章 北朝鮮の安全保障戦略の理解
A)戦略目標
B)国家戦略
C)朝鮮半島など地域目標および地域での行動
4)第3章 軍の近代化目標および傾向
A)概観
B)関係国への脅威の維持
C)老齢化する軍
D)一方で新興する軍の機能

5)第4章 軍組織の増殖
A)概観
B)伝統的な軍事力およびミサイル売買
C)核の増殖
D)北朝鮮の大量破壊兵器(weapons of mass destruction:WMD)
E)遮断された情報伝達(interdicted transfers)

6)第5章 北朝鮮の軍事力の規模、位置および能力

(4)北朝鮮の軍事力の解析
A)陸軍(North Korea, Ground Forces)
・戦車(Tanks)4,100台
・装甲車(Armored Vehicles)2,100台
・野戦砲兵隊(Field Artillery)8,500人
・歩兵部隊(Infantry Corp) 8,500人
・多連装ロケットシステム(multi-rocket-launch-systems :MRLs)5,100台
・その他、銃砲部隊(Artillery corps)、装甲部隊(Armor corps)、機械化歩兵部隊(Mechanized Infantry Corps)の配備地図

B)空軍(North Korean Air Forces)
・人的兵力(Personnel Strength) 92,000人
・戦闘機(Combat Aircraft)730機
・ヘリコプター(Helicopters)300機
・輸送機(Transport Aircraft)290機
・その他、戦闘機基地、輸送基地、ヘリコプター基地および飛行場の配備地図

C) 海軍(North Korean Naval Forces)
・人的兵力兵力(Personnel Strength)60,000人
・潜水艦(Submarines 70隻)
・哨戒艦艇(Patrol Combatants)420隻
・水陸両用揚陸艇(Amphibious landing Craft)260隻
・機雷戦艦艇(Mine Warfare Vessels)30隻
・支援・補助艦艇(Support/Auxiliary vessels)30隻の配備地図

D)弾道ミサイル軍(North Korea, Ballistic Missile Forces )

     
システム 発射装置 推定飛行距離  
KN-2 100未満 75マイル(約120km)  
SCUD-8 〃 185マイル(約296km)  
SCUD-C 〃 310マイル(約496km)  
SCUD-ER 〃 435-625マイル(約696-1,000km)  
No Dong 50未満 800マイル(約1,280km)  
IRBM 50未満 2000+マイル(約3,200km以上)  
TD-2 未配備 3400+マイル(約5,440km)  



(4)特記項目
 北朝鮮のWMDプログラム
①核開発
②細菌戦争プログラム(biological warfare program)
③化学兵器プログラム(Chemical Weapons (CW) program)

(5)報告書を読むうえでのポイント
 5月3日付けの“Wired .com”の記事「Pentagon Warns North Korea Could Become a Hacker Haven」がポイントを分かりやすく整理している。短い内容なのでここで仮訳しておくが、要するに世界最大の軍事国家でありながら予算がない北朝鮮の選ぶ国家戦略は「核開発」と「サイバー攻撃によるネットワーク社会への脅威」という点である。なお、一部専門用語へのリンクは筆者の責任で行った。

・北朝鮮は貧弱ではあるが、グローバルなインターネットに接続している。しかし、新しい国防総省の連邦議会あて2012年次報告書によると、敵対的なネットワークに侵入することで、ハッカー・ゲームをさらに増強させようとしている。

・国防総省(DOD)の北朝鮮の軍事的脅威の最新査定「北朝鮮の軍事力、安全保障および核開発動向(Military and Security Developments Involving the Democratic People’s Republic of Korea:2012 A Report to Congress Pursuant to the National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2012)」(9~10頁) は、「北朝鮮はおそらく軍事コンピュータネットワーク・オペレーション(CNO)能力(note6)を持っている」と分析している。
 これまで推測された北朝鮮のサイバー脅威への戦略的な取組みは、米国やイスラエルで行われたStuxnet worm(note7)とは無関係のいわゆる「サイバー攻撃」というもので「戦争」というより“vandalism”(note8)やスパイ行為(espionage)に近い内容である。しかし、DODは平壌が将来的にその大部分が必然的に「ネットワーク攻撃」に乗り出すと考えている。

・報告書は、北朝鮮の暗い経済見通しを考えると、CNOはいくつかの北朝鮮の軍事力を近代化するためのコスト効果の高い方法として見なしうるかもしれないと評価している。北朝鮮政権は、諜報情報を収集するうえで魅力的なプラットフォームとしてCNOを見ることができる。北朝鮮はインターネットの暗闇の中で逃げ道を探し、かつ逃げ切れると見ている。

・DODは、北朝鮮は2009年以来、主要な韓国の銀行のサーバーを標的にして顧客取引記録を消去したり、オンライン・サービスをアクセス不能にしていると信じられていると指摘している。平壌はおそらく最後の数年間で韓国政府や民間のウェブサイトに対し、大量のDDOS攻撃を行った。また、さる4月には朝鮮半島を緊張させた一方で 、韓国政府は北朝鮮がソウルの銀行やテレビ産業で使用する数万コンピュータにマルウェアを感染させたと非難している。
 本年4月に戻ると、朝鮮半島の米軍司令部のウェブサイトは、短時間ではあるがオフラインになったが、これは北朝鮮が非難されるべきことをあおった疑いが濃い。
このように、DODはこれらはすべて北朝鮮がその古びてきしむ従来型の戦力を補うために、核兵器開発や長距離弾道ミサイルといったその型破りな戦力の開発という軍事開発につき広範なパターンをもって取り組むこととバランスが取れていると見る。

・北朝鮮は地球上で最大の貯蔵兵器国の一つである。大部分が陸軍である95万人の軍人、4,100台の戦車、ミサイル等が配備されていると推定しているが、報告書はこれらは老朽化しており、ガラクタ同然であると見ている。すなわち、北朝鮮の戦力として最も有能とされる戦闘機は「ミグ29」「ミグ23」であるが、これらは長く待った結果、1999年にカザフスタンから買い取ったものである。これらの合法的に手ごわい特殊部隊の搬送手段は1940年代のシングルエンジンの10人乗りの複葉機であり、海軍の艦隊上で明るみに出た。主に老朽化した、多数の小さなパトロール用警戒機があるが、北朝鮮の通常兵器のほとんどは1970年代以降、更新またはアップグレードされていない。
 朝鮮人民軍の出動時はほとんどが長年使ってきた武器等によるもので、1950年代、60年代や70年代にさかのぼるソ連や中国で生産されたり基本設計されたものであるが、数少ないシステムはより近代的な技術に基づいているとDODは見る。

・このように、いくつかの例外があると見る。例えば、北朝鮮の防空ミサイル・システムはロシアの威圧的地対空防衛ミサイルシステム「S-300システム」のアップグレード版である。それは大陸間弾道ミサイルの取りみをフルスピードで進めるだろう。また、潜水艦艦隊は世界最大の軍隊の一つである。
 同報告書は、北朝鮮は十分に小さなサイズに核弾頭を押し込む小型化に取り組んでいると述べた。しかし、北朝鮮の長年にわたる「軍事優先」の国家戦略と、その微々たる経済力は軍備のアップグレードと近代化するのに十分な資金を平壌に提供していない。したがって、北朝鮮は「核兵器開発」と「ネットワークへの侵入」を優先的な戦略として重要視している。

・報告書は、さらに「北朝鮮は近代的な全国ベースでのセルラー•ネットワーク(note9)に投資してきた。北朝鮮では電気通信サービスおよびアクセス内容は厳密に制御され、すべてのネットワークが必要に応じ軍事利用のために利用可能である」と指摘している。


2.ジョン・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)の“US-Korea Institute”最新記事

(1)「北朝鮮は核燃料が確保可能であれば2013年半ばには軽水炉実験を開始するであろう(Start-up of North Korean Experimental Light Water Reactor Could Begin by Mid-2013 if Fuel is Available)」

(略)
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(note1) 日本で最も利用されている原子炉のタイプは軽水炉(LWR:Light Water Reactor)である。
・軽水炉には、沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の2種類がある。
・BWR:原子炉を冷却する冷却水が沸騰した状態で運転される原子炉である。
・PWR:原子炉を冷却する冷却水に高い圧力をかけ、高温高圧水の状態で運転される原子炉である。(エネルギー総合工学研究所の用語解説「軽水炉(沸騰水型と加圧水型))から一部抜粋。

(note2)“military doctrine”の意義については、米国等の関係機関が行っているが、NPOである「全米科学者連盟 (Federation of American Scientists:FSA)」のサイトの中の“DoctrineLINK”は次の各分野について最新の包括的なオンライン・ドクトリン・ガイドを提供している。
National Defense / Joint Army Navy Marine Corps Air Force Other
 また、次のような専門分野のドクトリンや公開情報へのリンクが可能である。筆者はこの分野の研究や取組がわが国のこれからの重要課題と考える。
Military Space Doctrine Ballistic Missile Defense Doctrine Intelligence and Security Doctrine

(note3)さらに 2013年3月7日に国連安全保障理事会決議(Resolution 2094 (2013) Adopted by the Security Council at its 6932nd meeting, on7 March 2013)が行われている。

(note4)北朝鮮の核実験の第1回目は2006年10月9日である(BBC記事ニューヨークタイムズ記事)。第2回目の実験は、2009年5月25日である(ガーディアン記事)。第2回目の実験については米連邦議会調査局(CRS)が2010年11月24日付けで詳しいレポートをまとめている。

(note5)北朝鮮のこれまでの核実験の詳しい分析内容は2013年2月12日付け“38 North”がまとめている。

(note 6) 北朝鮮によるコンピュータネットワーク・オペレーション(CNO)の脅威の解析については、米国海軍大学院(naval postgraduate school)のChristopher Brownが2004年に「北朝鮮のコンピュータ・ネットワーク・オペレーションの調査に関する信頼性を持つ方法論の開発(Developing Reliable Methodology for Assessing the Computer Network Operations Threat of North Korea)」(全93頁)(指導教官は Dorothy E.Denning )と題する論文をまとめている。
 なお、合衆国海軍によって経営される完全に公的な研究専門大学院である。カリフォルニア州モントレーにあり、修士号、工学学位および博士号を授与する。学生の出身母体は米国軍の各部隊等であり、現役の軍人のほか外国の軍隊も入学でき、さらに米国政府民間人も一定のプログラムの下では入学が許可される。なお、教授陣の大部分は民間人であり、米国空軍航空技術大学院(AFIT)と同様の目的で重要な機能を持つ。

(note7) Stuxnet の意義:Stuxnet のとりわけ驚くべき点は、デジタル世界から物理世界へと前例のない跳躍を意図して設計されたことです。Sutxnet は、産業用制御システムを標的として設計されたコンピュータワームであり、大規模な産業施設を監視し、実行されます。
 今日氾濫しているマルウェアのほとんどは、情報を盗み出したりや銀行口座から横領をするために設計されており、現実世界での生活には間接的な影響しか与えません。 しかし、Stuxnet はそれをはるかに超えていました。その目的は、発電所、石油精製所、ガスのパイプラインなど産業環境を管理するために使用されるコンピュータプログラム (産業用制御システム) を再プログラミングすることでした。最終的なゴールは、特定の産業用制御システムに付随する物理的な機器を操作することで、意図された目的とは正反対の、攻撃者がプログラムしたとおりに動作させることです。これにはさまざまな潜在的なゴールがありますが、サボタージュ、破壊、サイバー戦争などが最もわかりやすい成果でしょう。(シマンテックの解説から一部抜粋引用)

(note8) “vandalism”とは、掲示板等にいたずら書きを行う等荒らし行為をとり、正常なインターネットの進行を妨げる悪意の投稿をいう。例えば、文章を大量に削除してしまう等、ネット上の記事の品質を低下させる悪意の編集行為一般を指す。

(note9) セラー・ネットワークについて、わが国では決まりの訳語がないように思う。「移動体ネットワーク」とでもいえようか。このネットワークの脆弱性に関しては、ドイツ連邦セキュリティ庁(BSI)のサイト解説「セラー・ネットワークにおけるGSM (Global System for Mobile Communication)遮断による脆弱性とセキュリティ対策」が詳しい。


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米連邦議会上院軍事委員会のロックリア司令官等の証言、同調査局の北朝鮮の核兵器開発や中国海軍力分析報告

2013-04-12 10:06:48 | 信頼性の高い情報とは



 北朝鮮の長中距離弾道弾の発射の具体的な懸念につき、米国太平洋軍ロックリア司令官(Admiral Samuel Locklear,Commande,U.S.Pacific Command)の連邦議会上院軍事委員会(委員長カール:レヴィン(Carl Levin)の公聴会(Hearing of the Senate Armed Services Committee)での証言は、わが国のメディアでも具体的に取り上げられている。
 筆者はこの問題につき、米国の北朝鮮や中国の軍事力強化の動向につき従来から注視してきたが、ここで標記の3つのレポートや議会証言を正確に理解し、わが国としての更なる防衛体勢整備を考えるよりどころとすべきと考えた。

 また、語学力に自信がある読者については、議会上院軍事委員会での発言ということからも重要な意義を持つロックリア司令官の証言内容は、必ず正確に全文をビデオで見たり、公式記録の全文を確認すべきであろうと考えた。

 筆者は、4月10日(水)12時33分に米国大使館からのメールでこれら3つの重要な情報の存在につき確認できたことから、次のステップとして上院軍事委員会の公式ウェブで内容の確認作業に入った。しかし、その手段は必ずしも簡単ではなく、実際に大使館から原データの入手は若干手間がかかった。

 本ブログは、内容の詳細についての解説ではなく、これらの情報収集に筆者がいかなる方法で取り組んでだか、その方法論について簡単に説明するものである。また、上述したその他の2つの東アジアの安全保障にかかる重要問題のデータのありかの調べ方についても参考情報を提供する。
 
 なお、同司令官の証言は2014会計年度軍事予算(note1)の内容にかかる北朝鮮問題の一環として述べられており、今回の議会の関心はあくまで軍事予算(note2)とのかかわりである点を理解しておくべきと考える。


1.連邦議会上院軍事委員会など米国に国際関係・防衛問題の正確な理解

(1)米国大使館(東京)の情報
 米国大使館レファレンス資料室は、テーマ別に米国の軍事問題を取り上げる配信サービスを行っており、各証言全文も「添付ファイル」で送付するサービスも利用できる。 筆者が今回のロックリア司令官の証言の情報を最も早く入手したのは、このサービスのよるものである。

(2)軍事委員会の全証言をアーカイブ・ビデオで見る方法
 ここからが工夫のいるところで、また筆者が手間取った点である。
通常の手順を述べる。 「上院の委員会一覧」 、常設委員会の中から「軍事委員会のサイト」で“Hearings & Meetings”をクリック、右欄カレンダーの4月9日をクリックする。4月9日の委員会のサイトが出る。ここで“View Detail”、“View Webcast”が選択できる。
 問題は、ここからである。Archieved Webcastを見ようとしても画像は出てこないのである。
 
 ここからが筆者のノウハウである。議会中継専門ケーブルテレビ“C-SPAN”(Cable-Satellite Public Affairs Network)を利用するのである。以下、手順を述べる。

 まず、日本時間4月10日現在であれば、C-SPANの検索は簡単であったが、4月11日になると過去の録画を検索することになる。C-SPANサービスは当日の最新情報が中心なので便宜的に“senate”、“C-SPAN”“North Korea”のキーワードで4月9日の軍事委員会サイトを取り出し、次に標題下の軍事委員会をクリック、370の画面録画一覧が出てくるの、その中からロックリア司令官の証言を選ぶという手順を取った。

(3)ロックリア司令官の証言全文の入手
 前述したとおり、筆者はこの配信受信後、(note3)で記したとおり約1時間後には、メールに添付された全文を読んでいた。この時点ではまだPDF化されていない。

(4) 北朝鮮の核保有能力に関するDODジョージ・リトル報道官(Press Secretary George Little)の証言
 米国防総省の4月11日付けのリリースが届いた。連邦議会下院の軍事委員会のサイトでは特に記されていないので、その内容を補足のうえ仮訳しておく。

「2014会計年度の国防総省予算に関して聴取した4月11日の議会下院軍事委員会において、同委員会のメンバーは北朝鮮の核保有能力についての機密扱いのレポートの機密扱いでない部分(passage)を読んだ。 私は全体として機密分類されるレポートのすべてを詳細に話すことができない一方で、北朝鮮体制が当該部分で参照させられた核保有能力の各種類(小型核兵器)を完全に実験したか、また開発したかを示したことを示唆す語句を示唆したレポートの部分は不正確である。アメリカ合衆国は密接に北朝鮮の核開発計画をモニターし続け、北朝鮮にその国際的義務を守るように求める」

2.連邦議会調査局(CRS)の議会宛報告書「北朝鮮の核兵器:技術面から見た具体的な展開動向(North Korea’s Nuclear Weapons:Technical Issues:Mary Beth Nikitin:Specialist in Nonproliferation)(全35頁)

 2013年4月3日付けで公表されたレポートである。Summary部分のみ仮訳する。(note4)(note5)

「本レポートは、北朝鮮(DPRK)の核兵器計画(兵器として使用可能な核分裂性物質と弾頭の推定を含む)に関するオープンソースから知りえた情報をまとめて、同国の非核化達成にかかる最近の動向を評価する。

 極めて少ない詳細なオープンソース情報が、北朝鮮の核兵器生産能力、弾頭の精緻度、ウラン濃縮プログラムの範囲と成功内容、または増殖活性化の範囲に関し利用可能である。

 合計で、北朝鮮には30~50キログラムの分離プルトニウム(separated plutonium)があると見積もられており、これは少なくとも半ダースの核兵器製造のために十分なものである。

 冷却塔が2008年6月に国際協定で破壊されて以来、ニョンビョン(Yongbyon)の北朝鮮のプルトニウム生産用原子炉はよろい戸を閉めさせられている。しかしながら、2013年4月1日、北朝鮮はプルトニウム生産用原子炉の復帰活動に入る旨発表した。

 専門家は、再開するには約6カ月かかると見積もっている。 これは1年あたり約1個の核爆弾の製造のプルトニウムの価値を北朝鮮に提供するであろうと解析している。

 北朝鮮の兵器開発計画は初めから過去の10年間で見てプルトニウムベース(plutonium-based)でしたが、米国諜報機関は、高濃縮ウラン(enriched uranium)を使用することで2番目のルートの爆弾製造の方法にあることを示した。

 北朝鮮は、2009年にオープンにウラン濃縮プログラムを公開して承諾したが、その目的は原子力燃料の生産であるといった。

 2010年11月に、北朝鮮はともに寧辺(ニョンビョンサイト)で100MWT軽水炉と新造のガス遠心分離機ウラニウム濃縮工場の早期の建設方針を訪問してきたアメリカの専門家に示した。

 北朝鮮は、濃縮工場が運用を行っていると主張したが、これは独自には確認されていない。 米当局者は、別にかつ秘密の濃縮工場が存在することがありうると述べている。 核兵器製造のために材料か動力炉のための燃料を作り出すのに濃縮(再処理と同様に)技術を使用でき。濃縮能力は、潜在的に核材料を作る兵器に関し、より速い方法を北朝鮮に提供でき、したがって、米国の政策立案者への大きな懸念材料である。

 北朝鮮は、昨年、核兵器の位置づけについて断言するため複数の施政方針を作った。 2012年5月に、北朝鮮はそれが「核武装する」ものであったと言う内容に構成を変更した。

 2013年1月に、北朝鮮は、非核化における対話がなくなる「可能であるであろう」、また、他のすべての核兵器国が武装を解除するときだけ、北朝鮮は武装を解除すると述べた。また、 2013年3月に、北朝鮮は核兵器計画を広げるという目標を述べた。

 多くの軍事専門家が、北朝鮮の核開発計画の主要な目的は北朝鮮の核弾頭を搭載する中距離および長距離ミサイルを開発することであると信じている。

 これは2013年3月下旬に北朝鮮政府関係者の声明によって確認された。
核弾頭の小型化はおそらく核とミサイルの追加テストを必要とするであろう。

 2013年1月に、北朝鮮の声明ではそれが「より高いレベル」の核実験で応じると書かれていた。 2013年2月12日に北朝鮮政府関係通信社は、マグニチュード5.1の地下核実験が「成功した」と発表した。そして、各地の地震監視システムは大きさが5.1であった結果として起こる地震を観測した。 これにより実験の規模は過去の実験よりわずかに高いということであるが、核威力(yield)の見積りはまだ不確実である。 韓国防衛省は、実験での核威力が6~7キロトンであると見積もった一方で、米国 諜報機関の部長は「およそ数キロトン」と述べた。北朝鮮は、2013年2月12日、核実験が「より小さく軽い」弾頭を開発することであると主張した。 最小限で見積もっても、実験はおそらく長距離ミサイルに取り付けることができる弾頭を開発する北朝鮮の能力に貢献するであろう。

 今までのところ、 実験の正確な日付や北朝鮮がウランかプルトニウム装置を実験したかどうかを示すいかなるオープンソースがない。本報告は、ほとんど知られていない北朝鮮の核弾頭デザインに関する型と専門性を決定する上で助けになろう。」

3.連邦議会調査局(CRS)の議会宛報告書「中国海軍の近代化(China Naval Modernization: Implications for U.S. Navy Capabilities—Background and Issues for Congress)」(全115頁)

SCRSのRonald O'Rourke:Specialist in Naval Affairsが去る3月21日に公表した報告書である。時間の関係で内容の具体的な紹介は略すが、少なくともわが国でも同様の解析作業は必かつ喫緊の問題と考える。

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(note1)委員会証言の原本で確認したが、表題は「2014年会計年度連邦軍事予算における韓国駐留にかかる再検証および今後数年の同地域の防衛問題(U.S.Pacific Command and U.S.Forces Korea in Review of the Defense Authorization Request for FY2014 and the Future Years Defense Program)」である。議会中継専門ケーブルテレビ“C-SPAN”で見ると、今回の証言時間は計2時間29分52秒である。
 なお、これまでの経緯を見るには米国大使館から提供される最新情報のうち「国際関係・防衛問題」でまとめられる詳細情報を都度フォローすべきであり、最近時のものではサイト(後日、証言全文はPDF化されている)がある。つまり、2012年後半から直近までの記事内容は連続性を持ってウォッチすべきである。

(note2)2014会計年度軍事予算要求に関するDODの専門サイトがある。全体が正確に把握できる。

(note3) 今回、筆者がレファレンス資料室から受信したのは日本時間で4月10日(水)午後0時33分であり、即記録文の全文をリクエストし、届いたのは同日の午後2時42分であった。

(note4) たまたま、筆者は米国のグローバルな核問題NPOのNTI(Nuclear Threat Initiative)のサイトで2013年3月に更新された「北朝鮮の核開発、核兵器問題」を読んだ。URLをあげておく。
http://www.nti.org/country-profiles/north-korea/

(note5)北朝鮮やイラン、インド、イスラエル等核保有国の開発動向について国際的に見て最も詳しい情報を提供しているシンクタンクは、ジョン・ホプキンス高等国際関係大学院ISIS(Institute for Science and International Security (ISIS))である。特に、朝鮮半島については“Korean Peninsula”で詳しく取り上げ、最近時では「北朝鮮の核兵器の小型化」と題するレポートを発表している。また、SSIS「米韓研究所」のウェブサイト「38 North」はさらに最新情報を提供している。ちなみに、4月3日付けの「38 North」はDigitalGlobeの衛星写真を掲載している。

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米国連邦商務省・産業安全保障局とFBIが米国・ロシア内でロシア軍事調達や防諜活動を行った防諜員等を起訴

2012-10-04 20:12:43 | 信頼性の高い情報とは


 10月3日、連邦商務省・産業安全保障局(DOC・ Bureau of Industry and Security:BIS)(note1)はニューヨーク東部地区連邦地裁に対し、テキサスの本部を置く輸入会社およびロシアに本部を置く調達会社と同時に米国やロシア内でロシアの軍事品調達ネットワーク活動を行っていた111人のロシア人を違法にハイテク・マイクロエレクトロニックス(note2)技術を米国からロシアに違法に輸出したとして告訴した。

 また、米国とロシアの会社のオーナーで役員であるアレキサンダー・フィシェンコ(Alexander Fishenko)に対し、ロシア政府に代わり米国内でハイテクマイクロエレクトロニックスを違法に調達すべく未登録の防諜員として活動したとして告発した旨リリースした。

 本ブログは、これら米国連邦機関のリリース内容に即して、起訴内容を概観するものである。なお、防諜問題に詳しい米国の取り組みを理解する上で、このような捜査の緻密さはわが国の情報機関や関連企業にとっても参考とすべき点が多かろう。


1.事実関係

 ロシアに違法に輸出されたとされるマイクロエレクトロニックス技術はさまざまな軍事システム(レーダー、監視システム、兵器誘導システムおよび爆発用の引き金(detonation triggers)等)において広範囲な潜在的利用に関し、米国政府により厳格な管理下に置かれている。

 被告等は10月2日に逮捕され、3日午後にヒューストンの法廷で連邦治安判事ジョージ・C・ハンクス(George C. Hanks Jr.)の面前で罪状認否を問われることになろう(そこで政府は被告を東部地区連邦地裁への移送を求める予定である)。

 これらの違法行為の公開に関連して、商務省は被告から受け取ったり、積み替えたり、そうでなければそれらを支援したとして165人の外国人の個人や会社の責任を追及すべく追加した。彼らの指名は、商品を米国からこれら個人や会社に輸出する前にライセンスを要求することを課すとともに、そのようなライセンスが与えられていなかったという推定を確立した。

2.本事件の計画内容

 起訴状に明らかにされているとおり、2008年10月から現在に至る間、フィシェンコと他の被告は先進的、技術的最先端マイクロエレクトロニックスを米国内の製造業者や供給業者から得てロシアにハイテク商品を輸出するため不正かつシステマチックな共謀の取り組み、一方でそのような輸出をコントロールする政府のライセンスシステムを掻い潜るべく努めた。
 マイクロエレクトロニックス技術に含まれたのは、アナログ・デジタル変換器(analog –digital converters)(note3)、Static Random Access Memory(note4)、マイクロコントローラー(note5)、マイクロプロセッサーであり、ロシアに出荷された。

 これら商品は、応用範囲が広く、さまざまな軍事システム(レーダー、監視システム、ミサイル誘導装置や爆発用の引き金)で頻繁に使用される。ロシア国内ではこれら高性能商品は生産されない。

(1)被告フィシェンコの経歴
 本日、米国政府により告訴され起訴状によると、被告アレキサンダー・フィシェンコはソビエト連邦カザフスタン共和国で生まれロシアのサンクトペテルブルグのレニングラード電気技術大学(Leningrad Electro-Technical Institute)(note6)を卒業した。1994年に米国に移住し、2003年に米国籍を取得した。1998年にヒューストン被告会社「ArcElectronics Inc.(Arc)」を設立した。2002年から現在までArc社はマイクロエレクトロニックスや他の技術につき約5,000万ドル(約39億円)でロシアに出荷した。
 フィシェンコとその妻は、Arc社の独占経営所有者でCEOである。また、被告たるモスクワに拠点を置く軍事調達会社“Apex System LLC”の共同経営者である。“Apex社”は子会社を通じ、ロシア政府のための軍事品の公認供給業者である。

(2)被告アレキサンダー・ポソビロフ(Alexander Posobilov)
 2001年にロシアから米国に入国し、2008年に帰化した。2004年にArcの活動に加わり、軍事用品の調達部長として勤務した。ポソビロフはヒューストンのジョージブッシュ・インターコンチネンタル空港で逮捕されたが、シンガポールとモスクワに出向くところであった。

 被告等は頻繁に仲介調達会社を介してロシアの軍や防諜機関を含む先にハイテク商品を多く輸出したとされている。この輸出にあたり被告等は製造業者や供給業者がこれらハイテク商品を販売するために適用される輸出管理を回避するためしばしば偽にエンドユーザー情報を提供し、また彼らが輸出業者であるという事実を隠蔽するとともに、商務省に提出する輸出記録では偽の分類を行った。例えば、管理され高度に機密性の高いマイクロエレクトロニクスを得るため、Arcは米国の供給業者に対し交通信号機等をロシアに輸出すると偽るとともに、Arcのウェブサイトでも信号機メーカーであると主張していた。事実、Arcは製造業をまったく行わず、もっぱら輸出業者として活動していた。
(以下、省略する。)

3.被告Arc社の社員の告訴

 ポソビロフ、ポソビロフやクレバノヴァに加え起訴状ではセールスウーマンでアドミュラル・バグデキアン(Lyudmila Bagdikian)、アナスターシャ・デアトコーヴァ(Anastasia Diatlova)等に対し共謀違反1訴因、「国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act:IEEPA)違反および「電子通信詐欺(wire fraud)」(note7)により21の訴因をもって告訴した。
 同起訴状によると、これら被告は輸出商品の真の性質、ユーザーやハイテク商品につき偽り偽の情報を用い、ロシアの軍用品調達会社として認可なしに輸出を行った。被告のこれら商品の重要港湾はニューヨーク東部地区ジョン・F・ケネデイ国際空港であった。

4.外国人の被告(Foreign Defendants)

 起訴状によると、フィシェンコはArcの所有者、管理者だけでなくロシアの軍事調達会社2“Apex”の責任者であり、セルゲイ・クリノフ(Sergey Klinov)はCEOである。Apex1とその系列会社はロシア軍と防諜機関を含むロシアの政府機関にマイクロエレクトロニクスを供給していた。

 これら被告は、共謀罪に関しては最大5年の監禁刑、IEEPAおよびAECA違反に関しては最高20年の監禁刑、また司法妨害の罪で最高20年の監禁刑に直面する。さらにフィシェンコはマネーローンダリングを犯す上でのロシア政府の登録されていない機関として行った行動に関し、最高20年の拘禁刑に直面する。

 法人の被告は共謀の訴因に関しては、最高50万ドル(約3900万円)、実質的なIEEPAおよびAECAの訴因に関しては、最高100万ドル(約7,800万円)の罰金に直面する。

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(note1) 殆どの米国輸出管理法は「米国輸出管理規則」(「EAR」)の中で規定されており、米国務省産業安全保障局(「BIS」)によって管理されている。EAR輸出管理規則体制は多くの項目および国に対し複雑で詳細な(25章から構成)、そして様々な輸出規制を課している。(注1)原則として、米国内または米国原産のすべての品目(製品、技術およびソフトウェアとして定義される)は、BISの管轄の対象となる。特許は一般的にEARにおいて、「技術」とみなされる。(モリソン・フォースター外国法律事務所の解説から一部抜粋)

(note2) 大規模集積回路(LSI)とそれを応用したエレクトロニクスの分野。微視的な素子やそれを使った回路の上に成立する電子工学。もう1つの先端分野オプトエレクトロニクスと並列的に使われる。シリコンのVLSI、ULSIなどの技術を中心に、化合物半導体や超伝導体などの高速素子、量子効果素子とそれらの応用技術など、広範囲の技術分野が含まれる。(「知恵蔵」から抜粋)

(note3) A/Dコンバータとは、アナログ信号をデジタル信号に変換するために用いる電子回路のことである。(IT用語辞典Binary から抜粋)

(note4) “Static Random Access Memory” (略称スタティックRAM、SRAM)は、半導体メモリの一種であり、「スタティック」とあるのはダイナミックRAM (DRAM) とは異なるからで、定期的なリフレッシュ(記憶保持動作)が不要である。(Wikipediaから一部抜粋)

(note5) マイクロコントローラーとは、 家電製品や電子機器の制御などに使われる、一つの半導体チップにコンピュータシステム全体を集積したLSI製品。CPU、メモリ、入出力回路、タイマー回路などを一つの集積回路に格納した製品で、単体でコンピュータとしての一通りの機能を有する。(IT用語辞典e-Words から一部抜粋)

(note6)“Leningrad Electro-Technical Institute”は1930年に設立され、現在は「Saint Petersburg State University of Telecommunications」である。(Wikipedeia から抜粋)

(note7) 電子通信詐欺(wire fraud)については、筆者ブログを参照されたい。


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米国連邦議会図書館のバイオテロおよび生物兵器ガイドや国立公文書館の日本の大戦時の細菌実験等の参考文献

2012-05-03 21:07:58 | 信頼性の高い情報とは


 5月3日、筆者の手元に連邦議会図書館からバイオテロおよび生物兵器に関する「図書」、「技術報告」および「インターネット利用情報源」についての最新更新ガイド情報が届いた。

 同図書館の専門職員がまとめた内容につき横断的に読んでいたところ、実は2000年12月27日に成立した「2000年日本帝国政府に関する情報開示法(Japanese Imperial Government Disclosure Act of 2000:P.L.106-567)」および「1998年ナチ戦争犯罪に関する情報開示法(Nazi War Crimes Disclosure Act of 1998:P.L.105-246)」に基づき国立公文書館(National Archives and Records Administration:NARA)がまとめているわが国やドイツの戦争責任に関する詳細な分析の暫定報告最終報告に行きあたった。

 この米国による世界大戦上極めて重要な歴史の解析作業につき、わが国での紹介は皆無といってよい。とりわけ、現時点で重要な課題である「バイオテロおよび生物兵器」の取組みが当時、軍を中心に行われていた事実は否定しがたい問題であり、歴史を改めて見直す機会として取り上げることとした。

 本ブログは、米国のこれら取組みの戦略的背景を踏まえた解析作業は、その意味で十分意義がある作業であると考える。

1.














(note1)


(note2)




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米国FEMA(緊急事態管理庁)が中西部や南部州等を襲う巨大トルネード警報を発布

2012-04-16 15:47:33 | 信頼性の高い情報とは


 4月14日午後、米国の連邦国土安全保障省(DHS)・緊急事態管理庁(FEMA)は全米気象局(National Weather Service)(note1)が公表したとおり、大規模トルネードが中西部や南部の各州で発生する危険性が高まっており、このため関係州と連携を取りながら、きびしいモニタリングを行っている旨警戒情報を発した。

 日本時間で15日(日)の午後3時時点で見ると中心は中部州から北部州に移っているように見える。米国の春の嵐の被害状況を見ると、2011年4月14日から16日の3日間、米国で最悪と記録された178のトルネードが16の州を横断し、壊滅的な破壊を記録した。トルネードの死者は38人、嵐とともに発生した暴風で5人が死亡した。

 わが国でも、つい2週間ほど前にこの時期では珍しい低気圧と強風被害を経験したばかりであるが、今回のブログでは米国の大規模自然災害対策の運用実態とFEMAが行う各州機関との連携・情報共有、警告内容につき正確な理解(詳細な情報提供システムも含む)および被害の具体的な予防策につき改めて学ぶべくまとめてみた。


1.最新の気象情報とFEMAの準備体勢

 連邦商務省・海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration :NOAA)の「暴風雨予報センター(Storm Prediction Center)」によると最悪の場合、カンザス州のオクラホマシティ、サリナは土曜日午後遅くに致命的な打撃を受けると報じた。その他の地域は野球の球大の雹(ひょう)や最高時速70メートルの強風に遭遇すると予想した。これらの“Warning”はイリノイ、アイオワ、カンザス、ミズーリ、ネブラスカ、オクラホマおよびテキサスの各州を含む。


 オクラホマ州のノーマン(Norman)にトルネードが接地したことから、FEMAは必要に応じ同州の非常事態対応センター(Oklahoma City state emergency operation center))を支援すべく非常事態支援管理チームを積極的に配備した。さらに、同チームは現在待機中で、必要に他の地域での支援準備も行っている。

2.最新の暴風雨情報の正確な理解とその準備
 
 FEMAは、関係州の住民に対し、次のような予報や警報内容の理解に係る情報を解説している。

(1)猛烈な嵐など異常気象に関する用語の理解と「注意報(Watch)」や「警報(Warning)」が発せられたときにどのような行動を取るべきか家族と議論しておくことが重要である。
○注意報(Watch):気象学者は特定の地域や地区における自然の脅威(例えば、洪水(flooding)、猛烈な雷雨(severe thunderstorms)または竜巻(tornadoes))の形成をモニタリングしている。
 気象予報専門ラジオ、民間ラジオ、テレビ等で情報を受信してください。引き続き、電池式ラジオ・テレビで地区防災当局が提供する指示に従ってください。
 災害など危機発生の間、最新情報を予報にかかる唯一の公式機関である全米気象局から情報提供される「NOA気象情報専門ラジオ(NOAA Weather Radio)」のオクラホマ・シティの例で見た上、画面左下の“Weather Radio”でライブ情報を聞くことができる。

○警報(Warning):現に一定範囲で生命や財産に危機が差し迫っている場合に発せられるもので、適切な安全予防措置を取ってください。

(2)モービル・ホームは乗り捨ててください
 モービル・ホームは、たとえ縛りつけ固定が可能であっても、きわめて簡単に横転するものであり、直ちに放棄すべきである。モービル・ホーム住民は前もって移転計画をたて、かつ近くのビルで安全な避難場所を特定する必要がある。
 また、あなたが安全な建築物(家、学校や病院等)にいる場合、あらかじめ指定された保護エリア(緊急時用に指定された安全な部屋(safe room)、地下室(basement)、暴風退避壕(storm cellar)やビルの低層階)に移動してください。地下室がない場合は、角や窓、ドアや外壁から離れて低層階のクローゼットやインテリア廊下などの中央部に移動してください。あなたと外部の間にできるだけ多くの壁を設けて下さい。丈夫なテーブルの下であなたの頭と首を保護してください。高層の建物の場合はできるだけ低層階の内部のできるだけ小さな部屋や廊下に移動してください。 

(3)丈夫な靴を履いてください。

(4)窓は決して開けないででください。

(5)決して都市部や混雑地区で車やトラックで竜巻を追い越そうとしないことです。その代わりに車を出て安全な建物内に移動してください。飛ばされた物体や破片に十分に気をつけてください。竜巻で飛ばされた破片は、死亡や大怪我の原因となります。

(6)災害の後、あなたの自宅の起こりうる家の構造上や電気やガス漏れのリスクに気をつけてください。家の構造上の安全規程や基準に関する情報は、市や郡等の建物検査専門家に連絡してください。
彼らは、またあなたのために働いてくれる適格な業者を見つけるべく援助してくれます。
○ぶら下がった電線や地上に垂れ下がった電線に絶対触れないでください。警察や電力会社に垂れ下がりなどの状況を報告、連絡してください。
○あなたの住居地区で豪雨が起こりやすい場所の場合、鉄砲水(flash flooding)
が起こりうるので気をつけてください。鉄砲水が発生しそうなときは指示を待たずに直ちに高台に移動し、避難してください。

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(note1)” National Weather Service”は商務省・全米海洋大気庁(NOAA)の部局の1つである。

(note2) 日本貿易会 月報「ワシントン便り 2011年は米国も自然災害の年 ─ 自然災害と連邦政府―」が参考になる。

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