goo blog サービス終了のお知らせ 

Foreign Media Analyst in Japan

日本のメディアで海外情報が載らない日はない。海外情報の正確性、専門性や最新性をめざし、独自の収集、解析、翻訳にチャレンジ

カナダ政府は終身刑のうち性的暴行やテロ等重大犯罪者の仮釈放を限定する刑法等改正法案を上程(その1)

2015-04-14 14:13:57 | 信頼性の高い情報とは

(執筆途上)

 3月4日、カナダのスティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相(アルバータ州選出:保守党党首) (note1)ピーター・マッカイ(Peter Mackay:ノヴァ・スコシア州選出)法務大臣兼司法長官は、カナダにおける最も重大な犯罪に基づく終身刑の受刑者の権利であった全国仮釈放委員会(National Parole Board,以下「仮釈放委員会」という。)の決定にもとづく釈放を認めないとする「刑法(Criminal Code (R.S.C., 1985, c. C-46)」および「矯正および条件付釈放法(Corrections and Conditional Release Act S.C. 1992, c. 20(CCRA)(以下、CCRAという)」 (note2)の一部改正案の上程予定を公表した。

 また、同月27日、政府の公共安全・非常事態準備相であるスティーブン・ブレイニー(Steven Blaney:ケベック州選出)は、カナダ国民の家族やコミュニティの安全性を確保すべく累犯かつ性犯罪等暴力犯罪者の現行の釈放委員会による仮釈放条件(フル・パロール:full parole)をさらに制限する前記法案を議会に上程した旨報じた。 (note3) 

 これらの一連の「刑法」や「矯正・条件付釈放法(CCRA)」その関連法案の一部改正法が「Bill C-53:Life Means Life Act 」として、3月11日に連邦議会に上程されたのである。 

  今回、筆者があえてカナダの新立法の背景や議会の議論等を取り上げる理由は、わが国の法務省の犯罪白書でも最近見られるとおり、特に凶悪犯の再犯率が上がっており、一方でカナダに見るとおり、犯罪者の人権擁護問題もある。特に死刑制度がないカナダにおける人権擁護問題の取り組みは米国等とは比べものにならない意義を持つ。 

 カナダの連邦議会の法案をめぐる論議は、単に犯罪者の矯正・社会復帰といった刑事政策論だけでなく、この秋の総選挙の前哨戦といった感が見られる点は否めない。 (note4) しかし、筆者の考えは刑事政策論としては単のこの点だけにとどまるべきでないというものである。

 すなわち、本文でも述べるとおり、カナダは歴史的にみてもシリアル・キラー(serial killer:連続殺人犯)事件が多い国といえる。例えば次のような例が挙げられる。

クリフォード・ロバート・オルソン, Jr.(Clifford Robert Olson)(1940年1月1日生まれ、2011年9月30日死去) :1980年代初期に9歳と18歳の間の計11人を殺害することを認め有罪となったカナダの連続殺人犯 (note5) 

ロバート・ウィリアム・ピクトン(Robert William Pickton)(58歳:養豚業):2007年12月9日 バンクーバー(Vancouver)で起きた連続女性殺人事件の公判で、女性6人の殺害に関する第二級殺人罪として刑期25年経過後に仮釈放される可能性のある終身刑を言い渡された(同判決はカナダ刑法における最高刑となる)。

コーディ・レゲボコフ(Cody Legebokoff):2014年9月21日、中部ブリティッシュ・コロンビアで3人の女性と10代の女の子を殺した件で有罪判決を受けた。控訴したが却下された。被告は2013年に第一級謀殺の4つの訴因の有罪判決を下され、刑期25年後まで仮釈放なしの終身刑を宣告された。 

 このような社会的な背景に基づきカナダにおける終身刑制度に関連して認められている刑期25年経過後に一定の条件下の「釈放問題(full parole)」を中心とする終身刑のありかたや仮釈放委員会による「条件付(早期)釈放」制度の意義や運用問題点を理解することに加え、その法政策的な意義を正確に理解・解析する点にある。  

 なお、本法案については本文で述べるとおり、カナダ国内関係者の多くの論議を呼んでいる一方で、法案のsummaryを読むだけでは問題点が正確に整理・理解されていない点もある。また、3月4日のハーパー首相の声明にある「15年の刑期経過後の早期仮釈放を認める【かすかな望み条項(faint hope clause】」制度を廃止したものの、その後の釈放制度のあり方等、なお疑問が残る立法ともいえる。 

 刑法・刑罰分野での曖昧な政策の解決は否である。本ブログで論じる法改正内容を踏まえた関係者の議論がさらに高まることを期待する。

 同時に、本ブログを通じてカナダの法案検索の手順等について今次の「刑法」や「矯正・条件付釈放法」の一部改正法の学習を通じて学んでいただきたいし、不備な点は関係者により補足されたい。 

 2回に分けて掲載する。 

1.ハーパー内閣の改正法の必要性や趣旨表明

政府サイトの法案提出の背景のリリース(仮訳)

○カナダの条件付仮釈放制度の内容

 カナダでは、犯罪者の処遇は,刑期2年以上の実刑に処された者については連邦政府が、それ以外の者については州政府が管轄することとなっている。連邦政府における犯罪者処遇の担当部局として,法務省(Ministry of the Solicitor General)に、矯正保護局(Correctional Service of Canada)および全国仮釈放委員会(National Parole Board,以下「仮釈放委員会」という。)が置かれている。矯正保護局は、刑期2年以上の受刑者に対する施設内処遇と仮釈放後の保護観察に関する権限を有し、仮釈放委員会は,連邦刑務所に収容されている受刑者と、州仮釈放委員会のない州の刑務所に収容されている受刑者に対する条件付き釈放に関する権限を有している。

 条件付き釈放の種類には、一時帰休(temporary absence)、外部通勤(work release)、デイ・パロール(day parole)、フル・パロール(full parole)および法定釈放(statutory release) (note6)がある。このうち、一時帰休の一部と外部通勤は刑務所長に、一時帰休の一部、デイ・パロールおよびフル・パロールは仮釈放委員会に、許否を決定する権限が与えられている。また、法定釈放は、終身刑および不定期刑で服役中の受刑者を除き、フル・パロールを認められなかった受刑者を、刑期の3分の2を経過した時点で自動的に釈放するものであるが、仮釈放委員会は、釈放に当たって遵守事項を付加することができるほか、矯正保護局の付託を受けて、釈放中に人を殺傷したり、重大な薬物犯罪を惹起するおそれのある受刑者等については、刑期満了まで拘禁することができる。(法務省・法務総合研究所研究部報告 9(243頁以下) 「カナダにおける犯罪被害者施策」)から一部抜粋した。なお、条件付釈放制度については、法務省・法務総合研究所研究部報告44 寺村堅志「諸外国における位置情報確認制度に関する研究・「カナダ」131頁がより詳しい。) (note7) 

2.法案の具体的な内容 

(1)法務省サイト(2015年3月4日:オンタリオ州スカーバラでのハーパー首相の声明)の改正法案の趣旨説明(仮訳する。なお、リンクや注書等は筆者が付した)

 カナダの刑法が定める最も重大な犯罪は謀殺(murder)である。第一級謀殺(いかなる故意をもち計画的なかつ予謀を抱いた殺人)(note8)(note9)の受刑者は25年経過するまで仮釈放の申請権はを持たずに強制的に終身刑が科される。警察官の殺害や性的暴行殺人罪を含む一定の犯罪者において計画的でない謀殺罪についても同様の罪を負うこととなっている。

 このたび、カナダ政府はすでに2011年に「早期仮釈放に関するかすかな望み条項(faint hope clause:謀殺犯に対し刑期15年経過後に仮釈放の申請を認める制度)」 (note10) (後記4.で詳しく論じる)の適用除外を行い、また複数殺人犯に対する仮釈放を認めない継続期間を認めるといった刑罰強化のための確たる手続きをすでに取ってきた。 

 今回上程した改正法案は最も憎むべき殺人犯の有罪判決の効果・刑の執行を確実化氏、また大逆罪の有罪判決を得た者の生存期間につき釈放なしに収監し続ける手続きを明確化した。対象となる謀殺犯罪の範囲は次の行為である。

①性的暴行(sexual assault);

②誘拐または強制的な監禁(kidnapping or forcible confinement);

③テロ行為(terrorism);

④警察官または看守の殺害;

⑤特別に残虐な性格を持つすべての第一級謀殺行為 

 また、上記の義務的有罪判決の加え、裁判所はあらゆる第一級謀殺事件について、または被告が過去において謀殺により有罪判決を受けているとき、あるいは「人道に対する罪及び戦争犯罪法(Crimes Against Humanity and War Crimes Act  (S.C. 2000, c. 24)」 (note11)における国際的な殺人行為を行ったときは、裁判官に釈放のない絶対的終身刑を科す裁量権(discretion)を与える。 

 カナダ憲法法上の合憲性 (note12)問題に対処するため、本立法は35年間以上の刑期を終えた後には、例外的釈放措置として公共安全・非常事態準備相への申請により釈放権のない終身判決の犯罪者に認めるものである。この釈放申請を認める決定は、連邦内閣が責任を持ち、またその決定にあたり犠牲者の家族の意見提出が保証されるものである。 

 釈放の可能性のない終身刑にかかる本法案の内容は、英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)、ニュージーランド、米国およびオーストラリアといった同様の考えに立つ国々の司法制度に合わせたものである。 

 今回の法案提出の背景は、凶暴な犯罪者が早期釈放の機会が制度的の終結を意図する政府の最近時の発表にもとづくものである。今回の法案は、 「カナダの安全な通りとコミュニティ計画(Canada’s Plan for Safe Streets and Communities)」の一環であり、すなわち、凶暴な犯罪者の責任を明確化し、被害者の権利保護さらにはカナダの司法システムの効率性の向上を図ることに焦点を当てたものである。 

*********************************************************************************

(note1) カナダでは、2015年秋に連邦議会の総選挙が行われる。ハーパー政権の今後を見極めるうえで重要な年である。 

(note2) 1992年矯正及び条件付釈放法(Corrections and Conditional Release ActCCRA1992)は,カナダの矯正制度の基本骨格を定める連邦法であり,施設内処遇,刑務所からの早期釈放(条件付釈放),釈放後の社会内処遇等に関する重要な事項について規定している。同法は,1961年監獄法(Penitentiary Act 1961)及び1959年仮釈放法(Parole Act1959)を統合した新法である。。(法務総合研究所研究部報告42 「再犯防止に関する総合的研究209 第3章 カナダ」から一部抜粋。同法は2005年等に一部改正されている。 

(note3)カナダの「3 .矯正保護における被害者施策」から一部引用する。

  カナダでは,犯罪者の処遇は,基本的には州政府の管轄とされている。ただし,刑期2年以上の実刑に処された者については,連邦政府が管轄する。連邦政府に おける犯罪者処遇の担当部局として,法務省(Ministry of the Solicitor General)に,矯正保護局(Correctional service of Canada)及び全国仮釈放委員会(National Parole Board,以下,本項において「仮釈放委員会」という。)が置かれている。矯正保護局は,刑期2年以上の受刑者に対する施設内処遇と仮釈放後の保護観察 に関する権限を有し,仮釈放委員会は,連邦刑務所に収容されている受刑者と,州仮釈放委員会のない州の刑務所に収容されている受刑者に対する仮釈放に関す る権限を有している。
 1992年に公布された「矯正及び条件付き釈放に関する法律」により,連邦レベルでの犯罪者の矯正処遇及び条件付き釈放の 過程における犯罪被害者の位置づけが,正式に規定されることとなった。同法は,被害者(その家族等を含む。以下,本項において同じ。)への情報提供につい て,次のとおり規定している。
 矯正保護局及び仮釈放委員会は,被害者が希望する場合には,加害者の氏名,罪名,有罪判決を言い渡した裁判所,刑 の始期,刑期,一時的釈放又は仮釈放の条件を満たす日及び審査日についての情報を被害者に開示する。また,被害者の利益が加害者のプライバシーの侵害より 明らかに重要であると考えられる場合には,加害者の年齢,受刑施設の所在地,釈放田釈放に当たっての遵守事項,帰住予定地等についての情報も提供すること ができる。
 被害者は,書面又は仮釈放委員会委員との面接により,同委員会に情報を提供することができ,同委員会は,加害者の条件付き釈放を審査する際には,その情報を考慮に入れなければならない。
  被害者は,加害者の条件付き釈放に関し,仮釈放委員会に対して,書面で意見を提出することが許されている。また,加害者に対する面接審理の際に,傍聴人と して出席することもできるが,その場で発言することはできない。面接審理に当たって提出される資料は,被害者の安全や刑務所の保安等が脅かされるおそれが あると考えられる場合を除き,すべて加害者にも開示されることになっている。
 被害者に対して矯正処遇や条件付き釈放に関する情報提供等を円滑に 行うため,矯正保護局の地方本部,刑務所及び保護観察所には,被害者支援の担当官が置かれている。また,仮釈放委員会の地方事務所には,被害者やその家族 が容易に情報提供を受けられるよう,専用電話が設けられている。(法務省:平成11年版 犯罪白書 第5/7/7/3より一部抜粋) 

 ア 特殊な不定期刑制度「危険な犯罪者」認定制度

  一定の犯罪に対する有罪の認定後,刑の量定前に,検察官の申請により,裁判所が60日以内の鑑定留置を命じ,その鑑定結果を受けて,裁判所が「危険な犯罪 者(Dangerous Offenders)」と認定した場合,刑期の上限の定めのない絶対的不定期刑を宣告する制度である。認定の要件は,性的暴行により有罪を認定された者の 場合においては,自己の性的衝動を抑制できず,そのため将来他者への害悪を引き起こす危険性があると認められることである。この制度では,刑の執行開始後 7年を経過すると,全国仮釈放委員会(National Parole Board)が,仮釈放の可否を審査し,仮釈放不可となった場合には,以後2年ごとに仮釈放の可否の審査を繰り返す。絶対的不定期刑制度であるため,仮釈 放なき終身刑と同様の運用を行うことが可能である。20055月現在,「危険な犯罪者」に認定された者は,336名であった。このうち17名が仮釈放 中,319名が拘禁中であった(連邦公共安全及び緊急事態準備庁の資料による。)(法務省:平成18年年版犯罪白書 第6/4/5/4 から一部抜粋) 

(note4)2015年に入り、ハーパー政権はたて続けに社会政策的なプログラムを実行に移しつつある。筆者が気がついた範囲で紹介する。

①2015年4月7日、 ハーパー政府(公共安全・非常事態準備相であるスティーブン・ブレイニー(Steven Blaney:ケベック州選出)は,約600人の最近時に釈放された元女性犯罪者の刑務所から迅速に社会復帰できるよ主要各コミュニティの基金による犯罪阻止プロジェクト(全国犯罪阻止センター(National Crime Prevention Centre))に2,700万カナダドル(約26億2,000万円)の資金援助する旨、発表

 ②2015年4月7日、 カナダ食品検査庁のリリース「ハーパー政府は「世界保健デイ(World Health Day)」の重要性と2015年の食品安全性強化目的でカナダの更なる食品の安全性強化のため食品安全情報ネットワーク(Food Safety Information Network:FSIN)の設立のため3000万ドル以上の投資を行う旨」公表 

③2015年4月7日、 「ハーパー政府はサスカチュワン州プリンス・アルバートにおいて政府の「ホームレス提携戦略(Government of Canada’s Homelessness Partnering Strategy (HPS)」として2,100万ドル(約20億3,700万円)の基金を供給する旨」公表 

(note5)1982年1月オルソンは謀殺の11の訴因の罪を認めて終身刑となり、ケベックにあるサンタ・アンヌ・ダッジ収容所の超極大保安スペシャル・ハンドリング・ユニットの住人となる。そこはカナダで最も危険な犯罪者が多く住む街区だが、実際オルソンも危険な犯罪者なので当然以上の待遇とは言へ彼が刑務所から解き放されそうにないことを意味した。
 15年の刑期が終えた1997年にオルソンはカナダの「かすかな望み条項」すなわち少なくとも15年務めた囚人のための全国仮釈放委員会に許可申請したのであるが、釈放を与えられなかった。第一級謀殺の有罪判決を受けた収容者でも最低25年務めた後に釈放を申請することをカナダの法律は認めている。これに従い、2006年7月18日オルソンは2回目の全国仮釈放委員会に申請したが、これも否定された。さらに、カナダの法律では2年おきに仮釈放の論拠を述べる権利があることから、オルソンは201011月に行った再度仮釈放請求も拒否されている。(SIRIAL KILLERS記事を筆者が仮訳した) 

(note6)カナダの「法定釈放(stationary release)」の解説例

刑期の3分の2を服役した時点で行われる義務的釈放。終身刑・不定期刑の者に法定釈放は適用されない。また,一定の暴力犯罪や性犯罪等の受刑者で特定犯罪(致死傷を伴う犯罪や児童に対する性犯罪など)の再犯のおそれがあるときや,それら以外の犯罪による受刑者で上記特定犯罪の再犯のおそれがあるときは,法定釈放日の6月前までに連邦矯正保護庁は全国パロール委員会に対象者のファイルを付託し,全国パロール委員会は,法定釈放の許可条件として居住条件指定(民間団体の運営による社会内居住施設(Community Residential Facility) への入所)等による法定釈放に付すか,法的釈放によらず刑期満了まで収容継続(CCRA 129条)するかを決定する。

 連邦の電子監視の試行では法定釈放の者も対象とした。法務総合研究所研究部報告44 「諸外国における位置情報確認制度に関する研究」寺村堅志「カナダ」131頁から引用 

(note7)法定釈放(statutory release)」の説明に関し、2つの法務省の資料で対象となる刑罰名が異なる。前者は「無期刑」であり、後者は「終身刑」である。法務省が参照しているカナダの全国釈放委員会サイト(Types of release)の解説によると法律の原文は「life or indeterminate sentences (終身刑または不定期刑)」である。後者の訳語が正しかろう。 

(note8) カナダ刑法第745は、第一級謀殺犯や第二級謀殺犯等に対する量刑と仮釈放について次のとおり定義する。(筆者の仮訳)

 ①大逆罪や第一級謀殺を犯した者に対する刑は25年の刑期を終えるまでは仮釈放の申請の機会が与えられない。

②過去に過失殺人を犯した謀殺犯罪者は第二級謀殺に処せられるが、25年の刑期を終えるまでは仮釈放の申請の機会が与えられない。

(以下、略す) 

(note9)First Degree Murder (第一級謀殺)」:いかなる故意をもち計画的なかつ予謀を抱いた殺人は第一級謀殺である。明白な犯意とは、非合法的に人の生命を奪うというその計画的意図(planned and deliberate)のことであり、立証可能な外的責任事由によって明確化されるものである。第一級謀殺は一番の重刑で、計画性のある殺人の中でも特に悪いケース、例えばレイプや放火などの他の犯罪を犯している最中の殺人や、複数の同時殺人や、または高度な危険を有する行為で人を殺した場合などに適用される。この犯罪に対する一般的な刑罰は、米国等では死刑宣告や終身刑(保釈の可能性なし)などである。カナダは死刑制度がないため「終身刑(保釈の可能性なし)」が最も重い刑罰にあたる。 

 2.「Second Degree Murder (第二級謀殺)」:予謀の犯意に基づく非合法的な殺人であるが、その実行に計画性および予謀性はない。 第一級謀殺でない全ての謀殺は第二級謀殺である。 この犯罪に対する一般的な刑罰は、25年以上の拘禁刑や終身刑(保釈の可能性あり)などである。

カナダ刑法第231条 参照 

(note10)カナダにおける「かすかな希望早期釈放制度(faint hope clause)の意義について補足する。

カナダ刑法745.6条に規定する。すなわち、745.64/12(50)はカナダの重大犯罪者が刑期15年を経過した後、終身刑判決を受けた者につき仮釈放の権利がある者につき早期釈放申請ができると定めていた。2011年の改正により・・・

・・・・

  

(note11)カナダはローマ規程署名.19981218

               批准.200077

国内立法「人道に対する罪及び戦争犯罪法」(以下「カナダ法」とする。)

カナダは、ICC(国際刑事裁判所)の設立にあたり、外交会議でも議長を務めるなど中心的役割を果たしてきた。したがって各国は、カナダがローマ規程を実施するためにどのような国内法を行うのか注目していた。カナダでは批准に先立ち」、199912月にローマ規程を実施するための法案が議会に提出され、翌年629日に議会を通過し国王の裁可を得た。施行されたのは20001023日である。(以下、略す)

ローマ規程:1998年7月17日、 国際刑事裁判所 (Interna-tional Criminal Court以下 「ICC」とする。)を設立するためのローマ国際刑事裁判所規程(Rome Statute of the International Criminal Court以下 「ローマ規程」とする。)が、ローマで開催された国連外交会議 (以下 「外交会議」とする。)において採択された。 本規程は、 発効のためには60ヶ国の批准が要件となっている(ローマ規程第126)(以下、略す)

(国立国会図書館レファレンス 20045月号 松葉真美「国際刑事裁判所規則履行のための各国の国内法的措置」から一部抜粋リンクは筆者が行った) 

(note12)法務省のリリース文では憲法法の具体的な規定の引用はない。筆者において関係文献に基づき補足する。なお、カナダの憲法法は一般的な意味での基本法ではない。そのため頻繁に改正が行われており、重要な憲法として一般的に引用されるのは、「1967年憲法法」と「1983年憲法法」である。

前者は国家組織法というような内容であり、今回問題となる国民オ基本権という意味でが.は1982年憲法法の第11条~12条が該当すると思われる。わが国の国立国会図書館の資料「     」訳文4/12(49)を抜粋、引用する。

○第11

 (刑事及び刑罰事件における手続)

 犯罪の嫌疑で告発された者は、次の各号に掲げる権利を有する。

 (a) 不当に遅滞することなく特定の罪名を告げられる権利

 (b) 合理的期間内に裁判を受ける権利

 (c)犯罪に関し、その訴訟手続において自己に不利益な証人となることを強要されない権利

 (d)独立かつ公平な裁判所による公正かつ公開の審理において、法に従い有罪の認定が下されるまでは、無罪の推定を受ける権利

 (e) 正当な事由なしに合理的な保釈を拒否されない権利

 (f)軍事裁判所で審理される軍事法規上の犯罪を除いて、刑罰の上限が5年以上の拘禁刑である場合に、陪審による裁判の利益を受ける権利

 (g)作為又は不作為の時点で、カナダの法律又は国際法に基づく犯罪を構成し、又は国際社会で認められた法の一般原則により犯罪とされる場合を除いて、いかなる作為又は不作為を理由としても有罪とされることのない権利

 (h)無罪が最終的に確定した場合に、それに関し重ねてその責任を問われない権利、及び、最終的に有罪とされ、その犯罪に対し刑罰を受けた場合に、重ねてその責任を問われ又は刑罰を課せられることのない権利

(i)その犯罪が有罪とされ、実行時と判決時との間に刑罰の変更があった場合に、その軽いものの適用を受ける権利 

12条(処遇又は刑罰)

 何人も、残虐かつ異常な処遇又は刑罰を受けることのない権利を有する。 

*******************************************************************************

Copyright © 2006-2015 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means, including electronic, mechanical, photocopying, recording, or otherwise, without prior written permission of the author. 

 


ジャーマンウィングス社の墜落事故を受け欧州航空安全庁がコックピットの常時最低2人体制の徹底化勧告通報

2015-03-28 15:08:27 | 信頼性の高い情報とは

2015.3.26 英国Daily Mail Online記事の写真から抜粋

 ドイツ・ルフトハンザグループの航空会社ジャーマンウイングス社 の航空機(Germanwings 4U9525)のフランス国内での悲惨な墜落事故(前記Daily Mail online記事参照)の捜査や原因究明等が今後進むであろうが、最大の原因は誰でも分かるとおり一定時間内、副操縦士が1人で150人の命を預かったことにある。  この事故を受けEU(欧州連合)の民間航空機産業における安全に関する分野での規制やその管理機関である「欧州航空安全庁(EASA:European Aviation Safety Agency)(本部はドイツのケルン)」がまず動いた。  

 今回のEASAの各国の航空会社等向け「耐空性改善通報(Airworthiness Directives:AD)」 (note1)の内容はいたって簡単ではあるが、わが国も含め世界的に占めるLLCのパイロット不足問題等からみてその対応にかかる問題の大きさは極めて重大であると思う。  専門外の筆者としては取り急ぎEASAのADを仮訳する。

 *EASAは、本日、少なくとも2人(少なくとも1人はパイロット資格を持つ)のクルーが全飛行中時間中、クルー・コンパートメント(乗員室)内にいることを確実にするよう各航空会社に暫定的勧奨(note2)を行った。各航空会社は、操縦上または生理的な要求に基づき操縦室(コックピット)を離れることに伴う安全性とセキュリティリスクに関し再調査を行うべきである。  EASAは悲劇的な事故であるジャーマンウングス社のフライト4U9525の墜落事故に基づき現時点で入手可能な情報に基づき本勧奨を行うもので、フランス航空事故調査局(Bureau d'Enquêtes et d'Analyses pour la sécurité de l'aviation civile)が行っている技術面の調査結果はなお係属中である。

 EASAの業務執行取締役(Executive Director)パトリック・キー(Patrick Ky)は「我々は、なお犠牲者を哀悼する一方で、乗客やクルーの安全とセキュリティの改善に向けたあらゆる努力に取り組む」と述べた。

 

***********************************************************************

 (note1) ”AD”とは「耐空性改善通報のことであり、TCD(Technical Circular Directivesの略)と同意義である。航空機及びその装備品等の安全性及び環境適合性を確保するために整備又は改造作業等の実施が必要であると認めたときにわが国では、JCAB(国土交通省・航空局:Japan Civil Aviation Bureau)より発行される通報」をいう。  

 (note2)今回のEASAの通報について、3月28日(土)午後2時現在でJCABの移牒通達は出ていない。また、わが国だけでないがLLC等の操縦士不足は目に見えている。今回のEASA通報を受けた対応については経営面などに大きな影響が出てくるであろうが、一方で重大な顧客の安全強化の側面から、具体的な対応が期待されるところである。

 **********************************************************************

 Copyright © 2006-2015 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means, including electronic, mechanical, photocopying, recording, or otherwise, without prior written permission of the author.


米国連邦議会両院で連邦政府官吏が一般利用する政府公費決済用クレジットカードの濫用阻止法案が通過

2014-02-04 01:13:20 | 信頼性の高い情報とは



(本ブログは2012年9月に掲載したものの改訂版である)

 連邦議会上議員であるチャック・グラスリー(Sen.Chuck Grassleyアイオワ州選出 ・共和党) ,ジョセフ・リーバーマン(Joseph Lieberman:コネチカット州選出・無党派)他4名(note1)の超党派議員が連名で上程した2年かかりの法案「Government Charge Card Abuse Prevention Act of 2012」 (note2)が、2012年9月22日に再度下院修正案が上院を最終的に満場一致で通過し、9月25日に大統領の署名を待つ段階になった。

 同法案は、連邦機関の官吏(federal employees)に対する政府の支払いカードに対する新たなコントロールの内容とその違反行為に対し、より厳格な罰則を科すという内容である。

 2011年7月に上院を通過し、2012年8月1日に修正案が下院を通過、その後、修正が行われ、9月22日に再度上院を通過したものである。 (note3)


 本ブログは、同法案の背景、主旨・目的等につき概観するものである。いずれにしても、米国の経済回復に向けた課題は大きく、例えば軍事予算に関する国防予算の強制削減問題(Sequestration)解決のため、強制削減の実施を「一時凍結」して協議の時間を作ろうとする共和党案に対し、根本的な解決を主張する民主党が妥協せず、交渉が暗礁に乗り上げ、米国の経済破綻に向かった危機は深化している。 (note4)


1.政府官吏によるクレジットカードの詐欺・違法な乱用と国民の信頼の背信

 リーバーマンは、連邦議行政監査局(Government Accountability Office)、各連邦機関の監査総監(Inspector Generals) (note5)において詐欺的、違法な使用例を多々特定でき、さらに全連邦機関の支払いカードプログラムを管理する共通役務庁においてさえも、上級官吏個人支出として数万ドルのクレジットカードによる不正利得が可能であったと指摘した。
 すなわち、リーバーマンは政府官吏が台所用品(kitchen application)、宝石、ギャンブル旅行(gambling excursions)、クルーズ、ストリップ・クラブや買春宿(legalized brothels)等で購入カードや交通カードを不正使用したと指摘した。

2.法案の要旨

(1)同法案は、政府機関に対しクレジットカードやコンビニ小切手(convenience check:クレジットカード会社から発行される小切手で、この小切手を使うとそのクレジットカードを使って現金を借りたのと同じことになる)の使用に関する記録保存方法等につき、次の具体的改善を義務づける。

①政府機関が効率的にカードホルダーの管理が行えるよう、単一取引限度の設定や総取引限度を設定する。
②政府の適切な支払い、販売量等に基づく手数料を記録する。
③カードの使用につき官吏(従業員)を教育する。
④支払いシステム、技術や詐欺的な購買行為を阻止したり捕捉する技術を利用する。
⑤官吏が勝手に購入を承認させないように保有者以外の承認官吏を任命する。
⑥買い物カードの領収書や関連書類と請求書とを調和させる。
⑦乗車カード購入が確実に従業員に支払われることを確実にするため銀行に直接支払いを利用する。
⑧未使用の航空券の還付を承認したとき、納税者は使用しなかったチケットは支払う必要はない。
⑨無権限の支払い行為に関しては争い、また適切な解決に向けた争いのある支払い状態に関する記録を義務化する。
⑩カードを発行する官吏に対する信用調査を実行する。カードの誤使用や金額制限カードを発行する。
⑪金利負担を回避するため迅速な支払いを徹底する。
⑫政府機関を退職する官吏のカードを無効化する。
⑬カードを発行する官吏に対し、定期的な審査を実行する。

(2)各機関の監査総監はカードの適切な使用に関する定期的なリスク管理査定責任を負い、また行政管理予算局はカードの使用方法に関するガイダンスの見直しや更新を行う。

******************************************************************************************************************************

(note1) その他の法案上程議員は、Susan Collins(メイン州選出・共和党)、Joseph Lieberman(コネチカット州選出・無党派)、Jon Tester(モンタナ州選出・民主党)およびThomas Carper(デラウェア州選出・民主党)の4名である。

(note2) 当初上程時の法案名“Government Charge Card Abuse Prevention Act of 2011”は、2012年の夏に下院で最終案として修正されるとともに“Government Charge Card Abuse Prevention Act of 2011”と法案名が改定された。

(note3) 上院、下院の法案の可決経緯については、公式サイト「連邦議会図書館Thomas」が修正法案の内容解説を含め、最新かつ正確である。なお、本ブログでもしばしば、引用してきた民間法案審議トラックキングサイト“Govtrack”で見ると2012年9月26に夜時点で見ても修正最終法案が上院で通過した記録がない。これは問題であろう。

(note4) 「国防予算の強制削減問題(Sequestration)」については、わが国ブログ「東京の郊外より・・・」が詳しくかつ平易に解説している。

(note5) 議会は、執行機関に、独立した客観的な監査・調査機能を付与することを意図して、1978年監察総監法(Inspector General Act of 1978)を成立させた。同法では、12の執行機関に監察総監室(Office of Inspector General)を設置し、その長として、上院の助言と承認に基づいて大統領が任命する監察総監(Inspector General)を置いた。
(日本銀行金融研究 2006年8月号 森 毅「米国の連邦政府における内部統制について」から一部抜粋)
なお、“Inspector General Act of 1978”は“Inspector General Reform Act 2008” により抜本的に改正されている。


***************************************************************************************************************************

Copyright © 2006-2014 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.





米国FBIが子供の奪取問題:親権問題が死傷事件を引き起こすトラブルの増加傾向につき警告

2013-06-12 14:21:25 | 信頼性の高い情報とは




 今国会で「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案」(いわゆるハーグ条約実施法案)が衆議院を5月9日に可決、5月31日に参議院法務委員会で審議を開始、6月12日に参議院本会議で可決された。この問題は真正面から論じられることは比較的に少ないが、筆者が調べた範囲でも多くの個人やNGOが取り上げ、各種の賛否論を論じている。(note1)

 筆者もこの分野の専門ではないのでここで詳しく論じないが、実はこの問題に関し米国の親権問題
(note2)の根の深さを見る上で重要な問題が生じている。去る6月6日、FBIは非親権者の両親(non-custodial parents)による親権者の両親に対する子供の奪取(child abductions)や報復行為として子供を損傷させるといった脅迫行為が急増している旨報じた。

 FBIは、近年急増する非親権者による子供の拉致、奪取さらに時として子供の死に至る危険性を回避するため、迅速に法執行機関への報告を強く求めている。

 今回のブログをこの問題の本質的な問題を論じるわけではないがFBIの子供の奪取問題のセクションである“Violent Crimes Against Children Intelligence Unit”の専門調査官アシ・ジェード・ダグラス(Ashi-Jade Douglas)のコメント等を中心に紹介する。


1.ダグラス調査官のコメント要旨

・非親権者は子供の奪取や報復行為を欲する。彼らは、24時間または一定の時間に子供との時間が持てないなら他方の親も子供を持つべきでないと感じている。

・動機が明らかになっているFBIの子供の全奪取事件の分析結果を見ると、親権確保が動機となった息子や娘のいった子供や親権者の意思に反する奪取行為の件数は2010年財政年度が9%であったのに対し、2012年度は60%に増加した。その動機とは時として自分たちの親子関係を認めるよう親権者を説得することであり、また報復行為としてはしばしば子供に危害を加えることであり、この傾向が上昇中であり、昨年10月以降、それら拉致行為は25件がFBIに「報告」されている。

・いくつかの悲惨な事故事例が報告されている。
①2009年、非親権者である母親がテキサス州で8ヶ月の子供を親権者たる父親の手元から奪取した。さらに、その女性は親権者が親権を援用することや他の女性と不倫関係から避けさせるためと述べて子供を殺した。

②2011年、2歳の少女がカリフォルニア州で非親権者の父親により奪取された。その父親は娘を射殺後自らも自殺し、1週間後に2人の死体が発見された。

③2012年、ユタ州の非親権者である父親が7歳と5歳の息子を奪取し、殺害後自ら自殺した。彼は、単独監護権(sole custody)(note3)が与えられないことに怒ってそのような行動に出た

 FBIの解析では、国際的な親権者にかかる奪取問題と比較して国内の奪取問題は子供にとってより暴力的な結果をもたらすもので、ダグラスはさらに米国の子供の約46%は未婚の両親の間に生まれ、そして40~50%は離婚に終わる。このため、通常は片方を親権者として残す。

2.子供を保護するためのダグラス調査官の提案
 親権者たる両親は、学校、学校後の保護施設(after-care facilities)、ベビーシッター、その他親権同意書に基づき責任を有する機関に対し誤って非親権者に引き渡されないよう情報提供する。
 ダグラス調査官は、FBIの解析から得られたその他の大きな成果としては、法執行機関は子供が非親権者からの障害に会わないよう迅速な行動を取るべきという点である。他方の親に復讐するため自分の子供を傷つけること自体、信じられないことである。にもかかわらず、彼らはその瞬間には問題ないと信じ込むのである。

3.子供の安全確保のためのFBIへの迅速な報告への手がかり

 米国内の親権問題に係る子供の奪取問題は、法執行機関の捜査対象とはならない家庭内の問題という誤解が存在する。
 事実、そのような奪取事件が法執行機関に報告されたとき、子供に危険を及ぼす、とりわけ以前に自分の子供を奪取したり傷つけたりした非親権の両親に精神障害があったり、失業中であったり、または財政的に困窮している場合は危険が伴う。ダグラス調査官はこのような奪取につき時宜にあった法執行機関への報告は重要である、すなわち子供が無傷で終わる可能性を高めると述べる。

******************************************************************************************************************************

(note1) わが国の子供奪取問題やハーグ条約に関する専門サイトの例としては、国際子供奪取問題.orgの「国際離婚と子の奪取:ハーグ条約問題」>、「中部 共同親権法制化運動の会」等が詳しく論じている。

(note2)米国の親権に関する法的問題を網羅的に扱う解説サイトがある。

(note3) 監護権 Physical Custody-監護権は、子供と一緒に暮らす権利のことで、日々の生活のなかで、子供(18歳以下)がだれと一緒に住むか、法的に定めたものを指します。監護権は、片親が単独で子供と一緒に暮らす、単独監護権(Sole Physical Custody)と、両親が、裁判所で決められたスケジュールに従い交互に子供と一緒に暮らす共同監護権(Shared Physical Custody)があります。(在ニューヨーク日本国総領事館:各州の家族法制度(DV、離婚、親権・面会交流権、養育費:ペンシルべニア州から一部抜粋)


******************************************************************************************************************************

Copyright © 2006-2013 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means, including electronic, mechanical, photocopying, recording, or otherwise, without prior written permission of the author .


オーストラリアの日本等との国際的な自由貿易協定締結への取組みと国家的高等教育輸出推進政策のゆくえ

2013-06-04 16:32:55 | 信頼性の高い情報とは


 わが国のメディアでもわずかに取り上げられ始めてきたが、今世界の主要国は教育文化とりわけ大学教育のグローバルな展開を図るべくICT等を活用した様々な世界の優秀な人材発掘、開発に取り組んでいる。

 筆者の手元に、6月3日にオーストラリア連邦議会下院の外交問題・防衛・貿易合同委員会が、オーストラリアの日本と大韓民国との貿易および投資関係に関する諮問に対する報告書を提出した旨のリリースが届いた(リリース文自体は公開されていない)。

 今わが国は、環太平洋戦略的経済連携協定(TTP)の今後の展開を極めて慎重かつ重要問題として取り組まざるを得ない政治経済環境下にあることは言うまでもない。オーストラリアは国家戦略としての自由貿易協定(FTA)の取組みは極めて熱心である。連邦外交・貿易省の“Australia’s Trade Agreements”のサイトを見てほしい。世界地図の中で2国間および地域間に別れて締結・実行済の国や交渉中の状況が一目である。(note) 日本との交渉内容は専門サイトを参照されたい。

 もう1つ重要な国家戦略上の課題が「国家的高等教育輸出推進政策」である。
このような中でオーストラリア議会の報告書は、単なる日本や韓国との政治経済面の関係強化だけでなく、語学教育等も含めた人材問題を極めて積極的に取り上げている。この点は、わが国の将来的な人材開発に取り組むことが、ひいては長期的に見たわが国の豊かさに繋がると考え、その意義を確認すべく取り急ぎリリース内容のみを仮訳した。


1.リリース文(仮訳)

◎オーストラリアの日本および大韓民国との貿易と投資に関係するに報告書を提出

・オーストラリア連邦議会下院、外交問題・防衛・貿易合同委員会は、6月3日、オーストラリアの日本と大韓民国との貿易および投資関係に関する諮問に対する報告書を提出した。

・貿易に関する小委員会の委員長ジャネル・サフィン(Janelle Saffin)は、同委員会がオーストラリアにとり最も重要な2つの貿易相手国とオーストラリアの貿易と投資関係のあり方を調査する機会を得たことを歓迎すると述べた。

・同委員長は「オーストラリアにとって日本や大韓民国ほど重要である国がわずかしかない。また、わが国にとり2番目と4番目の大きな貿易相手国として、両国とのオーストラリアの貿易と投資関係は基本的に重要である。事実、その関係はオーストラリアの現在の繁栄への重要な貢献をしたわが国の長年にわたる関係に基づくものである。2009年まで40年間以上前の間、わが国の最も大きい貿易相手国でありまたわが国の3番目に大きい外国人投資家として、例えば、1960年代.以来日本は有益な利益手段をオーストラリアに持ちこんだ。」と述べた。

・現在、同委員会への諮問の中心事項は、日本と韓国の両方と交渉中である「自由貿易協定(free trade agreements)」である。委員会は、オーストラリア政府が最高水準でもってこれら協定のための交渉を最優先し続けることを勧奨した。

・また、委員長は「これらの協定は、両国と共に商業リンクを私たちの既にある強い関係の構築、深化ならびに拡大するとともに、現在オーストラリアのビジネス界が経験している障壁に打ち勝つ機会を提供する。特に、韓国の場合では我国が自身の協定を成立させない場合、ならそのオーストラリアが、韓国のその他の自由貿易協定において不都合である点を理解した。したがって、本委員会は強固で包括的かつ自由化を取り込んだ協定の締結を支持した。」と述べた。

・さらに、同委員会は大韓民国とのオーストラリアの関係のより大きい認識の得ることを呼びかけた。

「本委員会は、オーストラリアと韓国の関係の重要性の評価の不足に関するレポートによって心を大きく動かされた。 委員会は、政府がこの関係を促進するより高い優先を与えるべきであると考える。また、オーストラリアの学校教育における優先権言語として韓国語を加えようとする点ならびにオーストラリアのビジネス界の韓国市場への参加につきより大きい支援を行うべき点を勧告した。」と委員長は述べた。

・「教育」がオーストラリアの主要な輸出事項の1つであると認めて、委員会はグローバルな人的資本開発のための高等教育サービスとプログラムの優れた供給者としてオーストラリアを位置づけている政府の努力を歓迎した。

2.報告書全文

 標題は、“Australia’s trade and investment relationship with Japan and the Republic of Korea:Inquiry of the Trade Sub-Committee
Joint Standing Committee on Foreign Affairs, Defence and Trade”
である。全182頁のもの。なお付属資料(Appendix)の一覧、日本や韓国視察時の写真紹介は略した。

(1)第1章 Introduction
○Background to the inquiry
○Conduct of the inquiry
○Structure of the report
・Part One—Japan
・Part Two—Republic of Korea

(2)第2章 Japan
○The trade and investment relationship
・Background
・Development of the relationship
・Overview of goods and services trade
・Overview of investment
Japanese investment in Australia
Australian investment in Japan
・Emerging trends
・Defence materiel cooperation
・Multilateral cooperation
○Barriers and impediments for Australian businesses
・Goods barriers
・Services barriers
○Free trade agreement
・Scope of the agreement
・Japanese policy
・Agricultural reform
*Recommendation 1
・Investment opportunities
・Delegation discussions
・Services trade
・Education
・Delegation discussions
・Japan Exchange and Teaching Programme
・Cultural understanding

*Recommendation 2
・Tourism
・The Japanese market
・Financial services
・Australian products in Japan

*Recommendation 3
・Government assistance
・Concluding comments

(3)第3章Republic of Korea
○The trade and investment relationship
・Background
・Overview of goods and services trade
・Overview of investment
・Emerging trends
Opportunities for small and medium-sized businesses
・Defence materiel cooperation
・Multilateral cooperation
○Barriers and impediments for Australian businesses
・Background
・Goods barriers
・Services barriers
・Education
Financial services
・Investment barriers
○Free trade agreement
・Background
・Objectives of the agreement
・Scope of the agreement

Issues
Sensitive sectors
Investor-State Dispute Settlement
Delegation discussions
Political perspective
Importer perspectives
Agricultural reform

*Recommendation 4
Services trade
Education

*Recommendation 5

*Recommendation 6
Investment opportunities
Delegation discussions
Government assistance

*Recommendation 7
Australian products in South Korea
Concluding comments

*************************************************************************************************************
(note) わが国でオーストリアのFTA最新情報を理解するとすれば、ジェトロの「海外ビジネス情報:国別:地域別情報:オーストラリアのWTO・他協定加盟状況」等であろう。


*************************************************************************************************************

Copyright © 2006-2013 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means, including electronic, mechanical, photocopying, recording, or otherwise, without prior written permission of the author .