(執筆途上)
3月4日、カナダのスティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相(アルバータ州選出:保守党党首) (note1)やピーター・マッカイ(Peter Mackay:ノヴァ・スコシア州選出)法務大臣兼司法長官は、カナダにおける最も重大な犯罪に基づく終身刑の受刑者の権利であった全国仮釈放委員会(National Parole Board,以下「仮釈放委員会」という。)の決定にもとづく釈放を認めないとする「刑法(Criminal Code (R.S.C., 1985, c. C-46)」および「矯正および条件付釈放法(Corrections and Conditional Release Act S.C. 1992, c. 20(CCRA)(以下、CCRAという)」 (note2)の一部改正案の上程予定を公表した。
また、同月27日、政府の公共安全・非常事態準備相であるスティーブン・ブレイニー(Steven Blaney:ケベック州選出)は、カナダ国民の家族やコミュニティの安全性を確保すべく累犯かつ性犯罪等暴力犯罪者の現行の釈放委員会による仮釈放条件(フル・パロール:full parole)をさらに制限する前記法案を議会に上程した旨報じた。 (note3)
これらの一連の「刑法」や「矯正・条件付釈放法(CCRA)」その関連法案の一部改正法が「Bill C-53:Life Means Life Act 」として、3月11日に連邦議会に上程されたのである。
今回、筆者があえてカナダの新立法の背景や議会の議論等を取り上げる理由は、わが国の法務省の犯罪白書でも最近見られるとおり、特に凶悪犯の再犯率が上がっており、一方でカナダに見るとおり、犯罪者の人権擁護問題もある。特に死刑制度がないカナダにおける人権擁護問題の取り組みは米国等とは比べものにならない意義を持つ。
カナダの連邦議会の法案をめぐる論議は、単に犯罪者の矯正・社会復帰といった刑事政策論だけでなく、この秋の総選挙の前哨戦といった感が見られる点は否めない。 (note4) しかし、筆者の考えは刑事政策論としては単のこの点だけにとどまるべきでないというものである。
すなわち、本文でも述べるとおり、カナダは歴史的にみてもシリアル・キラー(serial killer:連続殺人犯)事件が多い国といえる。例えば次のような例が挙げられる。
①クリフォード・ロバート・オルソン, Jr.(Clifford Robert Olson)(1940年1月1日生まれ、2011年9月30日死去) :1980年代初期に9歳と18歳の間の計11人を殺害することを認め有罪となったカナダの連続殺人犯 (note5)
②ロバート・ウィリアム・ピクトン(Robert William Pickton)(58歳:養豚業):2007年12月9日 バンクーバー(Vancouver)で起きた連続女性殺人事件の公判で、女性6人の殺害に関する第二級殺人罪として刑期25年経過後に仮釈放される可能性のある終身刑を言い渡された(同判決はカナダ刑法における最高刑となる)。
③コーディ・レゲボコフ(Cody Legebokoff):2014年9月21日、中部ブリティッシュ・コロンビアで3人の女性と10代の女の子を殺した件で有罪判決を受けた。控訴したが却下された。被告は2013年に第一級謀殺の4つの訴因の有罪判決を下され、刑期25年後まで仮釈放なしの終身刑を宣告された。
このような社会的な背景に基づきカナダにおける終身刑制度に関連して認められている刑期25年経過後に一定の条件下の「釈放問題(full parole)」を中心とする終身刑のありかたや仮釈放委員会による「条件付(早期)釈放」制度の意義や運用問題点を理解することに加え、その法政策的な意義を正確に理解・解析する点にある。
なお、本法案については本文で述べるとおり、カナダ国内関係者の多くの論議を呼んでいる一方で、法案のsummaryを読むだけでは問題点が正確に整理・理解されていない点もある。また、3月4日のハーパー首相の声明にある「15年の刑期経過後の早期仮釈放を認める【かすかな望み条項(faint hope clause】」制度を廃止したものの、その後の釈放制度のあり方等、なお疑問が残る立法ともいえる。
刑法・刑罰分野での曖昧な政策の解決は否である。本ブログで論じる法改正内容を踏まえた関係者の議論がさらに高まることを期待する。
同時に、本ブログを通じてカナダの法案検索の手順等について今次の「刑法」や「矯正・条件付釈放法」の一部改正法の学習を通じて学んでいただきたいし、不備な点は関係者により補足されたい。
2回に分けて掲載する。
1.ハーパー内閣の改正法の必要性や趣旨表明
政府サイトの法案提出の背景のリリース(仮訳)
○カナダの条件付仮釈放制度の内容
カナダでは、犯罪者の処遇は,刑期2年以上の実刑に処された者については連邦政府が、それ以外の者については州政府が管轄することとなっている。連邦政府における犯罪者処遇の担当部局として,法務省(Ministry of the Solicitor General)に、矯正保護局(Correctional Service of Canada)および全国仮釈放委員会(National Parole Board,以下「仮釈放委員会」という。)が置かれている。矯正保護局は、刑期2年以上の受刑者に対する施設内処遇と仮釈放後の保護観察に関する権限を有し、仮釈放委員会は,連邦刑務所に収容されている受刑者と、州仮釈放委員会のない州の刑務所に収容されている受刑者に対する条件付き釈放に関する権限を有している。
条件付き釈放の種類には、一時帰休(temporary absence)、外部通勤(work release)、デイ・パロール(day parole)、フル・パロール(full parole)および法定釈放(statutory release) (note6)がある。このうち、一時帰休の一部と外部通勤は刑務所長に、一時帰休の一部、デイ・パロールおよびフル・パロールは仮釈放委員会に、許否を決定する権限が与えられている。また、法定釈放は、終身刑および不定期刑で服役中の受刑者を除き、フル・パロールを認められなかった受刑者を、刑期の3分の2を経過した時点で自動的に釈放するものであるが、仮釈放委員会は、釈放に当たって遵守事項を付加することができるほか、矯正保護局の付託を受けて、釈放中に人を殺傷したり、重大な薬物犯罪を惹起するおそれのある受刑者等については、刑期満了まで拘禁することができる。(法務省・法務総合研究所研究部報告 9(243頁以下) 「カナダにおける犯罪被害者施策」)から一部抜粋した。なお、条件付釈放制度については、法務省・法務総合研究所研究部報告44 寺村堅志「諸外国における位置情報確認制度に関する研究・「カナダ」131頁がより詳しい。) (note7)
2.法案の具体的な内容
(1)法務省サイト(2015年3月4日:オンタリオ州スカーバラでのハーパー首相の声明)の改正法案の趣旨説明(仮訳する。なお、リンクや注書等は筆者が付した)
カナダの刑法が定める最も重大な犯罪は謀殺(murder)である。第一級謀殺(いかなる故意をもち計画的なかつ予謀を抱いた殺人)(note8)(note9)の受刑者は25年経過するまで仮釈放の申請権はを持たずに強制的に終身刑が科される。警察官の殺害や性的暴行殺人罪を含む一定の犯罪者において計画的でない謀殺罪についても同様の罪を負うこととなっている。
このたび、カナダ政府はすでに2011年に「早期仮釈放に関するかすかな望み条項(faint hope clause:謀殺犯に対し刑期15年経過後に仮釈放の申請を認める制度)」 (note10) (後記4.で詳しく論じる)の適用除外を行い、また複数殺人犯に対する仮釈放を認めない継続期間を認めるといった刑罰強化のための確たる手続きをすでに取ってきた。
今回上程した改正法案は最も憎むべき殺人犯の有罪判決の効果・刑の執行を確実化氏、また大逆罪の有罪判決を得た者の生存期間につき釈放なしに収監し続ける手続きを明確化した。対象となる謀殺犯罪の範囲は次の行為である。
①性的暴行(sexual assault);
②誘拐または強制的な監禁(kidnapping or forcible confinement);
③テロ行為(terrorism);
④警察官または看守の殺害;
⑤特別に残虐な性格を持つすべての第一級謀殺行為
また、上記の義務的有罪判決の加え、裁判所はあらゆる第一級謀殺事件について、または被告が過去において謀殺により有罪判決を受けているとき、あるいは「人道に対する罪及び戦争犯罪法(Crimes Against Humanity and War Crimes Act (S.C. 2000, c. 24)」 (note11)における国際的な殺人行為を行ったときは、裁判官に釈放のない絶対的終身刑を科す裁量権(discretion)を与える。
カナダ憲法法上の合憲性 (note12)問題に対処するため、本立法は35年間以上の刑期を終えた後には、例外的釈放措置として公共安全・非常事態準備相への申請により釈放権のない終身判決の犯罪者に認めるものである。この釈放申請を認める決定は、連邦内閣が責任を持ち、またその決定にあたり犠牲者の家族の意見提出が保証されるものである。
釈放の可能性のない終身刑にかかる本法案の内容は、英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)、ニュージーランド、米国およびオーストラリアといった同様の考えに立つ国々の司法制度に合わせたものである。
今回の法案提出の背景は、凶暴な犯罪者が早期釈放の機会が制度的の終結を意図する政府の最近時の発表にもとづくものである。今回の法案は、 「カナダの安全な通りとコミュニティ計画(Canada’s Plan for Safe Streets and Communities)」の一環であり、すなわち、凶暴な犯罪者の責任を明確化し、被害者の権利保護さらにはカナダの司法システムの効率性の向上を図ることに焦点を当てたものである。
*********************************************************************************
(note1) カナダでは、2015年秋に連邦議会の総選挙が行われる。ハーパー政権の今後を見極めるうえで重要な年である。
(note2) 1992年矯正及び条件付釈放法(Corrections and Conditional Release Act(CCRA)1992)は,カナダの矯正制度の基本骨格を定める連邦法であり,施設内処遇,刑務所からの早期釈放(条件付釈放),釈放後の社会内処遇等に関する重要な事項について規定している。同法は,1961年監獄法(Penitentiary Act 1961)及び1959年仮釈放法(Parole Act1959)を統合した新法である。。(法務総合研究所研究部報告42 「再犯防止に関する総合的研究209 第3章 カナダ」から一部抜粋。同法は2005年等に一部改正されている。
(note3)カナダの「3 .矯正保護における被害者施策」から一部引用する。
カナダでは,犯罪者の処遇は,基本的には州政府の管轄とされている。ただし,刑期2年以上の実刑に処された者については,連邦政府が管轄する。連邦政府に おける犯罪者処遇の担当部局として,法務省(Ministry of the Solicitor General)に,矯正保護局(Correctional service of Canada)及び全国仮釈放委員会(National Parole Board,以下,本項において「仮釈放委員会」という。)が置かれている。矯正保護局は,刑期2年以上の受刑者に対する施設内処遇と仮釈放後の保護観察 に関する権限を有し,仮釈放委員会は,連邦刑務所に収容されている受刑者と,州仮釈放委員会のない州の刑務所に収容されている受刑者に対する仮釈放に関す る権限を有している。
1992年に公布された「矯正及び条件付き釈放に関する法律」により,連邦レベルでの犯罪者の矯正処遇及び条件付き釈放の 過程における犯罪被害者の位置づけが,正式に規定されることとなった。同法は,被害者(その家族等を含む。以下,本項において同じ。)への情報提供につい て,次のとおり規定している。
矯正保護局及び仮釈放委員会は,被害者が希望する場合には,加害者の氏名,罪名,有罪判決を言い渡した裁判所,刑 の始期,刑期,一時的釈放又は仮釈放の条件を満たす日及び審査日についての情報を被害者に開示する。また,被害者の利益が加害者のプライバシーの侵害より 明らかに重要であると考えられる場合には,加害者の年齢,受刑施設の所在地,釈放田釈放に当たっての遵守事項,帰住予定地等についての情報も提供すること ができる。
被害者は,書面又は仮釈放委員会委員との面接により,同委員会に情報を提供することができ,同委員会は,加害者の条件付き釈放を審査する際には,その情報を考慮に入れなければならない。
被害者は,加害者の条件付き釈放に関し,仮釈放委員会に対して,書面で意見を提出することが許されている。また,加害者に対する面接審理の際に,傍聴人と して出席することもできるが,その場で発言することはできない。面接審理に当たって提出される資料は,被害者の安全や刑務所の保安等が脅かされるおそれが あると考えられる場合を除き,すべて加害者にも開示されることになっている。
被害者に対して矯正処遇や条件付き釈放に関する情報提供等を円滑に 行うため,矯正保護局の地方本部,刑務所及び保護観察所には,被害者支援の担当官が置かれている。また,仮釈放委員会の地方事務所には,被害者やその家族 が容易に情報提供を受けられるよう,専用電話が設けられている。(法務省:平成11年版 犯罪白書 第5編/第7章/第7節/3より一部抜粋)
ア 特殊な不定期刑制度―「危険な犯罪者」認定制度
一定の犯罪に対する有罪の認定後,刑の量定前に,検察官の申請により,裁判所が60日以内の鑑定留置を命じ,その鑑定結果を受けて,裁判所が「危険な犯罪 者(Dangerous Offenders)」と認定した場合,刑期の上限の定めのない絶対的不定期刑を宣告する制度である。認定の要件は,性的暴行により有罪を認定された者の 場合においては,自己の性的衝動を抑制できず,そのため将来他者への害悪を引き起こす危険性があると認められることである。この制度では,刑の執行開始後 7年を経過すると,全国仮釈放委員会(National Parole Board)が,仮釈放の可否を審査し,仮釈放不可となった場合には,以後2年ごとに仮釈放の可否の審査を繰り返す。絶対的不定期刑制度であるため,仮釈 放なき終身刑と同様の運用を行うことが可能である。2005年5月現在,「危険な犯罪者」に認定された者は,336名であった。このうち17名が仮釈放 中,319名が拘禁中であった(連邦公共安全及び緊急事態準備庁の資料による。)。(法務省:平成18年年版犯罪白書 第6編/第4章/第5節/4 から一部抜粋)
(note4)2015年に入り、ハーパー政権はたて続けに社会政策的なプログラムを実行に移しつつある。筆者が気がついた範囲で紹介する。
①2015年4月7日、 ハーパー政府(公共安全・非常事態準備相であるスティーブン・ブレイニー(Steven Blaney:ケベック州選出)は,約600人の最近時に釈放された元女性犯罪者の刑務所から迅速に社会復帰できるよ主要各コミュニティの基金による犯罪阻止プロジェクト(全国犯罪阻止センター(National Crime Prevention Centre))に2,700万カナダドル(約26億2,000万円)の資金援助する旨、発表
②2015年4月7日、 カナダ食品検査庁のリリース「ハーパー政府は「世界保健デイ(World Health Day)」の重要性と2015年の食品安全性強化目的でカナダの更なる食品の安全性強化のため食品安全情報ネットワーク(Food Safety Information Network:FSIN)の設立のため3000万ドル以上の投資を行う旨」公表
③2015年4月7日、 「ハーパー政府はサスカチュワン州プリンス・アルバートにおいて政府の「ホームレス提携戦略(Government of Canada’s Homelessness Partnering Strategy (HPS)」として2,100万ドル(約20億3,700万円)の基金を供給する旨」公表
(note5)1982年1月オルソンは謀殺の11の訴因の罪を認めて終身刑となり、ケベックにあるサンタ・アンヌ・ダッジ収容所の超極大保安スペシャル・ハンドリング・ユニットの住人となる。そこはカナダで最も危険な犯罪者が多く住む街区だが、実際オルソンも危険な犯罪者なので当然以上の待遇とは言へ彼が刑務所から解き放されそうにないことを意味した。
15年の刑期が終えた1997年にオルソンはカナダの「かすかな望み条項」すなわち少なくとも15年務めた囚人のための全国仮釈放委員会に許可申請したのであるが、釈放を与えられなかった。第一級謀殺の有罪判決を受けた収容者でも最低25年務めた後に釈放を申請することをカナダの法律は認めている。これに従い、2006年7月18日オルソンは2回目の全国仮釈放委員会に申請したが、これも否定された。さらに、カナダの法律では2年おきに仮釈放の論拠を述べる権利があることから、オルソンは2010年11月に行った再度仮釈放請求も拒否されている。(SIRIAL KILLERS記事を筆者が仮訳した)
(note6)カナダの「法定釈放(stationary release)」の解説例
刑期の3分の2を服役した時点で行われる義務的釈放。終身刑・不定期刑の者に法定釈放は適用されない。また,一定の暴力犯罪や性犯罪等の受刑者で特定犯罪(致死傷を伴う犯罪や児童に対する性犯罪など)の再犯のおそれがあるときや,それら以外の犯罪による受刑者で上記特定犯罪の再犯のおそれがあるときは,法定釈放日の6月前までに連邦矯正保護庁は全国パロール委員会に対象者のファイルを付託し,全国パロール委員会は,法定釈放の許可条件として居住条件指定(民間団体の運営による社会内居住施設(Community Residential Facility) への入所)等による法定釈放に付すか,法的釈放によらず刑期満了まで収容継続(CCRA 129条)するかを決定する。
連邦の電子監視の試行では法定釈放の者も対象とした。法務総合研究所研究部報告44 「諸外国における位置情報確認制度に関する研究」寺村堅志「カナダ」131頁から引用
(note7)「法定釈放(statutory release)」の説明に関し、2つの法務省の資料で対象となる刑罰名が異なる。前者は「無期刑」であり、後者は「終身刑」である。法務省が参照しているカナダの全国釈放委員会サイト(Types of release)の解説によると法律の原文は「life or indeterminate sentences (終身刑または不定期刑)」である。後者の訳語が正しかろう。
(note8) カナダ刑法第745条は、第一級謀殺犯や第二級謀殺犯等に対する量刑と仮釈放について次のとおり定義する。(筆者の仮訳)
①大逆罪や第一級謀殺を犯した者に対する刑は25年の刑期を終えるまでは仮釈放の申請の機会が与えられない。
②過去に過失殺人を犯した謀殺犯罪者は第二級謀殺に処せられるが、25年の刑期を終えるまでは仮釈放の申請の機会が与えられない。
(以下、略す)
(note9)「First Degree Murder (第一級謀殺)」:いかなる故意をもち計画的なかつ予謀を抱いた殺人は第一級謀殺である。明白な犯意とは、非合法的に人の生命を奪うというその計画的意図(planned and deliberate)のことであり、立証可能な外的責任事由によって明確化されるものである。第一級謀殺は一番の重刑で、計画性のある殺人の中でも特に悪いケース、例えばレイプや放火などの他の犯罪を犯している最中の殺人や、複数の同時殺人や、または高度な危険を有する行為で人を殺した場合などに適用される。この犯罪に対する一般的な刑罰は、米国等では死刑宣告や終身刑(保釈の可能性なし)などである。カナダは死刑制度がないため「終身刑(保釈の可能性なし)」が最も重い刑罰にあたる。
2.「Second Degree Murder (第二級謀殺)」:予謀の犯意に基づく非合法的な殺人であるが、その実行に計画性および予謀性はない。 第一級謀殺でない全ての謀殺は第二級謀殺である。 この犯罪に対する一般的な刑罰は、25年以上の拘禁刑や終身刑(保釈の可能性あり)などである。
カナダ刑法第231条 参照
(note10)カナダにおける「かすかな希望早期釈放制度(faint hope clause)」の意義について補足する。
カナダ刑法745.6条に規定する。すなわち、旧745.6条4/12(50)はカナダの重大犯罪者が刑期15年を経過した後、終身刑判決を受けた者につき仮釈放の権利がある者につき早期釈放申請ができると定めていた。2011年の改正により・・・
・・・・
(note11)カナダはローマ規程署名.1998年12月18日
批准.2000年7月7日
国内立法「人道に対する罪及び戦争犯罪法」(以下「カナダ法」とする。)
カナダは、ICC(国際刑事裁判所)の設立にあたり、外交会議でも議長を務めるなど中心的役割を果たしてきた。したがって各国は、カナダがローマ規程を実施するためにどのような国内法を行うのか注目していた。カナダでは批准に先立ち」、1999年12月にローマ規程を実施するための法案が議会に提出され、翌年6月29日に議会を通過し国王の裁可を得た。施行されたのは2000年10月23日である。(以下、略す)
ローマ規程:1998年7月17日、 国際刑事裁判所 (Interna-tional Criminal Court以下 「ICC」とする。)を設立するためのローマ国際刑事裁判所規程(Rome Statute of the International Criminal Court以下 「ローマ規程」とする。)が、ローマで開催された国連外交会議 (以下 「外交会議」とする。)において採択された。 本規程は、 発効のためには60ヶ国の批准が要件となっている(ローマ規程第126条)。(以下、略す)
(国立国会図書館レファレンス 2004年5月号 松葉真美「国際刑事裁判所規則履行のための各国の国内法的措置」から一部抜粋, リンクは筆者が行った)
(note12)法務省のリリース文では憲法法の具体的な規定の引用はない。筆者において関係文献に基づき補足する。なお、カナダの憲法法は一般的な意味での基本法ではない。そのため頻繁に改正が行われており、重要な憲法として一般的に引用されるのは、「1967年憲法法」と「1983年憲法法」である。
前者は国家組織法というような内容であり、今回問題となる国民オ基本権という意味でが.は1982年憲法法の第11条~12条が該当すると思われる。わが国の国立国会図書館の資料「 」訳文4/12(49)を抜粋、引用する。
○第11条
(刑事及び刑罰事件における手続)
犯罪の嫌疑で告発された者は、次の各号に掲げる権利を有する。
(a) 不当に遅滞することなく特定の罪名を告げられる権利
(b) 合理的期間内に裁判を受ける権利
(c)犯罪に関し、その訴訟手続において自己に不利益な証人となることを強要されない権利
(d)独立かつ公平な裁判所による公正かつ公開の審理において、法に従い有罪の認定が下されるまでは、無罪の推定を受ける権利
(e) 正当な事由なしに合理的な保釈を拒否されない権利
(f)軍事裁判所で審理される軍事法規上の犯罪を除いて、刑罰の上限が5年以上の拘禁刑である場合に、陪審による裁判の利益を受ける権利
(g)作為又は不作為の時点で、カナダの法律又は国際法に基づく犯罪を構成し、又は国際社会で認められた法の一般原則により犯罪とされる場合を除いて、いかなる作為又は不作為を理由としても有罪とされることのない権利
(h)無罪が最終的に確定した場合に、それに関し重ねてその責任を問われない権利、及び、最終的に有罪とされ、その犯罪に対し刑罰を受けた場合に、重ねてその責任を問われ又は刑罰を課せられることのない権利
(i)その犯罪が有罪とされ、実行時と判決時との間に刑罰の変更があった場合に、その軽いものの適用を受ける権利
第12条(処遇又は刑罰)
何人も、残虐かつ異常な処遇又は刑罰を受けることのない権利を有する。
*******************************************************************************
Copyright © 2006-2015 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means, including electronic, mechanical, photocopying, recording, or otherwise, without prior written permission of the author.