こんばんは、よーこです。
最近風邪がはやっているようですが、いかがお過ごしでしょうか。
みなさまどうぞ、ご自愛ください。
寒さといえば、私が去年の7月まで留学していた中国のとある街は、冬はマイナス20、30度、川でスケートをすることもでき、川べりには臨時のスケート屋さんができるほどでした。
その川の上には何故か椅子がいくつも放置され、バナナも凍る気温の中、川を椅子で滑っていたのはいい思い出です。
そんな中国から帰ってきたのが7月も半ば。
翻って日本は暑さ真っ盛り。
仕事は決まったものの、始まるまではまだ10日ほどある。
しばらくはまた日本で働くことになるから、その前のこの貴重な休みに、どこかに行きたい。
考えながら、そういえば友人のRが、今度タイに行くといっていたな、と思いだした。
いい意見でももらえるかな、となんとなく電話をかけてみると。
「もしもし、よーこ?」
「あ、R? ちょっと意見を聞きたいんだけどさ」
「うん、タイに一緒にくるんでしょ?」
「……なんだって?」
いやいや、意味がわからない、と思った。
第一声、いや、正確に言うと第二声だけれど、電話をかけてまだ何の話題もふっていないというのに、Rはそういってきたのだ。
わたしはタイのタの字も、この時点では出していなかった。
「えっと、わたし何もいってないよね?」
「タイに一緒にくるって話でしょ?」
「そんな話一度もしてないよね?! ・・・まあ、タイには興味があるから、どんな感じかなあって話が聞きたかっただけなんだけど」
「暇なんでしょ」
「暇だけど、いや、ちょっと待って」
「タイに一緒にいかないなら電話きります」
「だからちょい待てて!」
そんな会話をした翌日。
わたしはきっちり旅行会社の前にいた。
なんでこうなったんだっけ、ああ、私がタイに行きたかったからだ、うん。などと、腑に落ちるような落ちないようなまま、自動ドアをくぐる。
「すみませーん。タイ行きのチケットがほしいんですけど」
「お日にちはいつごろでしょうか」
「明後日に行きたいんですが、ありますか?」
「少々おまちください。・・・ええと、お日にちが迫っていますので、お客さまご希望の日程ですと、エコノミー席はすべて埋まっているので、ビジネスの20万近くとなってしまいます」
ミッション インポシブル。
「・・・考えさせてください」
ふらふらと店外へ。
やっぱりこんなぎりぎりにチケット買うのは無謀か。
明後日とか、航空券買う日程じゃないよ、ほんと。誰だこの日程頼んでるの。自分か。はは。
暑さにぼやぼやと1人つっこみをしながら、もう一店の旅行会社の扉をたたく。
「あの、こういう日程でこういう感じのフライトありますか?」
「はい・・・ええと、エコノミーはすべて埋まっておりまして、ビジネスクラスのものでしたら・・・」
やっぱりここもか。
もう海外はやめて、いっそ国内湯けむり温泉ツアーでもしようかな、などと壁際のパンフレットを見ていたわたしの脳裏に、ふと、ある考えがひらめいた。
「あの、名古屋発のチケットではなく、関空や東京発ならどうでしょうか?」
「それでしたら、関空発で、トータル7万6千円があります。ただ、あとのこり一席で」
「それ! 買います!」
これがいわゆる衝動買いと申します。
ブランドものでなく、スイーツでもなく、航空券を衝動買いする女、それがわたし。
いい具合に頭が飛んでいます(ものがものだけに。
ばたばたと手続きをすすめ、無事席を確保し、そうして一時間後には、チケットを手にして、外を歩いているわたしがいたのだった。
いやー・・・海外って簡単に行けるなあ。
ちなみにRたちとは微妙に日程が合わず、わたしが先にタイ入りして、数日後、バンコクで待ち合わせすることになった。
なのでわたしはまず関空からチェンマイという街に降り立ち、ここで数日を過ごしてから、バンコクへ移動することにした。
さて。
チェンマイ空港に到着したのは、それから2日後の、夜18時半のことだった。
これ以上もなくあっさりとついたのは、これ以上もなく、決定から出発までの時間が短かったからなのだが、一番の懸念事項は、宿だった。
初めての国という不安もあり、あらかじめ宿を予約しようとしていたものの、結局する時間もなく、わたしは現地入りしていたのだ。
昼についていればまだしも、空港の外は、真っ黒。
もう日が暮れたからどうとかいう問題ではなく、視界がきかなくなるほどの豪雨が、すさまじい音とともにわたしを迎えた。
家族や旅行会社の人たちに迎え入れられ、次々といなくなっていく人々に焦りながら、鞄からノートを引っ張り出して、目星をつけていた宿に電話をする。
グリーンゲストハウス、タイウェイゲストハウス。
そのどちらも、日本人のバックパッカー(旅人)たちに有名な宿だという。
慣れない電話に緊張しながら待つも、むなしくコール音が響くだけ。
もしかしたら、すでにクローズしているのではないか。
不安が胸をよぎる。
ここでいうクローズとは、営業時間外になったというわけではなく、宿自体がなくなっているということだ。
有名だからといって、ずっとあるとは限らない。それを予想することは難しくはなかった。
もちろん、単に電話番号がかわった可能性もあるし、たまたま電話にでないだけかもしれないが、とりあえず出ないことは出ない。
ノートをしまい、鞄の中から毎度お世話になっている「地球の歩き方」というガイドブックをとりだしたわたしは、そのなかからひとつ安めの宿をピックアップして、電話をかけてみることにした。
「Hello」
お。出た。
「can I stay tonight?」
「what?」
「ええと・・・can I stay・・・」
「sorry I can't speak English very well」
ばっちりわたしもですよ、とつぶやきながら、「今から」「泊まりたい」ということを何度か言葉をかえて繰り返すと、たどたどしい英語で、大丈夫です、と答えが帰ってきた。
これでとりあえず初日の宿が決まった。
となると、次はどうやって空港から街に移動するか、だ。
近くにエアポートバスのような、空港ー街間をつなぐ高速バスはあるようだが、今からいく宿に直接つれていってくれるわけではない。それなら、何人かタクシーで乗り合いをして街まで出たほうが早いし楽ではないか・・・。
そんなことを思いながらきょろきょろしていると、日本人が5,6人集まっているのをみかけた。
どうやら車で乗り合いをするという話をしているようだ。
声をかけてみると、どうも、そのうちの一人がチェンマイ在住で仕事をしている人で、今日は仕事仲間を迎えに空港まできているのだという。
一緒に送りますよといわれ、ありがたく乗せていってもらい、わたしは宿にたどり着いたのだった。
さて、この初日にとまった宿は、エアコン、ホットシャワーつきでシングル400バーツ(1300円くらい)の部屋だ。
見た感じ十分広く、綺麗でタオルも飲料水もついていたのだが、実際シャワーはホットではなく、水だった。
しかも十分な水量とはいえない。
そして蚊にさされまくるというオプションがついていたので、翌日、はやばやとわたしは宿をうつることにした。
うつった先は、初日の宿からさほど離れていない場所にあり、部屋を見せてくださいといったわたしに、フロントにいたタイ人の青年が明るく答えてくれた。
部屋は、ファン(扇風機)つきのホットシャワーで、ツインの部屋で350バーツ。
やはりシャワーはホットではなく水あびとなったが、それでも、この宿は快適だった。
また今の時期は暑いことは暑いのだが、夜は想像以上に涼しく、ファンをしばらくまわしていると、寒く感じるほどだった。
宿を移動したその日、はじめにわたしを迎えてくれたこの宿の受付スタッフである明るいお兄さんが勧めてくれた翌日のエレファントツアーを申し込むことにした。
一日ツアーで、象のり一時間、竹船川くだり、昼食、カレン族の生活風景の見学、滝までのトレッキング、などがついて、合計800Bだという。
はじめ900バーツといわれたが、ためしにちょっと安くして?と聞いてみると、100バーツ安くしてくれた。
明日の予定はこれで決まった。
さて、今日をどうするか、だ。
とりあえず宿でもらった地図を開きながら、わたしは、旧市街へと向かうことした。
ここチェンマイには、お寺がいくつも点在している。
なかでも有名どころに向かったのだが、正直、どこも同じだろうな、と思った。
たぶんそこそこ歴史があって、金色の仏像があって、蓮があって・・・タイは初めてだけれど、アジアのお寺というのは、これまでにもいくつも見ているので、想像がつく。
なので、つまらないかもな、と思いながらわたしはひとつめの寺にはいった。
そうして本堂にはいり、大きな金色の仏像をみた瞬間。
わたしは動きをとめて、ひとつ大きく呼吸をした。そうして目を見開いた。
やられたな、と思った。
中国は雲南省に位置するシャングリラという土地で、とあるお寺をみたときのことを思い出した。
たとえば歩き疲れた、そのだるさがふきとぶような。
何かくるものがあったのだ。
やられたよ、とわたしはもう一度つぶやいた。
翌日。
予定通り、エレファントツアーに参加し、わたしは初の象乗りを経験した。
象の皮膚は思ったより固く、目が意外と怖かったり、トレッキングでは、雨季で増量した川が轟音とともに流れゆくその上を、きりたおした木一本の上をわたっていったり、竹筏くだりではしゃれにならないくらいずぶぬれになったりしたりと、実に充実した一日だった。
その翌日、3日目は、ドイステープという、山の上にあるお寺を見学にいき、やわらかい、やさしいという表現ができそうな、不思議な金色の仏塔に見惚れた。
そうしてその夜。
わたしは、前日に予約した夜行バスで、バンコクに向かったのだった。
ちなみにチェンマイからバンコクまでは、バスで10時間ほどの距離だ。
そして、この首都バンコクで、知っていたにもかかわらず、その知っていた知識のなかにあった通りの詐欺にぽこぽこひっかかったりして、一瞬タイという国が嫌いになりかけたりもしたのだが、それはまた、別の話。
長い回想日記におつきあい頂き有難うございます。
最後まで読んでくださった方は、はたしていらっしゃるのでしょうか(反語気味。