昨日今日と、寒さが和らいでいるこの頃、
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて、本日の日記、もはや日記じゃないような長さでいきます。
さらに、過去回帰です。
2006年の春。
オーストラリアで一年旅していた頃の、思い出など綴ろうと思います。
過去日記です。
というわけで、どなたさまも脱落しませぬよう。。。
************
オーストラリアへ行くきっかけは、とても些細なことだった。
当時の上司と、飲んでいたときのこと。
ふとしたときに、彼は言った。
「そういえば俺、十年前くらいにオーストラリアにワーホリにいっててさ。
まじで楽しかったなあ」
「へ~え。ワーホリですかあ。聞いたことはありますけど、どんなんでしたっけ?」
「ワーキングホリディ。まあビザの種類なんかな。
要は、海外で1年ぐらい滞在できる権利、働ける権利、
勉強できる権利がもらえるわけよ。観光ビザだと、滞在期間も短いし、
働けないしな」
「そうなんですかあ。どんなことしたんですか?」
「バックパックと寝袋かついで、いろんなところ旅したよ。
金がなくなったら、宿で労働力奉仕して、宿代タダにしてもらったりな。
車買って、いろんなところをまわって、
ほんと、超面白かったな」
「うわ~。楽しそうですねえ。わたしも行きたいなあ。
いろいろ教えてくださいよ」
そのときはただの世間話として話していた。
相槌代わりの会話。
けれど、上司は続けてこう言ったのだ。
「お、そうか? いいなあ。俺はもう行けねえからな。
そうだよな、行くなら今のうちだよな。・・・本当にいくのか?」
「え? は、ええ。行きたいなあと」
「そうか。よし、俺が当時使っていたもの、持って着てやるよ。
古いやつだが、まだ全然使えると思う」
「ぁ」
「今度の土曜、暇か? 家の近くまでもってってやるよ」
「ぉ」
土曜日。
上司は本当に持ってきた。
片方のポケットが破れた大きなバックパック。
後から考えたら、それはわたしにとってはかなり大きいものだった。
(一般的に女の子がもつバックパックは、65リットル。
上司がくれたのは、75~80くらいのものだった。)
少し色あせたそれは、けれど大事に使われてきたんだろうなと思った。
触ると、ごわごわしていたけれど、さすがにしっかりとした作りになっている。
旅の匂いがした。
「あと、これ、緊急連絡先。病院とか・・・・・・情報は多少古いが、
そうそうかわらんだろう。あとこれが、貴重品いれで、小銭もやるよ。
それからこのサングラスは…おい、おまえ、本当に行く気あるか?」
「ええ、もちろん。……行きますよ!」
「よし、じゃあこのサングラスもやるよ。高いブランド品なんだからな!
壊すなよ!」
「はい! ありがとうございます!」
たった1日のうちの、一つの会話。
そのとき流れができていた。
オーストラリアへと続く流れ。
そういえば、オーストラリアには、
昔、憧れた星空を見に行きいと思っていたなあだとか、
コアラ触ってみたかったよなあとか。
理由はあとからでもわいてでた。
けれどたぶん、一番わたしを突き動かしたものは、衝動だった。
売り言葉に買い言葉。
行くって言った。
ここは行かねば。
よし、行こう。
つっぱしれ!
紙を裏返したかのような感覚で、
ただの相槌がぺらりと本気にひっくり返った。
心の中で決めたとたん、わたしはバイトを始めた。
平日は会社。休日はバイト。
ちまちまと上司から情報を集める日々。
「お金はどれくらい必要ですか?」
「ビザってどうやってとるんですか?」
「航空券って、どこでどうやってどこのをとればいいんですか?」
「何もっていけばいいですか?」
「オーストラリアの、どこにいけばいいですか?」
初海外。
何もわからない。何も知らない。
旅行会社でも、ただおたおたと会話する。
「お客さまはオーストラリアがご希望でしたが……
到着地はどこがよろしいでしょうか?」
「ええと、オーストラリアへ・・・・・・」
「オーストラリアの、どこでしょうか。シドニーですか?
パースですか? ケアンズですか?」
オーストラリアという場所に、飛行場があるわけじゃない。
どこかの町を選ぶのか、と旅行会社にいってから改めて気づいたり。
「ワーキングホリディビザってのがほしいんですけど、どうすればいいですか?」
「ワーキングホリディですと、当社では扱っておりませんので、
ご自分でインターネットでとっていただくしか」
「え、代行でとってもらえないんですか。他の旅行会社さんでも?」
「ええ。大使館のHPにいっていただいてですね・・・」
・・・いっていただくと、そこは英語の本流。
えー・・・・わたし英語離れて数年経過しています。
どこかに言語変換はないかと、ページのあちこちを触り、
さらにHPを閉じて開いてを繰り返すことを数日。
涙で辞書をぬらしながら、ビザを取得した。
ほぼ流し読みだったので入国する寸前まで、本当にとれていたのか不安だった。
さて、次は航空チケットだ。
「航空券をとりたいんですけど・・・・・・」
「何月の、どこへご出発でしょうか?
名古屋発ですとケアンズなど……」
買ってきたばかりの「地球の歩き方」。
ぺらぺらとめくっていると、目を引いたページがあった。
・・・ふむ、ここはシドニーか。
「シドニーへ」
そうして決まった出発日と、到着地。
会社にも、退職届けを出した。
友達には……まだ秘密。もうちょっとだけ。
寸前にいったら、さずかし驚くだろうなあと思ってむふふと口をつぐむ。
仕事の引継ぎと、バイトに追われ、忙しく日々が過ぎていく。
パスポートをとって、車の国際ライセンスをとって、
そうそう、宿の予約。インターネット予約ができるものの、やはり英語。
当然英語
やっぱり辞書片手に奮闘。
場所はシドニーのキングスクロスという場所。
ガイドブックには、「旅人たちが集まる町」とある。
しばらくすると、かえってくるメール。
お待ちしております、と書いてある。
それから時間がたつのが早かった。
いつのまにか、出発日。
実感は……全然ない。
はじめてのる、空港までの高速バス。
はじめての海外。はじめて実家を離れる。
バックパックの中には、1冊の本。
上司が最後にくれた、「アルケミスト」という本。
彼は、くどいくらいに言った。
「いいか、旅をするまで、この本は読むなよ。
旅をしないと、この本の意味はわからない。
いや、内容は簡単なんだが……たぶん、旅をしないと、
わからない。旅をしているときによめよ。絶対だ。いいな」
彼はこれを、旅の本、だと言った。
空港まで、両親が見送ってくれた。
座席について、空を見上げる。
何があるのか、どうなるのか、全然予想がつかない。
恐ろしいほど予備知識も、英語のかけらもなく、わたしは出発した。
ただ、上司の「まじ、楽しいから!」の言葉が胸に残る。
わたしも絶対、楽しもう!
そうして、わたしはオーストラリアへと旅立ったのだった。
**********
というわけで、過去日記。
はーい。
地獄のような長さでした。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて、本日の日記、もはや日記じゃないような長さでいきます。
さらに、過去回帰です。
2006年の春。
オーストラリアで一年旅していた頃の、思い出など綴ろうと思います。
過去日記です。
というわけで、どなたさまも脱落しませぬよう。。。
************
オーストラリアへ行くきっかけは、とても些細なことだった。
当時の上司と、飲んでいたときのこと。
ふとしたときに、彼は言った。
「そういえば俺、十年前くらいにオーストラリアにワーホリにいっててさ。
まじで楽しかったなあ」
「へ~え。ワーホリですかあ。聞いたことはありますけど、どんなんでしたっけ?」
「ワーキングホリディ。まあビザの種類なんかな。
要は、海外で1年ぐらい滞在できる権利、働ける権利、
勉強できる権利がもらえるわけよ。観光ビザだと、滞在期間も短いし、
働けないしな」
「そうなんですかあ。どんなことしたんですか?」
「バックパックと寝袋かついで、いろんなところ旅したよ。
金がなくなったら、宿で労働力奉仕して、宿代タダにしてもらったりな。
車買って、いろんなところをまわって、
ほんと、超面白かったな」
「うわ~。楽しそうですねえ。わたしも行きたいなあ。
いろいろ教えてくださいよ」
そのときはただの世間話として話していた。
相槌代わりの会話。
けれど、上司は続けてこう言ったのだ。
「お、そうか? いいなあ。俺はもう行けねえからな。
そうだよな、行くなら今のうちだよな。・・・本当にいくのか?」
「え? は、ええ。行きたいなあと」
「そうか。よし、俺が当時使っていたもの、持って着てやるよ。
古いやつだが、まだ全然使えると思う」
「ぁ」
「今度の土曜、暇か? 家の近くまでもってってやるよ」
「ぉ」
土曜日。
上司は本当に持ってきた。
片方のポケットが破れた大きなバックパック。
後から考えたら、それはわたしにとってはかなり大きいものだった。
(一般的に女の子がもつバックパックは、65リットル。
上司がくれたのは、75~80くらいのものだった。)
少し色あせたそれは、けれど大事に使われてきたんだろうなと思った。
触ると、ごわごわしていたけれど、さすがにしっかりとした作りになっている。
旅の匂いがした。
「あと、これ、緊急連絡先。病院とか・・・・・・情報は多少古いが、
そうそうかわらんだろう。あとこれが、貴重品いれで、小銭もやるよ。
それからこのサングラスは…おい、おまえ、本当に行く気あるか?」
「ええ、もちろん。……行きますよ!」
「よし、じゃあこのサングラスもやるよ。高いブランド品なんだからな!
壊すなよ!」
「はい! ありがとうございます!」
たった1日のうちの、一つの会話。
そのとき流れができていた。
オーストラリアへと続く流れ。
そういえば、オーストラリアには、
昔、憧れた星空を見に行きいと思っていたなあだとか、
コアラ触ってみたかったよなあとか。
理由はあとからでもわいてでた。
けれどたぶん、一番わたしを突き動かしたものは、衝動だった。
売り言葉に買い言葉。
行くって言った。
ここは行かねば。
よし、行こう。
つっぱしれ!
紙を裏返したかのような感覚で、
ただの相槌がぺらりと本気にひっくり返った。
心の中で決めたとたん、わたしはバイトを始めた。
平日は会社。休日はバイト。
ちまちまと上司から情報を集める日々。
「お金はどれくらい必要ですか?」
「ビザってどうやってとるんですか?」
「航空券って、どこでどうやってどこのをとればいいんですか?」
「何もっていけばいいですか?」
「オーストラリアの、どこにいけばいいですか?」
初海外。
何もわからない。何も知らない。
旅行会社でも、ただおたおたと会話する。
「お客さまはオーストラリアがご希望でしたが……
到着地はどこがよろしいでしょうか?」
「ええと、オーストラリアへ・・・・・・」
「オーストラリアの、どこでしょうか。シドニーですか?
パースですか? ケアンズですか?」
オーストラリアという場所に、飛行場があるわけじゃない。
どこかの町を選ぶのか、と旅行会社にいってから改めて気づいたり。
「ワーキングホリディビザってのがほしいんですけど、どうすればいいですか?」
「ワーキングホリディですと、当社では扱っておりませんので、
ご自分でインターネットでとっていただくしか」
「え、代行でとってもらえないんですか。他の旅行会社さんでも?」
「ええ。大使館のHPにいっていただいてですね・・・」
・・・いっていただくと、そこは英語の本流。
えー・・・・わたし英語離れて数年経過しています。
どこかに言語変換はないかと、ページのあちこちを触り、
さらにHPを閉じて開いてを繰り返すことを数日。
涙で辞書をぬらしながら、ビザを取得した。
ほぼ流し読みだったので入国する寸前まで、本当にとれていたのか不安だった。
さて、次は航空チケットだ。
「航空券をとりたいんですけど・・・・・・」
「何月の、どこへご出発でしょうか?
名古屋発ですとケアンズなど……」
買ってきたばかりの「地球の歩き方」。
ぺらぺらとめくっていると、目を引いたページがあった。
・・・ふむ、ここはシドニーか。
「シドニーへ」
そうして決まった出発日と、到着地。
会社にも、退職届けを出した。
友達には……まだ秘密。もうちょっとだけ。
寸前にいったら、さずかし驚くだろうなあと思ってむふふと口をつぐむ。
仕事の引継ぎと、バイトに追われ、忙しく日々が過ぎていく。
パスポートをとって、車の国際ライセンスをとって、
そうそう、宿の予約。インターネット予約ができるものの、やはり英語。
当然英語
やっぱり辞書片手に奮闘。
場所はシドニーのキングスクロスという場所。
ガイドブックには、「旅人たちが集まる町」とある。
しばらくすると、かえってくるメール。
お待ちしております、と書いてある。
それから時間がたつのが早かった。
いつのまにか、出発日。
実感は……全然ない。
はじめてのる、空港までの高速バス。
はじめての海外。はじめて実家を離れる。
バックパックの中には、1冊の本。
上司が最後にくれた、「アルケミスト」という本。
彼は、くどいくらいに言った。
「いいか、旅をするまで、この本は読むなよ。
旅をしないと、この本の意味はわからない。
いや、内容は簡単なんだが……たぶん、旅をしないと、
わからない。旅をしているときによめよ。絶対だ。いいな」
彼はこれを、旅の本、だと言った。
空港まで、両親が見送ってくれた。
座席について、空を見上げる。
何があるのか、どうなるのか、全然予想がつかない。
恐ろしいほど予備知識も、英語のかけらもなく、わたしは出発した。
ただ、上司の「まじ、楽しいから!」の言葉が胸に残る。
わたしも絶対、楽しもう!
そうして、わたしはオーストラリアへと旅立ったのだった。
**********
というわけで、過去日記。
はーい。
地獄のような長さでした。