ある秋の日のこと。
いつものように家事を終え、リビングのテーブルでコーヒーを
飲みながら、「お出かけ先」と「今夜のメニュー」を考えていた。
テーブルはベランダに面していて、
網戸だけにしていると社宅横の車道や駐車場がよく見える。
社宅内は、その日から外壁塗装工事が始まっていて、
工事関係の車や「ガテン系」のお兄さんたちが
出入りしているのを、ぼ~っとながめていたときのこと。
( ‥) ン?
工事関係者とは少し、、、いや、だいぶ雰囲気のちがうおにーちゃんが、
我が家の愛車を覗き込んでいる。なんだか変だ。
(車は、私が座っている位置から、斜め下に見えている)
うちの車とその左横に停まっている下の階の人の車の間で
周りを気にする感じでど~も
不審な気配が。。。(;¬_¬)・・・アヤシイ・・・
ベランダに近づき、カーテン越しに“ヤツの動き”を観察する。
一瞬、“ヤツ”はこちらを見たが、ガラスカーテン
(中からは見えるが、外からは中の様子が見えにくいレースのカーテン)を
閉めていたので、私を確認できなかったようだ。
緊張の一瞬だった。(-。-)ホッ
車道には、社宅の門から少し離れた所に、黒いワゴンが停まっている。
この辺は住宅街で、車道に停めるのは宅配の車くらいだ。
「ははーん、“ヤツ”の車だな」
そう思って、ナンバーを書きとめた。φ(..;) メモ メモ
男は、黒いキャップを被り、白のTシャツにGパン、スニーカーだ。
キャップのつばで顔はちゃんと見えないが、30代前半っぽい。
我が家の車とその下の階のひとの車の間に立ち、車内を覗き込んだりしている。
やがて自分の車に戻り、門の出入り口の近くに停めなおした。
思ったとおり、あの黒い車は“ヤツ”のだった。
手にドライバーのようなものを持って再び社宅内に戻ってきた。
「車上荒しだ!!間違いない!!」
110番ではなく、所轄の警察署に連絡した。
先ず、車上荒し(その時点では“かもしれない容疑”)であることを告げ、
場所を伝え、書き留めたナンバーと車種はわからなかったが形の特徴、
フィルムの有無と貼位置等を状況と交えて「報告」しているときに
“ヤツ”に動きがあった。
我が家の愛車の隣の車に目を付けたようである。
手に持ったドライバーのようなもので、運転席のドアをいじっている。
「今、ドライバーでドアをこじ開けてます!早く来てください!!」
外に声が漏れないように受話器に叫ぶ。
所轄はここから5分とかからないところだ。
署の無線連絡で手空きの 「警らパンダ(パトカー)」が到着するまで、
早くて5分くらいだろう。
でも、早く来て~!! 私も緊張&興奮してきた。
証拠写真だ!思い、デジカメや携帯を向けてみるが、
ガラスカーテン越しではほとんど映らない。
だめだー、残せない、、、。
一眼レフなら撮れただろうなぁと思うと、くやしい。
車の持ち主である下の階の人に知らせようと、社宅の連絡網を見るが、
自宅電話の記載がない。
下の人のベランダからは、その人の車は正面に見えるのだが、、、、。
ご主人の勤務先にかけたところで、今は意味がない。
かといって、玄関からたずねて行けば、
ひと気で“ヤツ”に逃げられるかもしれない。
そうすれば、一旦狙った車だから、またやってくる可能性は大きい。
でも、今ならドア破損だけで済むかもしれない・・・・。
下の人に知らせに行こうか、どうしようか迷っていた。
それより、裏の窓から飛び降りて、
“ヤツ”の車にコッソリ近づいて、逃げられないように
キーを抜いといてやろうか、、、
でも、ここは2階だ。怪我をしない保障はない。
なんとかしたいが、どうにもならないもどかしい悔しさで、焦りが増す。
短い時間でこんなに脳みそが働きまわったことって、過去にあっただろうか??
“ガチャ”ドアが開けられた。
「うわぁー、早く来ないと逃げられちゃうよー!!」
“ヤツ”は開いたドアから後ろのドアのロックを開けたようで、
後部座席を覗きこみ・・・
再度、運転席に戻り中をゴソゴソ探っている。
「お金探してるんか? ナビには手をつけないみたいだけど・・・。」
とにかく、早く来いーーーーーーーーー!!
逃げられてしまうじゃないかーーーー!!<`~´>
「ん?」
遠~くから、サイレンの音が耳に入ってきた。
え?('_') (;¬_¬)まさか・・・?
そんなあほなこたぁーせーへんわなぁ??
やがて、その音は段々近づいてくる。
「うそやろ~!ありえへん~!!何、考えとんねん!あほかー!」
関西弁炸裂だ
「いくら緊急通報とはいえ、サイレンはあかんて~。逃げられるやんかー!」
当然、サイレンに気が付いた“ヤツ”は自分の車に乗り込んだ。
と同時にパンダが“ヤツ”の車の反対側に到着!
警官が降りてきたと同時に、車は動き出した。
“ヤツ”は「ヤツの危機一髪」を脱した。
追いかけて捕まえろ~!!「今、走っていった黒いワゴンが犯人のです!」
ベランダから警官に教えるが、その願いは空しく・・・
2人の警官はパンダから降りてきてしまった。
“ヤツ”が走り去ったと同時にその後ろから、「警ら バイク隊」が2台。
彼らも追いかけるどころか、社宅の中に入ってきた。
オイオイ・・・(o_ _)ノ彡☆
「サイレン鳴らして来るかぁーー??」
怒鳴りたい気分を抑えつつ部屋を出て、下で警官と話す。
警官は4人揃った。パトカーのサイレンを聞きつけ、
社宅内の奥さんが3人ほど集まり、
近所の人も、「何事?」ってな感じで、こちらを見ている。
警官に経緯を聞かれ、状況や車のナンバー、男の特徴等、話す。
被害に遭った家を警官が尋ねると、奥さんが出てきた。
寝ていたようだ。(寝耳に水とは、こういうことか?)
警官から、ことの次第を聞いて、慌てて車を確認しに行っていた。
ドライバーでこじ開けられたドアは、修理が必要となってしまったようである。
犯人にはまんまと逃げられるわ、ドアは修理しないとあかんわで
「こんな結果になるんだったら、男を追い払った方がよかったのかなぁ。。」
・・・・・(-_-;)
少し、落ち込みモード。
あれだけ詳しい情報を実況中継までして提供したのに
結局犯人は「現逮」(現行犯逮捕)できずだ。
何やってんだよおー。。。(ー_ー)!!
4人正座させて、説教したかったくらい悔しかった。
「サイレン鳴らしてきて、犯人逃がしたかったのか?」って。
「電話で状況の説明までしているのに、パンダ無線には伝わってなかったのか?」
「仕事する気はあるのか?」
などと、言いたいことは山のようにあったが、
結果、「警察」への信頼を失うだけだ。。
そう思ってその場では何も言わなかった。
この報告を聞いた友達が言っていた
「その日はコンパの予定があったから、早く帰りたかったんじゃないか?」って。
あり得るかもしんない。
そう思わせる警察って、いったい、、、。
帰り際に、
「一般の人に、ここまで協力していただけるとは思いませんでした~。ナンバーまできっちり控えて。
これからも何かあったらよろしくお願いします」と
言葉をかけられ、私地自身のことをたずねてきた。
名前・年齢・職業
警察に幻滅した私はまじめに答える気がなかったからこう言った。
「職業は
“ルスバン” よっ!」
これが、私の“ルスバン刑事”の誕生話である。
その事件から1ヶ月ほどして、所轄の刑事から自宅に電話があった。
異動で担当が代わり、自分が担当となったが、
引継ぎができなかったため詳しい話しを聞かせて欲しい・・・
とのこと。
呆れた話だ。
同じ説明をした後、気持ちに残っていたモヤモヤを吐き出した。
「サイレンさえ、鳴らして来なければ、現逮できて再犯防止にもなっていたのに!」
電話の向こうで、平謝りされるが、もう遅い。
というか、さほど反省もなければ、改善も期待できないだろう。
幾度となく、ワイドショーで取り沙汰されてきた
警察の不祥事や無責任な言動を思うと
期待は無駄だと思わざるを得ないことが多い。
もちろん、そんな「ダメ警察」ばかりではないことくらいはわかっているが、
せめて「がんばり」を見せてほしいと思う。
現実は、「刑事ドラマ」のようにはいかないことくらいはわかちゃいる。
たとえ小さな事件であろうが、世間を騒がす大きな事件であろうが、
市民が納得・認めるような「仕事ぶり」を見せて欲しい。と、思う。
「税金泥棒」とヤジられないためにも。
なんだかんだと批判されてるけど、私を含め みんな、どっかであなた方を
頼りにしてるはずなんだから。頼んますよ~(^O^)/
・・・で、話は戻るが、
また連絡することもあるかもしれないのでということで
日中の在宅の有無を遠まわしに聞かれた。
刑事:「ご職業は主婦でよろしかったですか?」
お答えしましたよ~。きっぱりと。
「いーーえ、
“ルスバン” です!(^。^)」と。
(ウケてましたよ(^_-)
主婦=“無職”って書かれるのはイヤ。
主婦は職業で業務はルスバン。 ルスバンだって立派な業務ですよ。
ずっと家にいるんだから、家事以外に、
なにか“それなり”に楽しみでも作らなきゃ~(*^_^*)ね。
犯人逮捕に至ってたら?
犯人に聞きたいことがあった。
なぜ、我が家の車は「対象外」にされたのか、その理由。
ナビもあったし、ダッシュボードに小銭ホルダーも置いてた。
防犯対策もしてないし、隣の車と同じ、集中ロックだ。
何を基準に狙わなかったのか?
後部座席においてた、巨大なスヌーピーとチャーリーブラウンが
不気味だったのか?
いまだに、ナゾだ。。。。