この4月1日(04年)から消費税の表示が総額表示に変更、義務づけられた。これまでは日本では珍しく欧米並みに“外税方式”が採用されてきた。従来のたばこ税、物品税、酒税や揮発油税など物やサービスにかかる税金はどれも内税で、一般消費者はいくらの税金を納めさせられているのかがわからなかった。わからないから愚かな民は税の負担をあまり意識しなくて済み、税の重みも感じなくて済み、税への抵抗も生まれてこない仕組みであった。こうした民を“寄らしむべし、知らしむべからず”を地でいく支配がまかり通っていたところに、消費税だけは外税方式が採用され、初めてものを買ったときその他にいくら税金を取り立てられるかを品物一点ごとに思い知らされる仕組みを持ったのだった。
これは面倒な方法にも見えるが先進国で例外なくこの方式が採用されるのは、税を否が応にも意識せざるを得ない仕組みだから、市民の税への意識が高まり、納税者の権利意識もそれに応じて定着することでタックスペイヤーたる国民の政治、行政への意識改革につながるといわれてきたからに他ならない。
その“外税方式”がいともあっさり大した議論にもならず、ジャーナリズムの反対キャンペーンも起こらず、粛々と改悪されてこの4月1日から“総額表示”になったわけである。
総額表示には4通りのやり方があって、
1.商品価格と消費税を合計した総額だけを表示する。つまり、完全な内税で税がわからなくなる表示。
2.総額を表示し、カッコをつけて(内消費税はxxx円)と税額を併記する表示。
3.総額を表示し、カッコをつけて(内価格xxxx円)と商品価格本体のみを併記する表示。
4.本体価格xxxx円+消費税xxx円、総額xxxxxx円と明細を表示する方式。
このいずれでもよいとされた。
さて、4月1日、この中のどの表示方式になったであろうか。見た限りスーパーなど大型店はどこでも1.の総額だけを表示する内容になっている。それはそうだろう、それが手間が一番少なくて済むからだ。為政者は当然どれでもいいと嘯きながら業者は手間の少ない“総額のみ方式”に収斂していくことを読み抜いていた。だから、どれでも構わないと鷹揚に構えて笑ってみているのである。
こうして3ヶ月もたてば多くの市民は消費税いくらを今日の買い物から払わされたか意識しなくなるというものだ。
これまでも、パソコンを購入すると無料でついてきた家計簿ソフトなどは、消費税の扱いがまったくないものがほとんどであった。つまり、一般消費者=納税者が消費税をいくら負担しているかを意識しないように仕向けられてきていたのだが、ここにそれが完成されたわけである。
ちなみに、会計ソフトでも事業用のものはすべて消費税込みと抜きと使い分けできるように最初から作られていてその店や企業が一日単位、一ヶ月単位、そして年間に合計いくらの消費税を負担したか一目瞭然にわかるようにできている。主婦向けの家計簿ソフトは主婦を愚民化することに効果を発揮してきたわけでもある。
さて、ではなぜわざわざ消費税の隠蔽方式を強行したのであろうか。当然、税負担を意識させないためであるが、それはなにのためか。まず、近い将来狙っている消費税の段階的(何度もこれから繰り返していくつもり)税率アップ(重税化)への抵抗感をあらかじめなくす地ならしに他ならない。つまりは、国民をさらに愚民化して支配者は好き勝手にやれるようにというためのシステム変更である。年金制度のでたらめさが年々国民の不満の中心課題になってきたのは周知の通りである。しかし、それに対してまじめに修正を根底からやるつもりなどない。そればかりか、その過程でどんどん明らかになってきた、公務員を対象にした共済年金への税の上乗せ、国会議員年金への税の過剰なお手盛りなどはそのままに、さらに社会保険庁職員の年金の使い込み的な横流しも次々に発覚する中で消費税で年金後始末費を、そしていずれは国防費の増額を捻出しようという愚民政策がまた新たになったということである。