比較日本研究

比較日本研究会の活動報告。日本の政治・思想の研究。日本の政治・社会状況に対し平和の視座から発言。社会の逆回転に歯止めを。

比較日本研究会 月例研究会2005年2月

2005-02-28 10:14:54 | 月例研究会
比較日本研究会 月例研究会2005年2月

                          報告:メイフラワー

取り上げる本『メディアが市民の敵になる』山口 正紀著 現代人文社
        参考文献:『ニュースの虚構、メディアの真実』同著。
             『無責任なマスメディア』山口正紀、浅野健一編著


○本書を取り上げた狙いと討議概要:
 権力、とくに犯罪を管轄する警察、検察自体の組織ぐるみの犯罪が明らかになった。にもかかわらず警察はばれてもそれを否定し、ごまかし、知らん顔を決め込む。やがて検察も組織ぐるみで公金を詐欺・横領したと内部告発がされるが、その直前に内部告発者を別件逮捕拘禁して逆襲して、いまもって事実を認めない。法務省もそれをバックアップする。そして裁判所がさらに追認する。この国に正義などもう望めない。
 権力が自分の犯罪を隠蔽する一方で、権力に批判的な言辞に対しては別件逮捕、過剰逮捕、あらゆる不法権力行使もいとわず、それを既成事実化する強権が次々に繰り出され、訴訟に持ち込んでも上級審になればほとんどが権力側主張を追認するだけの儀式になろうとしていないか。
 法治国家はその基盤が既に腐食しきっているかの様相である。
 さらに、その陰では権力を監視する立場にあるはずの報道機関が実は権力と一体化して機能放棄を自ら昂進させている現実もある。
 本書は読売新聞記者である著者が『週刊金曜日』に連載し、報道について時々刻々、その権力犯罪とそれに荷担する報道の実像を告発してきたもの。そのなかから、例会では以下に課題を絞って報告、討議したい。
①権力犯罪の検証とそれにかかわる報道について、
②拉致問題報道と北朝鮮報道の〈一色化〉と〈タブー化〉について、
③読売新聞が著者を「記者職」からはずし、報道機関の変節を進めた問題について、
④現在進行形の、自民党・極右グループによるNHKへの政治介入とその事実を隠蔽することに汲々とするNHKの言論自主統制について、
⑤北海道警裏金疑惑、愛媛県警裏金疑惑について、告発報道を続けて事実解明に取り組んでいる地方紙の報道キャンペーンの意味について、

報告を終えて:残念ながらこの日、参加者の多くは課題書を読んでこなかった印象が強い。選定書が不適当であったのかもしれず、また、報告内容に不満を持たれたのかもしれない。いずれにしても、碌に課題書と報告についてつっこんだ質疑も議論も得られなかった。

ぐぁんばれ、ホリエモン

2005-02-25 15:10:51 | 最近のニュースから
 ライブドアとフジテレビの株争奪戦が毎日、NHKニュースのトップを続けている。いよいよ、ライブドアの提訴で法廷勝負に持ち込まれた。
 このマネーゲーム戦争の行方の持つ意味は???

結論は、残念ながらライブドア、ホリエモンが無惨に門前払いを喰わされて負けるのではないか。
 法廷に持ち込んでしまえば、仮に東京地裁の一審でライブドアが勝つことがあっても、東京高裁、特別抗告で最高裁にたどり着けば、理由なんかどうにでもなる、最高裁はフジテレビに軍配をあげてしまうのは、もう戦う前からわかってしまったことだろう。
 なぜかって??フジ、産経グループはなにしろ、いまをときめく極右言論リーダーの牙城。あの極右・安倍晋三先生御用達の媒体なのだから、財界、自民党あげてライブドアたたきの環境を作り上げている。その上で、法廷に持ち込めばこっちのもの。怒れる若者などに右翼ジャーナリズムを牛耳られてたまるかとよってたかって、たたきつぶすことで決着するだろう。

 ライブドアは相手が何者であるか、わかっていない
 まるでノンポリの結晶のようなホリエモンは、フジテレビをただ面白い、低俗な局としてしかみてこなかった、そのおめでたさが命取りになりそうでハラハラするが、なんとかがんばってもらいたいものである。
 面白いのは、兜町の投資家やトレーダー達で株の世界は金が唯一の合理主義が徹底しているから、圧倒的にフジテレビ側が禁じ手を使った、違法だで見方はまとまっていてライブドアの華麗なTOB(実質上)作戦を賞賛している。

 所詮は、日本に、市場にゆだねる自由主義などまるでないのだ。
 ついこの間までは、アメリカ帝国に踊らされて日本でも市場主義に経済は変わらなければならない、など大合唱して、実力主義の声をあげては社員の給与切り下げに奔走してきた企業各社。日本商工会議所会頭がまず、“金だけで動かす”ライブドア批判をぶち上げ、財界首脳は次々に堀江批判を続けてきた。一方、フジテレビのトップは、報道の公共性など産経新聞、フジテレビの日頃の偏向を忘れたかのような理屈で正義の被害者面をしているが、上場会社なら株の買い占めで企業支配を狙われる可能性があるのは当然だということを忘れているのではないか。これまで、上場会社でありながら、にっぽん放送の子会社に安住して、安上がりの経営をだらだら続け、なんら株対策をしてこなかった経営者義務放棄を忘れたかのような言辞を弄し続けている。買い占めがいやなら、安定株主で十分な持ち株比率を確保すればいい。それがいやなら上場を取り消して非公開会社にすれば事足りる。
 そうした対策を今日までなにもおこなわないで、ライブドアに問題があるかのような財界、自民党右派、そしてNHK(朝日問題で産経にだいぶ恩義があるからか)の、堀江封じキャンペーンは、この国は結局資本主義にはなじめない社会であると、改めて世界に公表しているようなものである。
 記憶が定かでないが、何年か前にもソフトバンクの孫とマードック連合が衛星TV局を買収した。テレビ朝日の筆頭株主にもなったのではなかったか?そのとき、今回のように財界、政界(自民党右派)が、報道機関株の買い占め規制などと奇声を上げたようには思えない。やはり産経グループだから、大騒ぎをしているに他ならない。

 がんばれ、ホリエモン
 いつもTシャツでカメラの前にたつホリエモン、プロ野球でも門前払いをくらったが、そのとき朝日新聞(日曜版)のインタビューで「お金で買えないものなどあるのですか?」と嘯いて、世の大人の顰蹙を買ったが、あれから数ヶ月、金を持ってしても最高裁は買えない、保守・反動に刃向かってはこの国では経済活動すら許されないことを、思い知らされるのではないだろうか。
 古い映画だが、イージーライダーが保守的な土地柄でただその服装だけを理由に射殺されてしまう・・・結末を思い出す、ここのところの狂騒曲である。(憂々の里)

こんなことで逮捕するのか・・・俳優・萩原健一恐喝未遂

2005-02-11 16:41:48 | 最近のニュースから
 数日前、俳優・萩原健一が映画制作上、いざこざからプロデューサーを恐喝しようとしたとして、警察が萩原を同容疑で逮捕した。
 報道によると、出演料をめぐるトラブルで萩原は途中降板を命じられ、未払いギャラを巡って、萩原がプロデューサーの携帯電話に電話して、留守録音で暴力団の名もだして脅したというもの。
 1.詳細はわからないが、報道(警察発表)にあるように、一度携帯留守録に脅し文句を言っただけで恐喝未遂で逮捕できるのか。しかも事件?はかなり前の話。であれば百歩譲っても書類送検して済む内容である。逮捕理由として証拠隠滅の恐れというが、警察の職権乱用はなはだしいではないか。
 2.そもそも内容をみると事件?は、民事上のもめごとにすぎないではないか。“警察は民事不介入”の大原則はいったいどこへ行ってしまったのか。
 3.この事件では、もうひとつ重大な問題が浮き彫りになった。TVのワイドショーは長時間このニュースを特集報道(報道の名で呼んでいいかどうか)したが、上記の根本問題に言及した番組は知る限りなかったようだ。ただ、警察発表をそのまま尾ひれはひれをつけて、こと大げさに検事気取りのコメントをながす芸能ジャーナリストたち。
 新聞報道でも、記事扱いは別として一列に並んで警察発表記事を載せるだけで、逮捕そのものへの疑問を書いた新聞は見当たらなかった。報道も警察とぐるになっているではないか。こうして「状況有罪」世論をどんどん作り上げている。
 
 この逮捕事件(逮捕の方が恐喝未遂とやらよりもよほど重大な事件だ)で思い出すのは、TBSのニュースショー番組のテロップが間違っていたという問題で、極右・石原東京都知事がTBSを相手に名誉毀損で刑事告発をした事件?。TBSは番組後すぐ訂正し、同知事に謝罪もしたがそれを受け入れず告発したもの。
 これが刑事事件だろうか。とんでもない。民事上のミスと訂正の問題に過ぎない。
 ところが東京地検は、TBSの担当者を刑事事件の被疑者として書類送検してしまった。相手が極右知事だとこういう、小さな民事上のことにまで、いまでは警察・検察がすぐ動いて脅しをかける。
 イラク派兵反対ビラを投函すると、住居侵入で逮捕、長期拘留はやる。やりたい放題である。その一方で、全国都道府県警察本部ぐるみの公金横領疑惑には、証人警察官がでてきて証拠をつきつけられても、誰一人詐欺罪、公文書偽造・行使罪で逮捕はおろか、処分すらされない。居直り続けている。
 いろんな場面で市民は、ほんとうにいやな世相だと言い合うのが挨拶言葉になるこのごろである。(憂々の里)

6.NHKに対して、効果的なのはやはり支払い拒否、

2005-01-29 20:53:28 | NHK「慰安婦」番組改変問題


 悪評の会長が辞任したかと思えば翌日には、辞任幹部揃って顧問に就任、院政をちゃんと敷こうとした。視聴者はすぐブーイングの嵐をNHKに突きつけ、2日坊主であわてて「顧問辞退」になってしまった。28日のことである。
 しかし一方で、NHKは政治介入問題についてあくまで素知らぬ顔を決め込んだままである。そういう政権党の広報機関化したNHKにNOをつきつけるには、やはり受信料支払い拒否がもっとも有効な意思表示であることが、今回の一連の不祥事問題で明らかになった。
 25日NHKの発表では今年度中に支払い拒否は50万件にまで膨れあがりかねない・・・これが海老沢会長辞任の決め手だったと白状した。昨年11月末現在では支払い拒否は11万件だったから、年が明けてからも急速にその数を増やしていることがうかがえる。
 だが、ちょっと待て。消息通によると1月現在で支払い拒否は200万件になろうとしているとの情報もある。
 もしそれが本当ならすごいパワーになっているわけだ。
 50万件と200万件ではあまりにその差が大きいが、どこに真実があるかは、当のNHKがひた隠しにしているから容易に把握することは出来ない。
 そこで、その差を埋め合わせるヒント、「支払い拒否」というけれど、それが何をさしているかはっきりしないところに事情があるのではないか。
 支払い拒否にはいくつもの事情が含まれるだろう。
1.集金支払い、あるいは毎月振込支払い契約の視聴者が支払いを保留にして払わないケース。これはわかりやすい。文字通り支払い拒否あるいは保留である。
2.自動引き落としで支払い契約をしてきた視聴者が、自動引き落としを解約する例もかなりにのぼってきていると聞く。支払い方法の変更だから、支払いまでのタイムラグが生じる可能性が出てくる。この場合、集金にうかがっても支払わないと通告した場合は支払い拒否だが、切り替え直後では「まだ拒否かどうかわからない」という解釈でNHKがカウントを先延ばししている可能性もでてくる。支払い拒否に含めていない可能性がある。
3.NHKとの受信契約を解約した人もかなりにのぼるのではないだろうか。この場合NHKはどういう扱いにしているか、まったく不明である。解約だから支払い拒否ではないと強弁していることはないだろうか。積極的な意思表示としてはこれがもっとも明確なNOである。それを「拒否」に含めなかったなら、発表と実数の乖離はかなり大きなものになるかもしれない。

 右翼政治家に番組内容を事前に説明するのが「当然」と強弁している限り、良心ある視聴者は、支払い保留でなく、NHKに対して解約通知をすることをすすめたい。
それがもっともNHKを視聴者のNHKに近づける道だとここ数ヶ月で証明できたからである。(憂々の里)

5.NHKは、視聴者に何も答えていない

2005-01-27 18:15:44 | NHK「慰安婦」番組改変問題
 1月25日、四面楚歌だった海老沢NHK会長が辞任した。それをもって数ヶ月に及ぶNHK不信の嵐はおさまるのだろうか。NHKは当然、それを期待しているのだろうけれど、それはとんでもないことだ。
 一プロデューサーが公金を使い込んだり詐欺事件を起こした、それが大きなNHK不信になったように見えるけれど、それはNHK不信が表面化する端緒になったに過ぎないのであって、NHKの公共放送にあるまじきどろどろした不正の構造へのNOの声はいまだ何ら納得はしていない。
 なぜ納得しないかといえば、それはNHKが何一つ誠意をもって正面から、説明責任を果たしていないからに他ならない。

 1月18日夜、NHKは記者会見して朝日新聞報道を全否定した。さらに朝日新聞に対して「虚偽報道」とまでニュース番組で極言した(19日放送)。朝日新聞の再反論に対して21日には18箇条の公開質問状を発表するなど強硬である。
 その一方で、多くの報道機関、識者が一致してNHKに質している疑問にはいまだ何一つ答える姿勢すら見せていない。
 それは1月19日付、東京新聞の見出しを紹介するだけで十分であろう。

 「国会議員への(個別の番組内容の)事前説明は通常業務」(カッコ内は筆者)。
 
 どの新聞社でも、印刷にまわす前に取材先や特定の政治家に事前に記事内容説明やお伺いをするなど、懲罰ものだという。当然のことだ。
 記者会見でNHKの放送現場のトップ、関根放送総局長は番組内容を事前に国会議員へ説明するのは「当然」だと居直ったままである。
 安倍自民党副幹事長が、問題の番組放送前日に会ったことを自ら認めたために、「事前訪問」「事前説明」を否定することができないために、居直り突破を安倍氏から再び指示されたためであるかのような、傲然たる姿勢であった。
 そんなことがまかり通ることは決して放置されてはならない。

 右翼政治家・中川、安倍両氏とNHKは、中川が放送前に会ったかどうか、安倍は呼びつけたかNHKから出向いていったかどうか、に問題をすり替えて「政治家介入」はなかった、「朝日報道は捏造」のすり替えキャンペーン一辺倒になっている。
 加害者と被害者が談合しているわけだから、客観的物証でこれらすり替え論のウソを暴くのは容易でない。それをいいことに、問題の本質をそこに収斂させようと躍起になっていると思われるが、ことの本質を見失ってくれては困るのである。

 教育TVの、もっとも地味な深夜放送の、視聴率1%にもならないような放送番組を、放送前に(呼びつけたのか、伺いましょうと気をまわしたのかは枝葉の事象だ)
右翼政治家の元に出向いて相談し、右翼政治家の意向を忖度して放送直前に4分ものカットをする・・・・・。
それが「通常業務」で「当然」であって、放送の自主性に陰りもない・・・・などという強弁が通用するなどそこまでこの社会は麻痺していると見下げているのだろうか。

 イラクへの自衛隊派遣と同時に、NHKニュースは毎日、「イラク人道支援復興活動をする自衛隊は・・」と、この長たらしいセリフを一切はしょらずに何百回も繰り返し、執拗に放送した。歴史の本で読んだ〈大本営発表〉というのは、こういう放送をいうのかと、半ば感心して毎日見させられ聴かされたのであるが、それにつれて世論調査のイラク派遣支持も確実に上昇したことを忘れない。
 政権党とNHKはそうした効果を熟知しているから、ひとのうわさも75日、黙りを通そうと考えているのか。
 そのNHKに回答をさせる方法は、実は確実にある。
1.世の識者は、それぞれの団体、任意グループで構わない、執拗にNHKの公共放送から逸脱した不正にプロテストするアピールを続けることだ。
2.確実にNHKに回答を求める方法、それを視聴者はこの数ヶ月ではっきり手にした、それをしっかり思い起こしたいのである。・・・支払い拒否。(憂々の里)

4.三菱自動車、UFJ銀行、そしてNHK

2005-01-22 18:27:03 | NHK「慰安婦」番組改変問題

 先頃行われた世論調査によると、万一会社が法にもとる行為を行い、それに荷担するような業務を指示されたときどうするか、との問いかけに、40才までの若いビジネスマンの50%強が、「荷担するのを断りたい」と答えたとあった。数年前の調査では、いやでも会社の命ならやらざるを得ないが過半数になっていたというから、大きく意識変化がでてきたと指摘していたように記憶する。一方、50才以上では、会社に従う方が今回も多かった。

 18日のNHK記者会見に登場した、松尾・現NHK出版社長(元放送総局長)の会見模様をみながら、この世論調査を思い起こした。 数日前、松尾氏は追いすがる民放TVカメラを振り払いながら、〈いずれちゃんと話す、NHKと相談してから話しますから〉としゃべった声が録音されていた。
 記者会見の松尾談話は、まさにNHKと相談して綿密に取り決め、あるいは指示されたことを忠実に話していたような印象を受けた。
 2時間に及ぶ朝日記者のインタビュー、その取材メモを元にした発言のディテールをみると、彼がかなり率直に政治介入の日常についてしゃべっていたとしか考えられない。本人も内心忸怩たるものをそのときは抱いていたのかもしれない。
 おそらくNHK最高幹部に呼び出され、「おまえはいったい何をべらべらしゃべったのだ!」などと恫喝、叱責されたのではなかろうか(と想像する)。
 安倍事務所からも万々が一にも何か痕跡でも残していたらお前がどうなるかわかっているな、とさらに強烈な圧力もトップは次々に受けていたのだろうか。
 ことここに至って、松尾氏は覚悟を決め、安倍とNHKトップの筋書きをただオウム返しに、記者会見でしゃべることに追い込まれてしまった・・・・・・????。
 あまりに明瞭に朝日の記事内容を虚偽、悪意な意図など小気味よく切り捨てた中に、そういう身動きできないサラリーマン(といっても、出版大手の一角に食い込む社長だが)の宿命を漂わせていた。

 思えば、リコール隠しに端を発して、売り上げが半分近くまで落ち込んで深刻な経営危機に追い込まれた三菱自動車も、経営幹部の指示の元に社内の自律作用が作用する余地なく、命令一下犯罪隠しに社の中枢が邁進してしまった。その結果が、深刻な販売不振になった。
 大手都市銀行、UFJ銀行の金融庁検査への隠蔽工作も副頭取の命令で関係部署が上も下も一丸となって不法行為に突っ走ってしまった。それがUFJの経営危機、そして事実上の東京三菱への吸収合併にまで行き着いてしまったことはまだ耳新しい。
 松尾NHK出版社長などNHK最高幹部陣の今回の問題への一致団結した対処ははたして何を結果させるだろうか。
 NHKは民間企業ではないから、倒産も視野に入れざるを得ないような経営危機になることはないやもしれない(今後、等比級数的に受信料支払い拒否が爆発しなければ)。しかし、事の決着によっては皮肉にも安倍氏がくぎを刺したという「公正、中立」な放送イメージは地に落ちてしまうだろう。
 また逆に、権力の助勢と圧力、右翼による暴力によって真相をうやむやに葬り去ることに成功したときには、二度と公共放送機関として独立できる道は残されないだろう。

 日本の組織体では、民間企業も官僚組織もその中にいる一人ひとりは私的には善良でモラルを持っていても、事にあたっては、法や倫理に反することであっても組織に良かれ、組織の業務命令とあればいとも簡単に個人の判断に幕を下ろして、組織に従ってしまう傾向が非常に強い。
 そのような教養も判断力もある個人が知悉している社会規範に目をつむって会社の都合優先に物事を判断して、社会と対立することもいとわないことを「会社理性」という。このような思考構造が日ロ戦争後、紆余曲折はあっても昭和になってから軍部独走、戦争への邁進にまで結びついていったのである。
 本来は、組織内人間であっても組織の都合よりも社会規範、法律の方がより上位の行動規範として優先されなければならぬ。それを守ることによって組織の自浄作用、自律機能も維持されるのでもある。
 ブッシュのアメリカがあれほど悪評であっても、まだアメリカに好意を抱く人間が半数以上いるのは、アメリカ社会(官僚組織内も)のこの行動規範の健全さに負うところが大である。例えば最近のニュースでも、イラクに実は大量破壊兵器など最初からないことを政権に通報していたと、CIA幹部が本に書いてしまった。CIA上層も出版に同意していた。当然ブッシュ政権中枢はカンカンに怒ったが、そういうチェック&バランスをまだ持ちこたえている、そこにアメリカの健全性と底力を見るのである。(憂々の里)
 

3.状況証拠は真っ黒だが

2005-01-22 13:46:07 | NHK「慰安婦」番組改変問題

                                         (憂々の里)
 NHK番組改変問題、これまで10日間の報道を見る限りは、状況証拠は真っ黒の印象である。
1.番組制作過程の異常さ。
 朝日報道後に名乗り出た、当の番組制作デスクだった長井氏の告発は、話の流れ・・・全体の動きとして、理路整然としてひとまず頷ける。特に、放送2日前に局幹部が試写に立ち会い、1分カットなど最終編集を終えたあとの動きは異常以外の何物でもない。
 放送前日少なくとも編集制作の総責任者が安倍内閣官房副長官のもとに伺候して、その番組の中身を説明している。安倍氏は、日を追うにつれて政治圧力の影を消すためか、発言内容を後退させているけれど、12日朝日の記事に対するコメント(1.発端と経過を参照)をみれば、ただ「公正中立に」と言ったのでないことを自ら証明している。仮に「公正中立に」と言っただけでも、立場とその状況下では政治圧力を効果たらしめる文言そのものであるが。
 その安倍訪問から帰局後に、再度編集総局長立ち会いで、さらに1分のカットを中心とする入れ替え作業をさせた。これで決着かと思ったところ、なんと、放送直前にまた業務命令だといって、さらに3分、これはもう滅茶苦茶で番組ぶち壊しでしかないが、カットして合計40分にさせてしまった。
 つまり、安倍、中川との交渉を挟んでこれだけ異常な作業を、教育TV(視聴率も1%もいかないような忘れられた番組・・・現実は)の番組にやってのけた。それだけで長井氏の告発は蓋然性は極めて高い。
2.朝日報道では、当初安倍、中川両氏とも放送前に番組が偏向していて問題だと認識してNHK幹部に会ったとコメントしている。安倍氏は「公正中立に」と言っただけだと、逃げをうっているから「政治圧力」の法的責任まではいかないかもしれないが、中川氏の「やめろといった」は明らかに不法介入だから、逃げ場はなくなる。 だからこそNHKとすりあわせの上、放送後の2月2日に報告を受けたに変えなければならなかったのではないか。そういう疑念が湧いてくる
3.長井氏が直接NHK最高幹部からことの経過や局の方針の説明を聞ける立場でなく、直属上司を経由した伝聞説明だったと知ると、
安倍氏は「証拠があるなら出して欲しい、いつ、どこで、誰が、なんと言ったか明らかにせよ」と居直り始めた。NHK最高幹部しか直接のやりとりは知りようがないとわかったからだろう。
4.21日東京新聞社説も触れているが、この問題での中川、安倍、NHKの三者の発言内容が、詳細まで統一させたかのような、金太郎飴発言に終始するようになったこと、それら当事者の発言が酷似するほどに“口裏合わせ”の臭気がふんぷんと臭ってくるように思われる。
5.19日の松尾武・元総局長の記者会見内容も異常であった。取材についてはプロ中のプロである松尾氏が、朝日記者から2時間におよぶ取材を受けながら、その全部が虚偽であり、また自分の発言をすべてねじ曲げて反対の意味に使ったと、被害者然と説明したことである。プロがそんな取材を2時間も受け続けるのだろうか。まるで振り込め詐欺にあった老女の告白のようではないか。
 そして、その異常さをとくに際だたせたのは、松尾氏の朝日の取材と記事が逆だ、虚偽だという説明であった。きわめて克明に具体的に話した点である。記者会見で万一虚偽説明をしたときは取り返しがきかないから、本来なら危ない話はあいまいに、抽象的に、意味不明にそらしがちなものであるが、この時の松尾氏はなにか覚悟したかのように極めて明瞭であった。それがかえって不審感を強く残させた。

6.それでも安倍、中川、NHKが全否定するのは
 仮に政治介入があったとしても、そのときの加害者は安倍、中川両政治家であり、被害者はNHKということになる。
 しかし、この問題の厄介さは、当の加害者と被害者が綿密にすりあわせ、打ち合わせをして政治介入の事実を否定していることにある。介入は書面などで行うことはあり得ないから、物証はもともとないもないそういう犯罪あるいは報道倫理上の問題なのである。登場人物が口裏を合わせると、闇から闇に結局は葬り去ることが出来る・・・・だからこそ、NHKは猛り狂ったかのように朝日を虚偽報道と避難するし、安倍氏は、証拠があるなら見せてくれと居直れるのでもある。
 しかし、はたしてそうだろうか。
 18日の朝日特集詳報を読んで感じるのは、極めて緻密で詳細な取材メモに基づいているということだった。取材メモは取材の時点だけでなく、備忘録として録音もあってそれを元にメモを作ったのではないだろうか・・・と想像した。
 もしそのテープがあるなら、決定的な証拠にそれはなる。朝日は最終手段以外には使わないだろうけれど。
 21日のNHK18項目質問でも、それをしつこくあるなら出せ、また、万一録音がある場合を想定して(録音内容ではなく)録音したことの不当性を今後は前面にだそうという予防策もだしはじめてきた。
7.現NHK会長辞任要求では早々に旗幟鮮明にしたNHK労組はこの問題では、現在まで黙秘を続けている。放送総局長ら最高幹部以外でこの事件の事実を確認している職員は必ずいるはずである。さて、長井氏に続いてNHKの膿を出し切ろうという人がでてくるだろうか。
 

2.朝日vsNHKは、なぜ全面対決になったか

2005-01-21 21:23:13 | NHK「慰安婦」番組改変問題
                  (憂々の里)
 12日の朝日スクープ以来、NHK番組改変問題はエスカレートの一途を辿っている。なぜそうなったか。
 12日朝日記事、さらに18日詳報を見ると、NHK松尾元総局長、安倍現自民副幹事長、中川現経産相らは、いずれも番組改変に政治家がコミットしたことを本筋で認めていることにまず驚かされた。
 安倍、中川、NHKは日を追うに連れて、朝日報道を「虚報」「捏造」だと、抗議をエスカレートさせる一方で、発言の内容についてはあいまいな、穏当なものだったように軌道修正を繰り返している。
 
 安倍は「風邪気味で自宅にいるところを夜討ちをかけてきてインタホン越しにコメントを求められた」、また中川は「酒を飲んでいるときに電話でいきなり4年も前のことをしつこく尋ねられたから」と言っているが、それは朝日の談話が本筋で事実だったために弁解し、発言を修正したいという心情が伝わってくる。つまり、コメントに後ろめたさがあるということだ。
 取材などされたこともない一市民が言うならもっともなセリフだが、政権党と内閣の中枢の者が、取材に対してあとから弁解するセリフではないだろう。また、松尾元NHK総局長は朝日記者は最初から結論ありきで、政治圧力はないといってもあるでしょうとしつこく言われたというが、朝日18日の詳報にあるようにそれが「長時間の取材」だったなら、プロ中のプロがそういう取材にその場で抗議もせずなぜ長時間取材を受け続けたのか、実に不思議である。

 つまり、政治圧力が仮にあったとすると、その加害者2名の政治家と被害者NHKの幹部、双方ともが朝日の取材を受けても、自分たちの発言とやったことが法に抵触し、それ以上に民主主義の根幹を揺るがす重大な行為だったという認識が決定的に欠落していたからではなかろうか。
 なにも悪いことではない、「偏向番組」について直すように注文をつけてなにが問題なのだ?そうとしか思っていなかった。また、被害者であるはずのNHK幹部もそれに対して編集改変を説明し、約束するのが何もおかしいことでない・・・そうとしか思ってなかったからこそ、易々と朝日記者の聞き出しに十分以上の答えを与えてしまったのではないだろうか。
 それは、1で紹介した12日の安倍氏のコメント(これは朝日が聞いて書いたのではなく、安倍が配ったものだ)をみれば、民衆法廷は偏向しており、北朝鮮を利するものだから公正中立にするように話すのは当然だという認識が正直にでていることからも、容易に想定できる。
 仮に、安倍、中川、NHKがいうように故意に解釈を歪めた部分が朝日記事にあった場合であっても、記事の大筋そのものは動かせない重さをいささかも失わないだろう。
 それだからこそ、時間が経過するにつれ、事の重大さを認識していくにつれて、全面否定しか残されていないことにも気づいたのではないか。そこに、狂ったように抗議と全否定を繰り返すNHKの異常さを感じてしまうのである。

1.NHK番組改変の発端と経過をまとめる

2005-01-21 18:02:07 | NHK「慰安婦」番組改変問題
この問題は、単にニュースとしてでなく、右傾化が日増しに加速する中で、報道機関での「翼賛化」、言論統制の既成事実化へ歯止めをかけれれるかどうかの、きわめて重要な局面になったと思い、独自枠を作ることにしました。
のちのちに、あのときが自由主義の抵抗の最後だった・・・・など、挫折の回顧にならないことを祈りながら。

なお、このページには、新しい動きを追加します。


1.発端と経過

1月12日、朝日の特報

 05年1月12日朝日新聞朝刊が一面で〈NHK「慰安婦」番組改変に自民党の中川、安倍の二人が「内容に偏り」があるとして、放送前日にNHK幹部を呼んでただしていたことを報じた。
 番組は4年前「戦争をどう裁くか」4回シリーズの第2回、01年1月30日教育TV放送の「問われる戦時性暴力」。
 番組の内容の一部を事前に知った二人が「一方的な放送をするな」「公平で客観的な番組にするよう」と求め、中川氏は「それができないならやめてしまえ」など放送中止を求める発言などもした。
 NHK幹部は「教養番組で事前に呼び出されたのは初めて、圧力と感じた」と話した。
 安倍、中川の二人がどうして事前に番組内容を知ったかについては「仲間から伝わってきた」と言うのみで明らかにしていない。
 中川氏は、NHK幹部と面談したことを認めた上で「疑似裁判をやるのは勝手だが、それを公共放送がやるのは放送法上公正ではなく、当然のことを言った」と説明。また「NHK側があれこれ直すと説明し、それでもやるというから『だめだ』と言った。」と語った。
 また安倍氏は、「偏った報道と知り、NHKから話を聞いた。中立的な立場で報道されねばならず、反対側の意見も紹介しなければならないし、時間的な配分も中立性が必要だ。政治圧力をかけたこととは違う」としている。(下線筆者)

翌13日、朝日は社説で論旨を
大反響を呼んだ12日一面のNHK「慰安婦」番組改変事件、翌日の朝日社説は「政治化への抵抗力を持て」と題して、前日の特報の本質をまとめている。
 放送前日のNHK幹部(後に放送総局長と判明)が番組内容の説明に行った相手は、単なる政治化でなく時の政権中枢の官房副長官であり、番組現場制作責任者(長井チーフプロデューサー、当時制作デスク)が「放送内容への政治介入だ」と訴えていることを前置きして、国会はNHK予算、決算の承認権を持ち、しかも政権を担う中枢だ。NHKへの影響力を知っているからこそ、放送前に注文をつけた。これは検閲に通じかねず、こうした行動がゆるされるなら、NHKの番組は政治家の意向をくんだ内容に変えられる心配がある。報道の自由、民主主義そのものが危うくなりかねないと、指摘した。

番組は4年前にも問題になった
 当の番組「問われる戦時性暴力」放送直後からやはり、この問題が実は指摘されていた。この番組取材を受けたNPOバウネットは、取材打診時点で番組の改変、歪曲を防ぐために番組内容についての契約を交わしていたが、番組が一方的で当初の取材説明と著しくことなるとしてNKHと制作下請けに損害賠償訴訟を起こした。
 そのときにも、異常な放送直前での番組大幅改変に政治介入が問題になったが、NHK幹部が編集権の裁量として押し切った経過がある。なお、一審判決は下請け制作会社へ慰謝料支払い命令がでており、控訴審が継続中。


NHK、安倍、中川からの反撃開始
 NHKは13日夜、「中川氏に面談したのは、放送後の2月2日であり、放送前には会っていない」「安倍、中川氏からの圧力を受けて番組内容が変更された事実はない」と関根放送総局長の見解を発表した。
 安倍氏については「29日頃面談し、予算説明にあわせて番組の趣旨や狙いを説明したもの」とした。 (下線筆者)

 産経系列、 夕刊フジは、12日特大見出しで「捏造」と謳い、朝日の政治介入は朝日の捏造だと反撃キャンペーンを開始した。

 読売は、安倍、中川、NHKの否定コメントを大々的に取り上げている。

中川氏も、よく調べたら2月2日にNHKに面談しただけで、朝日の記事は間違っているとして、反論している。


12日安倍氏が出したコメント詳細は以下の通り。
「朝日新聞らしい、変更した記事である。
この模擬裁判は、傍聴希望者は『法定の趣旨に賛同する』と誓約書に署名しなければならないなど主催者側の意図通りの報道をしようとしえいるとの心ある関係者からの情報が寄せられたため、事実関係を聴いた。その結果、裁判官役と検事役はいても弁護側証人はいないなど、明確に偏った内容であることが分かり私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した。これは拉致問題に対する沈静化を図り北朝鮮が被害者としての立場をアピールする工作宣伝活動の一翼も担っていると睨んでいた。告発している人物と朝日新聞とその背景にある体制の薄汚い意図を感じる。今までも北朝鮮問題への取り組みをはじめとし、誹謗中傷にあってきたが、私は負けない  安倍晋三」とのこと。
 また安倍氏は、内部告発したNHK長井氏に対し、圧力があったというなら、その証拠を明らかにせよ、いつ、どこで、だれが、どのように圧力をかけたか明らかにせよと迫った。

 その後、安倍氏のコメントは、トーンダウンして「公正中立にしてくださいとお願いしただけ」などに変わっていった。



15日、TV朝日番組での安倍発言
 同日「サンデープロジェクト」に出演した安倍氏は、放送前日の29日、NHK幹部が来て面談したことを認めた上、「番組の説明をされたので中立公正にしてくださいと言っただけで圧力をかけていない」などと述べたが、同時に、「番組に登場した慰安婦の告発をした出演者は北朝鮮の工作員だ」「(拉致事件の主力政治家である)安倍、中川をねらい打ちしようとする記事だ」「NHKには父の代からの番記者もいて通常はその人がNHKとの連絡をしている」などの発言もあった。
 なお、この安倍発言に対しては、市民団体「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(バウネットジャパン)が17日事実と違う発言だと謝罪を求める抗議文を送付した。主な内容は、模擬裁判でなく〈民衆法定〉であること、弁護側がいないのでなく、法定助言人が弁護をしている、拉致問題が問題になったのはこの〈法廷〉開催の2年近く後のことで、根本がおかしいなど。

19日、朝日は、「NHK番組改変、本社の取材・報道」で詳報
 安倍、中川、NHKの介入否定に対して、朝日は詳細な取材と事実経過をほぼ1ページ特報で明らかにした。
朝日の詳報は、①取材したNHK幹部(翌19日のNHK記者会見で編集総局長松尾武氏と自ら名乗った)とのインタビューの詳細。②中川昭一氏への取材の詳細内容。③安倍晋三氏への取材の詳細内容。④番組の制作過程と改変の課程の詳細。それを明らかにした上で横井社会部長名で、NHKの報道機関としての“体質”に問題の本質があることを指摘した。

18日、NHKが記者会見、朝日報道を全面否定。
 翌日の新聞によると会見は100分に及んだというが、同日19時のNHKニュースは、「政治家からの圧力はない」「NHKの独自編集であった」「29日頃安倍氏には予算説明に伺い、(ついでに)番組について説明した」「中川氏に面談したのは放送後の2月2日である」とNHKの主張を紹介するだけで、朝日の主張は触れないままで終わった。
 その後、他局のニュースなどにより、圧力の有無にかかわらず放送前に政治家に内容を説明に行くのは報道の基本にもとらないか?の質問に、「通常業務である」とした。また、安倍氏と面談後、放送直前での結果5分のカットは異常すぎないかの質問には、「普通の課程に過ぎない」と答えた。さらに事前に説明にいった政治家は「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(自民党極右グループ、筆者注)のメンバーだとも明かした。


番組改変のプロセスは
1月24日、番組部長が全面やり直しを指示。
同26日、〈法廷〉批判のインタビューを急遽追加決定。
同27日、右翼街宣車などがNHK前に乗り付け。
同28日、深夜、大幅改変の上1分短縮(44分)で部内OK。
同29日、安倍氏に事前説明。その夕方総局長試写と協議。さらに1分をカットして、43分版にする。
同30日、放送直前に総局長、番組制作局長、番組部長で協議し職務命令としてさらに3分カット、40分版に短縮して同夜放送。
(注)民放によると放送直前での1分カットは、信じられないくらい困難な編集作業。それが5分!!もあったと指摘した。

20日、朝日はNHKニュース「朝日虚偽報道」に抗議
 20日朝刊、前日19時NHKニュースが「朝日虚偽報道問題」と流して朝日に抗議したことを受けて、
NHKに抗議した。NHKは以降のニュースから「虚偽」文言をはずした。

21日、自民党、NHK番組改変問題で調査チーム
 自民党は、同問題について、事実関係の調査、対応を検討するチーム設置を決めた。

21日、東京社説で「番組改変問題 放送の自律性はどこへ」
以下概要。
1.「放送前の番組について特定政治家にあらかじめ説明することを「当然」とするNHKの見解には驚かされる」。
2.「報道内容の核心を否定する政治家側と二人三脚のように見えるNHKの対応は、奇異に感じられる」。
3.「NHK幹部が安倍氏に呼びつけられたのか、それとも自発的に訪ねたのか、中川氏が会ったのが放送前か後かは本質的問題ではない。問われているのはNHKと政治家との距離、関係である」。
4.「公正な番組をつくるためNHK内部でチェックしたり議論するのは当然である。
 しかし、放送前、あるいは番組作成中に一部有力政治家に説明したり了解を求めたりするのは内部の議論とはまったく次元が異なる。「放送の自律性」「報道の中立、公正」といった報道機関としての生命線を危うくするものだ」。
など。

21日 NHKは朝日に18項目の公開質問を
 NHK1900ニュースは、またも松尾元総局長の朝日取材虚偽会見を流しながら、18項目にのぼる公開質問状を朝日につきつけたことを長々と放送。なかで、インタビューでテープ録音しているかどうかを明かせ、もし録音しているなら取材倫理に反するなどを強調した。
以下に全文。

公開質問状
1.記事の真偽について
  (1) 中川氏とNHK幹部が放送前日に面会したのは事実ですか。
  (2) 上記(1)の記事を掲載するにあたって、中川氏及びNHK松尾元放送総局長の「証言」以外に、何らかの裏付けや根拠となる事実確認をしたのですか。
  (3) 中川氏が放送中止を求めたのは事実ですか。
  (4) 上記(3)の記事を掲載するにあたって、中川氏の「証言」以外に、何らかの裏付けや根拠となる事実確認をしたのですか。
     
  (5) 安倍氏がNHK幹部を呼び出したのは事実ですか。
  (6) 安倍氏がNHK幹部に、番組は偏った内容だなどと指摘したのは事実ですか。
  (7) 上記(5)、(6)の記事を掲載するにあたって、安倍氏及び松尾元放送総局長の「証言」以外に、何らかの裏付けや根拠となる事実確認をしたのですか。
     
  (8) NHKの番組が政治的圧力を受けて「改変」されたのは事実ですか。
  (9) 上記(8)の記事を掲載するにあたって、内部告発した当時の番組担当者の「証言」以外に、何らかの裏付けや根拠となる事実確認をしたのですか。
  (10) 上記(8)の記事を掲載するにあたって、内部告発した当時の番組担当者の「証言」は伝聞情報にすぎないことを承知していたのですか。
     
  (11) 御社は記事で「いずれにしても結果的に、憲法が禁じる検閲に近い事態が起きていたことになり、憲法で保障された表現、報道の自由を無視したものといえる」と断定的に指摘しています。
現段階でもそのように考えていますか。
2.御社記者の取材について

  (12) 松尾元放送総局長は、1月9日昼過ぎに御社記者から取材を受けた際に、「安倍・中川両氏からもすでに取材している。全部わかっている」「政治的圧力を感じたでしょう」と執拗に問いただされた、と話しています。一方、御社の記事によると安倍・中川両氏への取材は翌日の10日となっています。御社記者が松尾元放送総局長に嘘をついて取材したとすれば、取材倫理上極めて重大な問題と考えます。
御社はこの点について、どのような調査を行いどのような見解を持っていますか。
     
  (13) 御社記者の取材が始まって20分ほど経過した段階で、松尾元放送総局長が、御社記者がメモを取り始めたことに気付いて「メモは取らないでください」と求め、それ以降、御社記者は一切メモをとらなかったということです。
それでは、2時間に及んだという取材での証言内容をどのような方法で正確に記録できたのですか。
     
  (14) 松尾元放送総局長は、19日に自ら記者会見して「朝日新聞の記事は私の証言を歪曲し、全く逆の内容になっている」と批判しましたが、その前日に御社記者に電話をかけています。その中で、松尾元放送総局長は、「取材に答えた内容と記事の内容が違っている。記事にあるNHK幹部とは私のことか」と聞き、御社記者が認めると、「私は記事のような証言はしていない。取材の内容を確認したいので、録音テープがあれば、私にも聞く権利があるので聞かせて欲しい」と要求しました。これに対し御社記者は、録音テープがあるかどうかについて明言しませんでした。
取材相手から録音テープの存在の有無を聞かれた際に、御社記者は、なぜそれに答えなかったのですか。
     
  (15) 松尾元放送総局長への取材を録音したテープはあるのですか。

     
  (16) 去年8月に明らかになった、御社記者が起こした「無断録音テープ流出問題」についての御社見解によれば、「取材内容の録音は相手の了解を得るのが原則であり、取材相手との信頼関係を損なうことがあってはならない」としています。
御社記者は、松尾元放送総局長に取材した際に録音する許可を得ていませんでしたので、仮に録音テープがあるのであれば、御社見解に照らした場合、取材倫理に反する行為にあたると考えますがいかがでしょうか。
  (17) また、録音テープの有無に関わらず、記者会見前日に松尾元放送総局長が電話で質問した際に、録音テープの存在の有無をはっきり答えなかった御社記者の行為は、「取材相手との信頼関係を損なうことがあってはならない」としている御社の取材倫理に、やはり反するものと考えますがいかがですか。
     
  (18) さらに記者会見前日の電話で、松尾元放送総局長が、御社記者に対して「私の証言と記事の内容が違っている」と抗議をした際に、御社記者は「NHKにはもう話してしまいましたか」「どこかでひそかに会えませんか」「証言の内容について腹を割って調整しませんか」「摺り合わせができるでしょうから」などと繰り返しました。
 御社によると御社の記事は、「2人の記者が松尾元放送総局長に長時間会って取材した結果などを正確に報じた、根拠あるもの」だということです。
それではなぜ記事を掲載した後になって、証言の内容を「調整」したり「摺り合わせ」たりする必要があったのでしょうか。
明確で納得のゆく回答を求めます。
   
  以上18項目の質問について、御社が報道機関としての矜持を保ち、言い訳や論点のすり替えをせず、きちんとした内部調査をしてその結果を記者会見で公表するとともに、記事を訂正しNHKなど関係者に謝罪することを改めて求めます。
    以上


22日、朝日は1面、社会面でNHKに訂正、謝罪要求、法的措置も。

 このなかで朝日が重視しているのは、
1.NHKが午後7時のニュースなどで公共の電波を使って度重ねて朝日を中傷誹謗していること。「ニュースをつかって長時間自己弁護に終始する放送をし、朝日の言い分を無視」していると。
2.記者会見で松尾氏が朝日の記事は「発言内容と正反対あるいは虚偽」と述べさせたことなど。

以下に朝日の抗議全文を。
 前略 貴協会は、去る1月19日に、貴協会の番組改変問題をめぐる朝日新聞の記事(以下、記事という)について記者会見を開き、記事は事実を歪曲したものであるとし、記事に発言が記載された貴協会幹部(松尾武元放送総局長。以下、松尾氏という)に、8項目にわたり、記事に記載された松尾氏の発言は取材に対する同氏の発言と正反対のあるいは発言とはまったく異なる虚偽のものであるなどと述べさせました。そして、貴協会は、同日の午後7時のニュースにおいて、「朝日新聞報道問題」と題し、上記記者会見の内容を詳細な松尾発言とともに全国に放送し、さらに、翌20日の午後7時のニュースでも、「朝日新聞虚偽報道問題」との表題のもとに、記者会見での松尾氏の発言を再度放送しました。

 しかし、松尾氏が朝日新聞社(以下、当社という)の記者の取材に対し記事記載のとおり述べたことは動かしがたい事実であり、このことは繰り返し当社が指摘しているところです。再度松尾氏に厳しくご確認ください。

 貴協会の上記記者会見及びニュース報道は、当社が、当社の記者の取材に対し松尾氏が発言したこととは正反対のあるいはそれとはまったく異なる発言を同氏の発言として記事に記載したとするもので、虚偽の事実を摘示し当社の名誉を著しく毀損(きそん)するものです。

 また、客観的かつ公平中立であるべき公共放送のニュース番組において、長時間にわたり自己弁護に終始する放送をし、当社の言い分を無視する貴協会の報道姿勢は、放送法に照らし、重大な疑問があります。

 貴協会の上記行為について厳重に抗議するとともに、ただちに訂正と謝罪の放送をするよう要求します。また、今後上記のような行為を繰り返すことがないよう通告いたします。本書面受領後10日以内にご回答ください。誠意ある回答がない場合は法的措置を取らざるをえないことになりますので念のため申し添えます。

    草々


以下の経過追跡は、「経過2」として別のページに移ります。


比較日本研究会 平成16年12月例会

2005-01-09 11:58:17 | 月例研究会
【開催日】 16年12月30日(木)
【【報告者】 いちご白書
【テキスト】「言論統制」佐藤卓己 中公新書 2004.08

平成16年最後の研究会となった今回は、「言論統制」佐藤卓己 中公新書をテキストとして開催された。
本書は言論界で「小ヒムラー」として怖れられた陸軍軍人 情報局情報官 鈴木庫三少佐の伝記研究である。

【ポイント】 
1.言論統制と鈴木庫三
言論統制は歴史的事実として存在した。著者は事実としての言論統制を否定している訳ではない。
ただ、鈴木が活躍した時代は左翼弾圧と自由主義者弾圧の端境期にあったことを歴史的な事実として指摘している。そして弾圧者「小ヒムラ-」鈴木像は作家ら文化人が贖罪意識から戦後に捏造したものであることを実証研究において明らかにしている。
さらに「近代の超克」竹内好他 の中で「そもそも、戦争に反対する自由主義勢力なるものが存在したのであろうか。」と指摘しておりこの点については深堀が必要。


2.鈴木庫三と出版社との対立
本文の要約を繰り返すことになるが、鈴木庫三と出版社との対立は出版業にとって生命線である紙をめぐる実質的な利害の衝突(講談社問題と朝日新聞社問題)。もう一つは、あるべき生活態度をめぐる価値観、つまりハピトゥスをめぐる対立(岩波書店問題と実業之日本社問題)であり、主戦勢力と反戦勢力の戦いではないことを著者は実証的に明らかにした。
対立点は決して戦争協力を巡ってではなく、陸海軍の対立に乗じた対立であり、紙の配分を巡っての対立であった。
戦後になって出版社側が鈴木庫三を「小ヒムラー」として糾弾し、鈴木を「悪者」に仕立て上げることによって、自らを「反戦」として免罪するという構図が大変良く浮かび上がっている。

【コメント】
1.民主化装置としての軍隊組織
本書P89にて著者は丸山真男の「軍隊は社会的な階級差からくる不満を緩和する役割を果たした。」点を引用している。丸山をして「擬似デモクラティックな要素が存在した。」と言わしめたように、軍隊組織を民主的な要素有りと評することは、戦後民主主義の風潮の中で大きなタブーであり、わざわざ、「擬似デモクラティック」と称している点に戦後の軍隊研究のタブーが存在すると考える。この他、第1章の冒頭では松本清張を引用。(P50)「ここ(軍隊)にくれば、社会的な地位も貧富も年齢の差も全く帳消しである。みんなが同じレベルだ。」という部分を引いてきている。松本清張のストレートな感慨として自分が勤務している新聞社よりも軍隊の方が民主的であると感じている。軍隊組織は民主的かどうかについては、極めて限定的な議論であり改めてキチットした議論が必要と思うが、著者は「戦後民主主義」が軍隊に関する客観的な研究を放棄し、事実を直視してこなかった点について鋭い批判の目を向けているように感じられた。「昔は良かった。」「軍隊は良かった。」風の安直な感慨ではなく、今こそ客観的でまじめな軍隊研究が求められるのではと感じた。

2.社会主義者 鈴木庫三??
著者は鈴木庫三に対して社会主義者としてのレッテル貼りをしているわけではないが、社会主義的な傾向を随所に指摘している。著者のいう社会主義とはマルクス主義における社会主義で、陸軍の教育将校であった鈴木庫三に社会主義的傾向を見出すことが、発見でもありこの研究の売りにもなっている。しかしながら、「国家社会主義」に共通する側面も多く存在し、マルクス主義との腑分けをますます困難にしている面もあるだろう。この戦前、戦中の「国家社会主義」は戦後には「官僚支配」に引き継がれて連続していくものであり、とりわけ鈴木だけが傑出していたというわけではなく、当時の時代的な制約の中で規定されていたとも言えるのである。ただ、著者やわれわれ自身がある意味共感をもって鈴木庫三の日記なり生い立ちを読むことが出来るとすれば、自らの生い立ちを背負った弱者へのまなざしであったと思う。現在の日本の知識人には一般論として「弱者に対する視点」が欠落しているように思えてならない。

3.軍隊・戦争システムはいかにして否定しうるか??
軍隊や戦争を前提としたシステムの中では、いささか鈴木庫三の言説は合理的であり、違和感なく受け入れられるだろう。日清戦争の年に生まれ、日露戦争の年に10歳にして軍人を志す。そして第一次世界大戦期に成人として過ごした一軍人の発想の根底には、明治以来の「富国強兵」があり、社会そのものを国防の目的に沿うように作り変えていく必要がある。これが、「軍隊」をもつ「普通の国」の姿なのである。これに対して戦後民主主義のなかで「警察予備隊」「自衛隊」といった再軍備への動きとは裏腹に精神世界においては「軍隊」も「戦争」もタブーとなった。この過程において、「軍隊」も「戦争」もきちっとした議論や検証もなされることなく葬り去られたのである。
しかしながら、教育などあらゆる社会の仕組みを「国防国家」に向けて作り変える水面下の動きは現実問題として進んでいるといわざるを得ない。これに対抗しうるのは、「絶対的平和論」であり「国家悪」の認識ではなかろうか。と考える。「普通の国」を目指す以上は一国の防衛は軍事力だけで達成できるものでなく、教育や経済も含む軍事化が必要となる。鈴木庫三が目指す「国防国家」論は遠い過去の思想と言い切れるだろうか。「普通の国」の回路を断ち切ることこそが、「国防国家」と訣別する道ではなかろうか。